クラウドの戸惑いをその剣さばきに感じていたが、自分まで迷っていたら愛しい少年にけがをさせてしまう。
(なんとしてでもクラウドに傷一つ負わすことなくこの状況を打破せねばならない。)
 そう思うとセフィロスは目の前の敵を倒すことに集中するのであった。
「マイティーガード、ドラゴンフォース、シャドウフレア!」
 クラウドが敵の技から一気に3つの技をかけた、召喚士タイプの彼だからできるであろう離れ技である。普通のクラスAソルジャーではまねしようと思ってもできないであろう。一気に上がった防御力に口元をゆるめながら目の前のモンスターに切りかかる。するといきなり何かビームのようなものが空間を切り裂いた。
 そのビームをベビーピンクのワンピースを着たクラウドが剣を盾にして防いでいる。敵の技に取り込むつもりなのであろうか?その技が取り入れられなかった時は身体へと跳ね返ると言うのに、衣装と容姿に似合わず自分の出来うる限りの事をしようとする少年に思わず目を細めた。
 ビームの照射が終わるとクラウドが片足をつきながらも立ち上がる。
「遠慮…しなくて…いいんだよ、ね?」
 そういうとフレアスカートの裾を翻してピンヒールで足蹴りを入れた。
「くっ…ははははは…」
「笑うなよ!俺は本気だっての!」
 日ごろ”ピンヒールで蹴りを入れると効く”と公言しているクラウドらしい攻撃に、思わずセフィロスが声を立ててわらう。
「来い!バハムート・ゼロ!、ネオ!」
「そんなに魔力を使って大丈夫か?」
「大丈夫、最近マジックハンマーを覚えたんだ。」
 敵のMPを吸い取れる技であるマジックハンマーは魔法攻撃を中心にする者にとってはなくてはならない技である。特にクラウド持っている召喚マテリアは強力なだけにMPの消費量が多く、2,3回呼んだら魔力が底をつくのである。
 召喚獣を使っての攻撃でモンスターのHPが一気に削られていく、それを見てセフィロスが一気にたたみかけた。
 踊るような仕草で剣をふるうと敵のモンスターから腕が落ち、がくっと攻撃の手が弱くなった。
 クラウドが攻撃を加えているうちにセフィロスが少し後ろに下がってもう一度ナイツ・オブ・ラウンドを召喚すると残りHPがレッドゲージに入ったのか凶悪なまでの攻撃を仕掛けてきた。
 まっ黒なビームが何度も照射される中をクラウドが縫うように接近しアルテマウェポンを突き立てた時だった。
 モンスターがひと震えして崩れていった。
「や、やったの?」
 荒い息を吐いているクラウドを抱き寄せて落ち着かせると先ほどかけたストップの魔法と結界を解く。今まで止まっていた時間が動き出した
 大きな音がしたのが聞こえたのかティモシーがあわてて駆けこんできた。
「サー、クラウディア、大丈夫ですか?!」
「ああ…何て事はない。」
 少し蒼い顔をしたクラウドを抱き寄せているのは彼が疲れているからなのであるが、どやどやとやってきたホラーハウスの管理人はそうは見なかった。
「ケガはなかったかい?なにやら最終トラップが動いたみたいだったが…」
「ほぉ…あれが最終トラップとは恐れ入るな。一般人が見つけて挑んだら死んでしまうぞ。」
 セフィロスはいつの間にかその手に何かの紋章を持っていた。それをみたホラーハウスの管理人がびっくりする。
「オ、オメガの証?!あ、あんた本当にあいつを倒してしまったのか?!」
 セフィロスの手に持っているものが何であるのか知っているようであった。
「それで、貴様たちはあんなものをどうやって隠して運んでいたのだ?」
「あいつが時空を超えられると言ったら信じねえだろ?しかし、そのオメガの証というのはあいつを倒した証拠なんだ。さすがトップソルジャーだな。」
「ふん、まあよい。倒したのであれば二度と出ては来ないのであろう?」
「ああ、おかげで人寄せが一つなくなったよ。」
 そういうと管理人は苦笑いをして表の看板を書き変えるべくその場を去って行った。


* * *



 その翌日、リックとカイルを引き連れて訪れたクラウドは約束通りお昼時にセブンスヘヴンが出している店に寄った。
 あまり大きくないワゴンのなかでティファともう一人の店員とでパスタを出している。
「やぁ、ティファ。約束通りきたよ。」
「いらっしゃい、クラウド。お昼食べていくでしょ?でも残念ね、ホラーハウスは昨日セフィロスが隠されていた仕掛けを見破ったんだって。クラウドなら出来るって思ったけどなぁ。」
「はははは、ありがとうティファ。でも隊長殿でよかったよ。それ以外の人だったら俺、焼きもちやくよ。」
「何だよ姫、お前も隊長びいきかよ?」
「リックに言われたくないよなぁ。」
「そうだね。セフィロスの使っている香水の銘柄を知りたくて統括締め上げて名前を聞いて半年待ちの予約をするマニアに言われたくないよ。」
「あははははは!それもすごいわね。はい、トマト味のペンネ。サービスでちょっと辛くしてあるからね。」
 ティファから差し出された皿を受け取ってテーブルで食べ始めると、リックとカイルが先ほどの事を聞いてくる。
「モデルのクラウディアの正体がばれるようなことはしてないんだろうな?」
「うん。ストップの魔法が効いているはずだし、部屋に入った途端結界が張られたから俺たち以外誰も入れなかったはずだよ。」
「そうか…」
 ただそう言ってうなずいたリックがふとホラーハウスがあった跡地を眺めていた。そんな彼に気がついたクラウドが思わず謝る。
「ごめんね、リック。ミッシェルってホラーハウス嫌いなんだって。」
「え?ば、バカ野郎!何時俺がそんなことを考えたっていうんだ!」
「え?違うの?なんだ、残念!」
 クラウドと言いあうリックの隣でカイルが苦笑している。小春日和の日差しの中でこんなのんびりした日もたまにはいいかも…と、クラウドは思っていたのであった。

The End