FF ニ次小説


FF 7 二次小説 −  ある日の風景 − 



 魔晄都市ミッドガル、神羅カンパニーが管理する巨大都市である。
 その一角の豪奢なマンションに不似合いな子供がエレベーターに乗り込んでいた。

 金色のくせ毛に青い瞳、一見女の子のようにみえる華奢な身体、身にまとっていた青い軍服があまりにも不似合いであった少年であった。
 エレベーターを降りて部屋のキーコードを押すと鍵が開く。
 少年はなれた様子で部屋に入って行った。

 部屋の中には二人の男がくつろいでいた。
 一人は人のよさそうな黒い瞳に黒い髪を山嵐のように逆立てた男、ソルジャー・クラス1stのザックス。
 そしてもう一人は流れるような銀色のロングヘアーにアイスブルーの瞳、人を寄せつけない雰囲気の男は神羅カンパニーが誇るトップ・ソルジャー”英雄”セフィロスだった。

「よぉ、クラウド。遅かったじゃねぇか。」
「くじ引きやってたんだ。はい、頼まれた物。」

 そう言って手元にある『月刊格闘技』という雑誌をザックスに渡した、ところがクラウドの手元にはまだ何か残っていた。
 ザックスが目ざとくそれを見付けてクラウドに聞いた。

「クラウド。それ何だ?」
「あ、これ?2ヶ月前に出たゲームソフトの中古が出てたから買って来ちゃった。」

 クラウドはザックスに持っていたゲームソフトを手渡した。
 ザックスがDVDのケースと同じサイズのソフトのケースを眺める。

「いただきストリート・スペシャル?あ、またお前出てるんだ。」
「俺だけじゃないよ、セフィロスだって…ほら。」

 箱の裏にも登場人物の姿が書かれていた。

「まーた、俺でていないのねん?」
「おまえは本編でも名前と写真しか出てこないではないか」

ぐさっ!!   ← 心に矢が刺さった音

「う…ぐっ!!インターナショナル版には出てるもんねー!!」
「カプセルの中とトラックの上と死ぬシーンだけな」

ぐさっぐさっ!!!! 

「格闘ゲームの奴にはしっかり出てるぞ!」
「姿だけな、声はクラウドの借り物ではないか」

ぐさっぐさっぐさっ!!!!

「あんたなんか上半身裸で下半身がイカじゃないか!」

ピキッ!!  ← こめかみに青筋が立った音

「そうだよね、Lv99まで上げておいて言うのも何だけど…どうしてあそこでイカなの?激しくイカだったよね。」

ピキピキッ!!!!

「クックック…お前ら正宗の露と消えたいか?」

 セフィロスが氷の微笑みをたたえて愛刀の正宗を抜く体制に持っていた。
 ザックスとクラウドはそれを見て震え上がっていた。

「ゴ!!ゴメンナサイ!!もうイカとはいいません!!」
「ふん、まあ良かろう。で、こいつはどういうゲームなんだ?」
「ダイス・ゲームみたいなんだ。マークを集めて店を買って、株を買って自分のエリアを高くするんだって。」
「さいころのボードゲームみたいなもんだな。」

 クラウドが説明書を読みながら説明しているよこでザックスが説明書を覗き込んでいた。

「最初から操作出来るキャラは限られているみたいだね。」
「クラウドは最初から使えるんだ。」
「なるほど…黒マテリア無しでクラウドが操れると言うのか。」
「あのなー…(^^;;」

 二人のやりとりを聞き流しながら説明書から顔を上げてクラウドが残念そうな顔をした。

「あ、残念だなー。セフィロスは隠しキャラみたいだから最初からは使えないんだ。」
「ん?誰を使えるんだ?あ、この傷男見覚えあるぞ。」
「ああ、ちょっと髪が短いけどレオンじゃないか。」
「こんぺいとう頭のガキと犬とアヒルのゲームでお前と一緒に闘技場にいたあいつか?」
「うん、そうだよ。そういえばあのゲームもザックス出ていなかったよね−」

ぐさっ!!

