クラウドがセフィロスをびっくりさせようとしているのをクラウディアスタッフが協力しようとしていた。
 ミッシェルがクラウドをぐいぐいと有る場所に引っ張って行く。そこは6番街のストロベリーショップだった。
「な、なんだよ。ここ!!前ランディ達が言ってた店じゃないか!!」
「あら?知ってるの?じゃあもう何着も持っているの?」
「以前、ルーファウスにもらったのが2種類ぐらい…」
「ミッシェル。ここはダメだよ、ダイアナに行こう。」
 ティモシーは馴染みのデザイナーがいる店に行き先を変えた。クラウドが不思議そうな顔でティモシーに聞く。
「ねえ、なんでデビッドさんなの?」
「君の事をわかっていてそれでいて、サーの事もわかっているから。」
「特別に可愛いのを探そうよ。」
「あ、でも日ごろモデルの仕事で女装しているからクラウディアになっても無駄だってば。もう驚かなくなってるって言われたもん。」
「まあ、そうだろうなぁ。モデルでコスプレのしまくりだからな、ある程度は免疫ができているか。なんだか悔しいな、こうなったらとことん付き合ってやる。」
 そう言うとダイアナに正面から入って行く。スタッフに囲まれた白のロング姿のクラウドを見てデヴィッドがびっくりしていた。
「いらっしゃいませ。クラウド君、また凄い人達を引き連れているね。」
「デヴィッドさんちょっと相談があるのですけど…」
「いいですよ。さあ、奥へどうぞ。」
 ティモシー達の雰囲気を感じ取って、デヴィッドが何も言わずにVIPルームへと通す。全員を椅子に座らせてコーヒーを薦めるとティモシーが口火を切った。
 その内容にデヴィッドが思わず笑みを漏らした。
「そう言う事ね。サーをびっくりさせるなら日ごろクラウド君がやらない事をやればいいんじゃないの?」
「俺がやらないこと?」
「たとえば…サーに甘えるとか、おねだりをするとか、は君の事だからあまりしないだろう?」
 クラウドがコクコクとうなずくとティモシーが同じようにうなずいていた。デヴィッドはそれを見て笑みを浮かべながら話を続けた。
「君はサーにつりあうようになりたいと甘えたりお強請りしたりはしないだろうと思ってたけど…やっぱり?じゃあ衣装は普通のセーターにGパンでもいいけど、サーが帰ったら思いっきり甘えてごらん、きっとびっくりするよ。」
「あ、でも、そんな事して嫌われないかな?」
 クラウドの後ろ向きな発言にティモシーがびっくりする。
「はあ?!サーが君を嫌うなんて天地が裂けてもあり得ない!!」
「でもなぁ、可愛い恋人に甘えられるんなら可愛い格好でやってほしいなぁ。」
「ちょっとフリルのあるブラウスとフレアスカートならいいんじゃない?髪にスカートと共布のリボンでもすればもっと可愛いわよ。」
「俺、男なんですけど。」
「男をびっくりさせるなら、相手のシャツ1枚という”お、こいつ俺を誘っているのか?!”という格好もいいと思うけど?」
「クラウド君の場合、普段がモデルやっているからコスプレが仕事みたいなもんだからびっくりしないと思うよ。」
「うん、そう言われたんだ。」
 クラウドはデヴィッドに言われて、モデルの仕事の事を思い出す。ありとあらゆる衣装を着ているからセフィロスだって慣れたであろう。そんなセフィロスを驚かせるならデヴィッドが言う通り日ごろやった事ない事をするしかない。
「うん、皆ありがとう。とにかく明日だもん、俺頑張って見るよ。」
 何をどう頑張るのだろうかと突っ込みを入れたいのではあるが、ぐっと何かを決心したクラウドはさっさと店を出てバイクにまたがりマンションへと戻った。
 明日のための料理の仕込みと今晩の夕食の支度をしながら、クラウドはドレッサーの中をごそごそと探し回った。
 いつもよりもフリルの多いエプロンを身につけて料理を仕上げているとセフィロスが帰って来た。
 いつものようにさり気なくお迎えをしてその日はごく普通に過ごした。

