FF ニ次小説

 神羅カンパニー治安部1、強くてかっこいい人がいました。
 神羅カンパニー治安部1、可愛い子がいました。
 巡り会うべくして巡り会った二人は、いつしか引かれあい、恋に落ちました。
 ごく普通の恋人に見えるこの二人でしたが、普通とはちょっと違った所がありました。

     神羅カンパニー治安部1可愛い子は、実は男の子だったのです。


FF7 パラレル小説  「恋に堕ちたら」


 入隊してはじめてのまとまった休暇が取れた為、その日が待ち遠しいあまりに、カレンダーにいつのまにかXマークが入っていた。
 そんな様子も愛おしく思える目の前の少年を抱き寄せると、セフィロスは軽く耳元で囁く様に問いかけた。

「どうした?クラウド。そんなに休みが欲しかったのか?」
 すると耳がウィークポイントのクラウドは、ちょっと身体をよじりながらも、嫌がる事なくセフィロスの腕の中で、頬を染めながら首をぶんぶんと横に振った。
「ち、違うよ。俺、セフィロスの隣に早く立ちたいんだ。だから…あの。お願いがあるんだけど。」
「ん?何だ、なんでも言って見ろ。」

 一緒に過ごしはじめてすでに2ヶ月が経過していたが、目の前の恋人はセフィロスに対してお強請りなどしては来なかった。
 はじめて”お願い”されてセフィロスは内心とても嬉しかったのであった。
 それがどんな願いであろうとも、必ず叶えてやるとまで思っていたのだが、クラウドの願いは至極簡単な事だった。

「セフィロスの剣が見たいんだ。」
「お前に何度か剣を教えたが、あれでは不満だったのか?」
「そうじゃなくて、ミッドガルズオルム相手に腕試ししに行ったでしょ?その時セフィロスだったらどう闘うのかな?って思ったんだ。」
「クックック。そうか、見たかったのか。よし、では休みの時にグラスランドへ行くか。」
「本当?!うれしい!!」
 クラウドは喜びのあまり思わずセフィロスに抱きついてしまいました。
 セフィロスはその程度の事で抱き付かれるとは思っていなかったので、思わずにんまりしてしまったが、流石に顔には出せません。
 しかしちゃっかりと自分の楽しみな事の約束を取りつけようともくろみます。

「その日は午後の出発でいいかな?午前中に出掛ける支度なぞ出来ないであろう?」
「え?俺が皆やっておくけど?」
「言わねばわからぬか?では、その日の朝は立てないと思え。」
 クラウドは一瞬何を言われたのかわからなかったのですが、セフィロスの意地悪そうな顔で”立てない”という状態が何であるが想像がついた。
「ば、馬鹿ァ。」

 真っ赤な頬をちょっと膨らませて上目づかいに覗きあげる青い瞳の中に、恥じらいと一緒にほのかに見える欲情の色がセフィロスの雄の部分を激しくかきたてる。
 強い否定では無い所を見ると了承と取ってもよいとセフィロスは思った。
 軽く頬に唇を寄せながら髪をすくように頭を撫でると、クラウドも目を細めて身体をゆだねてくる。

 セフィロスにとっても、クラウドにとっても何物にも代えがたい時間であった。
 ゆったりとした時間の流れではあったが、あっという間に過ぎて行く気がする。だからこそこの時間を大事にしたい気持ちは強くなるばかりであった。

「楽しみだな。」
「……う、うん。  (#^ ^#)」

 真っ赤になりながらも紡ぎ出された言葉だけでも、休暇までの多忙な日々が過ごせるような気がした。
 しかし、その休暇が終ったらすでに遠征が決まっている。
 場所はアイシクルエリア、雪が深く防寒具をしっかりと整えないと凍え死ぬであろう。
 クラウドの防寒具を揃えてやる事も計算に入れてあった為、グラスランドエリアに行くのはほんの一日か二日になりかねない。
 セフィロスはクラウドにそのことを告げた。

「しかしだな、クラウド。今月末にアイシクルエリア遠征が決まっている。防寒具を揃えないといけないから、グラスランドには長くはいられないぞ。」
「いいんだ。俺セフィロスがあんな大きい敵と、どう戦うか見られるだけでいい。しかも俺だけのためだなんて、凄く嬉しいよ。」

 (まったく、可愛い事を言う。)
 食事が目の前に無ければその場で押し倒してしまいたいほど、セフィロスに取ってクラウドは愛おしくてしかたがなかった。

 クラウドは気がついてはいないかもしれないが、すでに第13独立小隊にやたら腕のたつニューフェイスが入ったことは、ソルジャー間でも有名であった。
 そのニューフェイスがやたら可愛い子ちゃんだという事や、英雄とまで呼ばれているセフィロスが、そのニューフェイスを隣りに立たせる事を希望している事はすでにかなり広く知られていた。

