神羅カンパニー 治安部 裏口
交代でミッドガルの警備に行く為に、クラスAソルジャー達が白いロングコートを着て集まっていた。
魔晄都市ミッドガルは現在テロの第2警備が敷かれていた。
FF7 パラレル小説 小さな願い
クラスAのトップであるブライアンが仲間を前にして立っていた。
「では、ただいまよりミッドガルの警備にあたる。総員搭乗!!」
ブライアンの号令でソルジャー達は一斉にトラックにのり込んだ。
年明けのミッドガルの人ごみは、テロリストのもってこいのターゲットである。爆弾を隠した身体で自爆する事や、車で歩行者天国に突っ込む事だとて平気でするのがテロリスト達であるのだ。万が一の事があっては大変と警戒するのも理解出来よう。
クラウド達を乗せたトラックはすぐにミッドガルへと入って来た。
目の前を大きな新春セールのクラウディアのポスターが張ってあるビルが行きすぎると、クラウドは自分の今の姿と目の前を通り過ぎるクラウディアである自分のポスターを見比べた。
ふと、隣りに立っているランディがクラウドにたずねた。
「クラウド、おまえはまだサー・セフィロスに彼女とあわせてもらった事ないのか?」
「まだだよ、隊長は彼女をそれは大切にされてみえるからダメなんだ。ザックスでも恋人のおかげで会えたらしいし。」
「一度すれ違ったけど凄い美人だったもんな。おまえが髪の伸ばしている理由って上官命令ってマジ?」
クラウドが髪を伸ばしているのはクラウディアの変装する時のためではなく、ただ単にセフィロスと同じように長い髪でいたかっただけだったのだが、10月のハロウィン・パーティーのおかげでクラウディアに似ているといわれ、クラスAソルジャー達の前でセフィロスに”身代わりにする”と宣言されていたため勘違いされているらしい。
もっともクラウドに取ってセフィロスとの関係を誤魔化す為の言い訳になるものはすべて利用させてもらっているので、仲間の勘違いすら歓迎出来る物であった。
「マジ。でもそんなに似てるかな?」
横で聞いていたスティーブがクラウドの答えにいきなり反応した。
「うわ!!やめてくれー!!似ているのは認めるが、俺達の妖精がかわいそうだ。」
「地獄の天使と呼ばれてるお前が清純な妖精の替え玉?冗談もホドホドにしろよ。」
「じゃ、それを隊長に言ってよ。あの人クラウディアさんに関してはかなり暴走するから、言っても無駄だと思うけど。」
「暴走?!あのサー・セフィロスが?」
いつも冷静で治安部を総べる男としてしか見ていないのか、ブライアンがびっくりするので、クラウドがごまかす様な嘘をついた。
「彼女のマネージャーと顔合わせした事があるんだけど、『似てない』の連発でさ、俺が恥ずかしかったぐらいだよ。」
「でも、たしかにあんなか弱そうなモデルを、恋人と宣言しているから、彼女を狙われたら命取りになりかねんよな。」
「それを聞いた隊長なら、あのクラウディアさんに剣を教えかねないぜ。」
「羨ましい様な…そうでない様な…」
「文字どおりサー・セフィロスに手取り足取りなんだろう、俺より強くなるかもよ。」
「それじゃお前が替え玉をやる意味が無いぜ!」
ランディの一言でトラックの中が大爆笑に包まれた。
ミッドガルの警戒にあたって二人一組になった。クラウドのパートナーはキースからエドワードに入れ代わっていた。
クラウドがクラスAに編入して以来、その可愛らしい顔が見たいがためについつい苛めてしまうクラスA仲間から、持ち前の優しさでかばっているうちに、エドワードは特務隊”影の隊長”と呼ばれる実力者のリックに睨まれて、何か騒動が起こるたびに扱かれていた為、あっという間に戦い方が特務隊影の隊長に似てきていたのであった。
常に一緒に戦っている男と戦い方が似ているというのは、何かあった時に自分が戦いやすい。その上他人を苛める様な事は一切言わないので、クラウドからのペア指名が来るのは目に見えて明らかだったためか、エドワードもすんなりと引き受けたのであった。
「いくぜ、クラウド。」
「ああ。」
ブライアンがクラスAソルジャーの前で無言でミッション開始の合図を送ると、白いロングコート姿のソルジャー達が一斉に散らばる、すれ違う人々は気忙しく店の前を行き交っていた。
「裏通りにいってみようか?」
「正面切ってスラムにいくとか?」
「エドワード、ちょっと喜んでない?」
「誰が、さっさと終わらせて彼女とデートしたいの!」
「ああ、そう言う事。なら付き合うよ。」
そう言うと二人は表通りから一筋奥にある裏通りへと入って行った。
エドワードがまわりを見渡しながらクラウドに聞いた。
「なあ、クラウド。なんで”姫”なんて呼ばれてるんだ?」
「最初のミッションがコンドルフォートの南の遺跡の調査で…その時バハムートを見つけたんだけど、召喚して倒れてサー・セフィロスが抱えて外につれてきてくれたんだ。それを見たリックが『あ、お姫様抱っこじゃん』で、付いた呼称が”姫”って訳。」
「ハハハハハ…、なるほどね。俺はクラスSの方からついたと思っていた。」
「え?どうして?」