 そして17日になった。
 朝の光にセフィロスの腕の中で目を覚ますとクラウドは一瞬とまどったが、ちょっとうなづいて行動にでました。
 いつもならセフィロスの髪の毛をちょいと引っ張って、セフィロスにサインを送ると、彼から近寄ってきてモーニングキスを交わすのですが、今日は思い切って彼の首に腕を伸ばし抱き付くように唇に自分の唇を重ねた。
「おはよう、セフィ。」
 一瞬セフィロスの目が見開かれたのをクラウドは見逃しませんでした。

(ああ、やっぱりデヴィッドさんの言っていた通りだ。)

 しかしクラウド君は一つだけ気がついていない事があります。クラウド君から行動に出ることがないのに珍しく積極的にキスをされたセフィロスが感動しない訳がない!!(え”?!)

朝 食の支度をしようとベットを抜け出そうとするクラウドの腕をガシッとつかむとセフィロスは自分の方へ引っ張った。
 当然クラウドはセフィロスの腕の中へ逆戻りした。
「あ、あの〜〜俺、食事の支度がしたいんだけど。」
「そんなもの後でもかまわん、どうせ今日は私も休みだ。」
 言うが早いかセフィロスはクラウドをベットに押し倒し、キスのシャワーを浴びせます。どうやら朝から”鴨ネギ状態”だったようです。
いや、鴨がネギ背負って鍋持って白菜持って身体を洗って自ら毛をむしり鍋に入るぐらいの状態だ!!

「ダ、ダメ!!もう朝だよ。」
「お前が悪い。朝からあんなキスをプレゼントをされて、私がおとなしく出来るとでも思っているのか?」
「やだよぉ、だってセフィロスとデートしたいもん。ねぇ〜〜セフィ、お休みならどこか出掛けようよ。お・願・い
 クラウドに上目使いにおねだりされて、セフロスが堕ちない訳がない!!しかも語尾にハートマークがついている。とどめにもう一度可愛らしくキスをされるとセフィロスは両手バンザイ状態に陥った。
「ん?何処に行きたい?何処でもいいぞ、行きたい所に連れて行ってやる。」
 砂糖菓子よりも甘い瞳と声で答えたりしています。コレにはクラウドも内心びっくり!しかし別段行きたいところが無かったクラウドはいい行き先が思いつかなかった。
「朝ご飯食べながら話そうよ。そうすれば決まってすぐ行けるよ。」
 とりあえずその場を逃げる手段に出たが、どうやらセフィロスの方が一枚上手の様だった。
「なんだ、決めていないならベットの上で決めてもいいじゃないか。」
 そう言うと再びクラウドの肢体を攻略しはじめた。

 こうして始まったセフィロスとクラウドの甘い攻防は、結局英雄のペースで進んで行くのであった。

 翌日出社したクラウドはクラスA仲間が何を聞いても真っ赤になって黙るばかり、同じくクラスSソルジャーに聞かれてもセフィロスは口元をにやりとゆるめるだけで何も言わなかった。
 唯一情報を仕入れることのできるリックにどうしても注目が集まった。
「リック、情報の仕入れを頼むわ。」
「何を?」
「彼女に頼んで何があったか聞いてくれ。」
「彼女じゃないんだけど…」
 そう言いながらも電話でミッシェルから聞き出した話はリックを真っ赤にさせた。その表情を見てクラスA仲間がびっくりしている。
「リック、どうした?!」
「何かあったのか?!」
「いや、クラウディアスタッフがこれほど隊長殿の性格を知らないとは思わなかった。」
「まさか、鴨ネギ?」
「思いっきり鴨ネギ。日ごろやってないような事をしろとダイアナのデザイナーにアドバイスされたんだと。たとえば思いっきり甘えるとかお強請りして見ろってさ。」
「そりゃ、鴨ネギどころかスペシャルメインディッシュだ。」
「キングに取っていい誕生日になっただろうな。」
 クラスAソルジャー達が派手に頭を抱えてため息をついた。
「なあ、俺達ってこんなにお人好しだったっけ?」
「NO!!姫が来てから一転した。」
「だよな。」
「いいんじゃないの?それでもキングは憧れのソルジャーで…姫は最高で最強な仲間ってことは変わらないんだ。」
 クラスA執務室が温かい空気に包まれていた。

 窓の外はもう春の陽射しが揺れていた。



The End