FF ニ次小説
 エレベーターに偶然乗り合わせてきた金髪碧眼の訓練生の顔を、ルーファウスはしげしげと見つめている。
 クラウドが冷たい目で睨みつけているので気がつかないのであるが実はこの二人今日が始めて会う訳では無い。
 以前”セフィロスの恋人”として女装したクラウドに会っているのであった。

「クラウド君と言ったな。どこかであったような気がするのだが?」
「自分は若社長殿を治安部入隊の時に拝見しておりますが、自分は若社長殿にとって大勢の中の一人です。お会いしているとはいえません。」
「ハッキリ言う。気に入らんな。」

 ルーファウスとしては年の近い少年を珍しく身近に見たので、興味が沸いているのであるが、クラウドとしてはたまった物では無い。
 いつ自分の事がバレるかと冷や汗ものであった。
 それを知ってか知らずかセフィロスもツォンも何も言わない。
 ツォンが地下の駐車場へと足を進めると自然と他の3人も後ろに付いて行く事になった。
 ルーファウスが目の前にある運転手つきの高級自動車を自慢げに指差して話しはじめた。

「君のような訓練生では一生乗れそうも無い車だろ。」
「ええ、そうですね。では自分は身分に相応しく電車で移動します。」

 クラウドがそう言って敬礼し3人と別れようとした所、ルーファウスが面白く無さそうな顔をして少年兵を見つめた。

「そうだな。電車で移動と言うのも面白そうだな。」

 そう言うとルーファウスは車に乗り込まずにクラウドの後を追う、あわてたのはツォンである。

「若!貴方様のような方が電車になどのってはいけません。」
「なぜだ?クラウド君のような子供でも乗れると言うのに、なぜ私は乗ってはいけないのだ?」
「電車の中は色々な人達が乗り合わせています、その中には神羅カンパニーを悪く思っているのも居ます。そこへ若社長のような方が行かれるのは危険です。」
「ツォン、先程お前はこの訓練生が優秀でセフィロスの下士官を務めることになったと言ったな?そんな優秀な兵士が一人と我がカンパニーのナンバー1ソルジャー、そしてタークスの主任にもなろうと言うお前が居てなぜそんなに危険なのだ?」

 ルーファウスの言葉にツォンが何も言えずに渋い顔をしているとセフィロスは冷たく笑っている。
 クラウドはというと知らん顔でそっぽを向いていた。

 その横顔にやはりどこかで見たような気がするルーファウスは再びクラウドに問いかけた。

「お前、女の兄弟は居ないのか?」
「自分は一人っ子であります。」
「お前に良く似ている女が何処かに居るのかな?」
「さあ?自分は母に似ているといわれていますが、母はニブルヘイムに居るので会う事はないと思います。」
「そうか。」

 ルーファウスと話しているといつかバレるような気がしてクラウドは気が気じゃない、だからあえて口を聞かないように勤めようとするが気になるのかやけに絡んでくる。
 金髪碧眼の美少年と美青年がカンパニーのロビーを並んで歩いている後ろを、英雄とタークスが歩いている姿は一種異様である、通りすがる社員が目を丸くして見つめていた。
 ロビーの受付嬢がルーファウスがクラウドと並んで歩いているのを見て、あわてて経ち上がり若社長におじぎをする。
 いつものようにいんぎんな態度で通りすがるルーファウスのとなりで、顔見知りの受付嬢にぺこりと頭を下げるクラウドは隣りの若社長に向かって話しかけた。

「若社長殿、電車のチケット代持っていますか?」
「チケット?カードで買えないのか?」
「カードでは無理です。コインが必要です。」
「やはりめんどくさいな。ツォン、ここで待っているから車をもってこい。」
「御意に。」

 ツォンはルーファウスに一礼すると早足で地下駐車場へと戻った、そして黒塗りのセダンを一台運転してエントランスへと戻ってきた。

「若、本日の行き先を考えると、こちらの車のほうがよろしいでしょう。」
「わかった。さあ、クラウド君。君も乗ってくれたまえ、もちろんセフィロスも乗ってくれるのだろう?」
「ふん、致し方ないな。」

 お約束通りクラウドが扉を開けて周りを見渡していると、ルーファウスは見向きもせず車に乗り込む。
 そしてセフィロスが乗り込むとクラウドは扉を締めて助手席に乗り込んだ、ツォンが運転席で顔色一つ変えずに少年兵の動きを確認して言った。

「ストライフ君、後ろ座席でもかまわないのだよ。」
「自分は乗り物に酔いやすいので助手席の方がよいのです。」
「そうですか、わかりました。」

 そう言うとツォンは静かに車を走らせはじめた。


* * *



 車を走らせはじめてから15分ぐらいで目的の移動遊園地が見えてきた。
 カラフルな乗り物が数台ならんでいる。その周りを屋台が軒を連ね楽しげな音楽が奏でられていた。
 セフィロスがザックスからすり取ったチケットをクラウドに渡す。

「ルーファウスといってくるが良い、私とツォンはここで見ている。」
「え?!サーも行かれると思っていました。」
「私がこのような遊具で遊ぶと思うかね?」
「い、いいえ!!」

 クラウドはセフィロスからチケットを受け取ると、ルーファウスに向き合った。

「上官命令なので護衛をかねて一緒に回らせていただきます。」

 ルーファウスはクラウドの態度が気に入らなかったのか、眉間にしわをよせて敬礼する少年兵を見つめながら返事をした。

「せっかく楽しげな所へ来たと言うのに敬語を使われてはかなわん。ザックスみたいに話してくれ。」
「了解。」
「了解はダメだ。まるで任務ではないか。」
「わかった。」

