FF ニ次小説



 神羅カンパニー治安部、第13独立小隊。通称 ”特務隊”
 カンパニーが誇る英雄セフィロスの直属の部隊であり、最前線を担当する最も厳しく、最も有能な兵達が集まる部隊であった。
 その部隊をまとめるセフィロスは多忙な為、緊急時には副隊長にも派兵の権限が与えられていた。
 その特務隊副隊長はカンパニー公認で副業を持っていた。

FF7 パラレルワールド        Lady Cloudea


 今年入隊したばかりの一般兵の集団が、訓練所に行こうとぞろぞろと歩いていると、白いロングコートの裾をひるがえしながら、クラウドが足早にカンパニーの廊下を通り過ぎる。
 すれ違う下級ソルジャーが直立不動で敬礼をするが、どうみても敬礼をしているソルジャーの方が年上にしかみえないので、新米の一般兵達が首をかしげていた。
「誰だ?あのすんごい美人。」
「幹部の秘書かな?それにしてもきりっとした美人だったね。」
「俺、絶対早くソルジャーになってあの人を口説くぞ!!」
「馬鹿野郎!それは俺のセリフだ!!」

 訓練所を出たばかりのひよっこが、特務隊の副隊長を知っているはずもなく、その容姿と下級ソルジャーの態度から”幹部の秘書”と決めつけられていたようであった。

 その中の一人、17歳でカンパニーに採用され、18歳で一般兵として採用されたイェンは、歩き去る金髪碧眼の美人を羨望の眼差しで見つめていた。

 イェンは身長185cm、がっしりした体格と整った顔だちで、今まで女の子に振られたことのない人生をおくっていた。そのせいか何処の誰ともわからない通りすがりの美人を”ぜったいゲットするんだ!!”とやたらやる気になっていた。      どういうやる気だ?

 そんな事は露知らず、当の美人クラウド・ストライフは、書類を山のように抱えながらカンパニーの廊下を歩いていた。
 通りすがりの扉がいきなり開くと、中から人が飛び出して来てクラウドとぶつかると、手に持った書類が散乱した。
「あ、いやーーーー!!、書類!!!!」
「あ、すみません!ごめんなさい!!」
 イェンがあわてて書類を拾い集めはじめると、クラウドの悲鳴に数人の屈強な男共が駆け寄ってきた。イェンにはその集まった屈強な男共の顔に見覚えがあった、皆一般兵のトップクラスで、1stソルジャー以上の実力を持つ、一般兵の憧れの男共だった。

「姫、大丈夫か?」
「まったく、かわいい悲鳴あげちゃって。」
「ぞくぞくするような可愛い声だったぜ。」
「あ、ありがとうケイン、エリック、デレク。せっかく書いたのに、ふぇ〜〜ん。」
「まったく、泣くなよ 可愛い顔が台無しだぜ。」
「エリック〜〜!!コレだけの書類制作するの、どれだけかかったか知ってるでしょ?!」
「ほらほら、全部揃ったぞ。なんなら一緒について行ってやるから。」
「えっく……ひっく……本当?」
「俺達がお前に嘘ついたことあるか?ほら、行くぞ。」
「まったく、エリックお前も姫には弱いね。」
「みんな一緒だろ?」
「ああ、姫を泣かせると……だろ?」
「悲しき習性かな。」
 姫と呼ばれる美人を取り巻いて、一般兵のトップ達が守るように歩いて行った、その姿を見てイェンはさらに”姫”と呼ばれた美女に心を奪われていた。

(そういえば「姫」と呼ばれていたな、あの美人には良く似合う呼称だ……)

 イェンはその女性(w)の事が知りたくて、自分の部隊の招集があった時に小隊長にその話をして見た。
「あの、小隊長殿。ある人の事を教えていただきたいのですが……」
「ん?俺がわかるかな?」
「金髪碧眼の凄い美人で、いつも白いワンピースを着ていて、”姫”と呼ばれている、可愛らしくて、それでいてきりっとした人なんですけど。」
「金髪碧眼で白いワンピース、姫?って……まさか?!副隊長殿!!」
 小隊長は自分の上官である副隊長がそばにいたので呼んだ、呼ばれた男は白のロングコートを身にまとったクラスAソルジャー、エドワードだった。

「どうした?ディック。」
「イェンの奴”姫”の事を聞きたがっているんです。」
「姫がなにかしたのか?」
「いえ、とても綺麗で……もし恋人がいなかったらって……」
「ぷっ!!!クックックック!!おまえ姫に一目惚れでもしたのか?!やめとけ。アイツを狙っている奴らにボコボコにされるぞ。」
「え?そりゃ あれだけの美人だから……」
 必死になって笑うのをこらえながら、エドワードが自分の隊の一般兵を諭すように話しかけた。
「まあ、聞け。おまえ特務隊って知ってるか?姫はそこのアイドルでもあり、クラスSと俺達クラスAの憧れの君だ。おまえはそんな連中を相手に回す気か?」
「ええ?!あの方はそんな高嶺の花なんですか?」
「まあ、そう言う事になるかな?なあ、ディック。」
「俺達、下級ソルジャーの中でも姫に惚れているのが多数いますよ。」
「そうだろうなぁ?なにしろあの顔だちだもんな、でも姫はダメだぜ。なにしろ隣に立つ為には、英雄セフィロスを倒さなきゃいけないんだ。」
「そう言う事になりますかね、一度は隣にたちたい人だけどサー・セフィロスを向こうに回して生きていられないですよ。」
「ええ?!そ、そんな!?」
 この時点でイェンが諦めるとエドワードもディックも思っていた、サー・セフィロスを倒さないと”姫”の隣に立つ資格が無いと言うことはカンパニーの治安部でも暗黙の了解のような物であったのである。
「まあ、気持ちもわからんではないがね。この間なんてちょいと姫を抱きしめたのがバレて、あとでシメられたんだぜ。あの時はマジで死ぬかと思ったよ。」
「抱きしめて……シメられた??」
「うわ!同じクラスAだからって、副隊長殿は姫を抱きしめた事があるんですか?こんど隊長殿にチクってやる。」
「やめれー!!ただでさえリック達にギタギタにされたんだ、連隊長殿に知れたらなにされるか……」

