セフィロスもワザつかまったふりをしていた。
そのままクラウドが先程進入した部屋へと連れ込まれると部屋に鍵をかけられた音が響く。
オルドマンが冷淡な笑みを浮かべていた。
「生かしておいたら俺達が危ない、悪いけど…死んでもらう。」
クラウドののど元にナイフが当てられていたが、冷静な目をしていた。
思いっきりピンヒールでナイフを持っている男の足元を踏みつけると、そのショックで男がナイフを落す。すかさずクラウドのエルボーが男の腹めがけてつきささった。
クラウドが動き出すとほぼ同時にセフィロスが自分を後ろ手に締めつけていた男の腕を握りかえし、身体を低くすると、後ろに居た男がひらりと空中で一回転して床にたたきつけられた。
オルドマンが苦々しげな顔でテーブルの下にもぐりこもうとすると、気が付いたクラウドにテーブルと共に蹴り飛ばされる。
そのテーブルが先程クラウドが仕掛けたプラスチック爆弾に接触した。
閃光とともに激しい爆発音が静かな街に響き渡った。
「突入!!」
近くに待機していた第13独立小隊の隊員が、爆発で出来たすき間からなだれ込むように突入した。
部屋の中は混乱しているがセフィロスはクラウドを抱きかかえながらも悠然と片手で戦っていた。
クラウドもセフィロスの力を利用してピンヒールで近寄ってきた敵を蹴り飛ばしている。
「うわ急所蹴り!痛そ〜〜〜う!!」
「あれじゃあモデルじゃねえよ……(T▽T)」
「ばれたらまずい!!全員を拿捕せよ!!」
リックの号令で部屋中に隊員が散らばると、一人も逃さないように確保して行く。
爆発音を聞いて駆け付けて来た地域の警察官が内情を知ってびっくりした顔をしていた。
「サ、サー・セフィロス 一体何があったんですか?」
「私を生かしておいたら自分の命に係るそうだ。そうだな、そのテーブルの下に拳銃を隠し持っているだけで、立派な銃刀法違反だ。おまけにクラウディアに剣をむけた。殺人未遂にもなるな。さて、何年刑務所に入る事になるかな?」
セフィロスがクラウドにむけて手を伸ばすと、美少女が抱きつき、泣きはじめた。それは先程まで激しい戦闘に自ら参加していたとは思えないほどであった。
ゆるやかな笑みを浮かべてクラウドの頭を優しく撫でると、再び厳しい瞳に戻り警官に話しかけた。
「ああ、一つだけ約束してほしい事がある。このことはまだニュースに乗せるな。その香炉がもし麻薬をかぐ為のモノならそのバイヤーを一網打尽にせねばならん。とりあえずあと3時間以内にミッドガル空港に捜査員を配備するよう要請してくれ。」
「わ、わかりました!」
警察官はあわてて応援を呼ぶと同時に世界警察機構に連絡を入れた。
あらかじめザックスの持っていた顔写真を携帯で写しとっていた為、空港に現れたバイヤーを逮捕出来現れたザックスから証拠物件をあずかった。
翌日の早朝、爆発騒ぎのニュースを聞いたのか、Mrアンダーソンがあわててホテルへ連絡をよこした。
それはあくまでもセフィロスとクラウディアの身を案じての事だったので丁重に返事をしておいた。
それでも心配したのか10時頃に婦人がホテルに面会に現れたので、スタッフに扮していたユーリがあわててバックヤードからジョニーに連絡を入れる。
ジョニーが苦笑してスタッフの帽子を脱いでバックヤードから現れた。
「エリカおばさん、お元気そうで何よりです。」
「ジョ、ジョニー。あなた、どうして?!」
「父から聞いていませんか?任務です。」
その一言で婦人はすべての事を理解したのか心臓の上に手を置き、心を静めるような様子でしばらく黙ってうつむいていた。
そして次に顔を上げた時は凛とした笑顔だった。
「そう、サーには仲間がいらっしゃったのね。ならばクラウディア様もご無事なのね。」
「はい、クラウディア様に置かれましては昨夜の動揺が少し残っていますが、怪我もなくお元気です。お話しされますか?」
「お元気ならば何よりです。でも一つだけ伝えてほしいの。お願いだからあんな可愛いお嬢さんを危険な任務に巻き込まないでって。」
「ええ、確かに伝えます。では、これで我々も撤収します。」
丁寧なおじぎをしてジョニーが婦人を見送った。
婦人が視界から消えるとジョニーはあわててバックヤードに戻り腹を抱えて笑い出した。大声で笑うジョニーにユーリとブロウディーが近寄って話しかけた。
「どうした?ジョニー」
「こ、コレが笑わずにいられるかよ!!いくら実態を知らないからって、あの姫を危険な任務に撒き込むなってさ!あれは自分から首を突っ込んでいる!!」
「姫がよほど猫をかぶっていたのか、その人が純粋な人なのか?」
「両方だよ、この街は治安がいいから純朴な人が多いんだ。さあ、撤収しようか」
「ああ、帰ろう。」
特務隊の隊員達はそれぞれ撤収を始めた。
翌日、ミッドガルに戻ったセフィロス達はカンパニーで報告書を書いていた。
一足先に戻っていたザックスがクラウドに近寄って話しかける。
「なあ、クラウド。エアリスがいつ会ってくれるかって聞いてくるんだけど。」