 ルーファウスの命令で苦虫を噛みつぶしたような顔でクラウドが答える。
 セフィロスとツォンはいつの間にかどっかとベンチに座った。とたんにツォンはなにかせかせかと携帯パソコンで仕事をはじめたが、セフィロスはゆったりと正宗を抱えて目を閉じていた。

 金髪碧眼のまだうら若い社長と少年兵というちょっと変わったコンビは、あたりをきょろきょろとしながら歩いていた。 「私も始めてだな。このような場所は。」
「ルーファウスさんはミッドガルに居るのだから、遊びに行こうと思えばいつでも行けるではないですか。」
「クックック…私の仕事も考えたまえ。」
「あ…すみません。」
「とりあえず、あれから乗って見るか?」

 ルーファウスが指差したのはジェットコースターだった。
 かなりのスピードで滑走する機体をみてクラウドが青ざめる。

「お…俺、乗物酔いするんです。」

 おどおどしたような声がルーファウスの苦笑を誘う。

「クククク…小心者の言い訳だな。」

 ルーファウスの言葉にカチンときたクラウドがムキになった、セフィロスからもらったチケットを握り締めて若社長を引きずって行った。
 コースターの前に並ぶとやがて順番が回ってくる。
 覚悟を決めて乗り込むと運がいいのか悪いのか最前列だった。
 チェーンが巻き上げられる音と共に次第にコースターが高い位置へと導かれていく。
 そして目の前に地上が見えた時に一瞬ときが止まったような気がした。

 がくん!!

 コースターが一気に加速した。
 轟音と共に風が凄い勢いで自分に向かってくる。
 コースターが右に左にとヒネリを加えながら曲がって行くと、やがていきなりスピードがダウンした。
 再びチェーンで巻き取られるようにホームへと帰ってきた。
 クラウドは顔面蒼白だったがもっと酷い反応をしたのはルーファウスだった。

「こ…こわかったよぉ…」

 顔は涙と鼻水でぐちょぐちょになっていた。
クラウドがポケットからティッシュを取り出してふき取ってやると、ルーファウスは顔をつんとそっぽ向けて虚勢を張った。

「フ、フン!今のは気を許していたからだ。次はクラウド、あれに入るぞ。」

 ルーファウスが指差したのはホラーハウス(お化け屋敷)であった。
 おどろおどろしい効果音と中から聞こえてくる甲高い女性の悲鳴に思わず二の足を踏んでしまうが、お互い相手への意地で荒々しい足取りでホラーハウスの中へと入って行った。

 ベンチに座ってパソコンに注目していたと思われるツォンが顔を上げた。
 ぱたんとノートパソコンを閉めると小脇に抱えてルーファウスの後を追おうとするとセフィロスがツォンを静止した。

「サー、どうして?」
「見守ってやるのも秘書の勤めだ。」
「でも、万が一危険な事があっては…」
「大丈夫だ、ここにはどうやら私の部下共があちこちに潜んでいる。」

 セフィロスに言われて首をめぐらせてそれらしい男を探すがツォンにはわからなかった。
 しかしセフィロスはどこかで感じているのか薄く笑っている。

「わからぬのか?第一師団の第一小隊がこの公園中にちらばっている。執務室に置いてきたルークが手配したのであろうな。」

 ルークはツォンも知っている1stソルジャーの一人であり、セフィロスの言う第一師団第一小隊の小隊長であった。
 ツォンは納得して再びベンチへと座りノートパソコンを広げた。

 一方、そんな事を知らないクラウド君、ホラーハウスになど入ったこともないので、何をどうしたらよいのかわからない。入り口で説明をしてもらうと中の迷路を迷わず出てくればよいと言われた。
 そのぐらいなら何とかなると思いルーファウスと中に入る。

 当然、中は薄暗い

 薄暗い中、進路を示す矢印をたよりに通路を奥へと入っていくと、不意に右手から包帯だらけの男が襲ってきた。
 ホラーハウスだから当然と言えば当然である。
 ルーファウスがびっくりして足を止めるのと同時に、クラウドが訓練兵ナンバー1の実力の片鱗をのぞかせた。
 瞬時にルーファウスを背中に庇い、包帯男にボディーブローを浴びせたのであった。

『ぐへっ!!』
 ボディーブロー一発で包帯男がノックアウトされた。
 再び安全を確認して先に進むと扉がある。
 先程の包帯男の襲撃からクラウドはすでにミッションモードに切り替わっていた。

(若社長を守ってここから脱出せねば!!)

 クラウドの頭の中は何をどうすればよいのか今まで教わってきた事が、何種類も一気に思い出されていた。
 そのうち扉の向こう側に潜む危険を除く為の処置を思い出しその通りに実践する。
 まず薄く扉を開けて人が隠れていないか覗き込むと、足蹴リで扉を一気に蹴って思いっきり開く。
 こうする事で扉の影にかくれている奴をひるませることができる。
 案の定、扉のかげに誰かが隠れたのか鈍い音を立てて倒れた。
 クラウドはその男を一瞥すると他に危険が無いか確認しルーファウスを招き入れる。
 ルーファウスもクラウドが先に行ってくれているので安心してはいる。

 が、しかし!!ここはホラーハウスである。

 天上から蒟蒻が紐にぶらさがって降りてきた、その蒟蒻がルーファウスの頬にあたる。

「うぎゃあああああああ!!!!」

ルーファウスは一目散に走り出した。    社長のファンの皆さん、ごめんちゃい m(_"_)m