5番街の反抗勢力一掃のために女装してミッションに参加してから、クラウドの周でいろいろなことが起こりはじめていた。
しかし当の本人は全く気がついてはいなかった。
FF7小説 クラウド 神羅偏 「TEA TIMEに花束を」
訓練生であるクラウドは毎日訓練を受けてから午後の自由時間に、セフィロスの執務室にやってきてはザックスの溜めた書類を整理したり、二人が出掛けるミッションに必要な書類を整えたりしていた。
そのおかげかクラウドはソルジャー達にセフィロスの秘書官であると認識されていた。
訓練所を出て訓練生の制服のまま本社67Fにあるセフィロスの執務室へ行く為にロビーを横切ろうとした時、総務部にいる顔見知りのお姉さんが声をかけてきた。
「あ、クラウド君。今からサーの所?これ、差し入れだけど持って行ってくれないかな?」
「あ、どうしようかな?サーに知らない人からプレゼントをもらってはイケマセンって言われているんです。」
「そう?でも君と私は顔見知りでしょ?」
「え?ええ、そうですけれど…」
ザックスの書類を提出しているクラウドは総務のお姉さん達とすでに顔なじみになってしまっていたのだった。
「あ〜あ、残念だわ。クーベルチュールの完熟チョコバーを見付けてきたんだけど これ、おいしいのになぁ。」
チョコレートと聞いて甘いもの大好きのクラウド君の喉がゴクリとなります。
すかさずアメリアが紙包みをしまおうとするのをみとると、思わずクラウドから声が出てしまいます。
「あ、アメリアさん、それ中身は未開封なんですよね?」
「もちろん、クラウド君にあげるのに変な事しないわ。」
そう言ってアメリアがにっこりと笑うとクラウドに紙包みを渡しながらささやいた。
「ねぇ、クラウド君なら知ってる?サー・セフィロスって同棲しているって。」
「え?!サーが?!いえ、全く存じていませんが。」
「ザックスがこの間言っていたのよ、サーに同棲中の恋人がいるって。おねがい、何でもいいからその人の事教えて。」
クラウドは納得した、いきなりクーベルチュールなんて高級チョコを使ったお菓子をくれる訳がない。
クラウドは曖昧にうなずいてアメリアを一旦安心させた。
「とにかくザックスが知っているなら一度聞いて見ます。」
「さっすがクラウド君、おねがいね〜〜!!」
アメリアに投げキッスなんてもらいながらもクラウドは悪い予感しかしていない。
サー・セフィロスに意中の相手がいないのは今に始まったことではないが、先日自分が参加したミッションで女装をした時に写真に取られて、セフィロスの恋人として報道された過去を持っているので、もしや自分の事ではないかと不安になっていたのであった。
逃げるようにエレベーターに乗り込むと、67Fまで上がりマホガニーの天然木で作られている扉をノックすると、いつものように低いが良く通る声が中から聞こえてきた。
「クラウドか?入れ」
扉を開けると銀色の長い髪の毛が窓からはいってくる光を反射していた。
鍛え上げられた身体に黒のスーツが余りにも似合っている。
敬礼をしてからクラウドが部屋に入ってきたのを、パソコンの画面からちらりと視線を外しただけで無視しているのはいつもの事だった。
クラウドが手に持っていた紙包みを部屋の片隅に置いてある冷蔵庫に入れると、さっそくザックスの書類を片づけはじめた。
やがて3時になろうとした時、クラウドが椅子から立ち上がると、部屋に併設されていたミニキッチンに入りコーヒーを入れる。
コーヒーの香が部屋に立ち込めた頃、ザックスが部屋に飛び込んで来た。
「おっしゃ〜〜〜!!!ジャストおやつタイム!!」
「貴様、こういう時だけは遅刻しないのだな?」
セフィロスが呆れたような視線をザックスに投げ掛けるが彼も慣れた物、セフィロスを無視してキッチンに立つクラウドのところへとやってきます。
「おお!!今日はチョコレートバーか!!いただき!!」
「ザックス、きちんと手を洗ってよ!!」
「うめぇ…いいじゃん、どうせセフィロスは食べないんだし。」
「クーベルチュールもダメなんですか?」
「ああ、セフィロスに来るバレンタインのチョコなんて、トラックに5台ぐらいになるっていうのに、一つもうけ取らないでみんな孤児院とか教会に寄付しているんだぜ。」
「さすが…サーですね。」
クラウドが変に感心しながらクーベルチュールのチョコをほおばる、そこへクラス1stのソルジャーが扉をノックして入ってきた。
「よぉ、クラウド。美味いお菓子もらったから持ってきたぜ。」
入ってきたソルジャーが紙包みを持っていた、クラウドが満面の笑みで迎える。
「あ、サー・ノーマン。いつもありがとうございます」
クラウドが紙袋をもらおうとするとまた扉を開けて2ndソルジャーが顔を見せる。
そうこうするうちにクラウドにおやつをもってきたソルジャーが10人ぐらいに膨れ上がっていた、全員5番街のミッションに参加した連中だった。
ザックスが呆れたような声を出した。
「おまえら、何考えてんだ?!」
「いや、だってさ。ここに来たらいつも美味しいコーヒー飲める。」
「最近じゃあ皆がこうして持ちよるからさらに美味しいおやつまである。」
「おまけにストライフの可愛い笑顔が有るから最高だ。」
ソルジャー達の声が聞こえたのかいきなり執務室の中に氷河期並みの寒気団が居座った。
ソルジャー達が恐る恐る首をめぐらせると、鬼気迫った顔をしたセフィロスが正宗に手をかけようとした所だった。
「貴様達、私の執務室を何だと思っている!!」
「わーーーー!!わーーーー!!セフィロス!!ここで正宗はやめて!!」
ザックスがわめくより早くセフィロスが正宗を鞘から抜こうとすると、ソルジャー達があっという間に執務室から消えた。
その素早さにクラウドが唖然とした表情をしている、ザックスがその顔を見て思わず溜め息をついた。
「ほーんと、クラウドって女顔だよな。」
”かっちーーーーん!!”
