第13独立小隊、通称”特務隊”
 神羅カンパニーが誇るトップソルジャー・セフィロス率いる精鋭部隊である。その副隊長は胸までかかるハニーブロンドと空の青を写し取ったような碧眼、整った顔だちはやや幼さを残していて女性とも男性とも取れる。
 シュガーボーイな外見とは裏腹に究極の召喚獣2体を従え歴戦のソルジャー達を指揮し英雄の隣りで剣をふる姿は、カンパニー内外の女の子をとりこにしはじめていた。

FF7 パラレル小説  二つの誕生日

 特務隊副隊長クラウド・ストライフはカンパニーの中でも有名であった。
 英雄セフィロスのそばに立つ美少年で実力はトップソルジャー、恋人がいるらしいがカンパニーの女子社員はそんな事おかまいなしである。
「ね〜、知ってる?クラウド君、来月が誕生日なんだって。」
「知ってる!!8月11日でしょ?どうする?」
「どうするって?クラウド君へのプレゼントって検閲があって、直接渡せないんだもん、なんだかつまらないよ。」
 カンパニーの女性社員が話すように、最前線を担当する特務隊の副隊長であるクラウドは、直接の知り合い以外からのプレゼントや手紙は直接受け取れない理由があった。
 それは特務隊の任務が厳しい物であるがゆえ、逆恨みで爆弾や細菌、危険物が送りつけられることもあるので、クラウディアの隠れファンであるタークスが中身を検閲していたのである。
「なんとかソルジャーとお近づきになって、クラウド君と仲良くなれないかな?」
「鏡を見て物をいいなさいよ。私達がクラウド君のそばに行っても全然つり会わないわよ。」
「はぁ〜〜、やっぱり本命さんぐらい美人じゃないと無理かァ…。」
 女子社員達は派手に溜め息をついていた。


* * *



 クラスS執務室で連隊長仲間が密かに固まって話していた。
「そういえば、来月姫のお誕生日ですな。」
「ああ、たしか11日でしたっけ。」
 その話が聞こえたのかセフィロスが絶対零度の怒気をはらみながら聞いた。
「なぜそんな事、貴様達が気にするのだ?」
「我々とて奥様の誕生日をお祝いいたしたいのです。」
「クラスAが何かやるならまだしも、貴様達はあいつに取っては上官だ。そんな貴様達に祝ってもらおうなど、クラウドも思っていないだろう。」
「それはつまらない事です。しかし方法が無いともいえませんが?」
 そういうと魔法部隊の隊長は携帯を取りだし自分の副官を呼びだした。
「ブライアンか?リックとエディ、パーシーを引っ張ってクラスS執務室に来い。」
 携帯の向こうで自分の副官が復唱するのを聞きながらセフィロスを覗くと、いつも通りの冷静な顔で執務をしているのが目に入った。

 やがてクラスS執務室の扉をノックする音が聞こえた。
「第9師団副隊長ブライアン・メイ、入ります!」
 扉を開けてブライアンが入ってくる、その後ろをリック、エドワード、パーシーが続いて入ってきた。
 ブライアンが自分を呼んだ上官に敬礼をして問いかけた。
「隊長殿、何か御用でしょうか?」
「ああ、君たちをここに呼んだのは他でもない。来月の11日の事なんだがね…。」
「来月の11日?」
「姫の誕生日だな。」
 さすがに王女警護隊長を自称するだけある。リックは日にちを聞いただけですぐにクラウドの誕生日だと気がついたのであった。自分たちが呼ばれた理由がわかったブライアンが自分の隊長に問いかけた。
「なるほど、こちらに呼ばれた理由がわかりました。姫の誕生祝いをやるか?と言うことでしょうか?」
「さすがに話が早いな。その通りだよ。」
「リック、どうする?」
「俺は個人的に祝いたいけどね。」
「氷らされるぞ。」
「サー・リーが我らに聞かれるのは、クラスA全体でやるかどうか?って事ですよね?」
「まぁ、騒ぐ為の餌にはなりますが、なぜサーがそのような事を?」
「そりゃ決まってるよ。連隊長達も姫のファンだからな。祝ってやりたいけど、上官にあたる身分だから出来ないって事なのではないですか?」
「エドワード。貴様、輸送部隊の副隊長にして置くには惜しい奴だな。まぁ、そう言う事だ。食事会を開くなら我々も人数に入れてくれ。」
「うわぁ、クラスS26人とクラスA28人も入れる店探すのか。」
「ランスもくわえておかないと、後が煩いからもう一人追加だ。」
「特務隊の連中もいれておかないと後が恐いな。」
「じゃぁ合計で70人かよ。そんな店有るのかぁ?!」
 仲間の話を聞いてふとリックがセフィロスに向き合って尋ねた。
「隊長殿は2度祝うことになりそうですね。」
「ああ、ティモシー達にすでに19日のスケジュールを押さえられた。まったく、私に何をやらせようと言うのだろうな?」
「大変ですねぇ、複雑な事情の奥様をお持ちだと…」
 エドワードの言葉にクラスS達が苦笑する、その間にブライアンがすぐとなりのクラスA執務室に戻っていた。パーシーがそれに気づく。
「あれ?ブライアンの奴何処に行ったんだ?」
「クラスAの執務室だろ?何人かに確認を取りに行ったんだ。」
「さて、何処を抑える?」
「うまくて広い店にしてくれ。」
「ホワイトウッドはいかがですか?」
「悪くはないな。姫の好みそうなケーキも抑えておけよ。」
「ロウソクもですよね?パーシー、行くぜ!」
「お?リックから声がかかるなんて光栄だね。」
「ああ、エディは姫の見張り役。俺より適任だ。」
「俺、そう言う役ばっかりじゃないかよ…。」
 苦笑するエドワードをにやりと眺めながら、リックが携帯を取り出して、腹心の部下であるカイルを呼び出していた。
「カイルか?俺だ。来月11日、特務隊の連中全員にスケジュール開けておくように通達よろしく。」
「おう!ミッション入れて見ろ、ランチの10回じゃ済ませんぞ。」
「クラスCでうだうだやってないで、早く上がってこい。いつでも歓迎してやる。」
 リックが携帯をたたむと、パーシーと共にクラスS執務室を一礼して出て行った。

