FF ニ次小説

 半年に一度の資格見直しのための無差別武闘会が開かれることとなった。
 あらかじめクラスごとに順位が決まっていた。クラスの低い方から順に勝ち抜きを始めるが、実力が拮抗しているのか練習不足なのか上のクラスに挑戦する者はなかなか現れなかった。

 クラス1stのトップ、ザックスが呼ばれた。
 ザックスは一気にクラスC、クラスBをゴボウ抜きにするとクラスAに対峙した。

 簡単にクラスAを10人抜いた所で、クラウドと対峙したザックスがびっくりする。
「冗談!!おまえクラスAトップじゃないのか?!」
「ここ一番では勝たせてもらえないみたいでね、思いっきり弱点を突かれた。」
 そう言うとクラウドはあっという間にザックスを蹴り倒した。なんとか踏みとどまるとザックスが殴りかかった。
 クラウドが殴りかかられた腕をとって、思いっきり身体を沈めると、軽々とザックスの身体が宙を切り床にたたきつけられる。
「まったく、この手で何度やられているんだよ。学習能力無いの?」
「うっせ〜〜!!!」
 ザックスはもう一度身体を起して立ち上がり、今度は足蹴リを繰り出すが、クラウドに軽くかわされて軸足を払われ見事にひっくり返ったところで、試合を取り仕切っていたランスロットが片手を挙げた。
「そこまで!!ザックス、力だけはクラスAだな。」
「力…だけ??」
「ソルジャーの昇格には他の試験もあるのを忘れてはいないかね?」
「あ……(^^;;」

 ランスロットに言われてザックスが青い顔をした。
 剣技、戦術、魔力、全ての点で合格しないと、ソルジャーのクラスアップは出来ない事を思い出したのであろう。その様子を感じ取ってランスロットがにやりと笑った。
「剣技の試験は明日、パーシヴァルが担当する。魔力はリー頼めるかな?戦術はキング、お願い出来ますか?」
「よかろう。」
「ええ、猪突猛進男の魔力とやらをしかと拝見させてもらいますよ。」
 クラスS相手に自分の力を見せて、どのクラスに匹敵するか見てもらい、その後円卓会議でクラスが決まるのが正式なソルジャーのクラスアップだった。
「あ…ハハハハ……はぁ〜〜〜〜。」
 ザックスはがっくりと肩を落した。

 剣技ならまだしも戦術など苦手も苦手、当って砕けろがモットーのザックスなのである。ザックスのがっかりした様子を横目でながめクラウドは思わず溜め息をついていた。

 それから三日後、特務隊の執務室に渋い顔をしたサー・ランスロットと、にこにこ顔のザックスが現れた。

 隊員達があっけにとられたような顔をしている中、ランスロットがクラウドに一礼して話しかけた。

「姫、お手数ですがもうすこしこいつの面倒を見てやってください。力、剣技ともクラスAの力を持っているのですが…。」
「魔力と戦術ですか?」
「はい、力押しばかりやっているようなので魔力はクラスB、戦術に置いては考える事もしなかったそうです。」
「隊長は頭を抱えていませんでしたか?」
「はい、『あの馬鹿猿が!』と珍しく吐き捨てていらっしゃいました。我々が下した判断ですが、魔力と戦術に置いては特務隊以上に伸ばしてくれる隊はありません、よってザックスの移動は無し、クラスも1stのままです。」

 クラウドが溜め息をつくとザックスがにかっと笑った。ザックスのまわりを隊員達が取り囲んだ。

「おまえ、やっぱり馬鹿ザルだったんだな。」
「どの面下げて戻ってきやがった!!」
「この頭って脳味噌入っているのか?!」
「追い出して戻ってくる馬鹿などお前ぐらいだ!!」

 そこへセフィロスが入ってきた。クラウドが敬礼して迎えると隊員達に小突かれているザックスに目をやる。
「クラウド、あいつに知恵をつけられそうか?」
「私の仕事になりますか?」
「ああ、お前の言う事ならあいつは聞くからな。」
 クラウドはザックスを振り返ると強い姿勢で言い放った。
「ザックス!!特務隊総員で必ず追い出してやる、それまで死ぬなよ。」

 ザックスはセフィロスと隣に立つクラウドに振り返っていった。
「大丈夫だよん!!俺にはエアリスって言う女神が付いているんだ。だ〜〜れが死んだりするもんか!!絶対生き残ってやる!!」
 そう言うと右手親指を立てて合図をした。そんなザックスを見てセフィロスは腕を組んだまま”氷の微笑み”を浮かべ、クラウドはまっすぐザックスに困ったような視線を投げかけていた。

 その日の夜。
 八番街のエアリスの家で夕食をご馳走になっていたザックスは、エアリスの父親であるガスト博士に話し掛けられていた。

「そういえば、そろそろ昇格試験の時期では無かったかね?」
「俺、魔力がイマイチ少ない上に戦術に弱いから上に上がれませんでした。」
「じゃあ、クラウド君のところにまだいるのね?嬉しい!!」
「エアリス…嬉しいって。セフィロスの隊は最前戦担当なんだぞ。」
「それでザックスが生き生きしていられるならいいんじゃないかな?セフィロスもクラウド君もザックスを見捨てるような人じゃないと思うの。」

 ガスト博士はセフィロスの過去を知っているので、エアリスの言っている事が半ば信じられなかった。
 そんな博士を見て妻のイファルナがゆるやかな笑みを浮かべて話しかけた。
「あなた。あなたの知っているセフィロスはもう過去の人なのよ。今は素敵な伴侶を得て生きるため、帰るべき場所に帰れる人になったと思うわ。」
「そうだったな。では、ザックス君も生きるために、帰るべき場所に戻るために…、死ぬなよ。」
「はい!」

 エアリスはザックスの生き生きした笑顔を見つめながら、頬を少し赤く染めていた


The End