7番街スラムのホームで倒れたクラウドを偶然ティファが見つけ、セヴンスヘブンへと連れ帰った。
 それからしばらくして、1番街駅に向かう列車の屋根の上にクラウドは立っていた。
 元ソルジャー・クラス1stを名乗る彼は、反神羅組織の一つアバランチというグループに雇われ傭兵をしていたのであった。


− Get along Together−


 魔晄の力は星の命。その力を使い続けると星はやがて死んでしまう。アバランチのリーダー・バレットは何度もクラウドにそう力説していた。
 1番魔晄炉を破壊して次に狙いをつけたのは5番魔晄炉、しかしそこには神羅カンパニーの罠が待ち構えていた。そのわなにはまってクラウドは爆風とともに5番街スラムへと落ちて行った。
 5番街スラムでクラウドを助けてくれたのはエアリスという女性だった。どこか懐かしささえ漂わせる目の前の女性にクラウドは知らずに笑顔を見せていた。花がたくさん咲いている教会の片隅で、エアリスと話していると扉が開いて黒ずくめの男たちが入ってきた。
(あいつ…どこかで…)
 黒いスーツをだらしなくひっかけている赤毛の男をクラウドはどこかで会っていたのか覚えてはいないが、たしかに覚えていた。それがどこだったか分からない間にエアリスに頼まれて彼女を家まで送り届けることになった。
 そんな彼女を神羅カンパニーに拉致されて、奪い返すときにセフィロスが生きていることを知った。

 セフィロスを追うことに戸惑いはなかった。

 彼を追いかけて…そして止める。それは自分に定められた宿命のように感じられていた。
 カームの宿に入ったとき、一緒にセフィロスを追うと言ってくれた人たちから彼のことを聞かれた。クラウドは聞かれるままに答えていたが、聞いていたティファの顔がやや青ざめていたのには気がつかなかった。

 グラスランドの湿地帯を抜けたところで、大きなミドガルズオムが串刺しになって死んでいた。こんなことができるのはセフィロス以外にはいない。あんなに大きなモンスターをあっさりと串刺しにできる力を持つセフィロス。
 そんな彼を倒せるのか?不安しか頭をよぎらない。しかし、なぜかクラウドはセフィロスの後を追うことしか考えてはいなかった。
 ジュノンへ渡る船の中にセフィロスは現れた。
 「長き眠りを経て、時は満ちた…」と言いながら突然現れて…そして突然消えた。彼の消えた後にはジェノバの腕が落ちていた。
 コスタ・デル・ソルのビーチで水着ギャルをはべらせていた宝条がクラウドを見ておかしなことをつぶやいた。
「お前は何かに呼ばれているような気はしないのか?」

(何かに呼ばれている?)

 クラウドにはどこか思い当たるようなところがあった。しかしそれは認めたくないことであった。
「呼ばれているんじゃない!俺はセフィロスを追っているんだ!」
 そう思い込もうとしていたのかも…しれなかった。
 セフィロスを追っているうちに、どんどんと真実に近づいていっている。それは確かなんだけど…真実に近づくにつれて…真実がわかるに従って、それがだんだん怖くなってきていた。
 コレルを抜けてゴールドソーサーで殺人犯と間違われ、コレルプリズンに落とされて何とか抜けだした後、ゴンガガという村に入った時だった。ティファとエアリスの様子が少し変なのに気がついた。
 村の中の家の一軒に夫婦がひっそりと暮らしていた。その息子がソルジャーだったという、何年も戻っていないが元気なのかとクラウドに聞いてきた。一人息子だというそのソルジャーの名前を聞いたとたんエアリスとティファがいきなりその家を飛び出した。
 村の外まで逃げるように駆けだしたエアリスと、村の入り口近くで蒼い顔をしているティファをクラウドは追いかけた。
「ティファ、どうしたの?」
「ごめん、ちょっと知っている人の家があったの…それだけよ。」
 エアリスにも同じことを聞いたが彼女は翡翠色の瞳に涙を浮かべてなんでもないというだけだった。しかし、その様子からしてもなんでもない訳ではなさそうだった。
 息子を待っている夫婦から聞いたソルジャーの名前はザックス。1stまでなっているのだからそれなりに知られたソルジャーのはずなのだが、クラウドには初めて聞く名だった。

