FF 7 二次小説 − SHAKE ! −
神羅カンパニー本社ビル67Fにあるセフィロスの執務室に、山嵐のような黒髪の男がのっそりと現れた。
セフィロスがその男を見たとたんにぎろりとにらみつけて怒鳴った。
「ザックス!貴様何時だと思っているのだ!!」
「す、すまねぇ。なにしろクラウドの奴朝早くから出掛けちまって…」
「貴様、訓練兵のクラウドに今まで起してもらっていたのか?!」
「アイツ寝起きいいし、飯作るのうまいし…俺、あいつが同室になってなんかメチャクチャ得した気分。」
「残念だな、クラウドはしばらく地獄の実地訓練だ。」
「ん?ああ、もうそんな次期なんだな。あいつ大丈夫かな?」
「ふん!貴様にしてみればやたらにお優しい事だな。」
「あいつ…腕はいいけど、乗物酔いするんだ。」
ザックスはここにはいない弟分ともいえるクラウドの事を思いやっていた。
* * *
訓練所の片隅に訓練兵が集まっていた、目の前に軍用トラックが2台並んでいる。
いまからそのトラックに乗り込んでグラスランドエリアへ移動して、グラスランドエリアでキャンプしながら実戦訓練を積む事になっていた。
(うわぁ…どうしよう?!俺、乗物酔いするんだよな。)
そんな事を思いながらクラウド・ストライフも訓練兵の一人として、集団の中に交じっていた。
教官のレイナードが並んでいる訓練兵に向かって声をかけた。
「総員、搭乗開始!!」
号令と共に訓練兵が指定されたトラックに乗り込み、搭乗が完了するとトラックは轟音を響かせてカンパニーを後にした。
軍用トラックという物は物資を輸送する物ではあるが、極力値段を抑えているので当然乗り心地などあるわけがない。
そこに40人からの兵士を詰め込んで走るのである。
当然のように中はかなり揺れる。
5分も走ると次第にクラウドの顔が青くなり額に脂汗が浮かんできた。
クラウドの変調に同じグループのアンディが気がついた。
「クラウド。顔、青いけど大丈夫?」
「おまえ、乗物酔いするのかよ?!」
「うわ!!どうすんだよ?!まだ到着まで30分以上有るぜ。」
「ううう…酔い止め飲んでいるから、少しは持つと思ってたのに…」
(酔い止め飲んでも酔うんかい!!)
アンディは思わず突っ込みを入れたくなったが、クラウドの酔いが酷くなりつつあったので、ともかく教官に連絡を取ろうとした。
しかし、ここは軍用トラックの荷台。
スパイが乗り込む事も考えてあったので携帯の電波が届くわけがなかった。
ひたすら我慢するしかない。
トラックはミッドガルを抜け一路グラスランドエリアへと入って行った。
小一時間もかかっただろうか?やがて派手な音を立ててトラックが止まった。
「た…助かったぞ。クラウド。」 いや…正確にはまだ助かってはいないぞ!
トラックから降りて外の空気を吸うと、クラウドの気分も少しはマシになったのか、息こそまだ荒かったがなんとか一人で立っていられるようだ。
教官の指示でテントを張っていく。
テントを張り終わると訓練兵が整列した。
教官が全体を見渡して命令した。
「これから貴様達はグループを組んでこのグラスランドエリアで最低4体のモンスターを倒す事!!制限時間は17:30。それでは解散せよ!!」
訓練兵がグラスランドエリアに散らばった。
クラウドはアンディ、ルイス、ウェンリーとグループを組んでいた。
グラスランドをさまよっているとムーが現れた。
「しめた!!ムーだ。」
「ラッキー、行くぜルイス、クラウド!」
「おう!!」
「ああ!!」
ライフルを構えてクラウドがムーを狙う。
射撃の腕は訓練兵1なのでルイスたちが安心していると、やはり一発でムーを仕留めたクラウドがにやりと微笑む。
「さっすがクラウド!!」
「俺達、クラウドと組めて幸せ〜〜!!」
「俺ばっかりがやっていちゃ訓練にならないんだけど。」
「いいじゃんか。グループで4体倒せばいいんだろ〜〜」
そこまで話していて3人の表情が行きなり固まった、クラウドの後ろに野生のチョコボが立っていたのであった。
「ク、クラウド…後ろ。」
「そっと振り返れよ。」
「え?何?」
クラウドとチョコボの目線が出会った時、いきなりチョコボが反応した。
「クエ〜〜〜!!!」
羽根をばたつかせてチョコボがそのへんをワタワタと歩いている。
クラウド達4人はその様子を呆れたように眺めていた。
やがてチョコボが羽根をばたつかせるのをやめるといきなりクラウドに向けて振り向き、口に加えていた赤い石をクラウドに手渡した。
「え?何?俺にくれるの?」
クラウドが赤い石を受け取った途端チョコボはクラウドをちょいとくわえて、背中に載せ凄い勢いで走り去って行った。
「ちょ、ちょっとまって〜〜!!」
「うわ!!クラウドが誘拐されちゃった!!」
「大変だ!!レイナード教官に連絡しなくちゃ!!」
3人はあわてて本営に戻りレイナード教官にクラウドがチョコボに連れて行かれた事を伝えた。
「はぁ?!ストライフが野生のチョコボに誘拐された?!」
「はい、羽根をばたばたとさせながらそこらへんを移動していたと思ったら、急にクラウドに赤い石を渡して…それから背中に載せて…」
