FF ニ次小説
 ルビーウェポンを倒して一安心していたカンパニー治安部の中でも、最前線を担当する第13独立小隊の副隊長であるクラウドには安息の時間は少なかった。


更に闘う者達



 クラスA執務室に入ってきたクラウドに、エドワードが近付いてきた。
「姫、この間頼まれた奴なんだけど。」
 エドワードが二つの写真をクラウドだけに見せて小声で話しはじめた。
「連隊長にこっそり聞いたが、キングもご存じらしい。この星の厄災と言っていたと言う事だ。」
 写真には銀色のボディーを持つモンスターと、緑色の身体を持つモンスターが写っていた。エドワードがそれぞれ指をさして説明をし始めた。
「銀色がダイヤウェポン、緑がエメラルドウェポンといって、ダイヤは未確認だが緑は海底にいるらしい。」
「海底?息が続かないじゃないか。」
「う〜〜ん、そう言うマテリアが有るのかな?」
 エドワードの言葉に、二人の会話を聞いていたらしいのか、魔法部隊の副隊長ブライアンが口をはさんだ。
「おお、あるぞ。たしか”潜水”っていう特殊マテリアだ。」
「どうせクラスS秘蔵なんだろう?」
「たぶんそう言う事だな。俺も隊長にそれとなく聞いて見たがよくわからなかった。」
「でも助かったよ。ありがとうエディ。ブライアンもありがとう。」
 クラウドがエドワードににっこりと笑うと、その頭にポンと手をおいて、ちょっと跳ねた前髪をくしゃっとかき回した。とたんにリックがいつものように、にやにやしながらいちゃもんをつけ始めた。
「あ、姫。浮気だぞ旦那に言うぞ。」
「え?どこが浮気にみえるんだよ?」
「関係がアヤシイ。」
 リックの一言にクラスA仲間たちが笑顔で突っ込みを入れ始めた。
「姫がにっこり笑う男を見付けた途端これだもんな、どこかの旦那よりも質が悪いんじゃないのか?」
「ち!違うわ!!俺は隊長殿の代わりに!」
「はいはい、わかってます。」
「まあ、おまえがどこかの旦那にあこがれまくっているのは、ここにいるみんなが知っていることだし。何を言い返しても無駄だとは思うが?」
「うるさい!!俺に逆らうのか?!」
「簡単に逆らえるぜ。ほ〜〜ら、モルボルの触手。」
 パーシーが先の派遣で入手したのかモルボルの触手をとりだした。
 緑色のうねうねと動く物体は魔防の低いものならば、簡単にそのモンスターが持つステータス変化と、同じ症状を引き起こさせることができる。実力でクラスAに這い上がってきたとはいえ、魔力の無さが弱点のリックにはそれだけで大ダメージである。おとなしく両手をあげて降参する。
 そんなリックも顔だけは笑っているので、パーシーが本気でやっているわけではないということは、理解しているようであった。
「それにしても姫。そんなモンスターの情報をどうやって調べるんだ?」
「あ、うん。俺にはこいつらを知る権利が有るからな。幸いデーターベースにアクセスするのに必要なパスは、レベル5まで全部もらっている。」
「俺も先日Lv5までもらったけど探せなかったぞ。」
「Lv5程度じゃないってことかな?」
「キングしか知らないとか。」
「あるあるあるある!!」
「まだ情報が無かったりするかも。」
「キースのいうこともパーシーのいうことも、どっちも考えられるんだよな。」
 そう言いながらクラウドは、机のパソコンにUSBを接続してデータベースを呼び出そうとする。任務の都合上、セフィロスのUSBのコピーも持って歩いているせいか、どんなトップシークレット情報にもアクセス出来るのであった。
 後ろからクラウドのパソコンをのぞいていたブライアンがびっくりする。
「うわ!!おまえキングのパスでアクセスしてるな?!」
「なるほど、パートナーのお前にしか出来ないな。」
 いつのまにかクラスA仲間が集まってきて、クラウドの後ろからパソコンの画面をのぞき込んでいた。しばらくクラウドの指がパソコンのキーボードの上をさまよって、やっと目的のデーターを見付けた。
「うわぁ…何もわかっていないじゃないか。」
「また強そうな奴だなぁ。」
「ルビーは載っているのか?」
 エドワードの言葉にクラウドが再びパソコンのキーを何個か叩くと、ルビーウェポンの情報が画面に出てきた。
「7年前に一個大隊を出兵させたが、隊長をのぞいて全滅?」
「その隊長が…サー・セフィロスか?」
「ああ、確かそのはずだ。俺もまだ特務隊に入る前だったけど、一時期は隊長だって生死不明だったんだ。」
「ああ、覚えている。俺もまだ一般兵だったけど、大騒ぎだったもんな。俺もちょっとショックだった。神羅の英雄と呼ばれていたキングが…ってな。」
 カンパニーに所属している期間が長いブライアンとリックが話すことに、クラウドがびっくりして振り返った。

