FF ニ次小説
 ジュノンに到着した訓練兵とセフィロス、ザックスたちを、タークスのレノが待っていた。

「待っていたんだぞ、っと。」
「よう、レノ。訓練兵の配置は?」
「ここにあるんだな、っと。」

 レノがジュノンの基地の地図を広げた、赤くマークされているポイントが9ヶ所あった。

「ここにそれぞれ一人ずつ、そしてプレジデントの車にセフィロス閣下ともう一人、ザックスは前の車に乗るんだな、っと。」
「一般兵も配置されているんだな?」
「当然だな、っと」

 レノが配置図をしまうとザックスがクラウドと後ろに居る訓練兵に言い渡す。

「まったく、あのジジイは…初々しい訓練兵を前面に出して何を考えているんだろうかね?ともかく一般兵たちも居るから安心しろ。」

 訓練兵達の顔に安堵の色がうかがえた。
 クラウドを残して訓練兵達をレノが引き連れて行くと、ザックスがっちりとホールドして頭をぐりぐりと撫でる。

「ク〜ラ〜ウ〜ドォ〜!!いいかぁお前はこの危険なおっさんと、ヒゲだるまと一緒に車に乗るんだぞ、しっかり酔い止め飲んでおけよ。」
「はい。」

 セフィロスとザックスに従いながらクラウドが歩きはじめる。
 ザックスにもらった酔い止めを噛みながら、目の前に有る黒塗りの車の前で立ち止まるしばらく立って待っていると、赤いじゅうたんの上をプレジデントがタークスに守られて歩いてくる。

 クラウドが敬礼をするがザックスもセフロスもその場を動かなかった。
 プレジデントが通り過ぎるまで自然体で立っている。
 しかしその神経は四方へと配られていた。

 プレジデントが車に乗り込むとセフィロスが隣に乗り込む。
 助手席にクラウドが乗り込むと車はゆっくりと走り出した。

 クラウドの手に拳銃が握られている。
 神経をあちこちに配っている、拳銃を握る手が白くなっていた。

 車はジュノンの街中から港へと移動する。
 港のエレベーターの前で車が止まるとすぐに扉を開けてクラウドが後ろ座席の扉を開ける。
 セフィロスが左右に目を配りながら姿を現すとクラウドの反対側に立つ。
 悠然とプレジデントが姿を現す。
 クラウドが先導して潜水艦ドックへと歩いて行く手順となっていたので、左右を見てクラウドがドッグを目指してゆっくりと歩き出す。
 庶務からの連絡でなるべくゆっくり歩くようにと注意書が入っていたのだった。
 連絡を読んだ時は”そんなものなのか・・”と思っていたが、プレジデントの体格を見た時すんなりと納得する。

(この体格ではゆっくりとしか歩けないな。)

 四方に目を配りながら歩くクラウドの気配を感じてセフィロスがにやりとする。
 訓練兵とはいえ目の前の少年がやるべき事を悟って全力でこなしている。

(この少年は磨けばきっと大化けするな。)

 そう思いながらプレジデントの後ろを歩いていた。
 やがて潜水艦ドッグに到着すると兵器開発部門統括のスカーレットが、けばけばしい化粧と露出過多なスーツ姿で立っていた。

「あらぁ今日は可愛い子ちゃんに守られてるのね、まるで美女と野獣よ。キャハハハハハハハ!!」

 甲高い声でけらけらと笑うスカーレットに思わずクラウドは”げぇ!”っとなった。
 しかし重役相手に文句を言うわけにもいかず、クラウドが黙り込むとスカーレットが近寄ってくる。
 化粧品の匂いと香水の嫌な臭いが鼻につんとくるのを必死でクラウドは我慢するが、じろじろと上から下まで眺められるので思わずキツい目でにらみ返す。

「へぇ…いい目をしてるわね。」

 スカーレットがそう言うときびすを返して潜水艦へと歩いて行く。
 クラウドがその後ろをゆっくりと歩き出すとプレジデントとセフィロスが歩き出す、潜水艦の手前でスカーレットが立ち止まりハッチを開いて手招きしている。

 クラウドがハッチの中をのぞき込み安全を確認しようとした時に、銃声がして近くに着弾した。
 瞬時にクラウドがプレジデントを潜水艦の中に引きずり込むと、セフィロスが着弾の角度と方向で狙撃主の場所を割り出したのか一気にジャンプした。
 スカーレットがキャンキャンクラウドの耳元でわめく。

「チョット!セフィロス!!そいつをぎちょんぎちょんにやっつけなさい!」

 遠くでセフィロスのサンダガが放たれた。
 その放電のショックで潜水艦がドックを離れた。

「なにぃ?!」

 狙撃手を叩きのめしてセフィロスがあわてて潜水艦に乗り込もうとするが
 水が浸入してきたのかスカーレットがきっちりと締めた後だった。

 一方潜水艦の中ではスカーレットがきゃんきゃん騒いでいた。

「ちょっと〜〜〜!!どうするのよ!!こんなの操縦出来るの?!」
「やった事ないけど…やるしかないのでしょ?!」

 きゃんきゃん騒ぐスカーレットにクラウドがそう言うと操縦席につく、操縦レバーに手をかけようとすると船体がぐらりと揺れた、思わずクラウドがコントロールパネルに身体をぶつけるとその瞬間にレバーを押し倒してしまった。
 潜水艦がぐんと機首をさげた。

