FF ニ次小説

 ミッドガルに有る神羅カンパニーの治安部に所属している者は、たとえミッドガルの繁華街で華やかな音楽とともに市内でショッピングを楽しんでいたり、遊んでいようとも必要とあらばいきなり召集が掛りミッションへいかねばならない。
 それはカンパニーの治安部に採用される際に契約書に明記してあった事だった。


FF7小説 クラウド 神羅偏  「良く遊び良く学べ」


 訓練所から訓練生がぞろぞろと歩いて出てきている。
 その1番後ろを金髪碧眼つんつん頭のベビーフェイスが歩いていた。
 女の子と見間違えるような顔だちは、男だらけの治安部内で「お嬢ちゃん」とか揶揄されるが、腕が確かなので下手な一般兵では一発でのされてしまう実力の持ち主であった。

 彼の名はクラウド・ストライフ。
 まだ15才ではあるが一目置かれている存在であった。
 クラウドは歩きながら仲間と話していた。
「クラウド、また総司令のところか?」
「ああ、ずいぶん書類溜まってるんだ。」
「大変だな〜〜、お前みたいにできる奴だと。」
「まだ書類整理なら楽なものさ。」

 クラウドが溜め息をつきながら喉まででかかっている事を飲み込む。
 自分と同室のソルジャー・クラス1stのザックスに連れられてある日書類を片づける為に訪れたカンパニー本社67Fの一室。
 マホガニーの天然木で作られた扉のむこうは、ザックスの執務室ではなく、神羅カンパニーが誇る英雄セフィロスの執務室だった。
 いつものようにノックをして扉を開けると姿勢を正して敬礼する。

「失礼いたします。クラウド・ストライフ、入ります!」

 しかし部屋の主はいつものように窓際のデスクに座りどこかに電話をしていた。
 返事が帰ってくる事など無いのでクラウドも気にせず机に向かう。
 机の上には先日まで訓練でミッドガルを離れていた分仕事が溜まっていたのであった。

 それをいつものように提出期限、重要書類の順番に並べ替え、パソコンを起動させデーターベースにアクセスしながら書類を片っ端から処理して行くのであった。
 この仕事をもらってからどのくらい経ったのだろうか?
 いつの間にか覚えてしまったブラインドタッチであっという間に書類を片づけて行く。
 そんなクラウドの横にいつの間にか電話を終えたセフィロスが声をかけた。

「クラウド、お前は何処かに遊びに行くとかしないのか?」

 いきなり声をかけられてびっくりしたような顔でセフィロスを見上げるが、それでは失礼と思いクラウドは立ち上がって敬礼した。

「はい、自分にはそのような時間を持ち合わせる暇はありません。」
「そうだな、訓練生としてのメニューをこなしながら私の下士官としてここで仕事をしているのであったな。」
「はい、自分は一刻も早くソルジャーになり。サーの配下に加わりたいのです、遊びたいとは思いません。」
「遊びも社会勉強の一つだぞ。」
「自分はミッドガルを知りません。訓練所仲間にはあまり仲のいい仲間はいませんし、ザックスに引っ張って行かれると自分の年齢では入れない場所ばかりです。」
「それもそうだな。」

 セフィロスはクラウドから視線を外すといつものように自分の仕事を始めた。
 その時、ザックスが大声を上げて入ってきた。

「クーラーウードーー!!いるかーー?!」

 クラウドは大きな声にその青い瞳をクリッとさせていると、ザックスが近寄ってきたのでその場で起立する。

「何か御用でしょうか?サー」
「あ、嫌だなーー!!俺とお前の仲だろ?サーはよせってば!」
「いえ、サーは上官にあたりますのでそんなことはできません。」
「何それ?それとも俺に対する嫌み?あーそうですか!この前まで同じ部屋に居てすんごく可愛がってやったってのに。」
「ええ、サー・ザックスにはずいぶん手間をかけさせていただきました。朝起こすといつも違う女の名前で呼ばれて抱きつかれ、酒飲んで帰っては腹減ったとわめかれて食事作らされ、いびき歯ぎしりの酷さと来たら…本当に可愛がられましたよね?!」

 ザックスはクラウドの冷たい視線に思わず後ずさりしていた、まるでセフィロスと話しているようであった。

「ク、クラウド。お前なんて可愛くない15才になっちまったんだ!!まるでそこに居る俺様英雄ソックリじゃないか!!いかん!!いかん!!ぜ−−たいダメだ!!こんなにーさんに四六時中付いているから性格まで似ちゃって!!俺が元に戻してやるからしっかりしろ!!」

 何をもってしっかりしろと言っているのかわからないが、今のクラウドははっきり言ってザックスの上官であるセフィロスのコピーである。
 冷たく笑うと目の前の書類をザックスに付き付けて椅子に強引に座らせる。