(今から7年前って…セフィロス、いくつの時から神羅の英雄って呼ばれていたんだよ?!)

 クラウドは思わずセフィロスの当時の年齢を考えていた。どう考えても自分と同じ年齢のころにはすでに神羅の英雄と呼ばれていたようだ、いったいセフィロスは何歳で治安部に入って、何歳で一隊を率いていたのであろうか?
 そんなことを考えていたらいつの間にか独り言をつぶやいていた。
「すごいや……セフィって。」
 クラウドの頬がほのかにピンク色に染まっていた。
 周りにひしめいていたクラスAソルジャー達が、背中に冷たい物を感じ思わず一歩退いた。その足音を聞いて我に返ったクラウドが瞳をクリッとさせたかと思うと、一瞬で首まで真っ赤になる。
 ブライアンがにやりと笑って話しかけた。
「おまえは凄く頼りになるし、強いんだけどさ。時々男なんだか女なんだか、わからなくなる時あるよな。」
「今さらそれを言うか?」
「そうだな、なにしろカンパニー1の可愛い子ちゃんだもんな。」
 クラスA仲間のこの言葉もいい加減言われ慣れてしまったのか、クラウドは反論をせずに、ため息交じりにつぶやいた。
「はぁ…何を言っても無駄なんだろうね。」
「おや?姫、最近反論を諦めているね。」
「ん、まあね。何を言っても俺があの人と結婚しているのは事実だし、スーパーモデルと言う別の顔を持っているのも事実だもん。」
 クラウドがパソコンのデーターベースを閉じて立ち上がった。


* * *



 その頃、クラスS執務室では、クラウドとほぼ同時にセフィロスがデーターベースにアクセスしようとしていた。しかし二重アクセスで閲覧出来ずにいたのをパーシヴァルがにやりと笑った。
「キング。どうやら姫が先にアクセスしてみえるようですね。」
「ああ、どうやらそのようだな。」
「そういえば…先日、部下のブライアンがエメラルドウェポンの事で何やら探ってきましたよ。」
「自分もエドワードに聞かれました。どうやら姫に頼まれたと思います。」
「まったく…あいつは…」
 戦友たちの言葉におもわず肩をすくめながら、セフィロスはパソコンの画面を閉じた。そんな彼にガーレスが苦笑交じりに話しかけた。
「その2体を倒すのは自分達だと思われてみえるのでしょうな。」
「あながち間違ってはいないのだが、少しは我らを使う事を考えてほしいですね。」
「ランスからギャハハにそれとなく新兵器でも作るように頼みますか?」
「ダイヤは地上に現れるから、そう言う兵器も使えるかもしれぬが、エメラルドは海底だ。潜水のマテリアが何処かにあったと思うがどうかな?」
「ええ、探しています。」
「それはいいが、私に無断であいつに貸さないように。」
「それも了解しております。」
 連隊長達はうなずくと、それぞれの執務へと戻った。


