FF ニ次小説
FF 7 二次小説 − 男に二言は… − 


 ここは魔晄都市ミッドガル、神羅カンパニーが管理統括する巨大都市である。
 魔晄の力を湯水のように使い反抗する者を力で抑えている為、神羅カンパニーは自前の軍隊を持っていた、それが治安部だった。

 力を力で抑えようと魔晄の力で人を強化させた軍団「ソルジャー」を管轄し派兵する事を目的とした部所だった。

 その神羅カンパニーの治安部が一般市民の理解を得ようと治安部内を一般に公開するイベントが一年に一度あった。

 その神羅カンパニー本社ビル67Fにはセフィロスの執務室があった。

 執務室の中ではいつもの様に書類をほったらかしながらザックスはセフィロスに問いかけた。
「なー、セフィロス。今年もそろそろ一般公開の時期じゃねェの?」
「ああ、そうだな。」
「一般公開?何ですか、それ。」
「ああ、そうか。クラウドは今年入ったばっかりか。」

 神羅カンパニーが誇るトップソルジャーで”英雄”とまで呼ばれている男セフィロスは、その多忙な任務ゆえ書類の整理に今年入った訓練生の中で一番有能なクラウドを秘書官かわりに使っていた。
 ザックスがそれを思い出してクラウドに説明する。

「こういう軍隊ってものはな、周辺地域の住民の理解が必要不可欠な訳。だから一年に一度、治安部の内部を開放して俺達と親睦を深めましょー、って。」
「ふーん。具体的にはどう言う事をやるんですか?」
「え…っと……運動会とかいろんなコンテストもあるぜ。」
「フン…くだらんな。」
「そういえば、セフィロス。あんたこういう馬鹿騒ぎが嫌いでいつもミッション入れていたよなぁ。今年もそのつもりか?」
「そうだな、悪くないな。」
「そりゃ残念だな。クラウド、俺と運動会にペアで出ようぜ。お前の運動能力ならぶっちぎりで優勝だ。」
ザックスの言葉にクラウドは青くなりながらセフィロスの方をみた。
「え?!だって…サー・セフィロスのミッションがあるじゃないですか。」
「そんなん、こいつが好きで行ってるんだ一人で行かせておけ。」
「フン!」
「で、でも…」
「そうそう、お前可愛いからさー、女装コンテストに出たらどうだ?」

 クラウドがザックスの言葉にぶち切れた。

「じょ、冗談じゃない!!!」
「そうかー?お前なら絶対優勝出来るぞ。」
「だからなんで俺が女装なんてしなきゃいけないんだ!!」
「だってよぉ、優勝商品がミディールの温泉2泊3日ご招待なんだぜー!それも推薦者にももらえるって話しだ。俺、温泉行きたいよー!!」
「だからって何で俺なんだよ?!あんたが女装しろよ!!」

 上下関係無視で襟元を掴んでザックスに食って掛かっているクラウドに、セフィロスが二人に諭すように話しかけた。

「ザックス、たしか推薦者が女装の道具一式を購入する決まりだぞ。お前にそんな金があるのか?それからクラウド。そんな馬鹿猿とではなく、私と組みなさい。いいな?」
「セ、セフィロス!!ひっでー!!自分が温泉に行きたいだけじゃないか!!」
「黙れ、私は疲れているんだ。」
「そうだよ!ザックスとは違ってサー・セフィロスはあんたが溜めた書類まで面倒見なきゃいけないんだぞ!!」
「うっく〜〜!!おまえこの冷酷非道な英雄に洗脳されてないか?」
「サー・セフィロスの言うことは絶対です!!」

 ザックスは今さらのように、目の前に居るこの少年兵が”英雄”セフィロスに憧れて、ニブルヘイムからミッドガルへソルジャーになる為に出てきていたのを思い出した。

 一方、セフィロスはセフィロスでほくそ笑んでいた。

(クックック…ミディールの温泉か…悪くないな。)

 疲れがたまるなどセフィロスにあるわけがない。
 しかし、ミディールには温泉のほかに近海で取れる魚介類の料理で知られている。
 仕事に振り回されず3日ものんびりと出来る上に美味しい料理も食べられる。

(これは行くしかない!!)

 しかしそんな事はおくびにも出さずにさも疲れたような素振りで、ザックスとクラウドを前に髪を掻き上げる。

「で?どうするのかね?二人とも。」
「くぅ〜〜…た、確かに俺にはそんな金何処にも無い。」
「お、俺。サー・セフィロスの為なら…女装も我慢します。
「そうか。では決まりだな。ザックスは他のペアを探せ。クラウド、次の訓練の空き時間はいつだ?」
「あ、はい。あさっての午後です。」
「そうか、ではその日に衣装やアクセサリーなどを買いに行くぞ。」
「アイ・サー!!」

セフィロスの言葉にいつものように敬礼をして了承するクラウドを、ザックスはため息交じりで見つめていた。


* * *



 それから翌々日の午後、午前中の訓練を真面目にこなしてからクラウドがセフィロスの執務室にやってきた。ザックスに書類の束を押しつけると緊張気味のクラウドを連れて、セフィロスが地下駐車場へと歩いて行く。
 最新式の神羅カンパニー製スポーツカーの助手席にクラウドを押し込むと、自らハンドルを握りミッドガルの高級店が居並ぶ3番街へと車を向ける。
 しばらく高速を走ると目的地であるファッションビルが視野に入ってきた。
 高速を降りて地下駐車場へと車を滑り込ませると車酔いで青い顔をしているクラウドを助手席から引きずり出す。

