ヘリから舞い降りてきた軍神をクラウドは憧れの眼差しで見つめていた。
その後ろから山嵐のような黒髪の男が現れる。
「俺を忘れちゃ嫌だよ〜〜ん!!」
ザックスがバスターソードをもって走り込んで来ると、セフィロスがクラウドに黄色いマテリアをポンと渡す。
「持っていろ!」
そう言うと30mを越える巨体を持つミッドガルズオムに向かって手のひらを向けて何か唱えた。
「ファイガ!!」
紅蓮の炎がミッドガルズオムに向けてはなたれた、炎に巻かれながらミッドガルズオムが反撃してきた。
「クラウド!そのマテリアを掲げろ!」
「アイ・サー!!」
セフィロスニ言われた通りクラウドが手に持ったマテリアを掲げると、ミッドガルズオムの攻撃がマテリアに吸収される。その隙にザックスがバスターソードで切りかかった。
ミッドガルズオムがのたうち回っていた。
クラウドは手のひらに乗っているマテリアを不思議な気持ちで見ていた。黄色く輝くマテリアからなにかしら力のような物が伝わってくるとその力に導かれるようにクラウドがつぶやいた。
「ベータ。」
マテリアの黄色い晄が強くなったと同時にミッドガルズオムに向けて、先程吸収した技が放たれた。
クラウドが炎系の魔法で攻撃しているのをみてザックスがびっくりしてセフィロスにたずねた。
「あにぃ?!旦那、訓練兵に何させんだよ?!」
「知らないのか?敵の技だ。」
しれっと答えるセフィロスにザックスはあっけにとられていた。
目の前のミッドガルズオムはすでに息耐えていて巨体を横たえていた。
ザックスがクラウドの元に駆け寄った。
「大丈夫か?クラウド。」
「あ?あ、はい。」
クラウドはまだ手のひらに有る黄色いマテリアをのぞき込んでいた、ポケットに入れていた赤い石と見比べる。
クラウドの持っている赤い石をみてザックスがたずねた。
「あれ?どうしたんだよ、それ。」
「俺をここに連れてきたチョコボが持っていた。」
「見せて見ろ。」
ザックスがクラウドの手から赤い石を取り上げた所に先程のチョコボが帰ってきた。野生のチョコボはザックスを見ると急に雰囲気を変えた。
「クエ〜〜〜!!!」
チョコボが目を血走らせてザックスに向かってくちばしで小突いたり、ケリを入れたりしているのをみてセフィロスがザックスに話しかけた。
「ザックス、貴様そのチョコボに敵として見られているぞ。」
「あ?!な、何で?!」
「その赤いマテリアをこっちによこしてみろ。」
ザックスは言われた通りセフィロスに赤い石を渡すと、チョコボの目線がザックスからセフィロスへと移った。
ふとクラウドの足下を見ると枯れ枝やら枯れ草が落ちているのでセフィロスがあることに気がついた。
いつものような冷淡な笑みを浮かべてチョコボを睨みつけた。
「クックック…人間相手に何を考えている。」
鋭い視線にチョコボがたじろいだ隙に、セフィロスがクラウドを小脇に抱えるとホバリングしているヘリコプターへと駆け寄り、垂れていたロープに捕まるとヘリへと乗り込む。
ザックスがセフィロスの後に続くとヘリの扉を閉めると振り返って聞いた。
「なぁ、セフィロス。何が解ったんだ?」
「あのチョコボはクラウドを気に入ったらしいな。足元に有ったのは巣作りの材料でこれはどうもプレゼントだったらしい。」
「ぶ!!お前野生のチョコボにプロポーズされたのか?!」
「え?!な、なんだって〜〜?!」
「いや、そう言う事になるようだな。見ろ、あのチョコボ怒りまくっている。」
クラウドが下を見ると野生のチョコボが怒りをあらわにして羽根をばたつかせていた、その時ヘリが風を受けてぐらりと揺れた。
「うぐっ!!」
「ま〜、奥さんもしかして”つわり”?!」
「ば、馬鹿野郎!!…うっ!!」
「あきれるほど乗り物に弱いんだな。」
「す、すみませんサー!」
