FF ニ次小説

 3月に入ってセフィロスがガスト博士と良く会っていた。
 科学部門統括が不在のため、そのポストに付いてもらいたくて接触していたのである。ガスト博士も一度ルーファウスと会食をし前向きになっていたので、細かい事をセフィロスとルーファウスとで詰め合わせていたのであった。

     FF7 パラレル小説 第7弾  早春賦

 いつものように白いスーツを着て金髪をオールバックにしたルーファウスの顔にやっと安堵の表情がともった。
「それではガスト博士は統括に戻って下さるのですか?」
「ルーファウス様、私が戻るための条件は二つ。一つは魔晄の力を湯水のように使っている今の環境を変える事。もう一つはソルジャーの身体から魔晄の力を抜く事です、それは御理解していただいていますね?」
「わかってはいるが、それではソルジャーが使えなくなってしまうな。」
「魔晄の力はこの星の生命の源です。その力を使い過ぎるといつか枯れ果ててしまい、星が生命活動を停止してしまいます。」
「そうしたら人は生活出来ない?」
「はい、人も食物連鎖の中にいます。星が死んでしまったら植物が死に、動物がやがて死んでしまいます。」

 ルーファウスはガスト博士の言葉にうなずいたが、もう一つの条件を口に出した。
「それとソルジャーの身体から魔晄の力を抜くのとどう関係有るのです?」
「魔晄の力を使わないようにすれば反抗勢力は居なくなります。あとはモンスターだけですが、ソルジャーはもう必要ないでしょう。精神力が強ければマテリアは使えます。クラウド君のようにね。」
 ルーファウスがガスト博士の言葉に納得したようであった、うなずくとガスト博士に握手を求めながら聞いた。
「魔晄の力に頼らない…か、代行エネルギーのめどは立っているのかね?」
「ええ、なんとか。時間はかかりますが次第にこの世界を変えて行きましょう。」
 そういうとガスト博士は立ち上がってルーファウスと握手をした。

 その夜。ガスト博士は妻のイファルナに神羅カンパニーの化学部門統括に戻る事を話した。
 イファルナはカンパニーが自分の夫である化学者を今までどう処遇していたのかよく知っていたので、統括に戻ると聞いてびっくりしていた。

「あなた…いったいどうして?」
「ルーファウス。ああ、若社長が私の言った条件を飲んだからだよ。魔晄の代行エネルギーを見付ける事と、ソルジャーから魔晄の力を抜く事を彼が了承したんだ。」
「まあ、ではあなたは。」
「ええ、かなり親馬鹿ですね。エアリスの涙など見たくは無いですから。」
「まあ…、でも無理だけはなさらないで下さいまし。」

 その食卓には愛娘の姿は無かったが、夫妻はいつでも娘のことを考えていた。

 その頃エアリスはセフィロスとクラウドが暮らすマンションのキッチンで、彼と一緒に料理を作っていた。
 ミルクパンの中のソースをクラウドが指でちょっとなめて見ると思わず首をかしげた。
「う〜ん、何かちょっと足りないな。」
「え?レシピ通りに作ったんだけど。」
「隠し味にちょっとしょう油を落してごらん。」
「え?ホワイトソースにしょう油?」
「ほんの一滴でいいからやってごらんよ。」

 エアリスが言われた通り一滴しょう油を落してもう一度味見をした。
「うわ…こんなにかわっちゃうの?」
「ん?まあね、具材をバターで炒めてソースをかけてナチュラルチーズを細かくしてかけて、後は180度のオーブンで10分ぐらい焼けば出来上がりだよ。」