「しっかりするのはサーです!こんなに書類を溜めて!!サー・セフィロスのお手を煩わせる訳にはいかないのです!!さっさと書類を片づけて下さい!!」

 バシン!!と音を立ててザックスの目の前に書類が置かれる。
 思わずザックスがひるむとクラウドがすぐそばでまくしたてた。

「いいですか?!サーは今日一日ここで書類の整理!提出日時重要書類順に並んでいますので上から処理して下さい!」
「ぐずん。クーラーウーードー!!ミッドガルの9番街にある空き地に移動遊園地が来てるから誘いに来たのに〜〜!!」
「書類が先!!これなんて提出期限まであと1時間しかないでしょ!!」
「ひーーーーん、お兄ちゃんは悲しいよォ。」

 ザックスの隣にいつの間にかセフィロスがやってきていた、腰のポケットからすっとチケットを抜き取ると携帯を取り出して一人の部下を呼び出した。
 その男はザックスもよく知っている1st仲間で実力もザックスといくぶん違わないルークであった。

「総司令、何が御用でしょうか?」
「ああ、実はだなこの部屋をあけねばならないのだが、そこに居るザックスの書類提出が遅れるのを避けたいのだ。」
「では、私はザックスを睨みつけていればよろしいのでしょうか?」
「ああ、出来ればそこの書類すべて片づけさせろ。」
「任務了解!」

 びしっと敬礼するルークをザックスが苦虫を噛みつぶしたような顔をして見る。
 クラウドはセフィロス配下のソルジャーの一人であるルークは既に顔見知りになっていたが、敬礼してから自分の上官に向かい合った。

「サー・セフィロス。お出かけでしょうか?ならば自分は何をやっていればよろしいのでしょうか?」
「ああ、お前は社会見学だ」

 そう言うとセフィロスはクラウドの細い手首をガシッと掴み引きずるように部屋を出て行った。
 一連のセフィロスの行動をボケ−ッとした顔で見ていたザックスはふとポケットを探ると、持っていたチケットが無くなっているのに気がついた。

「あんの鬼!!俺のチケット盗んで行ったなーー!!」
「ザックス。お前、クラウドをどこかに連れて行くつもりだったのか?」
「ん?ああ。あいつさ、あんまり友達もいないし、ニブルから来てるからミッドガルを知らないだろ?だから9番街の空き地に来ている移動遊園地に連れて行ってやろうとおもてったんだ。」
「で、そのチケットを総司令に取られた、と言うことか。」
「どーすんだよ?あのセフィロスがそんな所ヘ行ったら大騒ぎだぜ。」
「そうなるだろうな。」

 ルークが自分の携帯を取り出すと仲間に連絡を入れた。

「あ、ルークです。総司令がストライフ訓練生を連れて9番街の移動遊園地に行かれた。第1師団は騒動が起こらないよう警備せよ。」

 電話の向こうでソルジャー仲間が復唱すると電話が切れる、その間にすきを見て抜けだそうとしている男の首根っこをつかまえてルークはザックスを睨みつけた。

「悪いな、ザックス。お前をここから逃がして遊ばせると俺の命に係る。書類を片づけてもらおうか?」

 ソードを突きつけてザックスの首にぴたりと当てる。
 ルークの腕をよく知っているがゆえザックスは下手に動けなかった。

「ちくしょうーー!!俺も遊びに行きてえ−!!」
「俺だってムサいお前の相手より可愛いクラウドの相手のほうがいい。」

 そう言いながらも冷たい目でルークはソードを首にぴたりと当てていた、ザックスは諦めてしぶしぶ書類に取り掛かった。

 一方、クラウドの手を引きずってエレベーターに乗り込んだセフィロスは一瞬にして顔をしかめさせた。
 先客にルーファウスとツォンが居たのであった。
 ルーファウスがにやりと笑うとセフィロスに話しかけた。
「やぁ、セフィロス。訓練兵を連れて何処へ行こうと言うのだね?」
「社会見学だ。こいつは私の下士官だ。」
「訓練兵が下士官?貴方らしくもない嘘をつく。」
 ルーファウスの言葉にツォンが口をはさんだ。
「失礼ながら若、その訓練生なら私も知っております。彼は教官達よりその存在能力を認められて正式にソルジャー・セフィロスの下士官としてその才能を伸ばすことになった少年です。」
「へぇ…こんなガキがねえ?」

 ルーファウスに言われた言葉にクラウドが反応したのか睨みつけた。
 思いっきり冷たい瞳で睨みつけている金髪碧眼の訓練生に興味を抱いたのか、ルーファウスが冷たく笑う。

「フフフフ…いい目をしているな、で?セフィロス社会見学といっていたな?何処へ行く気だ?」
「貴様には関係ない。」
「僕もあまり社会を知らないので付いて行ってもいいかい?」
「拒否する」
「ああ、ツォン。今日の予定を変更だ、今からサー・セフィロスとこの訓練生と社会見学に出る。」
「若?」
「ふふふ…歳もそう変わらないような兵士と同じことを、私もしてみたいのだよ。」
 言い出したら引かないルーファスにため息を付ながらツォンがクラウドに命令した。
「ストライフ訓練生。自己紹介したまえ。」

 クラウドはツォンに言われて渋々敬礼し名前を名乗った。

「Yes.ser!!自分は訓練生のクラウド・ストライフであります。」

 ルーファウスは目の前の少年兵の顔をしげしげと見つめていた。