クラウドは青い顔をして必死になって口を押さえていると、5分も経たずにヘリはグラスランドエリアに設営されていたキャンプ地のそばに舞い降りた。
教官のレイナードとクラウドのグループのアンディ達が駆け寄ると扉を開いて3人が降りてきた。
「うわ!!サー・セフィロス!!」
「え?!本物?!」
「ば、馬鹿。失礼だぞ!!敬礼!!」
教官の一言にあわててひよっこ達が敬礼をする。
その後ろから英雄の右腕といわれているザックスとともに、クラウドが姿を現した。
あわてて教官が駆け寄った。
「す、すみませんでした。わざわざ閣下のお手を煩わせる事になるとは…」
「いや、それはかまわん。私としてはこいつを失う事の方が大変だ。」
「え?!」
教官はセフィロスの言葉を信じられないような顔で聞いた。
向かう所敵なしの英雄とまで呼ばれる男が、たった一人の訓練生のためにへりを飛ばして来てくれるなどとは思っていない上に、その英雄から”失うことができない”という発言を聞いたのだ。思わずクラウドの顔をまじまじと眺める。
ザックスがそれに気がついた。
「教官、何をそんなにこいつの顔を見てんの?あんたもチョコボと一緒な訳?」
「あ、いえ。そういえばストライフはサー・セフィロスの秘書官でしたな。」
レイナード教官が手を打って納得した途端にセフィロスがきびすを返してへりに戻ろうとする、クラウドがそれを見ておじぎをしてお礼を言った。
「ありがとうございました。サー・セフィロス。」
「いや、山猿の書類が溜まって執務室を押しつぶす前に帰ってこい。」
「アイ・サー!」
びしっと敬礼をしてクラウドはセフィロスを見送った。
悠然とヘリに乗り込むセフィロスの後ろをあわててザックスが追いかける。
「セ、セフィロス〜〜!!俺を置いて行くなよ〜〜」
「煩い!貴様こそチョコボに惚れられて一緒に暮らせ!」
「ひ〜〜〜ん、いけずぅ〜〜 優しいくせにつれない御方。」
二人がヘリコプターに乗り込むとヘリが上空に舞い上がる。
ミッドガルへと機首を転じてヘリが大空を進んで行ったのを見送った後、クラウドはポケットに入ったままのマテリアを思い出す。
「あ!これ、借りたままだった。」
レイナードがクラウドの手のひらに有るマテリアを見つけた。
「敵の技と…召喚マテリア?」
「はい。敵の技はでっかい蛇を倒す時にサー・セフィロスから借りました。赤い方はチョコボが・・・」
そこまで口にするとクラウドが押し黙る。
アンディとルイス、ウェンリーが思わず吹き出しそうになった、レイナード教官がクラウドからマテリアを取り上げた。
「サーがお前にマテリアを貸した?!」
「はい、蛇の出した技を一旦取り込んで、それがこのマテリアから…」
「なに?!ベータをラーニングしたのか?!」
レイナードは改めて目の前に居る訓練生を眺めた。
訓練兵でマテリアを扱える者は皆無に等しい。しかし実際に目の前に居る少年はこのマテリアで”敵の技”をラーニングし、それを放ったらしい。
「なるほど。サー・セフィロスが目をかけるはずだな。」
レイナード教官がクラウドに二つのマテリアを返すと逆に尋ねられる。
「こっちの赤い奴は…なんなのでしょうか?」
「ああ、それか。貴様にはぴったりだよ、明日にでも使って見ろ。貴様の今日の訓練はベータをラーニングした事で合格としよう。アンディ、ルイス、ウェンリーは明日追試だ!」
「うわ!」
「ひえ!!」
「え〜〜?!差別だ〜〜!!」
「ならばこの”敵の技”をもってミッドガルズオムからベータをラーニングしてくるか?」
レイナードが自分の持っている”敵の技”のマテリアを見せるとアンディー達が首を横に振った。
「自分達にそのような力が有るとは思えません。」
「明日の追試を頑張らせていただきます!」
「あの。クラウド抜き…ですよね?」