「くぅ〜〜!!セフィロスなんて腕にヒレ付いちゃってて、アンタやっぱ魚類なんだな」

ピキッ!!

「ふん!出られなくていじけてた奴はどいつだったかな?」

ぐさっぐさっ!!!!

「背中に黒い羽根つけて”片翼の天使”って?天使の羽根は黒くないぜ。」

ピキピキッ!!!!

「ふふん!俺のはクラウドと対になっているのだ!!俗に言うペアルックとか言う奴だ、羨ましいだろ?!」
「そういう言い方するなー!!」

 低次元の口げんかをしているセフィロスとザックスの間を割るように、クラウドがゲームのソフトをアクアブルーのPS2に挿入しながら叫んだ。

「もう、二人とも大人げないなー!!早くやろうよ。」
 そんなクラウドに二人が突っ込みを入れた。
「北の大空洞で体育座りしたうえに『ゼノギアス』のCMやってるような、なんちゃってソルジャーに怒鳴られたな。」
「スカート履いたいやらしそうな男にケツ撫でられたうえに、三つ首の黒い犬に踏まれていた奴に怒られたな。」

ど〜〜んより  ← 背中に黒い雲を背負っている音

「うう…う…」

 クラウドの碧い瞳からボロボロと涙がこぼれているのを見て、ザックスとセフィロスがあわてふためく。

「クラウド?」
「ほら、泣くなクラウド。」

 セフィロスがクラウドの涙を拭いてやるとやっと泣きやむ、なんだかんだといいながら実はこの二人クラウドには弱いのである。

 ともかく短いハウリング音と共にゲームが動きはじめた。
 選択画面でコースを選ぶ。

「お、ミッドガルがあるじゃねーか。これにしようぜ。」
「ん〜、じゃあキャラは?」
「もちろんクラウドだ。」
「俺っちは愛しのエアリス!!」
「じゃあ俺はレオン…じゃなかった、スコールにしよう。」

 キャラが決まると残りの一人をCOMが決めた、どうやらCOMはリノアを使うらしい。
 スタートに4人が集まっていた。

「ん〜〜、やっぱり俺のエアリスは可愛いなー!」
「エアリスと言うのはクラウドとデートしていた古代種の女か。」
「うん、そうだよ。」

 3人ともゲーム画面の進行を見つつ喋っていたが、セフィロスの言葉に急にザックスが振り返った。

「なんどすて?!エアリスとデートしたって?!」
「ゲームの中だけどね。」
「ゴールドソーサーのイベント広場で100組目になって、劇に出てキスしていたな。」
「えーーーー!!!!!」
「強烈にクラウドを口説いていたぞ”私、あなたを探している”だったかな。」

が〜〜〜ん!!

「う…うう……エアリス〜〜!!(泣)」
「ザックス、泣くのは勝手だけど鼻水まで垂らすなよ!」

 そう言いながらクラウドはザックスにティッシュの箱を手渡した。
 ザックスが受け取るとティッシュペーパーを2組弾き抜くと思いっきり鼻をかんだ。

「ううう…俺が何回デートに誘ってもOKしてくれないくせに〜〜」
「だからー!ゲームの中だってば!!」
「クラウド、ゲームと現実の区別も付かん山猿などほかっておけ。」
「そりゃ、アンタでしょうが〜〜!!!」

 ザックスがわめいているとTVから急に変わった音がなった、COMが店を買った音だった。

「ちぇ!この女、自分のいいように目を出しやがる!!」
「リノアさん?スコールに聞いたけど魔女の継承者なんだって。」
「魔女ねぇ、結構かわいいのになぁ。」
「あー、ザックス。ダメだよ、リノアさんはスコールの恋人だから、横恋慕したらガンブレードでぶった切られるぜ。」

