FF ニ次小説
 神羅カンパニー治安部1、強くてカッコいい人がいました。
    神羅カンパニー治安部1、可愛い子がいました。

 巡り会うべくして巡り会った二人はいつしか引かれあい、恋に落ち結婚しちゃいました。
 ごく普通の夫婦にみえるこの二人ですが、実は普通とはちょっと違った所がありました。

    神羅カンパニー治安部1、可愛い子は実は男の子だったのです。


FF7 パラレル小説 「Stand by me」


 クラウドはカームでの騒動の原因を、腕ずくでクラスSソルジャーであるランスロットから聞き出す事に成功した。
 一般兵にノックアウトされた上に喉元にソードを突きつけられて、ギブアップしたランスロットから聞かされたことに、クラウドは呆れた。

「はぁ?!隊長殿と自分の挙式に出たかったから…ですか?」
「そ、それにしても…。姫はずいぶん強くなりましたね。間もなく始まる武闘大会でソルジャーを何人抜くか、楽しみです。」
 下級兵に打ち負かされて、座り込みながら話しているのではあるがどこか嬉しげであった。
 クラウドがセフィロスにそのことを報告すると苦々しげな顔をした。その理由がわからなくてクラウドはセフィロスに問いかけた。

「隊長殿、なぜそんなに嫌そうな顔をされるのですか?」
「ランスロットは後半年以内に治安部の統括にしてやるつもりでいるのだ。統括と言う職務には隊にミッションを言い渡す仕事がある、その時に呼び出されるのは通常、部隊長ではなく副隊長なのだよ。おまえがクラスC以上になれば、ランスはおまえを呼びつけることができるのだ。」
「それが…、どうして?」
「おまえはあいつを知っているから笑顔を向けるであろうが!!その笑みを独り占め出来ると、ほくそ笑んでいるのであろう。」

 クラウドはそんな事絶対にないだろうと思うが、独占欲の強いセフィロスに取って、目の前の少年の笑顔を独り占め出来る男は自分一人で十分だと思っているのであった。
 しかしクラウドはそんな事など考えてもいなかったのであった。
「それだけであれほど嬉しがると言うのも考えられませんが?」
「ともかく、おまえは私の妻なのだから誰にも気を許すのではないぞ。」
 言われているクラウドは全く実感がなかった。

 自分にはセフィロスしかいない、セフィロスしか考えられない、その思いを知っているくせに、目の前の愛しい人は自分みたいな誰にも認められる事がなかった少年をやたら他の人間の視線にさらすのを嫌っている。

「もう、俺の事カンパニーで”妻”って呼ばないで下さい。」
 拗ねて尖った唇に思わず口づけてセフィロスは”しまった!”と思った。
 これもクラウドから常々言われていたのだ、「出社中にキスしないでね!」って。

 クラウドが冷たい目でセフィロスを睨みつけていた。

 足跡を荒げて第13独立小隊の執務室を飛び出したクラウドは、武闘場へと歩いていく。今日はいつも訓練している一般兵用の武闘場ではなく、ソルジャー専用の武闘場に入った。

「第13独立小隊所属クラウド・ストライフ、入ります!!」

 所属と名前を名乗り姿勢を正して敬礼する、それが武闘場に入る正式な入り方である。マナーを守っているが、一つだけ普通と違う所があった。
 一般兵であるクラウドは普通ならソルジャー専用の武闘場に入ることはできない。
 しかし第13独立小隊所属と言う肩書きは、下手な下級ソルジャーより強いという証であるうえに、隊の先輩であるトップ兵達に訓練を付けてもらおうとすると、必然的にここに来なければいけない。
 中で訓練しているソルジャー達が入ってきたクラウドに注目した。
 日に映えるハニーブロンドにこぼれんばかりの蒼い瞳、やや幼さを残すベビーフェイスのクラウドは、どうしてもその場には相応しくはなかった。
 入り口に立っているクラウドに気が付いたリックが声をかけた。
「よぉ、姫。どうしたんだよ?」
「いえ、特に。間もなく無差別の武闘大会なので鍛えてほしくて…。」
「おれかぁ?!俺一人じゃ無理。おい、キース!頼めるか?」

 リックの一言に白のロングコートを着たクラスAソルジャーが近寄ってきた。
 一般兵最強の男と呼ばれているリックの目の前の美少年をじろじろと眺めて言った
「へぇ。この子にあのゴードンやパーシー、ランディがやられたのかよ?」

 やはり知っていてクラウドを眺め回しているようであった。
 クラウドの瞳がすうっとキツい物になった。
「サー・ゴードンもサー・パーシーも、サー・ランディも凄い腕をお持ちでした。」
「ふふん、クラスAbRをなめるとは大したガキだな。いいよ、扱いてやる。」

 キースがするりとクリスタルソードを掲げると、クラウドもミスリルソードを抜く、阿うんの呼吸で勝負が始まった。
 激しい剣の打ち合いが始まり、そのすさまじさにリックがびっくりする、周りのソルジャー達も白のロングコートのクラスAと青い制服の一般兵が、ほぼ対等に…いや、どちらかと言うと一般兵の方が有利に試合を進めているのを眺めていた。