 エアリスが言われた通りの手順をこなしていると、玄関のチャイムがなると同時に大きな声がした。
「クラウド〜〜お兄ちゃんだよ〜〜!!呼ばれてきたよん。」
 明るい声の持ち主はクラウドに取って先輩であり友達で、エアリスに取っては恋人のザックスであった。
 相変わらずの様子にエアリスとクラウドは顔を見合わせて思わず笑いあったあと、パタパタとエアリスが玄関に駆け寄ると扉を開けた。
「おかえりなさい、ザックス。」
 ほっぺにキスをして、ちょっと照れたような顔をするエアリスに、ザックスは玄関に突っ立ったままとまどっていた。
「え?あ、なんでエアリスがここに?」
「あら、いちゃいけないかしら?」
「いや〜〜〜大感激!!ムサイ男の部屋に可憐な美女が居ると思わなかったよ!」
「何今更口説いてるの?それよりも早くあがっておいでよ、ザックスのためにシーフードグラタン作っていたんだよ。」
 エアリスの後ろからクラウドが声をかけるとザックスが両手を握り締めてガッツポーズみたいな格好をした。
「え?俺のためにエアリスが?!うっく〜〜〜!!生きててよかった!!」
「ザックスったらオーバーなんだから。」
 そんなこと言いながら少し赤くなっているエアリスにクラウドは柔らかな笑顔を向けていた。
 そしてふとザックスを見ようとして顔を上げた時、愛しい人が姿を現した。

 クラウドの顔がぱっと明るくなったかと思うと急に頬を赤らめてうつむくのをエアリスが見て呆れたような声を出す。
「キャ〜〜!!クラウド君ったらまだ赤くなるの?可愛い〜〜!!」
 エアリスの声にザックスが後ろを振り返ると、いつものしかめっ面とは大違いのゆるやかな笑顔をした自分の上官セフィロスが立っていた。
「あ、セフィロス。かえってきてたん?」
「馬鹿ザルを呼んだ覚えなど無いがな。」
「ひ〜〜ん!いけずぅ〜〜、優しいくせにつれないおかた。」
 ザックスがしなを作るとエアリスとクラウドが吹き出した。
 セフィロスがザックスを小突くとクラウドの前に立つ。
 クラウドが頬を染めたままセフィロスの髪をちょっと引っ張ると、背伸びをして軽く触れるだけの口づけをした。

「おかえり…、セフィ。」
 青い瞳が少しうるんでいるクラウドをセフィロスは思わずぎゅっと抱きしめると、桜色の唇に何度も深く口づけをした。
 その様子に思わず呆れてザックスが突っ込みを入れた。
「お〜お、毎日一緒に居て今だに新婚気分かよ。」
「ふん、愛しい者を愛しいと思って何が悪い。」
「ぐずん。俺、エアリスの料理が早く食いたいんですけど。」
 ちらりとザックスに視線を送りクラウドを抱きしめたままセフィロスが部屋に入る。エアリスがオーブンからシーフードグラタンを取り出そうとしていたので横からザックスがミトンと取りだし機具を片手に手伝った。
「火傷したら大変だから俺がやるわ。」

 些細な優しさがエアリスの心の琴線にふれる。
 クラウドが見ているとはにかんだようなエアリスの笑顔がとても綺麗だった。


 テーブルをセットして久しぶりに4人で食卓を囲むとエアリスがセフィロスに何か聞きたそうにしていた。
 ちらちらと視線を送ってくるエアリスにセフィロスが問いかけた。
「何か用か?」
「あ、うん。パパがね統括に戻るって言ってるの。何があったのかな〜って。」
「ああ、その話か。ガスト博士は魔晄の代行エネルギーとソルジャーの身体を元に戻すために戻ってくれるらしい。」
 セフィロスの言葉にザックスが反応した。
「ソルジャーの身体を元に戻す?」
「魔晄を照射することで脊髄に変化が起こり体質が変化する。利点としては身体のあらゆる場所が強化されるが、マイナス要素として遺伝子の変化により子をなすことができないのだ。」
 セフィロスの言葉にエアリスがびっくりする。
「え?じゃあソルジャーと結婚しても…。」
「そうだ。子供は望めない。」
「そういえばソルジャーになる時に書いた誓約書にそんな事書いてあったな。」
「母さんもそんな事言ってたっけ。」
「まあ、お前は旦那と結婚したんだから、どのみち子供は出来ないな!」
「パパに頼んで何とかしてもらう?」

