クラウドの姿を道を隔てた公園の生垣から双眼鏡で覗いていたクラスBソルジャーが、隣で姿勢を低くして隠れている上官にあきれたような声で報告していた。
「副隊長殿、サー・クラウドは確実に遊んでいらっしゃいますね。」
「ん?ああ、召喚マテリアでお手玉してるソルジャーを初めて見た。ブライアンが見たら卒倒するな。」
「自分もあんなに強い召喚マテリアでお手玉する方を初めて拝見しました。報告したって絶対信じてくれそうもないから、今撮ってるビデオ、あとで魔法部隊の連中に見せましょうか。」
「ああ、しっかり記録しておけ。あとで報告書書くときに使わせてもらうよ。」
そういうと、手元の通信機で仲間の位置を再確認した。
「定時報告。こちらエドワード、各自現在のポジションを報告せよ。」
エドワードの命令に答えるように胸元の無線に順次報告が来る。部下たちはあらかじめ配備した場所から動かずに潜んでいるのを確認し、再び視線を正面の館に向ける。
「リックにしごかれようと、特務隊の連中に八つ当たりされようと、クラウドだけには逆らわないようにしないとダメだな、あいつ竜王のダブル召喚してやがる。」
道の向こう側の上空をふと見上げたエドワードの視線の先にはバハムート2匹が優雅に空を舞い踊っていた。
「う〜わぁ。かっこいい〜〜!」
「ま、たしかにあれはかっこいい召喚獣だな。っつーか、竜王2体も召喚してMP大丈夫か、あいつ。それに次は何を壊す気なんだ?せめてゴドーの屋敷だけにしてくれよ。」
自分たちに害がないことがだんだんわかってきたゆえか、エドワードは愚痴りまくりで、何かをメモしていた。
2体の竜王達の姿は、キャンプ地に残っていた魔力の少ない兵たちからも、はっきりと見えていた。
「リック、あれバハムートだよなぁ。」
「姫が召喚したんだろうな。先ほどは最初に懐いた竜王が召喚されていたが、あそこまでやる必要あるのかね?」
あきれたような顔をするリックの隣で同じようにあきれまくっているカイルの後ろで、へとへとになっている魔力の少ない残留兵たちが座り込みながら口をあんぐりとさせていた。
そして、ちょうどその頃、ゴドーの屋敷から20km以上離れているダチャオ像下の魔晄泉を封鎖に出かけたセフィロスが、後ろを振り返りながらつぶやいた。
「まったく、あいつは何を遊んでいるんだ。」
ひとりごとのようなつぶやきを聞き取っていたブライアンが何のことだかわからず首をかしげながら訪ねた。
「キング、クラウドのことが心配なのですか?」
「いや。ああ、ある意味では心配だな。あのバカ、バハムートを2体同時に呼び出したようだ。」
「あ…。そういえば同時召喚をやってのけるような奴でしたが、MP的に足りるのでしょうか?」
「それは本人が一番よく知っているはずだ。クラスSに上がろうという奴が自分の技量も読み取れなくてどうする。」
切り捨てるような言葉に、日頃の溺愛ぶりを知っているブライアンが思わず吹き出しそうになるのを必死に我慢した。
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