「ほら、クラウド着いたぞ。」

 車酔いで頭がもうろうとしているクラウドはセフィロスの言いなりだった。
 車から降りるとふらつく身体で必死になって立とうとしている。そんなか弱そうなクラウドを見るに見かねてセフィロスが引きずるように目的のショップのVIPルームに引き連れていくと、あわててショップのオーナーがやってきた。

「いらっしゃいませ。本日はどういった御用事でしょうか?」
「一般公開で使う衣装の調達に来た、この子に似合うドレスは無いかね?」

 オーナーがセフィロスの連れている少年兵に目を写した。
 跳ねてはいるが綺麗なハニーブロンドに綺麗な青い瞳、やや幼いが整った顔だちは一見、少女にもみえた。

「シルクサテンのロイヤルブルーのドレスなどいかがでしょうか?きっとこの子の金髪によく映えますよ。」
「ふむ。持ってきてくれ。」

 オーナーがセフィロスの指示で青いドレスをもってきた、深い青色のドレスはさわさわした手ざわりで艶やかに光っていた。
 ドレスを見てやっと状況が飲み込めはじめたクラウドだが、やはり憧れの英雄の指示である事は絶対であったので仕方なく試着室に入り着替えて見る。

 試着室から出てきたクラウドを見たオーナーは卒倒しかけセフィロスは思わず目を見張った、華奢なクラウドには青いドレスがあまりにも似合っていた。

「これは…すばらしい!!」
「ほぉ、想像以上だな。」
「エクステンションでブロンドの付け毛を付けて髪飾りはいかがいたしましょうか?」
「やはりダイヤのティアラだな。」
「そ、そうですよね。ただいまご用意いたします。」

 そう言うとオーナーはダイヤのティアラと黒い5cmのハイヒール、太ももまでのストッキングとガーターベルトと言うセクシーな下着と、そして店に置いてあるブランド物のセクシーな香りのコロンを持ってきた。

 すべてを身につけて薄く化粧をしたクラウドは、何処からどう見ても飛びっきりの美少女だった。

「こ、これは…あなた私のモデルにならない?」
「え?あ?お、俺?ダメです、俺はソルジャーになりたいんです。」
「クラウドは訓練生とはいえ一応神羅カンパニーに所属する軍人だ。兼業は出来ないはずだから諦めろ。」

 セフィロスの言葉にオーナーががっくりとうなだれた、クラウドがもじもじとしながらセフィロスに話しかける。

「あ、あの。サ、サー・セフィロス。俺、早く着替えたいんですけど。」
「あ、ああ。もういいから着替えろ。」

 クラウドはうなずくともう一度試着室に入り一般兵に支給されている制服に着替えた。
 着ていたドレスなど一式をカードで支払い紙袋を抱えて駐車場へと戻ると、再び車にクラウドを押し込みカンパニーへと帰っていった。

 クラウドは車酔いに悩まされながらも何故自分が女装する事になったのか、わからなくなっていた。ただ、セフィロスの命令にしたがって行動していた。


* * *



 神羅カンパニーの治安部が一般公開される日がやってきた。
 その日の朝一番にクラウドは教官に呼び出されていた。

「クラウド。君は訓練兵のトップとして勝ち抜き武闘会に出てもらうからそのつもりで。」
「アイ・サー!!」

 クラウドは日ごろ真面目に訓練を受けていたのでその実力を認められていた。
 喜んで武闘場に走っていくと名だたるソルジャー達や一般兵達が居並んでいた。

 武闘場には一般市民が真剣勝負を見ようとたくさん詰め駆けていた。
 訓練兵と一般兵、そしてソルジャーの力の差を埋める為に授けられた規制を聞きながら、クラウドはどのように闘うべきか必死に考えていた。
 規制を逆手に取るやり方しか思い浮かばなかったが致し方ない。自分の力不足を補う為にはその方法しかなかった。

 与えられた先制攻撃の時間と動ける範囲の差をうまく使ってクラウドは勝ち上がって行った。

 一般兵をすべて退けソルジャーと対峙する。
 それでもクラウドは引き下がらなかった、規制をうまく使いこなしソルジャー相手に勝ち上がって行く。
 やがて対戦相手にザックスが試合会場に上がってきた。

「へぇー、お前結構やるじゃん。」
「ザックス。俺が訓練生だからって手を抜くなよ。」
「抜くわけないだろ、後でメチャクチャ言われンだぞ。一般兵どころか訓練生に負けたらクラスダウンものなんだぞ。」

 ザックスが赤いサークルの中央に立つとジャッジが声をあげた。

「さぁて!次なる対戦はソルジャークラス1stの”ゴンガガ原人”ザックスと訓練生のトップのクラウド君。ハンディーありすぎだぜ!両者 スタンバイいいか?!RADY−−−−−−!GO!!」

 合図と共にクラウドがしかける。
 しかしザックスは規約のおかげで赤いサークルの外に出る事も、試合開始10分を経過するまで足を一歩以上動かす事を許されていなかった。
 クラウドがうまくその規約を使って切りかかってくる。
 ザックスはその剣裁きをみて少々びっくりした。

(こりゃ…みくびると大変な事になるぞ。)

 その思いは7分後に事実となっていた、クラウドが正面から木で出来た剣を押し込みながらケリを入れてきた。思わずザックスがふらついて足を2、3歩動かしてしまった。

「おお!!訓練生がクラス1stのソルジャーを抜いたぞ!!」

 会場内に大きな拍手が沸き起こった。