ここはミッドガルのど真ん中、0番街にそびえたつ神羅エレクトリックカンパニー。 この会社は魔晄の力をエネルギーに変換して供給する電力事業を生業としていたが、魔晄の力を使うことを良しとしない人々の反抗を押さえつけるために…いや、カンパニー・オーナーのプレジデント神羅がこの世界を力と恐怖で手に納めようとしていたため私設軍隊をもっていた。 巡回警らの当番になっているのか、白いロングコートを着た男たちが駐車場に姿を現し始めた。片隅で車両の整備をしていた下級兵たちがその姿を見て浮足立っている。 さもあらん、白のロングコートは神羅カンパニー治安維持軍の中でも副隊長の所属するソルジャー・クラスAの証である。下級兵たちには憧れの的であり、中には一度でいいから姿を見たいと思っているようなソルジャーだとている。 仕事が手につかずぼーっとして見とれている下級兵たちの前を、ちらりと苦笑を洩らしながらクラスAソルジャーたちが通り過ぎていく。 彼らとて入隊したての頃は目の前にいる下級兵たちと同じように、通りすがる上級ソルジャーたちを見ては憧れのまなざしを送っていたのだから、その気持ちは分からないでもない。 手を止めている下級兵をとがめることをしないまま、リーダーのブライアンを前に整列しようとした時だった。 「ごめーーん!遅れちゃった?」 一人のクラスAソルジャーがあわてて駆け込んできた。 いつものようにてんでに跳ねまくった金髪を風に揺らめかせて、蒼い瞳をキラキラさせている姿はとてもではないが屈強な戦士の集団の一員には思えない。彼こそが神羅カンパニー1の美少年と有名なクラウド・ストライフであった。 「いや、まだ大丈夫だが…ギリギリだな、どうしたんだ?姫。」 「ごめんねブライアン。出かける寸前に統括につかまって次のミッション予定の書類を渡されて…。」 両手を合わせてウィンクする姿も可愛らしい。そんな彼の姿を目で追いかけていた下級兵たちが驚いたような顔をしてた。 「姫?では…あの方が…特務隊の副隊長殿?」 華奢で白のロングコートがワンピースにしか見えない。どう見ても自分より年下の少年兵が、憧れの英雄の右に立つことを許された男には見えなかった。 下級兵たちが呆然として見守る中、クラウドが隊列の一番先頭に入っていくと、再びブライアンがその場にいる仲間たちに声をかけた。 「では、巡回警らに出かける。各自トラックに搭乗せよ。」 居並ぶソルジャーたちが一斉に敬礼をすると、ブライアンが返礼をした。そしてきびきびとした様子でトラックに乗り込んでいった。 下級兵たちはトラックを見送った後、それぞれ持ち場に戻って行った。 トラックには行き先別にチームに分かれて乗り込んでいた。それぞれペア同士がどこをどう巡回するか相談しあっている。 「マーチン、今日はどっちから攻める?」 「うーん、6番街はブルーゾーンだからなぁ。イエローの5番街側からいくか?」 「いいなぁ…マーチンとトニーは…俺達そのイエローゾーンだ。」 「いいじゃん、エディは姫とペアなんだから、怖いものなしだろ?」 「ないと言えない、怖いものならたっぷりとある。」 真顔で答えたエドワードにその場にいた仲間たちが笑い転げた。 エドワードはもともと部下の面倒見がよく、気さくで優しい性格をしていた。クラスAナンバー1いい男とまで言われ、総務のお姉さんたちの熱い視線を独り占めしていたソルジャーだった。 しかし、金髪碧眼の美少年が同僚になってから彼の受難の日々が始まったのであった。 「今!現在進行形で俺の背中で睨みを利かせているやつがいるじゃないか。」 「当り前だ、おまえが俺達の姫に手を出してみろ。ただじゃ済まないのは身にしみているんだろう?」 にやりと笑いながらエドワードの肩に手をかけた男は特務隊・影の隊長と呼ばれる男リックだった。クラウドに泣き付かれるや否やエドワードにいちゃもんを仕掛けている張本人である。 「まったく…俺はノーマルだと何度言ったら信じるんだ。」 「信じらんねーよ。姫の笑顔はどんな男もイチコロだからな。」 