FF ニ次小説


 ミッション自体はどうってことのないミッションだった。
 途中何度もモンスターに襲われたり、反抗勢力の強奪にあいかけたが、特務隊、特にセフィロスとクラウドの強さをまざまざと見せつけられて無事ロケットポートまで物資を輸送し終わった。

 ロケットポートでもう一度トラックに乗り込み無事ミッドガルのカンパニーに戻ってくる。
 カンパニーの駐車場で隊員を整列させて隊員達を解散させた。

 黒のロングを着たセフィロスの後に従うようにクラウドが歩いて行く。
 何も言葉を交わしてはいなかったが、その阿うんの呼吸は、他の者が入る余地すら見付けることができないほどだった。
 執務室に戻るとパーシヴァルとトリスタンがセフィロスを待っていた。手に持っていたものを見てクラウドが一瞬立ち止まるのでザックスが不思議に思い声をかける。
「あん?どうしたんよ?クラウド。」
「俺、クラスAに逃げる。」
 くるりと後ろを向いた途端目に入ったのは統括のランスロットの姿だった。
「おや、どちらへいかれるのですか?姫。」
「ア、ハハハハ……。ダメ?」
「ダメ、貴方以外にこの任務が出来る人はいないんですから。」
「はぁ〜〜ん、この所続くねぇ”クラウディア”。」
「続いてもらっても困るんだけど。」
「そういえば、ついこの間も”奥様”してたね。」
「絶対面白がっているだろう?」
「いーや。美人歓迎だからお見送りに行こうか?」
 クラウドはいささかげんなりしてクラスSのトップ達から紙袋を受け取った。
 セフィロスがランスロットに振り返る。

「任務内容は?」
「コチラです。」
 ランスロットが依頼書をセフィロスに見せるとセフィロスがにやりとした。

「なるほど、せいぜい世界の妖精に骨抜きにされるか。」
「あまりでれでれしないで下さいませ、姫に回し蹴りさせるわけにはいきませんから。」
「クックック、おまえも甘いなランスロット。私がクラウディア一人ぐらい守り切れないとでも言うのか?」
「逆ですよ。姫がキングを守りたくてついつい、というのが1番考えられる失敗です。」

 特務隊の執務室の前で30分ほど待っていると、中からクラウディアが現れた、思わず隊員達が壁際に整列し敬礼をする。
セフィロスがにやりと笑いながら、クラウドに右手を伸ばし話しかける。
「最近早いな。」
「慣れたくないんですけど。」
「では、キング、姫。よろしくお願いいたします。」
「お見送りいたしましょう。」
 二人のクラスSソルジャーに先行されて、セフィロスがゆっくりとクラウドを手招きする、照れたような顔をしてたくましい腕に自分の腕を絡めると歩き出した。

 廊下を進んでいると第4師団の執務室の扉が開いてエドワードが出てきた。
「サー・セフィロス、もう次の御用事ですか?」
「ああ、報告書か?」
「はい、今からお持ちしようとした所です。」
「かまわん、貸せ。」
 セフィロスはエドワードから報告書を受け取ると、軽く内容を一瞥し確認する、ポケットからペンをとり出すと確認のサインをする。

「では、後は後ろにいる奴に渡しておけ。」
「ラジャー!」
 敬礼をしてセフィロスとクラウドを見送った後、すぐ後ろのランスロット統括にそのまま報告書を手渡したとき、目の前の統括が思わずため息をついた。
「ふう、何時になったらあの方は私と入れ代わって下さいますかね?」
「姫が今の仕事を辞めるしか方法はないのでしょうか?」
「もうしばらく我慢するか。カンパニーが魔晄の力を使うのを止めて反抗勢力が減らないと、姫をリストラなんて出来ませんからね。」
「ご苦労様です、では。」

