まるで口説かれているようなセフィロスの言葉に真っ赤になりながらも目の前のたくましい体に抱きついていた。
「あ、あの…それでセフィロス。どうしてクラスSの皆さんとパーティーをしないの?」
「私はお前の祝ってくれる誕生日を楽しみにしている。なのになぜあの連中の祝いを受けねばならないのだ?」
「友達じゃないの。」
「仲間とは思うが、友達とは思えないな。まだあいつらに正宗向けて逃げられるだけの信頼感は無い。」
 そーいう問題じゃねーよ!と突っ込みを入れたい所だが、セフィロスは彼なりに友達と呼べるだけの信頼感の線引きをしているようである。それを悟ったのかクラウドがふわりと微笑むと、肩を抱きすくめられた。
「あ、でも俺セフィに正宗向けられた事一度も無いね。俺の事は信用出来ないんだ。」
「愛しい者に刀を向ける事などせぬ。」
 そう言うと更にぎゅっと抱きしめられるとクラウドは思わずセフィロスの胸にしなだれかかった。
「嬉しいけど…本当にいいのかなぁ?クラスSの皆さんが祝いたい気持ちを無下にはできないでしょ?」
「私は、お前さえいればいい。」
 クラウドは真っ赤になりながらもセフィロスの腕の中にいられる幸せを感じていた。

 翌日もクラウドは一生懸命作ったランチボックスをセフィロスに持たせると、行ってらっしゃいのキスと、とびきりの笑顔で見送ると今日の予定を確認した。
 今日の予定は4番街での街頭ロケ。隣接する5番街がレッドーゾーンなので昨日のような事があったらたまったものではない。しっかりと装備を確認し白のロング姿でバイクにまたがると4番街へと走っていった。
 ティモシーとミッシェルが待ち合わせの場所で立っていた。
 その傍らにバイクを停めるとクラウドがかけよる。
「ごめん!遅れたかな?」
「いや。時間5分前。」
「ねえ、なんだか雰囲気悪いわね。」
「うん、今隣の5番街はレッドゾーン入っているから…そこから近いここもちょっと危ないって事なんだ。」

 そう言って携帯を取り出すとクラウドはどこかへ電話した。
「クラウドです。あ、ザックス?今日の巡回って何処?え?俺達だったの?うわ!!あとでエディにあやまっておかなきゃ。ああ。今から4番街の街頭でロケだよ。4番街の担当は誰?」
 携帯の向こうでザックスがブライアンに確認を入れている声が聞こえる。
「4番街はリックとキース、そしてあぶれたエドワードだ。」
「じゃあ安心だ。リックに伝えて、俺ポイント04.38でロケだと。」
 クラウドが携帯を切った後ザックスがリックに振り返った。
「リック、クラウドが4番街にいるとさ。ポイント04.38だと」
「今日は街頭ロケか、昨日反抗勢力の下っ端に乱入されたらしいからな。エディ、4番街の巡回まかせていいか?」
「何だよお前。王女警護隊長に徹する気かよ?」
「俺としてはパートナーがリックだろうとエディだろうと変わらないからいいぜ。」
「モデルの格好で足蹴リできないから行くんだよ。大体姫一人ならなんとでもなるだろうが、撮影スタッフとか、クライアントとか色々と居るからそっちを狙われたら姫が動けない。」
「っていうことは、お前の彼女もいる訳だ。」
 リックがブライアンの言葉に一瞬赤くなりながらも怒鳴りつけた。
「だ、誰が彼女だ!!俺は姫一筋なの!!」
「くそ、赤くなってら。俺の小遣いが減る。」
「おお?!少しは進展してるのかよ?!」
「う、うるせー!!俺に女は不要だ!!」
 リックがパーシーに関節技を仕掛けると、ランディがリックの腋をくすぐる。脇が弱いリックが笑い転げながらパーシーを離すと巡回警らの時間になった。
 クラスAのリーダーであるブライアンがその場に居る仲間に声をかけた。
「行くぞ!!」
 声をかけられた途端に全員の様子ががらりと変わった。どんなにふざけていても任務となるときっちりとこなす、それが出来ないような奴は一人も居ない。整然と並んでトラックに乗り込むとそれぞれミッドガルの街へと別れて行った。