「リック〜〜〜〜!!!おれは男だーーーーー!!!」 いつもの調子でクラウドが怒鳴りつけると、お約束とばかりにトラックがガタリと揺れた。 「ううっ…。」 「おーお、この程度の揺れで吐き気が来るのも、いい加減直さないとな。」 「うるさ…うっ!!」 再び急激に揺れたと思ったらトラックが止まる。どうやら目的地に到着した模様だ。 トラックから降りるとそこは5番街と6番街の境界だった。 先ほどまで冗談を交わしていた顔とは全く違った真剣なまなざしでそれぞれチームに分かれて警らへと出かけるのであった。 5番街の街をエドワードとペアになって巡回してると、ガラの悪そうな連中がたむろしている。じろじろと品定めされるような視線を無視してエドワードと肩を並べてクラウドが歩くと、舌打ちしながら2,3人の男たちが道をふさいだ。 「兄ちゃんにはもったいない別嬪さんだな。」 あまりにも聞きなれた文句に思わず顔を見合せて苦笑をすると、無視されたと思った男たちが詰め寄る。 「いちゃいちゃするんじゃねえよ!」 「姫〜、これで何度目だ?」 「もう覚えていないよ。俺ってそんなに女にしか見えないのかなぁ?」 「っていうかさぁ…、いつも不思議に思うんだけど、なんでお前といるとこの白ロングが目に入らなくなるんだろうな?」 白ロングという言葉に男たちがびっくりしたような顔をしてどこからどう見ても優男にしか見えないエドワードを上から下までなめまわすように見た後、一緒にいたクラウドに同じことをする。とたんに男たちが蒼い顔をして飛びのいた。 「うひゃあ!!クラスAソルジャー!?」 「ま、まさかこいつ地獄の天使?!」 男たちが蜘蛛の子を散らすようにあっという間にいなくなった。 「おやおや…最近はこれだからなぁ。お馬鹿な奴をいじめて遊ぶこともできなくなっちまった。」 「最近趣味悪くない?」 「誰かさんのおかげでいじめられているからね、ストレス発散だよ。」 その言葉にすまなさそうな顔をしたクラウドの頭をぽふっとなでてやると、いつものようににこりと笑う。天使の笑顔と言われている笑みを独占できるのは悪くはないと思うが、それが嫉妬深い影の旦那達に知れたら…と、思うと思わずため息が出てしまうのも、いつものことであった。 巡回警らの終わる時間になった。 トラックを降りたポイントでほかの仲間たちが戻ってくるのを待っていると、ほこりを巻きあげて一陣の風が吹いて行った。 「あ!痛っ!」 クラウドが右目を抑えた。 「なんだ?どうした?」 「目にゴミが入っちゃったみたい。」 目をこすろうとするクラウドの手を押さえて、エドワードは優しく声をかけた。 「目にゴミが入った時に不用意に擦っちゃダメだろ?見せてみろ。」 クラウドの背中に左腕を回し、右目をのぞきこもうと顔を近づけようとした時だった。いきなり右わき腹に誰かの足蹴りが入っていた。 「天誅!!」 目を吊り上げて息巻いていたのは巡回警らから戻ってきたばかりのリックだった。 「ったく、ちょっと目を離した隙に!姫の唇を奪おうなんざ、ええ根性してるじゃないか!!」 よろけたエドワードの背中に回りリックは首をがっちりと固めてぎゅうぎゅう締め上げていた。 「く…くるじい…ギブ!ギブ!」 悲鳴を上げるエドワードを見てクラウドはリックに事実を告げた。 「リック、エディは何もしていないよ。」 「何もしていないなんてあるか!お前だって泣いているじゃないか!いやなことされたんだろ?」 「目に入ったごみをとってもらおうとしただけなんだけど…」 「なに?で、ごみは取れたのか?」 エドワードを締め上げていた腕を離してクラウドに近寄るリックに、後ろからあきれ返ったような仲間の声が漏れ聞こえた。 「相変わらずだなぁ。」 「まったく、とんだ災難だな、エディ。」 「いや…このぐらいなら可愛いものだよ…。」 諦めたような顔をしたエドワードにクラスA仲間たちが肩をポンとたたくと、丁度やってきたトラックに乗り込みカンパニーへと帰って行った。 