「うわ!!」

 クラウドが思いっきりレバーを引くと機首が上がる。
 潜水艦が浮上した様なのでドッグへと戻れるように必死に操っているが、なかなか巧く操縦出来ない。
 やがてハッチを叩く音がした。

「私だ、中に入れてくれ」

 外からの声を聞いてあわててスカーレットがハッチを開けるとするりと、セフィロスが入り込み操縦席で操縦桿を必死に操作するクラウドの肩を叩くと少年に安堵の色が浮かんだ。

「自分で操縦すると酔わないのか?」
「あ…そんな事、忘れていました。」
「それならばまだ見込みはあるな。」

 そう言うと操縦桿を握るクラウドの隣に座り指図始めた。

「操縦桿を一旦まっすぐ戻す、次に右に30度回頭、今度は左に30度切りながら逆噴射。」

クラウドがセフィロスの言われた通りに操作するときちんとドッグへ戻った。
 電源をオフにしてクラウドが溜め息をついた、クラウドが桟橋に出て安全を確認する。
 プレジデントとスカーレットがゆっくりと出口に出て行くと、桟橋の麓にタークスが待っていた。
 最後にセフィロスがゆっくりと姿を現すと、クラウドが待っていたように一礼した。

「ご迷惑をおかけしました、サー。」
「良くやったな。貴様があそこでプレジデントを潜水艦の中に引きずり込んでいなければ狙撃されていた。」
「おほめに与り光栄です!」

 クラウドが敬礼をした。

 プレジデントの警護を終えてカンパニーに戻ると、レイナード教官がニコニコ顔でクラウドを待っていた。

「ストライフ、聞いたぞ。凄いじゃないか、お前の機転でプレジデントを守れたんだそうだな。」
「いえ、狙撃される前に察知出来なかったのでマダマダです。」
「さすが優等生の答えは違うな。訓練兵でそんなことができる者はいない、それが出来れば即ソルジャーだよ。」

 クラウドは教官の言葉を聞いてほっと安心した。


* * *



 翌日、本社ビル67Fにあるセフィロスの執務室では、届いている荷物を眺めていたザックスが部屋の主に話しかけた。
「なぁセフィロス。スカーレットから何か届いてるぜ。」
「へんな兵器じゃないだろうな?」
「いや、こんな小さくて軽い兵器なんてあるのか?」

 ザックスが手のひらで箱をもてあそんでいた。
 セフィロスがその箱を見付けるとザックスから取り上げる。

「何だ、クラウド宛てじゃないか」
「あん?!あいつ何かやったのか?」
「まぁな。しかし何だろうな?」

 そこにクラウドが扉をノックして現れた。

「すみません、訓練がちょっと伸びてしまいました。」
「よ〜ぉ、優等生。スカーレットに気に入られたようだな。」
「あの人化粧が濃い上に香水との愛称が最悪ですよ。潜水艦の中で乗物酔いする前にそっちの匂いで気分が悪くなりました。」
「どうやらその香水のようだぞ。」

 セフィロスが箱の中からつまみ出した物は、茶色の小さな小瓶だった。ボディに文字が書いてある。クラウドにそのビンを手渡そうかどうか迷っているらしい。

「毒…か、宝条制作じゃないだろうな。」
「だぁ〜〜!!!それ下の方に小さく人の名前が書いていないか?!」
「ああ、これか?それがどうした。」
「ビンの口が切ったような後があれば別だが、それはお姉ちゃんが喜びそうな有名な香水なの!」
「ふん、そういえば宝条の奴が作ったのであればまともに”毒”だなととは書かないか。」

 セフィロスが箱を逆さまにすると、香水のビンと一緒に中から紙切れが一枚ひらりと出てきた

”昨日の可愛い子ちゃんへ。

この香水が似合うような女になったら勝負してあげるわ。

スカーレット”


 読み終わったとたんザックスが腹を抱えて笑い転げた。
 クラウドが意味がわからずにたずねた。
「へ?!ど、どういう意味でしょうか?」

 セフィロスが思わず眉間に皺を寄せて右手の人差し指で額を支える。

「お前はスカーレットに最後まで女の子に見られていたということだ。」
「え、ええ〜〜〜〜?!」

 クラウドの声にザックスが更に腹を抱えて笑い転げている。

「ひ〜〜〜ひ〜〜〜!!腹痛い!!きちんと治安部の一般兵の式服を着込んでいたっていうのにあの年増女!!!」

 目に涙まで浮かべて笑い転げるザックスにクラウドがセフィロスから奪った香水を一気にザックスにぶちまけた。
 部屋中に甘くてセクシーな香が充満する。

「うわ!!なにすんねん!!」
「人のことをさんざん笑った代償だ!せいぜい香水の香をさせて女の子に嫌われるんだな」
「な!!なんどすてぇ〜〜?!」

 あわててザックスがシャワーを浴びに行くが時既に遅くその日一日中ザックスからプワゾンの香が立ち込めていたためナンパ目的で女の子に声をかけても総スカンをくってしまった。
 その余波はしばらくザックスが女の子に声をかけても、振り向いてももらえなかった事のほかに、しばらくセフィロスの執務室の中にプワゾンの香が充満していた為、英雄にもしばらく移り香が残っていたのか、言い寄る女が極端に減ったと言うことであった。



The end