招待状を配りおえるとすでに6月も末に成ろうとしていた。
 マリンとエアリスが5番街にある教会を花で埋めつくそうと、丹誠込めて育てた花にせっせと水を与えている。
 ティファがブライダルアイテムを並べてほくそ笑んでいる。クラウドはそんな女性陣の姿を見てため息をついていた。ザックスがそんなクラウドを目ざとく見つけた。
「なんだなんだ?!ため息をつくと幸せが逃げていくと言うぜ。」
「だって、あれを俺が着るんだぜ」
 クラウドの言う”あれ”とは当然純白のウェディングドレスである、ザックスはにっかと笑いクラウドの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「いいじゃん、似合いそうだしさ。」
「あんたが着ろ!」
「冗談、俺はエアリスに着てもらうんだい!」

 まるで兄弟みたいに言い争っている二人にティファが歩み寄ってきた。
「ねえ、クラウド。まだ足りないものがあるんだけど」
「え?!まだ?!」
「そうよ、用意する物は新しいものと古い物、買った物と借りた物、まあ、この4つは揃っているからいいとして。後一つ、サムシング・ブルーよ。」
「サムシング・ブルー?」
「ええ、花嫁はね。何か青い物を身につけていると幸せになれるんだって。」
「俺、男なんですけど。」
「あんたはセフィロスの花嫁でしょ!!」

 ティファがクラウドに詰め寄っている所にエアリスが入ってきた、扉を開ける時に話が聞こえたのであろうか?いきなりティファに何かを差し出した。

「はい、青色のガーターベルト」
「わお!!最高!!」
「うん、だってブーケトスだけじゃなくて、ガータートスもやらないと、ね!」

 二人の女性の言外の脅迫を聞きながら、クラウドは思わず泣きそうになっていた。

「諦めるしかなさそうだな。」
「何で俺が。 (T▽T)」

 しかしクラウドが好む、好まざるにかかわらず、挙式の日はすでに明日に迫ってきていて各国からの賓客が続々と到着しはじめていたのであった。

 扉の向こうから誰かの靴音が近づいてきていた。
 ザックスが扉の影にかくれ、エアリスとティファは扉から離れた時、外から扉がノックされ声が掛った。

「エスタのスコール・レオンハルトだ。」
「あ、スコール。いらっしゃい!」
 ティファが明るい顔でうなずくとザックスが扉を開ける、扉の外にはスコールが立っていた。
「あら、レオン。何か御用かしら?」
「いや、シュミ族の族長からクラウドにコレを渡してくれと頼まれたんだ。」
 スコールは赤い石のはめられた指輪を持っていた。
「あら、素敵な指輪ね」
「なんならセフィロスに渡しておくか?」
「そうね、宝石みたいな石がついているものエンゲージリングね。」
「もう、好きにしてくれ。」

 ヤケになったクラウドにスコールが苦笑する。
「ヤケになるなよ。」
「ヤケにもなるぜ。」
「それよりもクラウドいい?!あんたがセフィロスと別れるだの、喧嘩しただのと言えばこのFF大陸がひっくり返るぐらいの大騒ぎになるから、大人しく可愛い奥さんしているのよ!!」
「俺って一体なんなんだよ。」
「クックック、嫌になったらいつでもエスタに来い。あんたの愚痴ぐらいは聞いてやれるつもりだぜ。」
「無理いうなよ。きっとセフィロスが追いかけてきてバトルだぜ。」
 クラウドとスコールの会話を聞いて、エアリスがふと気がついた事を大声で聞いた。
「あー!!レオンまさかあんたクラウドに惚れちゃった訳じゃないわよね?!」
「ダメダメ!!これ以上騒ぎを起こさない為にもクラウドはセフィロスと一緒にいないとダメなの!!」
「あのなぁ…、まあいいか。ともかくあんなに暗かったお前がコレだけ明るくなったんだ。いい事なんだろう、幸せにな。」
「あ、うん。ありがとう。」