「おまえがキングと呼ばれるサー・セフィロスの隣りに立つ事が許された男だからな。キングの隣りならクイーンかプリンセスだろ?」
「それはジョニーに言われた。でも、なんで女の呼称なんだよ?」
「いくら実力があっても、お前が女顔で可愛いだからだろう?」
「ぶう!!」
クラウドはいつも言われていることとはいえ、エドワードに言われた一言に顔を膨らませた。
「それよりも、この白のロングってどうして特攻服って言われてるの?」
クラウドが自分の白いロングコートを指差して尋ねると、エドワードは大声で笑いながら答えた。
「ハハハハ!!そりゃ決まってる。このロングの裏地に”喧嘩上等”とか刺繍して、釘バットとか持ってみろ。どうしたって暴走族の特攻服だろ?」
「あ、なるほど!!」
「おまえはサイズがあわなくて、ぶかぶかしてるから、特攻服と言うよりも白のワンピースって感じだけどな。」
エドワードがクラウドの頭をわしゃわしゃとなでつけた時、路地のそこかしこから数人の男が出てきた。男たちの手にはナイフやピストルが握られていた。
「へーぇ、見せつけてくれちゃって。お前みたいな優男には、こんな別嬪さんはもったいないな。」
男共が二人を囲むがエドワードもクラウドも顔が笑っていた。
「別嬪さんだってさ。」
「優男だってさ。」
全く恐がらない二人に男共が苛つきはじめ、ナイフを持った男がクラウドに組みついた。
「何笑ってやがる?!お前ら恐くないのか?」
「はぁ…この服見て言えるセリフではないですね。」
「エディ、助けて−−!とか言えばよかったのかな?」
あくまでも落ちついている二人組に、ナイフを持つ男がクラウドの喉を引き裂こうとした時、それよりも早くクラウドが動いた。首もとがゆるんだ隙に身体をひねり、ナイフを持った手を思いっきりひねり上げると、あっさりと男がナイフを落す。
「う〜〜ん、お見事!!さっすが”姫!”」
そう言いながらエドワードが拳銃を持った男の手を拳銃ごとひねる、ひねり方で拳銃は撃てなくなってしまった。
「それでは、覚えたてのワザでもみせようか?」
「何覚えたんだ?」
クラウドがエドワードの向こうに居る男に向かって柔らかに微笑んだ。
「必殺、クラウディア・スマイル」
「わお!!似てるぜーー!!」
(あたりまえだ!!俺は本人だっていうの!!)
天使の笑顔に男共が見惚れていた所へ、おもいっきりクラウドが回し蹴りを入れた。エドワードも飛びかかってきた男に右ストレートを炸裂させてながら話し続けていた。
「その笑顔で回し蹴りかよ、おっそろしい奴!!」
「ハン!!何でも武器にするのが俺の信条なんだよ!!」
口でなんだかんだ言いあいながら、不良グループをあっという間に叩きのめし、軽く服の汚れをはたくと怖じ気づいている連中相手にクラウドがすごんでみせる。
「悪いけど俺、男。こうみえても神羅カンパニーのソルジャー候補生なんだぜ。つぎに間違って見ろ、命は無いぜ。」
エドワードがクラウドの啖呵にけらけらと笑っていた。
「その笑顔で恐い事言うなよ、だからお前は地獄の天使って呼ばれるんだぜ。」
不良グループがクラウドの呼称を聞いて、初めてその容姿をしっかりと見た。
噂されている通り肩までかかるハニーブロンドに空の青を写したような碧眼、白のロングコートは神羅カンパニークラスAソルジャーの証である。
不良グループがあわてて後ずさりしながらその場を逃げるように去って行った。
クラウドはエドワードに向かって溜め息をついた。
「あのさー、エディ。俺さっきあれでもすごんでみせたつもり。」
「ククククク、いやー、可愛かったよ。男じゃなかったら抱きしめてたぜ。」
クラウドが思わず左ストレートを繰り出すが、エドワードがそれを手のひらで受け止める。
「悪い悪い、特務隊の副隊長殿相手に喧嘩して勝てるとは思いませんよ。おれも一年ぐらい所属していたけど、あの隊はハードな仕事ばかりだからな。もっとも隊長殿がサー・セフィロスだから仕方がないけどな。」
「クラスAに上がってこられるようなソルジャーは全員何らかの形で所属していたんだっけ?」
「ああ、クラスAソルジャーは全員が特務隊卒業者だよ。ブライアンは1年10ヶ月、パーシーは1年半、他はだいたい1年ほどいたかな?ソルジャーとなってから所属したか一般兵の時に所属していたかの違いこそあるけどね。」
「ふ〜ん、俺ソルジャー試験が受けられるようになるまで後1年以上ある。受かっても特務隊から動く気は無いから更新しそうだな。」
「特務隊所属年数の最長はリックの5年だけど、おまえはすでに副隊長だから移動はしなくてもよさそうだ。ザックスがもうちょい真面目に訓練していれば上までこれるけどな。」
ザックスの実践主義はどうやらクラスAでも有名らしい、おまけに書類とか溜めまくっているため、なかなかランクアップしてこない。
「俺、ずいぶんザックスの書類助けてやっていたんだけど、今どうしているんだろ?」
「ヒーヒー言ってると思うぜ、あいつ事務能力あんまり無いからな。」
エドワードとクラウドは声をあげて笑っていた
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