 エアリスの突飛な発言にセフィロスとクラウド、ザックスが固まった。

「むりかなぁ?どっちに似てもきっと可愛いわよ〜〜」
 三人はテーブルに突っ伏した。

 食事が終わって食器を片づけるとザックスがエアリスをおくって行った。
 二人きりでリビングに残っていると先程エアリスが言った言葉がクラウドの中にこだまする。

「こども…、かぁ。」
「ん?何だ。」
「セフィは俺が女だったら良かったのにって…、思うことある?」
「お前が女だろうと男だろうとお前であればかまわないな。もっともお前が女だったら巡りあえていたかわからないがな。」
「うん、そうだね。俺がもし女だったらソルジャーになるって思わないね。そうしたらセフィとも出あえなかったんだ。」
「ならばお前が男である事を感謝せねばならんな。」
 セフィロスはそう言うとクラウドを抱き寄せてその白い首に唇をよせた。

「ぁ……、ん……。」

 クラウドの甘い声がセフィロスの情欲の炎を燃え上がらせる。
 生成りのセーターをたくし上げるようにセフィロスの手がクラウドの服の中をまさぐる。

「やぁ…ん……こんなところで…、ぁっ……だめぇ。」

 真っ赤になりながら腕でセフィロスを押し返そうとするが、耳を甘噛みされて身体をよじる。

「まったく、お前は可愛いな。」

 にやりと笑いながらセフィロスはクラウドに口づけをすると抱き上げてベッドルームへと歩いて行った。

 翌日。クラウドがクラスAの執務室でいつものように仕事をしていると、ミッドガルの警らから帰ってきた隊員達が声をかけた。
「あ、姫。チョット知恵貸してくれない?」
「ん?何?」
「このミッションだけどさぁ。」

 クラウドを挟んでエドワードとパーシーがミッションの指令書を見ていた。
 ミッションはエドワードの中隊とパーシーの中隊の共同ミッションで、クラウドに取っては何てことのないしごく簡単なミッションだった。

「おまえら、こんなミッションの指揮が取れないのかよ。」
「お前みたいに何度も指揮権をもらっていないんでね。」
「クラウドはどうしてコレを簡単なミッションって言えるんだよ。」
「いじめられ方が違うんだよ。俺入隊してすぐに隊長付きの秘書官で、ミッションの指令書見ては意地悪な質問攻めだったんだ。」
「俺も特務隊にいたけど指揮権なんて一度か2度しかもらっていないぞ。」
 クラウド達の会話にその場にいたクラスAソルジャー達が参加しはじめた。

「エディ、おまえサー・セフィロスから指揮権もらえたの?俺もらえなかったぞ。」
「俺は5回ぐらいかな。でも隊長抜きで出兵などさせてもらえなかった。」
「俺もまったくだったな。クラウドは何度指揮権もらったんだ?」

 キースに言われてクラウドが今までのミッションを思い起こしたが、クラスAに付いてからほとんどの指揮を取っていた。

「副官になってほとんどといっていいほど指揮させられている。ゴードン達も知ってるけどアルテマウェポンが襲来した時はその場で2個師団を指揮させられたよ。」
「そういえば、あの時指揮してたな」
「ゴードンって上官がサー・ランスロットだったよな。もう一つはどこだよ?」
「バージルの所だったよな?」
「ああ、俺達第15師団と第8師団があの時はいたっけ。」
「じゃあクラスSのトップ3がクラウドの言う事を聞いたって事?」
 クラウドはブライアンの言葉にびっくりして答えた。
「え?サー・ランスロットとサー・パーシヴァルには何も言ってないけど。」
 クラスAソルジャー達はそんなクラウドの答えに思わず顔を見合わせた。