 溜め息をつきながら報告書を受け取り、カンパニーの本社へと歩いて行ったランスロットを敬礼しながら見送ると、エドワードは執務室にいったんもどった。
「御苦労だったな、もうクラスAに行っていいぞ。」
「サー・セフィロスが単独で出かけられたようです、クラウディア様を連れていらっしゃいました。」
「そうか、キングも忙しい方だな。」
「副隊長殿!クラウディアさんに会われたんですか?」
「ああ、あいかわらず綺麗だったぞ〜。」
「いいな〜〜、今度あったらサインもらって下さいよ。」
「ああ、それは無理だな。彼女サー・セフィロスの言いつけでサインは絶対しないんだ。まねて悪用されては困るからね。」
「あ、あの。クラウディアって、あの世界の妖精と呼ばれる美人モデルですか?」
「お前疎いね、サー・セフィロスのフィアンセだよ。そのおかげでたまーにカンパニーに現れるんだけど、俺なんて一度もあった事ない。」

 エドワードと上官のペレスが部下の言葉に顔を見合わせてにやっと笑うと、執務室に入って後片づけをしてからエドワードはクラスA執務室へと出かけた。

 クラスA執務室に入ったエドワードに気が付いて仲間が声をかけた。
「よぉ、エディ。お帰り、そうなると姫ももう戻ってくるか。」
「残念ながら旦那にミッションでかっさらわれた。」
「おお?!浮気相手失格って?」
「嬉しいような悲しいような……」
「エディ、俺からペアの座を奪い取っておいてそりゃないだろ?」
「仕方がないだろ?姫のご指名だ、おまえが”可愛いから”っていじめすぎたんだろうが。」
「先月ずいぶんリックにいじめられたし、おかげであいつに戦い方が似たのか組んでいても不安が全くないんだ。」
「うわ……俺、姫のお相手になんてなりたくないね。」
「おまけにこのミッションでリックにスカウトされた。いつでも特務隊に戻ってこいってさ。ああ〜〜ヤダヤダ!!」
「そういえば姫は何のミッションに行ったんだ?」
「さぁね。妖精になっていたからどこかのパーティーに潜入するんだろうな。」


* * *



 ミッドガル市内を移動中の愛車の中で、セフィロスが運転しながらミッションの説明をしていた。
「……と、言う訳で、そのパーティーでの取り引きを抑える。」
「で?ドレスやアクセサリーは?」
「マダムに頼んである。」
「また”ドレスで足蹴リなんてイケマセン”って言われるんだろうなぁ。」
「ランスロットからも禁止されたが、おまえはモデルで妖精なのだ戦う必要はない。」
「はいはい、おとなしく世界の妖精を演じています。つまんないや。」

 クラウドが溜め息をつきながら前を見ると、車はすでに八番街に入ってきていた。マダムセシルの店の前に車を横づけすると、セフィロスにエスコートされて優雅な仕草でクラウドが店に入って行く。通りすがりの通行人がそんな二人の様子を見て羨望の眼差しを送っていた。

 店の中にはいるとオーナーのマダムセシルが出迎えてくれた。
「まあ、ようこそサー・セフィロス。そしてクラウディア。本日はどのようなドレスを御所望ですか?」
「社交界のパーティーなので、すその広がるダンスに向いたドレスをクラウディアにお願いします。」
「あ、マダム。あの赤いドレス素的。」
 クラウドが指さした先にあった店頭に飾ってあるスカーレットレッドのドレスはきらびやかで、フレアもたっぷり入っていた。マダムセシルが緩やかな笑顔でそのドレスをみて頷き、説明した。