 クラウドがそんな事を言っているうちにCOMは出目をコントロールしながら店を買い占め株を買い占めはじめた。

「とことん恐ろしい女。」
「そんな事スコールの前で言ったら、やっぱりガンブレードの餌食だろうなぁ。」

 ため息をつきながらクラウドが見つめていたTV画面の中ではセフィロスの操る”クラウド”の前でリノアが立ち止まっていた。
 リノアがバストショットになってささやいた。

「私の事、好きにな〜る、好きにな〜る…ダメ?」

 画面上にはにっこり笑ったリノアが写っていた。

「うわ〜〜!!かっわいい〜〜!!」

 ザックスがしごく普通の反応をしていた。
 その瞬間急激に部屋の気温が下がった。

「あれ?エアコンが壊れたんか?」

 ザックスがまわりをきょろきょろとうかがって、とある方向でフリーズした。セフィロスがまっ黒な雲を引き連れていた。
目は座り顔が引きつった笑いをしている。

「セ、セフィロス、一体どうした?」

 ザックスの問いかけを聞いているのかいないのか反応を示さなかった。
 クラウドがザックスの視線に気がついてセフィロスを見る。

「ねぇ、セフィロス。どうしたの?」
「あの魔女め!私のクラウドをかどわかしおって!!」
「だーかーらー!!!危ない事言うなって−の!!」
「クックック…許せん。」

 目が思いっきりすわっているセフィロスの手には正宗が握られている。
 その雰囲気を感じ取ってザックスとクラウドがセフィロスを抑える。

「おいおい、セフィロスの旦那〜〜!!!ゲームだってば!!」
「頼むからゲーム機相手に正宗抜かないで!!」

 セフィロスはハッとした表情を一瞬見せたがすぐに冷静な顔に戻りせき払いを一つした。

「誰がそんな大人げないことをするのだ?」

”アンタじゃねえかよ−!!”

 正宗の露と消えたくないザックスとクラウドの二人は思いっきり心の中で突っ込みを入れた。


* * *



 なんだかんだと言いつつゲームは進んでいった。
 ザックスがドロップアウトし、セフロスもドロップアウトした所だった。

「疲れるゲームだな。」
「アンタがそれを言うかーーー!!!」
「なんだ、一番最初にドロップアウトしたから気に食わないのか?」
「あんたは2番目だったじゃないかよ。」
「貴様、よほど正宗の露と消えたいらしいな。」
「おう!やるってんだったらやるぞ!!」

 セフィロスが正宗をザックスがバスターソードを抜いて対峙した、しかしいつもならここで止めに入るクラウドが今回に限って止めに入らない。

 その時二人の視線がクラウドを捕らえた。
 クラウドは真っ赤な顔をして怒っているようだった。
 TV画面を見ると何も映されてはいなかった。電源コードが引き抜かれていたのである。
 セフィロスがザックスの足元に視線を送る。

「ザックス、お前の短い足にコードがからまってるぞ。」
「うわ!!」
「もう少しで…勝てたって…言うのに……」

 クラウドがゆらりと立ち上がった。br>
「ク、クラウド…すまん!!」
「ったく、いい歳こいてアンタ達は!!!」

 クラウドの”つんつんチョコボヘアー”が怒りで揺れていた。そんな様子を見てザックスが小声で呟く

「怒髪天を付くっつーか、スー●ー・サ●ヤ人っつーか…」
「馬鹿猿!!クラウドの手を見ろ!釘バット装備だ!!」
「やべ!!リミットブレイクしちまった!!逃げよう!!」
「逃がすか!!超究武神覇斬!!!」
「ギャ−−−−!!!来た−−−−!!(泣)」
「止まるなザックス!!」

 それから数時間、逃げる二人のソルジャーを一人の一般兵が追い駆けている姿が、ミッドガル中で見られた。
 3人が通った後は見事に破壊しつくされていた。


 この後すぐに神羅カンパニーに抵抗する組織の中に、『セフィロスを倒すならクラウドを仲間に入れろ』という噂が立った…
と、いうのは また、別のお話。



The end