 腕が立つ事が知られるとソルジャー仲間も、いつかとなりで戦いたいと思うのであるが、トップソルジャーであるセフィロスを押しのけてまで隣に立てる男はいない。
 もちろんセフィロスの隣りを狙うソルジャーも沢山いたのではあるが、入ったばかりのニューフェイスがクラスAソルジャーを倒してしまった事実が伝わると、その男に勝たねば立つ資格は無いとばかりに、半ば諦めモードに入っていたのであった。
 クラウド自身もはっきりと”セフィロスの隣りにしか立ちたくない”と明言しているので、ソルジャーに上がった時は自分の隊の副隊長に引き抜こうと、手ぐすねを引いて待っていたクラスSソルジャー達も渋々諦めたのであった。

 (しかし、このままではたしかに、リックのいう通りクラウドを奪われる。)
 セフィロスはどうしたらこの少年を自分だけのモノと公に認めさせることができるか、次第に考えるようになってきていた。
 自分に次ぐ実力を付けさせれば何処の隊に行く事もなく、自分の隣りに立ち続けてくれるであろう。
 しかしセフィロスはこの少年に戦場にいてほしくはないとも思っていた。
 自分が過ごしてきた戦いの日々を思うと、クラウドにそんな辛い真似をさせたくは無い。
 できうれば戦士としてでは無く、自分だけの為にこの部屋で笑顔で待っていてほしいと思うようになって来ていたのであった。

 相反する自分の思いに苦笑しつつも、何がクラウドに取って良いことなのか思案していた。

 食事を終えてゆっくりとリビングでコーヒーを飲みながら最近発表された医学論文を読んでいると、隣りでカフェ・オ・レを飲んでいたクラウドの携帯がなった。

「はい、クラウドです。あ、ティモシー?え?俺の誕生日?8月の11日だけど。あ、ゴメン。遠征でアイシクルエリアに行ってる。戻り?予定は17日だけど。うん。ええ〜?!そんな事するの?天候しだいで帰還が遅れるかもしれないんだよ。今年は無理!帰って来たら電話するから、はい。わかりました、約束します。」

 携帯をたたみながらクラウドは少しふくれたような顔をしていた。
 クラウドのもう一つの顔であるモデルのクラウディアは、デビューからまだ2ヶ月しか経っていないと言うのにすでに人気モデルとなりつつあった。
 セフィロスがクラウドの顔をちらりと見てふと笑みを漏らすと、ほんのりと頬を赤く染めて先程の電話の内容を話しはじめた。

「ティモシーがさぁ、クラウディアの誕生会を開きたいって言い出すんだ。でも、その頃はアイシクルエリアに遠征なんだよね?」
「ああ、そうだな。お前の誕生日は私が祝ってやる。しかし、どうする気だ?モデルのクラウディアはそうは行かんぞ。」
「あ〜〜ん、やっぱりセフィロスの言う通りルーファウス社長と契約するんじゃなかった!」
「クックック、後悔先に立たずだな。契約を覚えているが、お前がソルジャーとしての施術をうけて体が大きく変化しない限りモデルをやると書いてあったはずだな。」
「ううう、もっと早く辞める手はないかな?」

 いつもの様にぶつぶつといいはじめたクラウドの髪をすくように頭を撫でると、セフィロスに身体を預けるようにもたれ掛かってくれる。
 そんな些細な事が嬉しく感じるセフィロスであった。

「クラウディアは一応女と思われているんだろ?ならば、その…せ…セフィロスと、け、結婚すれば……辞められないかな?

 真っ赤になりながらやっとのことで紡ぎ出された言葉に、セフィロスは一瞬びっくりした。
 そんなセフィロスの反応がクラウドに取っては”NO!”と言われたような気がして、急に黙り込んだと思ったらその青い瞳に涙を浮かべはじめた。

「ご、ゴメンね。冗談、今の事忘れて」
「クックック。誰が忘れるか。そうか、その手があったか。クラウド、お前の家族は同性婚に差別意識は無いか?」
「え?俺の家族?母さん一人だけだけど、ニブルは田舎だからどうだろう?…って、ええ?!セ、セフィロスまさか本気で?」
「ああ、本気だ。お前をどうすれば公に私のモノだと言えるか考えていたのだ。しかしだな、クラウド。問題が多少残っている。」
「問題?」
「ああ、まず一つは婚姻届をカンパニーに出すと、規定ではどちらかが部所を移動せねばならない。これは私もお前も望まない事であろう?それともう一つ、モデルのクラウディアが私と結婚しても『セフィロスの恋人』から『セフィロスの妻』となるだけで、やはり体が大きく変わらない限りモデルを辞めることはできそうも無いぞ。」

 セフィロスの提示した問題はクラウドに取っては望まない事ばかりであった。
 ちょっとむくれたままソファーの上で膝を抱えたクラウドは思わずつぶやいていた。
「いいもん!俺、筋トレに励んで身体を大きく変えてやるんだい。」

 そんな様子も可愛くてしかたがないセフィロスはクラウドの頬に唇を寄せ、キスを落しながらクラウドに言い聞かせるように話しかけた。

「取り合えずお前の母親の許可をもらわないと何も始まらんな。この休暇では無理だがアイシクルエリアから帰ったら一度あわせてくれ。」
「え?そ、それって。」
「言ったであろう?本気だと。私に二言は無いのだよ。」

 ゆるやかに微笑みながらも自分をまっすぐ見つめるアイスブルーの瞳、クラウドは嬉しくて涙をこぼしながらもセフィロスに抱きついた。