「へぇ……、コレは凄いや。」
 思わず感嘆の言葉を漏らしたリックのそばに、その場に居たクラスAソルジャーが近寄ってきた。

「リック、あいつ何者だ?」
「キースがあそこまで押しやられているのを久しぶりに見たな。」
「ウチのお姫様。」
 リックの一言でそれが誰だかわかってしまうほどクラウドは既に有名だった。
「噂のクラウド・ストライフか?なるほど。」
「噂以上じゃないか。」
「まもなくそっちに行くと思うから、先に言っておく。姫は俺達のモノだから、手を出したらどうなるかわかっているな?」

 2人のクラスAソルジャーたちは、目の前の男の実力を嫌と言うほど知っている。なにしろクラスAソルジャーに上がれるような男は過去に一度は第13独立小隊に所属している。その時に目の前の男に嫌ってほど扱かれているのである。
 そのおかげで副隊長クラスにまで、はい上がってこられたと思っていた。

 クラスAソルジャーがため息交じりに仲間に話しかけた。
「それほどまでの男か?」
「そうなんだろう?なあパーシー。」
「ああ、うちの隊長殿なんて、あれほどキングがそばに立たせたいとおっしゃっているのに、いまだにあの姫君に恋い焦がれているのか羨ましそうな顔をするぜ。」

 リックはパーシーの一言を聞いて怒りをあらわにした。
「なんだと?!サー・ガーレスが?!ゆるさん!!」
 目の前の男の言動にクラスAソルジャー達が苦笑を漏らした時、キースの声が聞こえた。

「ま…まいった。強いなぁ、おまえ。」
 キースの首元にソードを突きつけて、掛けられた言葉に婉然とした笑みを浮かべ、クラウドは息も乱さずに立っていた。
「これでも特務隊の左翼切り込みを担当していますからね。」
 ブライアンとエドワードがこの時初めてリックが自分の隊の一般兵の戦いを見ていなかった事に気が付いて、びっくりしてたずねた。

「リック、おまえ…。」
「わかっていたのか?」
「ん?ああ、姫ならクラスSを倒すからね。クラスAなら余裕だよ。」
 部隊長クラスを倒すことができる一般兵.そのことを目の前の男が受け入れている所をみると,事実であるのは確かであろう。
 3人のクラスAソルジャー達はそれだけであの少年兵の実力を侮っていた事を知らされた。
 ゆるやかに微笑むとリックに話しかけた。
「待っていると伝えてくれ。」
「そうだな、出来うればペアになって見たい物だが?」
「俺も希望!!あいつとペアを組むと楽が出来そうだ!!」
 3人のクラスAソルジャー達の言葉にリックが雰囲気を変えた。

「クックック…、俺が簡単に姫をお前らに託すと思ってんのか?姫とペアを組む為にはそれなりに強くなってもらわんと困るんだよ、俺とカイルのふたり掛りに勝てる奴なら許可してやる。」
「俺、パス!」
「エドワード、頼んだ。」
「はぁ?!なんだそれ!俺は輸送隊の副隊長だぞ。実動隊の副隊長のパーシーが辞退してどうする?」

 言い合いをしているクラスAソルジャー達の元にキースとクラウドが歩いてきた。
 キースがリック相手に何かやっている仲間に声をかけた。
「何やってんだよ。」
「リックが苛めるんだ。」
「姫君のお相手になるにはリックとカイルの二人掛りに勝たねばならんのだと。」
「うひゃあ!俺、辞退する。」
「お相手って…リックさん、言い方がへんです。」
「へんじゃない.クラス1st以上になると,二人一組でミッドガル市内の巡回をするんだ。そのパートナーには同じぐらいの実力を持つ者が選ばれるんだが…、おまえの相手に成る奴は最低でも俺達に一度は勝ってもらわんとな。」

 クラウドが拗ねたような顔をしているのでリックがクラウドの頭をわしゃわしゃと撫でる、そこへ黒髪のソルジャーが姿を現わした。

「よ〜ぁ、皆さんお揃いで。あん?何やってんのクラウド。あ、もうクラスAで組むペアの面接か?」
「馬鹿猿が。」
「まだ上がってきてないのだが?」
「クラウド、おまえこんな奴を教育する側に回るんだぞ。悪いことは言わん、適当に手を抜いて1stあたりで止めておけ。」
「あ、でも…隊長殿からクラスC以上へのランクアップを命令されています。」
「あ、だめだめ。こいつはセフィロスの言う事しか聞かないから。」

 ザックスがにっかりと笑ってクラウドの頭をなで回している。
 ひとしきり頭をなで回したクラウドの肩をぽんとたたいて、3人のクラスAの中に立たせると、眺め回すように4人をじろじろと見はじめた。

「ん〜〜〜、サー・ブライアンは魔法部隊の副隊長だからクラウドは任せられん。やっぱサー・キースだな。サー・エドワードと一緒にいるといい男過ぎてクラウドが可愛い女の子にしか見えなくなる。」
「俺は女じゃない!!」

 ザックスのボディに足蹴リを入れてすぐに回し蹴りをし掛けると、あっという間にザックスがダウンした。
 クラスAソルジャー達が呆れたような顔をした。
「あり…か?」
「事実見ただろう?」
「あり!何しろうちの隊の隊長殿もノックアウト経験者。」
「サー・ガーレスが?おっそろし〜〜〜」
 蹴り2発で1stソルジャーのトップであるザックスをのしたクラウドを、その場に居たソルジャー達はびっくりしたような顔で見つめていた。

「クラスSレベルの剣技にクラスA並の腕っぷし、魔力の伸びしろはピカイチ。あとは射撃と戦略か。さて、いったいどこまで上がれるか楽しみだな。」

 リックはまるで自慢するかのようにつぶやいていた。