「ええ、あれはあなたのイメージでデザインしたから、あなたにならぴったりよ。アクセサリーも一式あるわ。」
「どうした?クラウディア。いつもなら白かピンクだろ?」
「貴方にお聞きするといつもロイヤルブルーだわ。」
「お前のその青い瞳と綺麗なハニーブロンドにはぴったりだからな、あのような鮮やかな色のドレスは初めてではないか。」
 クラウドにしてみれば着たくもないであろうドレスを店の中から選び出したのである、セフィロスが不思議に思うのも仕方がない。
「その場にいる人たちの目を引きつけるのが私の仕事なのでしょう?ならば目立つ色を選びます。」
 戦闘に加われないのであれば陰で力になるしかない。クラウドは開き直って自分にできることを選んだと言うことなのである、セフィロスは何も言わずにクラウドの頭をなでていた。
 マダムセシルが飾られていたマネキンからドレスを外すとクラウドに手渡しながら話しかけた。
「試着されますか?クラウディア。」
「そうね、一度着て見ないといけないでしょうね。」
「ええ。せっかくなのだから一番きれいな状態であなたを飾りたいわ。」
 クラウドがドレスを受け取ると試着室に入り、しばらくもぞもぞと動いていたかと思うと、カーテンが開かれた。白い胸元を少し隠しながら頬を赤くしてクラウドが立っていた。

「マダム、このドレス胸があき過ぎじゃない?見えちゃいそう。」
「そうね。でもほらサーをご覧なさい、あなたにみとれてるわよ。」
 マダムに言われたとおりセフィロスはじっとクラウドを見つめていた。クラウドの顔が真っ赤になる。
「セ、セフィ。どうかな??」
「あ……ああ。良く似合っている。」
 店員が近づいてアクセサリーをマダムに手渡すと、赤いドレスを着たクラウディアを見て目を丸くした。

「まあ、さすがマダムのお気に入りのモデルですね。このドレスがこれほど似合うかたがいるとは思いませんでした。」
 にっこり笑って店員が去っていくとクラウドは手渡されたアクセサリーを身につけた。とびっきりのLADYがそこにたっていた。
 マダムセシルがにこりと笑ってクラウドに聞いた。
「で?クラウディア。どうするの?ほかのドレスにする?」
「あ、いえ。これで……で、レンタルって無いですよね?」
「まぁ、トップモデルのあなたがそう言う事を言うの?いいわ。そのかわり汚さないでね。それと、あなたが一度着たドレスってプライスカードに書いちゃうから。」
「ええ〜〜?!そんなの嫌。でも、このドレス高いし……どうしよう?」
 困った顔をするクラウドにセフィロスが優しげに話しかける。
「馬鹿だな、そのぐらいのドレスでよければいつでも買ってやる。」
「けどセフィ。ドレスなら去年のクリスマスのがあるもの、もったいないわ。」
「こ〜ら、クラウディア。あなたみたいなトップモデルがドレスの使いまわしなんてしてはいけません。」
「だってマダム、そんな事していたらクローゼットの中、ドレスだらけになっちゃう。」
「そう言うドレスは一度持っていらっしゃい、デザインを少しいじれば全く違うドレスになるようにしてあるから。」

 後ろでクラウド達の話を聞いていた店員が感心するような顔で話しかけた。
「マダム、クラウディアさんって私達とそう変わらない方なんですね。トップモデルでサー・セフィロスのフィアンセだから取り澄ました方かと思っていました。」
「うふっ、そうでしょ?だから私は彼女を気に入っているの、きっとサーもクラウディアのそう言う所がお気に入りなのかもね。」
 急にマダムに話しを振られてセフィロスが少し口元をゆるめた。
「さて?何処が気に入ったのかな?」
「ひ、ひどい。私のことを何とも思って見えないのでしたら今夜にでもお部屋を出て行きます。」
「おまえは、何かあるとすぐそれだ。私が追いかけて来ると知っていてやっているのだろう?」
「いつもいつもそうじゃない。まるで私がサーに首っ丈みたいで……それは間違いじゃないけど、サーが私の事何とも思っていないみたい。」
「あらまあ、バチが当たるわよクラウディア。サー・セフィロスをこれほどまでに独占しておいてそんなこと言うの?」
 クラウドはマダムセシルの言葉に真っ赤になった。