 それからもずっとセフィロスの後を追いかけていたはずだった。
 ニブルヘイムが近付くと村が既に復興していた。以前のように普通に村人が暮らしている、しかしこの村の人たちはたしかに5年前セフィロスの手によって殺され、建物は業火の中に燃え尽きたはずだった。
 宿屋も…よろず屋も、クラウドの家も、ティファの家も復興していた。そのうえ村の人々が普通に暮らしている。そんなことありえない!ティファもクラウドもあの時の炎の熱さを…セフィロスの下した刃の痛さもまだありありと思い出せる。
 神羅屋敷に入って何かに導かれるように地下室を見つけた。
 思ったより広い地下には部屋がいくつかあって、その中には棺桶がいくつも並んでいる部屋があった。墓を暴く趣味はないが、何か手掛かりがないかひと通り中を見てみた。
 棺桶の中の一つに男が寝ていた、彼の名はヴィンセント・ヴァレンタイン。自分を忌み嫌うような彼の言動に何があったのか聞いた時、彼の話す事実にびっくりしたが地下の実験室にあった書類に書かれていたことと合致した。
 ヴィンセントは感情が高まって激怒するとその体が獣となてしまう性質を持っていた、地下の資料によるとソルジャーに施された手術はジェノバ細胞を移植し魔晄を浴びせること。精神力が弱ければ精神破壊をおこしたり、ジェノバ細胞が変調をきたしてモンスターになる者もいるということだ。
 ニブル山を越えてロケットポートに着くと神羅の手先が待ち構えていた。ニブルヘイムに入る前に移動手段であるホバーを置き去りにしてきたので、海を渡る手段を探していると、神羅の連中とひと悶着起こり、その結果シドが仲間に加わった。

 何だかわからないことばかりだったが一つだけわかったことがある、セフィロスは黒マテリアを探している。黒マテリアは最凶の魔法を発動させる、しかしそれは南の小島に封印されていて、キー・ストーンがなければ見つからないらしい。
 キーストーン…どこかで聞いた名前だと思ったら、ゴンガガの外れにある武器商人の小屋で聞いた名前だった。武器商人から聞いたのはゴールドソーサーの金持ちに売ったという情報だった。
 あわててゴールドソーサーまで戻り園長のディオに会って闘技場に出る条件を飲む代わりにキーストーンをもらう約束をとった。何とか勝ち抜いてキーストーンをもらったのは良かったが、それをケット・シーに持ち逃げされた。
 ケット・シーは神羅カンパニーの幹部が操作するロボットだった。追いかけようとしてロープーウェイに乗り込もうとしたら先回りされていたのか故障中で動かなかった。
 仕組まれたと思ったが、ロープーウェイが動かないとゴールドソーサーから出ることができない。仕方がないのでホテルで一泊しようとしたらエアリスが部屋にやってきた。
 誘われるままゴールド・ソーサーをあるく。いろいろなイベントコーナーを二人で歩き、ゴンドラに乗り込んだ。
 エアリスが意味不明のことを言い始めた…
「最初は…似てるから…驚いちゃった。歩き方…話し方…しぐさ…。でも、違っていた…」
「…………。」
「ね、本当のあなたはどこ?私、あなたに会いたい…。」
「俺はここにいる。」
「う…ん。それはわかっている。でも……私、あなたに会いたい。」
 このとき、クラウドは何を言われているのかわからなかった。

 ロープウェイが治り、コンドルフォートの南にある小島へと急ぐ。そこには古代種の神殿と呼ばれる遺跡があるという。
 古代種?!そういえば、そんな人たちが昔この星にいたと、ニブルヘイムにある神羅屋敷の地下室の書類に書いてあった。もともとこの星に生れ、この星とともに生きていた種族。そしてその唯一の生き残りがエアリスだった。
 古代種の神殿に到着すると、エアリスはそこにとどまっていた意識に話しかけられていた。たくさんのことを伝えようとしている意識にこたえることができずに彼女は悲しげな顔をしていた。
 神殿の入口にはやはり先に来ていたのかタークスのツォンが倒れていた、セフィロスにやられたという刀傷はかなりの深手で、息をするがやっとの様子だった。
 ツォンからキーストーンを受け取り祭壇のようなところに乗せると、神殿の内部へと転送された。
 中にはいろいろな仕掛けもあったが、古代種の意識も色濃く残っていて、エアリスに何かを告げているらしい。次第に何かを決意したような表情になっていく彼女を見ていると、なぜだかわからないが美しく感じた。

 神殿の奥まで調べていくうちに、この神殿自体が黒マテリアだということを知った。
 神殿のミニチュアを指示された手順通りに小さく畳んでいくと黒マテリアになるという。しかし、畳んでいる人は押しつぶされてしまうという。究極の魔法の一つメテオを呼び、この星に災害をもたらすマテリアを発動させないためのトラップになっていたのであった。
 ケット・シーがリモコンボディーであることを利用して黒マテリアを取り出してくれた。
 普通のマテリアよりも一回り大きな黒いマテリアを地下深くから拾い上げた時、セフィロスが再び現れた。この星の未来を自分の意のままにしようとするセフィロスの鋭い眼光がクラウドを見つめていた。

(あ……、この瞳……どこかで……。なんだか…なつかしくて…どことなく安心できるアイスブルーの……)

 クラウドがまるで引き寄せられるようにセフィロスのもとに歩み寄っていくと、持っていた黒マテリアを渡してしまったのだった。そしてそのまま倒れこんでしまった。