巡回警らが終わり、クラスA執務室で報告書を書きあげた後、警ら前に渡されたミッションの書類を見てクラウドがあわててクラスS執務室へと駆け出して行った。その後ろ姿を見てランディがザックスとリックに声をかける。 「あわてて旦那のところに飛んで行ったけど、おまえら行かなくていいのかよ?」 「姫が呼ばなかったんだから行かなくてもいい。大体俺にはほかにやることがある。」 「あのあわて様なら長期ミッションか、どこの隊を連れていくのか相談に行ったか…いや、もう決まっているな、あれは。」 「う〜ん、ザックスがマジになってるよ。女の力は恐ろしい…」 「ヘン、言ってろ、ランディ!リック。今のうちに隊員たちの招集掛けておけよ、クラウドのことだ5分で戻ってくる。」 「ああ、それは今やっている。今度はどこだろうな?」 まるでミッションを楽しみにしているようなリックとザックスの言動にクラスAソルジャーたちが呆れていた時に、扉が開いてクラウドが戻ってきた。 「ねー、エディ。3週間付き合ってくれない?」 「ああ、いいぜ。」 意味不明の会話だが、これで意味が通じているのが仲間である証拠であった。しかし言葉の意味だけをとらえると本人たちの意図した会話でないともとらえられる。 瞬間的にリックがエドワードに組みついた。 「てめぇ…姫を口説くとは何事だぁ!」 「俺が口説かれたんだろうが!」 そのやり取りはいつもの光景であった。しかし、扉が開いていて外からも丸聞こえだったのだ。 運が良いのか悪いのか、発動したミッションに対応しようとクラスS執務室を出てきたセフィロスの耳に入ってしまったのであった。 いきなりクラスA執務室の空気を絶対零度まで凍り付かせて、ゆったりとセフィロスが入ってきた。 「ほぉ…ふざけあっているほど余裕があるのか…それは楽しみだな。」 氷の微笑みと言われている独特の笑みを浮かべてからセフィロスは踵を返した。 「あ、隊長殿。待ってください!」 あわててクラウドが追いかけていくと絶対零度まで下がっていた空気がやっと戻る。いつものことであったが、ブライアンがにやりと笑いエドワードの肩をたたいた。 「ま、当たって砕けろ。砕けちまったら俺が骨ぐらい拾ってやる。」 「…ったく…なんで俺ばっかり…。」 がっくり肩を落としながらクラスA執務室を出るエドワードの後ろから背中を押すようにブライアンがついていった。 残ったクラスA仲間はこれから三週間にわたる特務隊のミッションの中で繰り広げられるであろう光景を想像しては、密かにほくそ笑むのであった。 教訓:他人の不幸は蜜の味(w) キャラクター投票第一位、クラスAナンバー1いい男と言われているエドワード・メイソン君のごく普通の一日です。 もっとエディをいじめてー!というお姉様達の声に答えてweb拍手で登場です。 この先、この話が続くか続かないか…は、お姉様達のご意見しだいだったりするかも(w) C:クラウド、Z:ザックス、R:リック、K:カイル、J:ジョニー、E:エドワード C:「エディ、すごいじゃん。主役だよ、主役。」 E:「最初は名前だけだったよなぁ、それがクラウドにちょいと微笑んで頭をなでたのが俺の運のつきかよ…」 R:「いやぁ…そりゃ作者を恨むんだな、優男。あいつ、オリジナルキャラ作る時に設定を1から考えるのめんどくさくて、昔作ったオリジナル漫画の登場人物を引っ張ってきているからなぁ…」 E:「それならジョニーだって一緒じゃないか!」 J:「俺?俺は別。あいつのオリジナル漫画から相関図ごと持ってきているから崩せないらしい。」 K:「俺とリックは後付けキャラだからなぁ…」 R:「カイルはまだいいよ。俺の腹心の部下って役回りは変わっていないからな。俺なんて改定前とイメージ違うんだぜ。」 Z:「リックなんてまだいいよ、俺なんてひどいもんだぜ。最初はマジでクラウドに惚れる役だったんだぜ。今とは大違い!」 R:「そういえば初稿の時はザックスが一番最初に姫にアタックしまくってたんだよなぁ。