 運がいいのか悪いのかそこにエドワードの上官である第4師団隊長のペレスがいた。話を聞いていたのか後ろから声をかけてきた。

「エドワード。貴様、我らのグィネヴィア姫を抱きしめただと?!」
「うわ!!ディック 助けてくれ!!」
「お、俺にふらないで下さい!!」
「だから姫を貴様達のところになど入れておけないんだ!!こうなったらランスロットに話して、早くクラスSに引き上げる!!」
「連隊長殿、姫はまだクラスSに行くには体力も、指揮の経験も規定に足りません!!」
 ここにいたってやっと事態が飲み込めたのかイェンが驚いたような顔で聞いた。

「あの……姫というのは あの美人はソルジャーなんですか?」
「なんだ?知らなかったのか?姫というのは特務隊の副隊長殿の通称だ。クラウド・ストライフ准尉はまだ17歳で、ソルジャー試験には間があるが、実力はクラスA。剣技と魔力だけなら余裕でクラスSの実力を持つ男だぞ。」
 上官の言葉にイェンが悲鳴のような声を上げた。
「ええええ?!あの美人が男?!」
 イェンの声に苦笑を隠せずにエドワードが答えた。
「まあ、わからんでもないな。笑った顔なんぞメッチャ可愛いぞ。」
「エディ!!お前は、私の前でそう言うことを平気で言うな!!」
「連隊長殿は姫に笑いかけられた事ないからすねちゃって……」
「プライベートでもすんごい美人の恋人がいるんだ。まあ、年上なんだが独占欲が強くてな。べた惚れ状態だよ。」
「エディ、おまえ姫のお相手が誰だか知ってるのか?」
「ええ、ロングヘアーのすこぶる美人でしょ?この間、喧嘩したとか噂が立ったけど、噂先行でなんにもなかったようで相変わらず仲がよいみたいですね。」
「どうやら本当に知っているようだな。ならば、わかっているな?」
「はい、承知しています。」
 上官達の会話をどこか遠い所で聞いていたイェンが思わず副隊長に聞いた。

「あの……ほんとうにそんな強い人が書類落して泣きべそかいて、自分の部隊の部下に守られて歩くんですか?」
「イェン。お前、何を見たのだ?」
「先日、胸まである金髪に碧眼の白いワンピースを着たすごい美人と出会い頭にぶつかって、持っていた書類が散らばったんです。可愛い声で悲鳴を上げて、一般兵のトップクラスの人たちに泣きついていました。」
「あ、そりゃ間違い無く姫だわ。ザックスから書類を提出させるのに、かなり苦労しているからな。出来て持っていく時にばらまいたら、姫でなくても泣きたくなるわ。」
 そんな話をしていると第4師団の扉がノックされると同時に声がした。

「第13独立小隊副隊長、クラウド・ストライフ 入ります!」
 扉を開けて当の美人が入ってきた。
 凛とした態度で連隊長に敬礼をしミッションの書類を手渡しながら報告をする。
「このミッションの後方支援をお願いしたくてこちらに参りました。」
 連隊長のペレスがミッションの書類の中身を確認する事もなくエドワードに手渡すとエドワードも書類を確認もせずに敬礼した。
「確かにお受けいたしました。」

 返礼をしながらクラウドがふわっと微笑み、エドワードに話し掛けた、その笑顔がまた天使のようにみえる。
「エディ、いいの?中身見ないで承知して。」
「お前が持ってきたなら、俺達以外と組む事では出来ないミッションなんだろ?ならば行くしかない、というのが俺の答えだ。」
「安心しろ。お前達の命は俺達が精一杯守る。」
「ふっ、書類ばらまいて泣いてた奴の言うセリフじゃないぜ。」
「ええ〜〜〜?!エディ、何処でそんな事…やだ〜〜!!!」
 真っ赤になって自分よりも20cm近く背の高いエドワードに食って掛かる姿は、どうみたって可愛い女の子である。しかし、先程の言葉を発した時の雰囲気は間違えなくトップソルジャーの雰囲気であった。
 イェンは目の前の少年と少女の雰囲気を持ち会わせる美人に、やはり心を奪われていた。

 ほぼ3時間後に第4師団第1小隊と第13独立小隊の隊員達が勢揃いしていた。
 中央に黒のロングコートを着た英雄セフィロスが、そのとなりに白のロングを着たクラウドが並び立っていた。
 少し離れて第4師団第一小隊長のエドワードと直属の部下ディックが並んでいた。50人以上の兵士を前にクラウドが一歩前に出ると凛とした態度で命令を下す。

「ただいまよりジュノン、ロケットポート間の物資の移動を開始する。輸送物資は武器、よって反抗勢力の襲撃に会う可能性があるが、第13独立小隊が全力で守る、各自任務を遂行する事だけを考えよ!ミッションコード01462298、スタート!総員、配置につけ!!」
 クラウドの命令で50人以上の兵士が一斉に動きはじめた。