「それって、踊っているような感じか?」
「ええ、そのようにもとれました。」
「ストライフの奴、いくら髪型がチョコボに似てるからといえ野生のチョコボに求愛されたのか。クックック…」
3人はレイナード教官のつぶやきを聞いて思わず吹き出していた。
「ク、クラウド…プクククク…」
「でも、クラウドを助けないと…」
「ああ、そうだな。ストライフの現在地は、っと。」
神羅カンパニー治安部に採用された者はたとえ訓練兵でもドッグタグで管理され、たとえ脱走してもドッグタグに産め込まれている発振器でその所在がわかるようになっているのである。
「まずいな、ストライフのいる場所はミッドガルズオムのいるあたりだ。」
そう言うとレイナードは本営に接地された通信機でカンパニーの治安部を呼び出した。
「レイナードです。ストライフ訓練生がチョコボにさらわれて、ミドガルズオムの生息地に連れ去られました。こちらでは対処出来ないので対処願います。」
通信機の向こうからあわてた声が聞こえる。
それはそうであろう、クラウド・ストライフは訓練兵のトップであり、ザックスと同室になったおかげで彼に連れられてセフィロスの執務室で書類の整理をしていたおかげか、英雄にも目をかけられていたりする上に、その訓練生が書類の整理をしはじめてから書類を溜めるので有名な1stソルジャーの書類提出率が上がっていたのであった。
そんな将来有望な人物を失う訳にはいかない。
あわててザックスに連絡を入れた。
* * *
カンパニー本社67Fにある執務室ではコーヒーを飲みながらセフィロスが書類を整理していると、ザックスの机に置いてある携帯が鳴り響いた。
ザックスは先程部屋を出て行った後だったので仕方なくセフィロスが出る。
「何だ?」
「サ、サー・セフィロス?!失礼いたしました、サー・ザックスの携帯だと…」
「いや、ザックスの携帯だが。」
「ではサー・ザックスはそちらにみえるのでしょうか?」
「いや。何の用だ?伝えておく。」
「実は訓練生のクラウド・ストライフが野生のチョコボにさらわれてミッドガルズオムの生息地域に連れ去られた模様です。」
「チョコボが人間を連れ去っただと?!」
庶務からの連絡に呆れたような声を出した時、扉が開いてザックスが入ってくると、セフィロスが自分の携帯を手に持っているのが目に入った。
「あ?何?何の電話?」
「クラウドが野生のチョコボに誘拐されてミッドガルズオムの生息地域にいるんだそうだ。」
「なんだって〜〜〜?!そんなん訓練生じゃ生きていられねえぜ。わりぃ旦那!俺ちょっと行ってくるわ!!」
「お前一人で大丈夫な訳なかろう。」
「あん?旦那も行ってくれる訳?」
「あいつがいるとお前の書類の停滞が無くなって、私が責任を負わずにすむ。」
「ひ〜〜ん、自分のために動くのねん。まぁいいや。じゃあヘリ一台回せねぇかな?」
「仕方がないな。」
そう言ってセフィロスが何処かへ電話を入れると、エレベーターに乗って最上階へと移動する。
最上階にはヘリコプターがすでに待機していた、扉を開けてザックスとセフィロスが乗り込むとヘリコプターは一路グラスランドエリアへと機種を向けた。
* * *
「こ、ここは何処だぁ?!」
一方、チョコボに連れ去られたクラウド君は目の前に湿地が広がる山の麓に一人ぽつんとたっていた。
自分をつれてきたチョコボは自分をここに置くと、一声鳴いてどこかへ走っていった。
クラウドはキャンプ地に戻ろうと湿地に足を踏み出そうとしたが、なにやら嫌な予感がする。
どのくらいぽつんと立っていただろうか?しばらくすると、さっきのチョコボが口に何かをくわえてやって来た。
よく見ると枯れ枝やら枯れ草をくわえられるだけくわえていた。
その枝や草を置くとまた再びチョコボはどこかへ走り去って行った。
ふと上空を見るといつの間にか飛来したのであろうか?ヘリコプターが一機、空を飛んでいる。
クラウドがヘリコプターに向かって手を振りながら湿地に一歩足を踏み入れた。
上空のヘリコプターからそれを見ていたザックスが思わず怒鳴った。
「あの馬鹿!!わざわざミッドガルズオムの居場所に足を踏み入れるな!!」
「できる限り降下しろ!!」
セフィロスがヘリのパイロットに指示をすると、正宗を片手に扉を開けてヘリの足に片足をかけて、いつでも飛び出せるような体勢をとっていた。
ヘリの高度がさがるのとほぼ同時にミッドガルズオムが現れる。
「うわああああ!!!!」
悲鳴を上げながらあわててクラウドが後ろにさがるがもう遅い。
ミッドガルズオムは目の前に居る。クラウドをにらみつけながらその赤い舌をちろちろと見せつけていた。
ミッドガルズオムがクラウドに向かって尻尾を振り上げようとした時、へりから飛び降りたセフィロスの正宗が巨大な蛇の尻尾につきささった。
「サ、サー・セフィロス!?」
黒いロングコートに流れるような銀色の髪の毛、その身長ほどあると言われている長身の片刃の剣を持つ余りにも有名な男の姿をクラウドは憧れの眼差しで見つめていた。
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