FF ニ次小説
 炎に包まれ地獄と化したニブルヘイムの街には至るところで人が倒れていた。
 ただひとり、ザンカンだけが必死で人を助けていたそこにザックス達が戻って来た。

「おっ、あんたか! あんたは正気なんだろうな?それならこっちに来て手伝ってくれ!俺はこの家を見てくる。あんたはそっちの家を!」

 クラウドは自宅に入ろうとしたが、炎が邪魔をした。

「酷い…セフィロス、 酷すぎる!!」

 炎の向こうでクラウドの瞳に映ったのは、村人を残虐に斬り倒すセフィロスの姿であった。
 その瞳は既に正気ではなく、薄笑いを浮かべると炎の中に消えていった。

 ザックスとクラウドはセフィロスを追ってニブル山の魔晄炉へと向かった。
 そして、魔晄炉の中で見たのはセフィロスによって無惨にも斬り殺された男性と、その遺体に寄りすがる少女、ティファの姿であった。

「パパ!! セフィロスね! セフィロスが殺ったのね!セフィロス…ソルジャー…魔晄炉!神羅!!全部!全部大キライ!」

 ティファは側に落ちていたセフィロスの刀を拾って 奥へと走り出した!!
 ザックスとクラウドも慌ててその後を追いかける。
  奥のカプセルのある部屋の扉にセフィロスはいた。

「母さん、会いに来たよ。この扉を開けておくれ。」

 そこにティファが追いつきセフィロスの正宗をかまえた。

「よくもパパを! よくも村のみんなを!」

 ティファはセフィロスに斬りかかる、しかし 逆に翻ったセフィロスに刀を奪われて斬られてしまった。
 ティファの体は大きく反り返って宙を舞い、階段に叩きつけられた、ザックスとクラウドが着いたのはちょうどその時であった。

「ピンチの…時には……来てくれるって……約束したのに……」

 ザックスはティファを脇へと運んで寝かすとセフィロスの元へと走り寄った。セフィロスは更に奥の部屋でそこに置かれているチューブが付けられている人形らしき物に向かって何やら語りかけていた。

「母さん、一緒にこの星を取り戻そうよ。私は、いい事を考えたんだよ。約束の地へ行こう。」
「セフィロス!!よくも罪のない人々を殺ってくれたな!」

 ザックスに呼びかけられてもセフィロスの瞳は何も見てはいなかった。

「クックックッ…… 母さん、また奴らが来たよ。母さんは優れた能力と知識、そして魔法でこの星の支配者になる筈だった。けど、アイツラが…何の取り柄もないアイツラが母さん達からこの星を奪ったんだよね。でも、もう悲しまないで…」

 そう言うとセフィロスは人形を引き剥がし、チューブをちぎった、人形から赤い体液が流れ出し、火花が飛び散る。
 そして人形の裏には『JENOVA』と銘打たれた、人か化け物かわからない物が出てきた。

「クラウドの悲しみはどうしてくれる! 家族…友達…故郷を奪われたアイツの悲しみは!!あんたの悲しみと同じだ!」
「クックックッ…私の悲しみ? 何を悲しむ?私は選ばれし者。この星の支配者として選ばれし存在だ。この星を、愚かなお前達からセトラの手に取り戻すために生を受けた。何を悲しめと言うのだ?」

 ザックスがかぶりを振った。

「セフィロス…信頼していたのに!!…いや、お前は、もう俺の知っているセフィロスじゃない!」

 ザックスは剣を構え、セフィロスに切りかかったが返り討ちにあった、その頃、クラウドはティファをメイン通路から横に退けていた。
 そこにザックスがセフィロスにきり飛ばされて階段を墜ちてきた。

「ク、クラウド…セフィロスを倒してくれ。」

 クラウドはザックスの剣を手に持ってセフィロスの不意を突き刀を突きたてた。セフィロスの動きが止まった。

 クラウドがティファの元に掛けより無事を確認する、一言二言会話を交わした時にセフィロスがゆらりと歩いて来た。
 セフィロスはまだ生きていたのだった。

「お前ごときに…」

 セフィロスはもう視界がよくわからないのか脇にいたクラウドを無視して通り過ぎる。
 手にしたジェノバと共に歩き去ろうとしていた。

「クラウド…セフィロスにとどめを…」

 辛うじて息のあるザックスに促がされて、クラウドはうなづいてセフィロスの後を追いバスターソードを構えた。

「セフィロス!!」
「図に…乗るなぁ!!」

 相手はさすがに超一流のソルジャーである、止めを刺そうと追いかけてきたクラウドを逆に刀で突き刺した。
しかしクラウドも必死にその突き刺された刀を掴み、セフィロスに対抗する。