「あ、うん。そうだね、明後日の夕方ってどうかな?」
「ああ、聞いておくよ。旦那はいいのか?」
「旦那??」
「おまえの旦那!」
「あ…… (#。_。#)」
瞬間湯沸かし器か?!と、突っ込みたくなるようなクラウドの反応にザックスが苦笑する、しかし彼とてこの少年を気に入っている、他の隊になど入れたくは無い。
なんとかして守ってやろうと改めて思った。
翌日、クラウドはクラスAでの初仕事をこなした。
ミッドガルの巡回はとりあえずペアのいなかったキースと組む事になり、市街地を巡回中にカップルに間違えられてからまれた。憤慨したクラウドに絡んできた不良グループがこてんぱんに叩きのめされた。
それを聞いたクラスA仲間は帰還後執務室で大笑いしてクラウドに睨まれた。一人慰め役に回ったエドワードにクラウドが笑顔をむけたのを知ったリックが上官であるはずのソルジャーを徹底的に叩きのめした事は、その日のうちにあっというまに治安部に知れ渡った。
翌日、ザックスに住んでいるアパートメントの入り方を説明すると、彼はそのアパートメントを知っていた。
「あの超高級アパートメントに住んでいたのか、セフィロスらしいよ。エントランスで部屋番号を押せば呼び出せるんだろ?」
「うん、料理作って待ってるよ。」
明るい笑顔を残して部屋に帰って行く少年は、その容姿からいつのまにか”地獄の天使”と呼ばれはじめている。
その呼称は反抗グループから漏れ聞こえはじめ、あっという間に不良グループにまで浸透していた。
敵を見つけた時にふわりと微笑むような視線を送るクラウドは、死に神とか鬼神と呼ばれるセフィロスの隣りに立つ姿からも”地獄の天使”という呼称があまりにも似合っていた。
しかしキッチンをエプロン姿でぱたぱた行き交う姿はとてもでは無いが、一人の戦士にはみえなかった。
お鍋のシチューを味見しながら手際よく鮭をソテーしている。
料理がほぼ出来上がった頃玄関のインターフォンが鳴った。
ザックスたちがエントランスに来た様であった。
モニターで確認すると二人の笑顔が見えるのでキーを開けて招き入れる。
エアリスはクラウドがこんな高級アパートメントに住んでいるとは思ってもいなかったので、首をかしげてザックスに聞いた。
「ねえ、ザックス。クラウド君ってお金持ちの家の息子さんなの?」
「い〜や、あいつはニブルヘイムから一人でこっちに来ている。このアパートメントは一緒に住んでいるあいつの恋人の持ち物なんだ。もうアツアツでさー、仲がいいんだぜ。」
「ふ〜ん、お金持ちの恋人なんだ」
そう言うエアリスの左腕にはザックスが先日半額でゲットしたブレスレットが揺れていた。
エレベーターを降りると目の前の扉のチャイムを鳴らす。
クラウドが玄関まで迎えに来てくれた様で見覚えのある笑顔にエアリスが安堵した。
招き入れられてザックスが部屋をじろじろと眺めている。
しばらくすると再び玄関のチャイムが鳴った。
「あ、流石に早いや。」
「今日は早く帰ってくるようにって言ってあったのか?」
「うん、だって…見ればすぐ、でしょ?」
二人の会話が全くわからないのでエアリスが首をかしげていると、玄関が開いて銀髪の美丈夫が入ってきた。
「え?!サ…サー・セフィロス?!」
エアリスが目を見開いている。
クラウドが済まなさそうな顔でポツポツと話しはじめた。
「あ、あのさ、エアリス。クラウディアって、実は俺なんだ。」
クラウドの説明はエアリスに取って信じられないような物であったが、心のどこかで”もしかしたら?”と思っていた事でもあった。
「そうだったんだ、もう結婚しているんだ。あ、もしかして私だけが知っているの?」
「一般人ではエアリスだけ。だってトモダチだもん。」
「うれしい!!じゃあ私はクラウド君ともクラウディアとも友達なんだ!!」
エアリスの言葉に思い切って話してよかったとクラウドは思った。
テーブルに座り食事を始めると食卓に笑顔があふれる、とても温かい食事となった。
「な、言ったとおりだったろ?」
「ええ、とっても温かいいい家庭だわ。女の子の憧れよ〜。クラウド君がうらやましい!」
「え?そ、そうかな?」
「そうよ。素敵なだんな様と幸せな家庭を築いてるんだもん、あこがれるわ。」
クラウドがエアリスの言葉に頬を赤く染めて照れたように微笑む、そのとなりにはセフィロスが優しく包むように微笑んでいた。
二人が笑顔でかえっていく後姿を見送りながら、クラウドはセフィロスに肩を抱かれながらつぶやいていた。
「素敵なだんな様と幸せな家庭を築いている…か。」
「そう思うか?」
「もちろん、セフィは?」
「当然だろ、可愛い妻と幸せな家庭を持ってると思っている。」
「そばにいて、いいんだよね?」
「ああ、そばにいてくれ。」
クラウドもセフィロスもお互いがお互いを必要としていた。
The End
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