そうと知っているのか知らないのか、ザックスがクラウドの地雷を踏んでしまったようです。
いきなり持っていたコーヒーをクラウドに頭から振りかけられたザックスがその熱さに大声を上げた。
「ほわちゃーー!!!!なにすんだよ!!」
「何すんだよってのはこっちのセリフだ!!誰が女顔だってーー?!」
「おまえ、あいつらが何を目当てに来ていたか教えてやろうか?お前を彼女にしたくて来ていたんだぜ。」
「か、彼女?!俺は男だ!!」
「そう思っていないから来るんだろ?」
「とにかく、俺は男と付き合う趣味なんて無い!!」
クラウドは鼻息も荒くザックスを怒鳴りつけてはいるが、はた目からみるとどうやっても可愛い子ちゃんなので、ザックスも苦笑する。
そこへ悠然とセフィロスがやってきた。
「ところで、クラウド。こんな高級チョコどうしたと言うのだ?」
クラウドが食べていたクーベルチュールのチョコバーはミッドガルでも1、2を争う高級デパートでしか売っていない事をセフィロスは知っていた、目の前の訓練兵では入れそうもない店である。
クラウドは素直にセフィロスに答えた。
「はい、これは総務のアメリアさんから頂いたのです。」
「ええーーー?!アメリアちゃんが?!こんなに高いお菓子をお前に?!くっそーー!!俺が何回ナンパしてもOKしてくれないっていうのに!!」
大声で叫ぶとほぼ同時に『バコ!!』という音と共にザックスの頭にセフィロスの拳がヒットした。
ザックスが頭を抱えて転げ回っている。
のたうち回るザックスを横目でみながらセフィロスはクラウドに話しかけた。
「このような高い物をただでくれるとなると、何か裏でもあるのではないか?」
「さすがサーですね。アメリアさんにはサーのお付き合いしているお相手を教えてほしいといわれました。」
「私の付き合っている相手だと?名前すら思い出さないような相手にどうする気なんだ?」
「では、やはり同棲されているという話も嘘なんですね。」
「はぁ?!どうして私が女などを部屋につれ込まねばならんのだ。」
苦々しげな顔をしながら吐き捨てるようにセフィロスが話している横で、いきなりザックスが大声を上げた。
「あ!!まさか!!!あの時の!!」
「あの時の、何だ?」
セフィロスに睨まれながら、言い辛そうにザックスがぽつぽつと話しはじめた。
「この前5番街にミッションで行った時にクラウド女装させただろ?その時にーさん本社の1Fフロアをクラウド抱えて横切っただろ?」
「確かにやったが?」
「その時、総務の女の子にちょっと聞かれたんだよ。『あの子どう言う子?』ってさ。その時クラウドだって言いはじめた所で時間だったから、途中で会話を止めて走ったんだ。」
ザックスの言葉に嫌な物を感じながらクラウドはザックスにたずねた。
「どういう会話をしたの?」
「あの時、たしか女の子が『今サー・セフィロスが凄い美少女をつれてきたの!』って言ったんだよな。当然俺は知っているから『あ?ああ、知ってる。』って答えた。すると彼女が突っ込んで聞いてきたんだ。それに俺は『同じ部屋に住んでいる。』って言った所で時間だった。」
ザックスの話を聞きながら徐々にクラウドの髪が逆立ってきた。
手にはケーキナイフが握られている。
「それって、他人が聞けば俺がサーと同棲しているって思われてもおかしくないよね?」
「は、ははは…は。すまん!クラウド!!」
「ザックスーーー!!!」
クラウドの手に握られたケーキナイフがザックスを正確に狙っている。
その正確さに舌をまきながらもソルジャーのメンツにかけてもザックスが逃げまくる。
扉の近くまでクラウドがザックスを追い詰めた所で不意に扉が開いた。
その瞬間にクラウドが扉に向かってケーキナイフを振りかざしていた。
扉を明けて入ってきた人物がいきなりケーキナイフを白羽取りにした。
「いささか度の過ぎた歓迎のされ方ですね。」
黒いスーツの男に見覚えのあるクラウドがその男の名前を呼んだ。
「ツ、ツォンさん?!」
「タークスが何のようだ?」
「ストライフ訓練生に社長からディナーのお誘いです。一度お会いしたいそうです、あの時の美少女に。」
ツォンが言った言葉にクラウドが唖然とした顔をし、ザックスは笑い転げていた。
|