FF ニ次小説

 クラウドには何が起こったのかわからなかったが、いきなりルーファウスが泣き叫びながら駆けだしたので、何かあってはいけないと追いかけはじめた。
 途中、襲ってくるモンスター(ちょっと違うぞ!中身は人間だ!)を、素手で倒しながらルーファウスに追いつくと肩を掴んで話しかけた。

「おちつけ!!」
「お、落ちついていられるか?!変なモノは顔にあたるわ、怪物は襲ってくるわ、こんな所はやく出るのが一番よい!!」
「その怪物ですが、自分が一撃で倒せるのだから、たいしたことはありません。」
「そ、そうなのか?!とにかくもう少しで出口のようだ。」

 クラウドの腕にしがみつきながらルーファウスが歩きはじめると、間もなく出口と言う所でどうやらホラーハウスの管理者らしい男が両腕を組んで出口に立ちはだかっていた。

「君ねぇ。困るなぁ、ウチの従業員が殆ど伸びちゃったじゃないか。」
「従業員だと?!」
「道理でモンスターにしては弱いはずだ。」
「一体どうしてくれるんだ?!このままでは営業が出来ないではないか!!」

 管理者に詰め寄られて二人は思わず逃げ出そうとする、そこへ騒ぎを聞き取ってツォンとセフィロスがやってきた。
 管理者は目の前の金髪のガキ共がまさかセフィロスの知りあいだとは全く思っていなかったので、いきなり現れた英雄にびっくりする。

「一体何があったのだ?」
「サ…サー・セフロス?!」
「ストライフ君何の騒ぎか教えてくれたまえ。」

 クラウドがツォンに敬礼してホラーハウスの中での出来事を簡単に説明しはじめた。

「イエス・サー!自分は若社長殿と一緒にこのダンジョンに入り、途中襲ってきたモンスターを倒しながらここまで来ました。」

 クラウドの言葉にツォンが頭を抱えた、セフィロスは苦笑しながら少し跳ねた金髪ををわしゃわしゃと撫でた。

「お前はホラーハウスと言うものは始めてか?」
「イエス・サー!自分の郷にはこのような物はありませんでした。」
「ここは人間がお化けの格好をして入ってきた人を驚かすのだよ。」
「そんな趣味の悪いことをしているのですか?!」
「趣味が悪いと言うのではなく、びっくりしたりすると”ひやり”としないかね?その恐怖感を楽しむアトラクションなんだよ。」
「それで、先程この方が従業員が全員伸びてしまったと…」
「何人いたのかはわからんが、さすがは訓練生だな。」
「しかし…サー・セフィロス、これでは営業妨害ですよ。」

 管理者に言われてセフィロスが携帯を取り出すと誰かへ電話をかけた。

「私だ、第一小隊のB班を5分以内にホラーハウス裏口へ集合させろ。」

 携帯をたたむと3分もせずに10人ほどの屈強な男たちが集合した。
 セフィロスが前に立つと管理人を指差し命令を下す。

「貴様達は1時間ほどこ男の言う事を聞け。」

 B班の班長らしい男が敬礼をしながらセフィロスに問いかけた。

「総司令殿、具体的に自分達は何をすればよろしいでしょうか?!」
「お化けの扮装で人を驚かすのだそうだ。」
「アイ・サー!!」

 管理人がセフィロスに感謝の言葉を言うと一個小隊のソルジャーを引き連れてバックヤードへと入って行った。
 ツォンがルーファウスに向き合うと冷ややかな笑顔で話しかけた。

「若、もうそろそろよろしいでしょうか?」
「なんだ、まだ2個所しか回ってないぞ。」
「残念ですが重要な会議の時間です。」
「フン、仕方がないな。クラウドとかいったな、またそのうち遊ぼう。」

 そう言うとルーファウスはツォンを引き連れて帰って行った。
 クラウドはセフィロスに向かって話しかける。

「サー、実はザックスの書類が心配なのですが…」
「そうだな、あいつの事だ、パソコンに向かうと寝てしまうだろう。帰って雷でも落すか。」
「はい、そのまえにあそこの屋台から美味しそうな香りがするので、お土産に持って行きたいのですが…」
「たこ焼きか?あんな物が美味しそうなのか?」
「はい、自分の郷には屋台とか立ったことがないので、芳ばしい良い香りがすると思っていました。」
「お前がそういうのなら買って来るが良い。」

 セフィロスに許可をもらうとクラウドは笑顔破顔でたこ焼きを買いに走った、ビニール袋に入れて手にさげて持って歩くと自然と笑顔になる。
 セフィロスがタクシーを止めるとクラウドを誘って乗り込み、一路、神羅カンパニーへと戻った。

 エレベーターを67Fで降りるとまっすぐセフィロスの執務室へと向かう、扉をノックしていつものように敬礼して部屋に入る。

「失礼いたします、クラウド・ストライフ入ります!」

 クラウドの声にルークが目だけこちらに向けて微笑んだ、ザックスがパソコン画面の前で頭を抱えている。

「たすかった〜〜〜!!クラウド助けてくれーーー!!」

 クラウドが執務室に入るとソースの芳ばしい香が漂ってきた、ルークがクラウドの手に持った手さげ袋に目をつけた。

「ああ、クラウド。お土産かって来てくれたのか、サンキュー」
「おお!!その香はたこ焼きだ!」

 クラウドの後ろからセフィロスが現れる、冷たい視線をザックスに投げかけてからルークに話しかけた。

「ご苦労だった。で、どこまで進んだのだ?」
「残念ながらあと1時間後に提出期限の切れる書類すらまだです。」
「ほぉ…ザックス、貴様は文字すら読み書きが出来ない原人か?!」
「ひーーーん!セフィロスのいけずう〜〜〜!!」