「そ…んな…ばかな…」

 クラウドは渾身の力を込め、セフィロスを刀ごと持ち上げて放り出した。
 セフィロスは壁に強く打ちつけられ真っ逆さまに魔晄炉に落ちていった。
 そしてクラウドはその場で気を失った。

 宝条によって捕らえられていたクラウドとザックスは、神羅屋敷の地下で宝条のおぞましい研究のため巨大なビーカーの中に浸けられていた。
 二人は 魔晄を常に照査されていた。

「ほーら、餌だぞ」

 係の者が食事を運んでくる。
 そしてザックスの鍵を開けた。
 そんなある日、ちょっと隙を見せたその時ザックスが飛び出し、その男を殴り倒した。
 そしてクラウドの鍵も開け、ぐったりしているクラウドを抱え上げて脱出した。

 ザックスは神羅屋敷の部屋にあるタンスをあさって服を見付けた。

「お! あったあった。これに着替えろよ。ちょっと臭うけど、ま、贅沢は言うな。結構似合ってるぞ。さて…と。」

 クラウドに服を着せて抱えたまま神羅屋敷を後にするとザックスは運良く側を通りかかったトラックに乗せてもらいニブルヘルムを後にした。

「おい! おっさん! ミッドガルはまだか?」
「うるさい! 乗せてやっただけでもありがたく思え!」

 ザックスは運転手に悪態をついた後クラウドに向かって話しかけた。

「なあ、ミッドガルに着いたらお前、どうする?」
「………」

 クラウドは答えなかった。いや、答えられなかった。
 しかし、そんな事はおかまいなしでザックスはクラウドに語りかけた。

「俺はあちこちに当てがあるんだ。みんなの世話んなって…あ、どの女の子も親と一緒に住んでるのか、そりゃマズいよな〜あ?」
「………」
「ダメだ… 作戦チェンジ! う〜ん、何をどうするにしても取りあえず金だよな。商売でも始めるか。なぁ、クラウド。俺に出来る商売ってあると思うか?なあ、おっさん! 何か俺に出来るような商売知らないか?」

 ザックスはトラックの運転手に問いかけた、トラックの運転手はその問いに答えた。

「何言ってんだ。若いんだろ? 何でもやってみろ!若いうちは何でもやってみるもんだ。若いうちにいろいろ苦労してなぁ。自分の道って奴を捜すのよ。」
「何でも、だってよ。そんな事言われたってなぁ…。あ! そうだよな! 俺は他の奴らが持ってない知識や技術をたくさん持ってるんだよな! 俺、決めたぞ!俺は『何でも屋』を始める! おう! ありがとよ、おっさん!」

 トラックの運転手は呆れたような声で答えた。

「あんた。オレの話、ちゃんと聞いてたのか?」

 ザックスはトラック運転手の言葉なぞおかまいなしにクラウドに話しかけた。

「おい、俺は何でも屋になるぜ。面倒な事、危険な事、報酬次第で何でもやるんだ。こりゃ、儲かるぞ〜。 な、クラウド。お前はどうする?」

 トラックの運ちゃんは完璧に呆れていた。

「だから… そうじゃなくて。」

 その時、クラウドが声を出した。

「う…ぁぁあ…」
「冗談だよ。お前を放り出したりはしないよ。トモダチ、だろ?何でも屋だ、クラウド。 俺達は何でも屋をやるんだ。わかるか、クラウド?」

 ザックスはまだ魔晄の影響で上手く動けないクラウドを気遣った。そして車を降り、もうすぐでミッドガルに着けるというところまで着たが神羅兵に見つかった。

 銃声が聞こえてきた!

 ザックスはクラウドを後ろに置き、バスターソードを構えてひとりで対抗しようとするが反対に撃たれ、その場で射殺されてしまった。
 神羅兵が銃をかまえたままクラウドに近寄って言った。

「こいつ、どうします?」
「ああ…… うあぁぁぁ……」
「これはダメだな。放っておけ。」

  そうして神羅兵達は去っていった。

 やがて雨が降り出す中、クラウドは必死にザックスの元へと這っていった、無言で横たわるザックスを眺めそしてその持っていた剣を受け取り立ち上がると無意識のまま目の前に見えているミッドガルへと歩き出した。

 そして、その数日後クラウドはティファと再会した。
 大量に魔晄を帯びたためクラウドの青い瞳はとび色にかわってしまっていた、その瞳の奥にはニブルヘルムで見たセフィロスの緑色に輝くアイスブルーの瞳の影が強く浮かんでいた。



The END