ところが姫と来たら…」 C:「だって…どんなことがあっても俺はセフィロスが好きなんだから、しかたがないもん。」 Z:「っつ〜か、俺の場合はFF7ACの付録OVA「The Last Ordre」が一番影響が大きかったりするかもな。おまけにクライシスコアFF7でエアリスと公式カップルに決定だし!」 C:「え?ザックスはエアリスとACのラストで二人一緒に出てきたでしょ。あの時から公認だったんじゃないの?」 E:「それを言うなら姫とキングだってそうだろう?キングダムハーツ1のファイナルミックスでお互い探しあっていたって言ったのを聞いて、作者がセフィクラBL魔晄の海に自ら飛び込んだって話だぜ。」 Z:「ちゃうちゃう、あいつがBLにはまったきっかけは機動戦士ガンダムSEEDだぜ。キラ・アスがきっかけ!」 K:「ああ、そういえば…いつだったかそんなこと言っていたなぁ。」 R:「あれって2003年の放送だろ?」 Z:「おお、そうだぜ。フリーダムがジャスティスに手を伸ばしたシーンが搭乗人物と入れ替わって見えたらしいぜ。」 E:「でも、それならなぜこの作品群の初稿が2005年なんだ?」 C:「その頃はまだ小説書いていなかったんだよ、最初はイラストオンリーでHP運営していたんだもん。おまけに一番最初に書いたSSはFF6のロックさんとセリスさんの話なんだよ。」 Z:「あれだけFF7のイラストを描いておいて最初のSSはFF6かよ!」 C:「うん、FF7のSSを最初書いたのが2004年の12月で、その時はもう必死でBLに流れるのを止めていたって…」 Z:「で、その勢いで書いたのが「旋律のブルー・another side(すでに消去済み)」だったって訳ね。」 R:「俺はそれが一番最初の登場になるってことか。」 K:「そのあとは坂道を転がるように…って?」 C:「基本セフィクラでニブル炎上なしの話にするって最初に決めたらしいんだって。」 J:「軍隊にいるなら仲間がいる。だからオリジナルキャラが満載なわけなんだけど…そのオリジナルキャラがトップを飾ったり、メインディッシュになるってのも珍しいよなぁ?」 E:「だいたい、どこのセフィクラサイトでも俺的役回りはザックスなんだろ?」 Z:「ああ、そうらしいね。でも、俺はこいつの兄貴分でセフィロスと友達になりたいんよねー!」 K:「っつか、設定の差だろ?最初のザックスの位置づけがクラス1st、ところがその上のクラスを作っちまったおかげで姫と同じクラスに所属していないってことになったんだからなぁ。」 J:「そうなると姫を守るナイトの役回りが浮くわけだ。俺はもともと一般兵扱いで最初から出していたし、ほかのオリジナルキャラで軍隊経験者といえばエディしかいないって訳」 R:「初稿の頃とその点では全然変わっていないんだけど、改稿してからキャラアンケートを取って…それがきっかけでがらりと変わったんだな。」 Z:「そういえば、改稿前のキャラアンケートでは統括とリック、おまえが人気を二分していたもんなぁ。それが改稿後はエディがぶっちぎり!」 C:「つまり、改稿後にこの部屋に来るようになったお姉様達の中に、エディがいじめられるのを喜ぶ人たちが増えたってこと?」 Z:「まあ、そうなんだろうなぁ。」 R:「その影響がもろに出始めているよな?」 K:「ああ、だって姫がクラスS上がる時期が改稿前は17歳の3月だったんだけど、第18話の改稿をしたときに18歳に変えちゃったみたいだしな。」 J:「それだけまたエディをいじめることが出来るってことか。」 R,K,J:「たーのーしーみー!」 C:「アハハハハ、じゃあ俺まだクラスAにいられるんだね。」 Z:「軽く半年は伸びたってことか。」 R:「と、言う訳で…エディは俺が責任を持ってみっちり苛めますので、これからもSWEET HEARTのセフィクラ夫婦善哉話をよろしくお願いいたします。」 E:「………チックショーーーーー!!!青い空なんて大っきらいだーーーー!!」 おバカな話にお付き合いくださってありがとうございました。 |