 スコールを見送ると入れ違いにセフィロスが入ってくる。
 セフィロスを見た途端にクラウドの顔がぱぁっと晴れるので、そばで見ているティファ達はやってられなくなった。


      翌日   5番街の教会

 花で飾られたこぎれいな教会の祭壇に銀髪の美丈夫が立っている。
 扉が開きヴィンセントに連れられて綺麗な花嫁が入ってきた。
 その場に居合わせた一同が花嫁のあまりの美しさに見惚れている、ヴィンセントがゆっくりと花嫁を中央まで誘導すると銀髪の美丈夫が悠然と迎えに来る。
 恭しく一礼するとヴィンセントから花嫁を受け取り祭壇へと向かう。
 教会内にはパイプオルガンの調べが流れ、荘厳な雰囲気の中で新郎新婦が祭壇へとたどりつく。
 居合わせた皆で賛美歌を唄い式が厳かに始まった。

 賛美歌を唄いおえると牧師が聖書からの言葉を読み上げる。
 そして誓約の言葉をセフィロスが、セフィロスに続きクラウドが誓約の言葉を牧師に続いて言う。

 指輪を交換し誓いの口づけを交わす。

 牧師が居合わせた人々に反対を唱えるか問いかけた、しばしの沈黙が流れ牧師が正式に挙式の成立を宣言すると教会にいる全員から拍手が起こった。

 式に参列していたキスティスが隣にいるリノアにつぶやいた。
「おかしいわね。反対をいいそうな人がいそうだけど。」
「それぞれの国の人が押さえ付けているみたいよ。」
 キスティスが周りを見渡すと、式に反対しそうな人達はすべて厳重に見張りが付いていた。

 全員教会の外に出ると遅れてセフィロスとクラウドが現れた。
 ライスシャワーとフラワーシャワーで祝福される中ティファがクラウドに声をかける。

「クラウド!私にブーケちょうだい!!」
「ええ?!私よ私!!」

 女性陣が一気に集まってくるとクラウドが後ろを向く、ポンとブーケを高くほおりなげると女性陣の後ろの方に立っていたエアリスの手元にぽふっと舞い落ちてきた。

「きゃぁ!!うれしい!!」
「あー、いいなーエアリス!!」
「セフィロス。次は貴方よ!」

 セフィロスはにやりと笑うと、クラウドのドレスの裾をぴらっと舞いあげて、瞬間的に太ももにはまっていたガーターベルトを下げた。

「おおーーー!!」

 その一瞬を捕らえたセッツァーが一瞬喜ぶが、セフィロスの睨みつけに氷らされてしまう。
 そしてガーターベルトは男共にもみくちゃにされて何処かに行ってしまった。

 1時間後、二人を祝うパーティーがセブンスヘヴンで開かれていた。
 ケーキ入刀させられたり、切り取ったケーキをクラウドがセフィロスに食べさせたり、そのままセフィロスがクラウドの唇を奪ったりと、仲間うちで大騒ぎをした。

 そして一連の行事が無事終って、クラウドとセフィロスが開放されたのは、すでに日付が変わったあとだった。
 既に二人で暮らしていたマンションへと戻る道すがら、クラウドはセフィロスの横顔をちらりと覗き込んだ。
 その視線に気がついたのか、セフィロスがクラウドをちらりと振り返った。

「ん?なんだ?」
「これでよかったのかな?」
「お前は、良いと思わないのか?」
「わからないよ。でも、俺セフィロスの隣にいていいんだよね?」
「ふっ、当たり前であろう?」
「セフィ、コレからもよろしくね。」
「ああ。」

(この人のそばにいられるのであれば、まあ、いいか。)
 と、思いつつクラウドはセフィロスの肩に頭を寄せた。

 この後、新妻扱いのクラウド君は居室に入る時に、セフィロスにお姫様抱っこされて、かなり抵抗したが、天下の英雄にかなう訳なく、そのままベッドまで連れ込まれ、新婚初夜を味わいつくしたとさ。



HAPPY END