 話を聞きながらクラウドが呆れたような顔をしてコーヒーを入れる。
 セフィロスとルークにブラックを、ザックスに角砂糖半分入れたコーヒーをそして自分はたっぷりの牛乳で割ったカフェオレをカップに入れて持ってきた。

「サー・ルーク。お疲れ様です、コーヒーが入りました。サー・セフィロスもいかがでしょうか?」
「頂こう、ところでそのカップは誰のだ?」
「はーい!!俺の俺の!!」

 手をあげて満面の笑みを浮かべるザックスに呆れたような顔でルークが話した。
「クラウド、こいつはお前が出掛けてから、まだ2枚しか書類を処理していないのだぞ。」
「ザックスの頭に糖分を補給しないと働きませんから。」
「こんな馬鹿にやるコーヒーなど無いはずだが。」
「いーの!俺はクラウドの兄貴分なんだから!」
「ザックス、おまえ書類処理能力を少しクラウドから分けてもらえよ。このままだと1st降格だぞ。」
「しょえーーー!!やっぱりそうなるのん?!」
「まあ、そうなるのだろうな。」

 セフィロスが冷たく笑っているのをザックスは青い顔をして見詰めていた、そしてコーヒーカップをもってそばに来たクラウドに泣きついた。

「ク、クラウドーー!!頼む、教えてくれーー!!」
1 stソルジャーが訓練生に泣きつく姿など見たためしがなかったルークが思わずつぶやいた。
「ザックス、おまえ訓練生と地位が逆転して居るではないのか?普通、教わる方が地位が下だぞ。」
「セフィロスに頼んだって教えてくれね−し、ルークだって何度頼んでも教えてくれないじゃないか!」
「教えないんじゃない、お前が覚えないんだよ!!」

 クラウドからコーヒーをもらいたこ焼きをぱくつきながら、隣にいるルークがぼやくのをくすくす笑っている。

「自分が何度説明しても『お前やってくれ。』でおしまいですから、自分が教える事も無駄だと思います。」
「ザックス、せっかくその実力で上がってきた1stの座だが、どのくらいしがみついていられるかな?」
「せめてクラウドには抜かれるなよ。」
「じょ、冗談じゃねー!!訓練生に1stが抜かれてたまるか!!」
 ルークとザックスの言葉にクラウドが目を丸くした。
「じ、自分がザックスを?!」
「私の下士官であり、今の実力を持続させれば、あっという間に1stまで駆けあがってくるだろうな。」
「お前と組める日が早く来るといいな。」

 二人の上官から真剣な瞳で自分の実力を誉められているクラウドは、嬉しくて仕方がないが、脅しまくられているザックスはたまった物では無い、いきなり目の色を変えてパソコンに向かいはじめた。
 クラウドがそっと横に移動するとパソコンのモニターを覗き込む。

「へぇ…ザックス、その気になれば出来るじゃん。」

 パソコンのモニターにはきちんと書類が出来はじめている。
 ザックスが自慢げに鼻をこするとカップを片手に一本指打法(なんじゃいそりゃ?!)でパソコンにデーターを入力していた。
 クラウドがザックスから離れるとセフィロスが手招きしていた、小首を傾げて小走りで近寄ると上官から指示が出る。

「クラウド、次のミッションは多分コレだと思う。いつものように頼んだぞ。」
「アイ・サー!」

 クラウドがパソコンに向かってミッション先のデーターを収集しはじめた。
 周辺地域の地図、出没するモンスターの種類およびその属性、近くの街からの距離等、いつもソルジャー達に渡しているデーターを集めはじめた。
 5分も経過しないうちにどこかからかいびきが聞こえてきた。
 いびきの音にクラウドがびっくりして顔を上げるとザックスがいびきを立てて居眠りを始めていた。

「5分ですよ、5分!!」
「そんな物だろうな。」
「総司令殿、次からはソルジャー採用試験に事務能力も入れたほうがよいみたいですね。」
「そうだな、それは考えておこう。それよりもクラウド、いつものを頼む。」
「イエス・サー。」

 クラウドはセフィロスに言われて冷蔵庫に氷を取りに行くと、コップに氷を入れて持ってくるとザックスの首筋からコップの中の氷をほおりこんだ、いびきをかいて寝ていた男がが一気に目をさます。

「うぎゃあ!!!冷てぇ−−−−−!!!」

 クラウドは持っているコップをのぞきながら残念そうにつぶやいた。

「もっと早くこのことに気がついていればよかったな。」
「ん?何故だ?」
「自分はザックスと同室だったんです。めざましが鳴っても起きないので自分が起していた時、いつも違う女の名前をいいながら抱きついたんです。」
「そりゃ最低だったな、だがそのおかげで総司令ともこうして知りあえた。お前は運がよいのだな。」
「ええ、それだけはザックスに感謝しています。」
「って…それだけかよ。」

 首から入った氷を取りながらザックスがぼやいた。