 一方 そんな事は全くわかっていないクラウドは、何やらこそこそと話しているクラスA仲間に疎外感を感じていた。

”まったく、俺だけ除け者かよ。”

 故郷のニブルヘイムでは慣れていたが、カンパニーに来てからは、これだけはっきりと除け者にされた事はなかった。暗い顔をしているとクラスS執務室に行っていたエドワードが戻ってきた。
「姫、どうしたんだよ?暗いぞ〜〜」
「あ、エディ。ねぇ、教えてよ。皆こそこそと俺を除け者にしてるんだ、俺、何かやったっけ?」
「そうか?気のせいじゃないのかな?だいたいお前は俺達クラスAのアイドルだろうが。」

 やさしく髪を剥かれてクラウドは思わず目に涙を溜める、その顔は凶悪なまでに可愛らしい。       by 英雄視点
 見方を変えればラブラブモードである、クラスA仲間がそれを揶揄しはじめた。

「エドワード、あんまりいちゃつくな!姫の旦那に氷らされるぞ。」
「氷らされるのもいいかげん慣れてきたのが恐いぜ。」
 エドワードがクラウドのペアご指名を受けてすでに半年、何度クラウドに泣きつかれて嫉妬深い彼の伴侶の絶対零度の怒気を浴びた事か…(w)クラスA仲間もそれを知っているので、いくらクラウドの腕が立ち仕事が楽に出来るとはいえ、クラウドのペアをめぐって争うような事はしなかったし、エドワードはクラスAでも1、2を争うソルジャーであり、彼本来の優しい性格がクラウドのお気に入りであった。
「でも、なんだか皆がこそこそと話しているのに俺一人だけその話しが伝わってこないんだ。」
「お〜い、ランディ。アランお前ら何を話していたんだ?」
 いきなり振られてランディとアランがびっくりしたような顔で振り向く、実はクラウドの誕生祝いパーティーの事で話し合っていたのだが、クラスA全員がびっくりさせようと決め込んでいる為シラを切った。
「ん?事務のヘレナちゃんの携帯番号の話。」
「ランディがお前に聞くような事じゃないだろ?」
「じゃあゴードンとブライアンは?」
「ああ、何処の酒場が安くて美味しいかって話しだ。」
「未成年のお前には聞けないだろ?」
 なんだかうまく誤魔化されたような感じがするが(事実そうだろ!)クラウドも自分が除け者にされたのではないとほっと安心した.

「結構、皆遊んでるんだね。」
「そりゃお前と違ってこっちは酒も飲めるし女も口説き放題。何が楽しくてその年で結婚しているんだか俺にはわからんね。」
「むぅ〜〜〜」
「まぁ、姫は究極のパートナーと一緒になれたんだから、女が口説けなくても酒を飲み歩けなくてもいいんだろうな。」
「仲間と飲み歩くわけにもいかない年齢だし、お前を誘うのもなかなか勇気がいるしなぁ。」
「だいたいお前を食事に誘うともれなくクラスSとか、特務隊が付いて来そうだもんな。」
「もれなくって…そ、そうかな?」
「このクラスにリックがいれば特務隊にバレる。特務隊にばれれば旦那も知る事になるからクラスSにも…だろ?」
「やっぱり”もれなく付いてくる”って事になりそうだな。」
「ひ、否定出来ない。」

 クラスA執務室が笑いに包まれた。そこへリックとパーシーが入ってきた。
「何々?俺がいない所で楽しい話ししてるんじゃないぜ。」
「何?どこか飲みに行くって?」
「お、さすがソルジャー、扉越しでも聞こえたか。」
「ん〜〜、でもよォ。ガスト博士が魔晄の照射をやめて、かれこれ3ヶ月来るだろ?やっぱり定期的に照射していないと、なんだか力が抜けちゃってる感じがするよ。」
「まぁな、ずいぶん力が抜けてきたと思う。その分日ごろの鍛錬が必要になるって事なんだろうな。」
「だから最近ザックスに勝てなくなって来たのかな?」

 ガスト博士がカンパニーに戻ってきた理由が、魔晄の力を使わない事。ミッドガルのエネルギーを供給している魔晄炉のシステムから太陽熱や風力、水力、波力と自然エネルギーを使いはじめ、、アバランチや反抗勢力もしだいに鳴りを潜めはじめて来た。

 まだソルジャーから魔晄の力を抜く技術は見付けられないが、魔晄を照射してパワーを維持する事を既に止めていた。
「コレからは本当の実力がものを言うって事になるのか。」
「おう!俺達の天下だ!!ソルジャーから魔晄の力を抜けば只の人!」
「お〜お、しかし言い返せないのが辛いなぁ。」
 リックがクラウドに向けてにかっと笑う、クラウドも思わず笑顔を浮かべていた。