 一方、クラウドはと言うと雑誌のスタッフにクラウディアスタッフから紹介され、『何処が似ているんだよ』という白い目で見られたが、実際衣装を着てカメラを向けると何処からどう見ても本人ソックリなので、雑誌のスタッフが唖然として撮影を眺めていた。
 カフェで人待ちげにコーヒーカップをもって座っている場面。街角でウィンドウショッピングでもしているかのような場面と、いろいろと撮影していると周りにはいつのまにか人垣が出来ていた。
 雑誌のスタッフがクラウディアスタッフに声をかける。
「あ、あの。彼は本当に男なんですか?」
「それを本人に言ってごらん、5秒で叩きのめされるよ。ああ見えても彼は神羅カンパニーのクラスAソルジャーだからね。」
「う、嘘みたいだ。」
「ええ、自分もそう思う事もありますよ。」
 冷静な顔でうなずくクラウディアのマネージャーに唖然とした顔をする雑誌スタッフ。思わず苦笑を漏らすミッシェルの肩を誰かが軽く叩いた。振り返るとリックだった。
「ここはレッド・ゾーンです。危険だから早く撤収して下さい。」
「クラウド君もそう言っていたけど、彼もフル装備だし、君も来てくれたから大丈夫でしょ?」
 にっこりと笑うミッシェルに思わずリックは頭を抱えそうになった。
 『こうなったら俺が守るしかない!』とばかりにリックが周囲に神経を配る。周りを見ながらたまにふとクラウドを見るとカメラを向けられていない時は戦士としての顔をしていたので思わず笑ってしまう。それをミッシェルに見とがめられた。
「あ、やーだ!!リックさんってザックスに聞いたけど、クラウド君に横恋慕してるって言うの本当だったんだ。」
「あ?ああ、まあそう言う事にしておいてくれ。姫を守るのは隊長のためにもなるし、ここも守れる。」
「ふう〜〜〜ん。そう言う事。」
 意味深にミッシェルが含み笑いを漏らすが、リックにはその意味がわからなかった。
 やがて周囲のギャラリーの中から男が数人クラウドめがけて突っ込んできた。それを察知してクラウドの顔がモデルのクラウディアから戦士へと変貌する。
 リックが駆けだすより早く、襟元に隠してあったアルテマウェポンを元のサイズに戻し、飛び掛かってきた男共の手元にあった凶器をたたき落とす。
 ピンヒールにフレアスカートと言う姿で大振りな両刃剣のアルテマウェポンを振り回すというアンバランスなクラウドに、男たちが一瞬とまどうように立ち止まるとすかさず蹴りが決まる。
 そこへリックが素手で殴り込んできた。
「姫!!そんなひらひらした格好でよくやるぜ!!」
「こんな格好させられているから、ストレス発散だ!!」
 あっという間になだれ込んできた男共を気絶させると、リックがそいつらを縛りあげ、携帯で連絡を入れる。
「リックです、反抗勢力の一味と思われる男数人を確保しました。場所は4番街ポイント04.38です。」
 電話を切り終わると3分もせずにキースとエドワードがやってきたのでクラウドが片手を上げて挨拶をした。
「エディ、ゴメンね。今日はこういう訳だから…」
「ああ、知ってる。お前その格好で戦闘したのかよ?」
「フレアスカートがひらひらして、ギャラリーがちらちら見える太ももに釘付けになってたぜ。」
「そりゃそうだろうな。何処からどう見てもクラウディアの姿をしているんだ、さぞびっくりしただろうって。」
 4人のソルジャーが笑顔で会話をした後で乱入した男共をキースとエドワードが連行した。
 リックが周りを見渡すと、クラウドに片手を上げてその場を去ろうとした時に、ミッシェルと目があってふと一礼した。ミッシェルが思わす笑みを浮かべるとぺこりとおじぎを返した。
 雑誌のスタッフが一連の事件をおどおどしながら見ていた。クラウディアスタッフがあまりにも慣れていた様子なので、目の前の少年を何度も身代わりにしたという言葉を今さらながら思い出し納得する。
 戸惑っている雑誌のスタッフに近づくと、クラウドの意思の強い青い瞳がふわりとまた元に戻る。
「で?あとどのくらい撮影が続くんですか?」
 雑誌のスタッフがあわてて確認するとあと4ポーズだったので、さっさと撮りおえると、クラウドが衣装のまま敬礼した。
「では、自分はこれで失礼いたします。」
 その姿があまりにも違和感があったので雑誌のスタッフが思わず頭を抱えてしまったが、目の前のクラウディアはその姿をした少年なので納得せざるをえなかった。
 雑誌のスタッフがクラウドに話し掛けた。
「今度、君にソルジャーとして取材を受けてほしいんだけど。」
「それは自分では決められません。カンパニーに問い合わせてください。」
 クラウドが冷たい目で雑誌スタッフに言うと、きびすを返してクラウディアスタッフの元に歩いて行った。
「ティモシー。俺って取材受けられるような男かな?」
「君自身への取材ならカンパニーに問い合わせは何度か行ってるんじゃないの?ただルーファウス社長が”うん”と言わないだけだと思うけど。」
「そういえば何時だったか、ばれそうになった時があったじゃない?」
「ちょうどネオリバー時計のCMの時だな。あの時もこう言う事会ったよね。」
「ああ、そういえばあったっけ。もう忘れちゃったよ。」
 さらっと笑うクラウドはクラウディアスタッフとてソルジャーにはみえない。しかもいきなりクラウドはミッシェルに顔を赤くしながら耳元で話しはじめた。
「ね、ミッシェル。セフィが驚くとしたらどう言う時だと思う?」
「ん〜〜、あの人がそう簡単に驚くとも思えないわ。なにかあったの?」
「うん…実は…」
 クラウドは赤くなりながらバレンタインの夜の事を話しはじめるとミッシェルがびっくりする。
「ええ?!じゃあサーのお誕生日って明日じゃないの?!」
「急に大きな声を出して、どうしたんだい?ミッシェル。」
 声を掛けてきたティモシーにミッシェルクラウドから聞いた話を始めた。ティモシーも話を聞いて納得する。
「そうだな、あの方なら、簡単にはびっくりしないだろうな。でも、彼も一人の男だから君しだいでは何とかなるんじゃないの?」
「あ、あまり変な格好は願い下げだよ、恥ずかしいじゃないか。」
「グラッグ!サーの事何かわからない?趣味とか好きなブランドとか…」
「ん〜〜、神羅の公式HPに何か無かったっけ?と、いうよりそこにいるもクラウド君に聞いた方が早いじゃないか。」
 ミッシェルはグラッグの言葉に納得した。