「当然だな。」
レイナードがうなずいた。
* * *
翌朝。
決しておいしいとはいえない携帯食を食べて訓練兵が整列すると、レイナード教官が今日の目標を告げる。
「今日は敵の技のラーニングの方法を実地で覚えてもらう。ストライフ、前へ!」
「アイ・サー!!」
クラウドが一歩前に出るとレイナードが訓練兵に言い渡す。
「貴様達に出来るとは思わないので、実際ラーニングしたストライフに見本をやってもらう、しっかり見ておくこと!!」
訓練兵が敬礼をした。
レイナードがクラウドを促してグラスランドエリアへと歩き出す。
後ろからアンディ、ルイス、ウェンリーがライフルをもって従っている。
レイナードが手段を説明しはじめる。
「まずムーを探しだす。」
言っているうちにムーが姿を現す。
アンディーがライフルを構えて撃ったがムーの尻尾をかすっただけだった、ムーが怒ってこっちに向かってきた。
「ストライフ、敵の技マテリアを!」
レイナードが叫ぶと同時にクラウドは昨夜のうちにバングルにはめておいた、敵の技マテリアをかざす。
ムーが自爆をしかけたが敵の技がそれを吸込んだ。
「これでストライフのマテリアがムーの技”Lv4自爆”を覚えた、次はこれを使ってチョコボの技をラーニングする。」
ポケットからミメットの野菜を取り出すと再びグラスランドを歩き回った、するとレブゴリン2匹をつれた野生のチョコボに遭遇する。
「ふむ。普通は”チョコボ寄せのマテリア”が必要なんだが、ストライフのおかげでチョコボが寄ってくるな。」
レイナードが独り言をつぶやきながらチョコボにミメットの野菜をほおりなげる、その間にルイスとウェンリーがレブゴリンに向かってライフルを撃った。
チョコボが音に驚くが目の前に再びレイナードがミメットの野菜をほおりなげる、そうこうしているうちにクラウドが敵の技マテリアから先程ラーニングした”Lv4自爆”を放った。
チョコボは羽根をばたつかせてチョコボックルを放ってきた、クラウドがチョコボの放った技をマテリアで吸収するとチョコボが逃げ出して行った。
訓練兵が感心したような顔で一連の動作を見つめていた。
その後ろの方から悲鳴が上がった。
訓練生が左右に別れるとクラウドの目の前には昨日のチョコボが立っていた。
(うわ!!誰か助けて!!)
クラウドが心の中で叫んだ時頭の中に直接何かの声が聞こえた。
「クピポォ〜〜。」
「へ?!こ、このマテリアって?」
クラウドが不思議そうな顔でそう言うと左手を高々とあげると、バングルにはめられていた赤いマテリアが光り輝いた。 するとどこからか凄い勢いでチョコボが走ってきた。
背中には額に”必殺技”と書いたハチマキを締めたモーグリが乗っている。
モーグリを載せたチョコボがクラウドを誘拐したチョコボに体当たりをした。
体当たりをされたチョコボが逃げて行った。
モーグリを載せて体当たりをしたチョコボはしばらく目を回していたようだがいつの間にか消えていた。
ざわつく訓練兵にレイナードが説明を始めた。
「今チョコボに突進したチョコボはストライフが持っている召喚マテリアで召喚したチョコボ&モーグリという召喚獣だ。ストライフは魔導士タイプのようで魔力が有るから召喚出来たが、貴様達で召喚出来る物が居たら借りてやってみるが良い。」
訓練兵達が一応に押し黙った、レイナードがそれを見てうなずく。
「そうしょげるな。訓練兵でマテリアが使える方がおかしいのだ。貴様達も訓練しだいでは十分使えるようになるぞ、今日の午前の訓練はこれまで、全員ストライフに敬礼!!」
訓練兵がクラウドに向かって敬礼をするとクラウドも照れたような顔をして敬礼を返した。
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