* * *



 クラウドがクラスA執務室から特務隊の執務室へと歩いて行こうとした時、隣りのクラスB執務室からザックスが現れた。
「あ、ザックス。」
「ああ、クラウド。今からか?」
「うん、そういえばザックス、ひどいよ。前の戦闘の事をエアリスに教えたな?電話で泣かれて困ったんだから。」
「当たり前だろ。エアリスはガスト博士の娘なんだし、お前の事を聞こうと思ったら何処からでも情報は入る。俺だって帰ってきて真っ先に電話で詰られたんだぜ。」
 黒髪の人付き合いのいいソルジャーは、クラスBソルジャーの印である青色のロングコートを着ていた。華奢なクラウドとは好対照でがっしりとした体つきと爽やかな笑顔を持っている。
 クラウドに少し遅れてクラスA執務室を出たリックが、目の前を歩く憧れの君と、そのとなりを歩くザックスに気がつくと、そっと近寄った。
「クラスB風情が!姫に近寄るとはおこがましいわ!!」
 いきなり回し蹴りを仕掛けたが、その前にザックスが足払いをしかけていたのか、リックが見事にひっくり返った。
「へへん!ざまあみろ。」
「うわ!下級ソルジャーに一本取られた。チクショウ!」
「悪いが、俺がクラスBで留まっているのは理由があるんだよ。」
「もう、クラスAの実力が有るっていうのに。早く上がってこいよ、同じクラスになったらペア指名しようって思っているんだから。」
「お前がわかってくれているだけで結構。」
 ザックスがクラウドを抱き寄せて、額に唇を寄せようとした時、思いっきり壁にたたきつけられた。
「いって〜〜〜、何するんだよリック。」
 頭を振りながらザックスはリックのしわざだと思って顔を上げると、目の前には銀髪の英雄が絶対零度の怒気をはらんで立っていた。
「うわ!!セ、セフィロス。」
「いいご身分だな、ザックス。」
「あんたなぁ…いくらあと2年待たないと、こいつがクラスSに上がれないからとはいえ、俺に八つ当たりするなよ。」
「クラスSに渡したくないんだけどなぁ。」
「クラスSに行きたくないんだけどなぁ。」
 そんな会話を聞きながらセフィロスがきびすを返して歩きはじめると、いつものようにクラウドが一歩下がって歩きはじめる。通りすがる下級ソルジャーや一般兵達が道を譲りながら敬礼して見送るが、セフィロスは何も関心を持たずに通り過ぎる。が…クラウドは違っていた。通りすがりに知り合いの兵に声をかけ始めた。
「あ、君。第15師団の副隊長補佐だよね?エディもうなじんでいる?」
「あ、はい。サー・エドワードはお強いので隊の皆が自然と従っております。」
「そう、輸送部隊からいきなり一番大きな部隊の副隊長だもんな。でも、エディなら大丈夫だね。教えてくれてありがとう。」
「いえ、とんでもありません!!」
「サー・オットー。先日のミッションでは手伝って下さって、ありがとうございました。」
「あ、いえ。」

 照れたような顔でオットーが敬礼をすると、クラウドがふわっと微笑んでから、再びセフィロスの後を歩き出す。残されたソルジャー達がボーっとした顔でその場でしばらく固まっていた。その様子にリックが思わず舌打ちをする。
「あいつら…シメてやる。」
「ま〜ったく、やってる本人にその気は無くても、あれじゃアイドルにもなるわなぁ。」
 ザックスとリックが呆れたことに、クラウドに声をかけられたソルジャー達が他のソルジャー達に囲まれていた。
「な、何だよお前達?!」
「オットー、お前なんでサー・クラウドに顔と名前を覚えてもらっている?」
「おまえだって…どの隊に居るのか覚えてもらっていたんだな?!」
「羨ましすぎるぞお前ら!!」
 クラスBソルジャーの中で小競り合いが起こりはじめた、あわててザックスが中に入る。
「あ〜〜!!まったくもう!!お前らがここで喧嘩なんか起したら、誰が一番困るんだ?!そう言う事も考えないのかよ!!」
「あ、ザックス。だってよぉ、サー・クラウドに声をかけてもらえるなんて、夢のような話しじゃないか。」
「アイツはお前よりも年下だぜ。」
「でもなぁ、いくら憧れているとはいえサー・セフィロスは絶対そう言う事をしないだろ?ならばサー・クラウドにって…。」
「そうだよなぁ。」
 ザックスは仲間たちの言葉に頭を抱えていた。
「おまえら〜〜!!!セフィロスに認めてもらえないなら、クラウドにって…それ、すっげ〜侮辱じゃないか!!結局、あいつはお前達に取って二番目だって事だぞ!」
 クラスB仲間がその言葉を聞いて青くなった。