FF ニ次小説
 会議室にソルジャー達が集まっている。
 いつものようにミッションの為に召集されたソルジャー達であった。
 そこへセフィロスが悠然と入ってくる。
 クラウドが作ったミッションの資料が手元にあった。

「ただいまより次のミッションの会議を始める。」

 セフィロスが問答無用で会議を始める片隅で、2ndソルジャー達がこそこそとぼやいていた。

「最近ミッションの呼び出しって早くないか?」
「早いって、いつもなら上から情報が来て半日ぐらいかかっていたけど、最近じゃ2時間掛っていないんだよなー」
「噂では総司令の下士官が凄くできる奴だから、あっというまに資料を集めるらしいって話しだぜ。」
「こら!おまえら!!静かにしろ!!」

 上官に怒鳴られて2nd達が一気に黙る。
 しかし実際手渡されている資料はどれも必要な物なので、これだけの資料を集められる下士官が誰なのか知りたいと思っていた。
 2ndの一人が意を決してセフィロスに問いかけた。
「総司令殿、この資料は総司令殿の下士官が集めたとお聞きしていますが?」
「何か不備でもあったか?」
「いえ、これだけの資料を短時間で集められるような優秀な兵士が一般兵ではいないと思っていますので、一体誰かと…」
「一般兵では無い、訓練生だ。」
 セフィロスの言葉にその場にいたソルジャー達がざわめいた。
「く、訓練生?!本当に訓練生がこの資料を?!」
「なんだ、貴様達。ストライフ訓練生を知らないのか?」
「ストライフ訓練生なら自分もよく知っています。本当に彼が?」
「まあ、ザックスの書類を入隊直後から手伝っていたから彼なら当然か…」
「気を抜いていたらあっという間に差を付けられるぞ、クラウドはザックスを気絶させられる。」
「ええ?!本当ですか?!サー・ザックス!?」
「ん?あ、ああ。マジ、あいつあのガタイで俺の延髄に蹴り入れるんだぜ。」
「話を戻すぞ!今はミッションの会議だ!」

 セフィロスの一喝で話が会議に戻ったが参加したソルジャー達は、総司令の下士官の事を思わず可哀想に思ってしまった。
 自分達が訓練生時代は門限を気にしながら仲間と遊び歩いた物である。
 ところがくだんの訓練生は目の前に居る総司令の下士官なのである。
 自分の遥か上官にあたる総司令がどれだけ忙しいか簡単に想像付く。
 その司令官に付き従っているだけで簡単に彼に時間がない事ぐらい想像付く。
 ソルジャーの書類を処理出来るというのはそれだけ戦略とかが身につく。
 しかもその訓練生が実力を兼ね備えていると来れば、訓練所を卒業したと同時に自分達のライバルとなる。

 はっきりいえば目の上のコブである。
 今のうちに余分な”遊び”を覚えさせておけば邪魔者が減る。

 単純に考えていたソルジャー達はとりあえずミッションを終らせて、その後で総司令の下士官と接触する事を考えていた。

 一方、そんな事は全く知らないクラウド君。
 上官であるセフィロスがミッションに行くと仕事が無いので、ごく普通の訓練生に戻るのであった。
 いつものようにランニングで始まるメニューをこなしていると、他の訓練生と全く変りが無い。
 しかし一旦訓練メニューが始まるとその実力の片鱗があっという間に現れる。
 組み手をやっても10対1で勝ってしまうし、剣を持たせると教官から一本取ってしまうほどの腕の持ち主でマテリアを触らせると下手な2ndよりも魔力が強い為教官が見本にさせるほどの能力を持っていた。
 訓練生でクラウドにかなう男は誰も居なかったのである。

 最初こそやっかみ半分で偶然同室になったソルジャー・クラス1stのザックスのおかげだと誰しも噂をしあっていたのであったが、クラス1stのトップをのした事があるという事実が伝わると、今度は秘書かわりに使っていたセフィロスのおかげだとやっかんでいた。

 いまでは憧れの英雄の唯一の下士官であるクラウドに、同じ訓練生仲間はありとあらゆるやっかみや嫉妬の思いしか抱いてはいなかった。
 そのせいもあった上にクラウドの他人を拒絶したかのような態度もあってか、彼を遊びにさそう仲間は一人もいなかったのである。

 クラウドはセフィロスがカンパニーに居ると、彼の書類やザックスの書類の整理とかに追われていたので、訓練所での自主訓練がおろそかになっていると思っていた。
 そのせいかセフィロスがミッションで遠征に出掛けると、彼は訓練所にこもり教官をつかまえては相手をしてもらう事に専念していた。
 そんなクラウドにある日訓練所の教官の一人であるレイナードが声をかけた。

「ストライフ、お前は誰かとどこかへ出掛けて遊ぶとかしないのか?」
「レイナード教官。自分にはそんな時間ありません。総司令のいらっしゃらない時に自主訓練しないと、このままではみなに置いていかれてしまいます。」
「訓練生のぶっちぎりのトップが言う言葉か?お前が総司令に何を教えてもらっているかは知らんがジャンが無駄な動きが急に無くなって隙が無くなったと言っていたぞ。」
「総司令は御忙しい方なのであまり教えてくださいません。ただ、ちょっとしたアドバイスなら下さいます。」
「ただそれだけか?」
「はい、それだけです。」
「そうか。では、総司令からお前を貸せといわれたら、私は何を置いてもミッションを優先させるぞ。」
「え?」
「訓練所でお前に教えることはもうないであろう。実力は十分ある、あとは実戦で身体で覚えて行け。」

 そこへ黒いスーツを着てネクタイをだらしなく引っかけた赤い髪の男が顔を出した。
 レイナードがそのスーツの意味を知っているので敬礼する、クラウドは自然と教官に習っていた。

「クラウド・ストライフという訓練生はいるのかな、っと?」
「はい、自分です。」
「ルーファウス社長がお呼びなんだぞ、っと。」
「貴方はタークスですか?」
「レノだぞ、っと。」

 レイナードに会釈をしてレノと名乗った男の後に付き従うように、クラウドがカンパニー本社の69Fにある社長室へと入ると、金髪碧眼に白いスーツを着たルーファウスが革張りの椅子に座っていた。
 クラウドが敬礼をするとルーファウスが手をあげて返礼をした。

「やあ、クラウド君。久しぶりだね。実は君にお願いがあって呼んだのだ。ツォンに内緒でミッドガルに御忍びで行こうと思うのだが、一緒に行ってくれないかね?」
「自分が…でありますか?」
「ああ、君の腕ならば申し分ない。下手な一般兵を連れて歩くよりも安全だとツォンも言っていた。」
「自分はミッドガルに詳しくありません、それに若社長殿のお姿ではすぐにチンピラ共に目をつけられます。」
「それならば、普段着を持ってきた。君の分もあるよ。」

 そう言うとスーファウスは紙袋からざっくりとしたセーターとGパンを取り出した、その衣装ならば大丈夫かとクラウドもうなずく。
 しかし万が一の事があったら困るのでクラウドがルーファウスに問いかけた。

「マテリアを4つほどお借り出来ますか?」
「何だ?」
「カウンター、回復、治療、敵の技で十分です。」
「なんだ、そんな下級魔法でよいのか。」

 そう言うとルーファウスが金庫からマテリアを取り出した、並べられたマテリアはどれもマスタークラスまで引き上げられていた。
 その中からクラウドは先程言った4種類を簡単に探し出すと支給品のバングルに装備した。
 ぱっと見ておしゃれなガラス玉の入ったアクセサリーにしかみえないが、クラウドに取っては心強い味方であった。
 二人で着替えた後社長室を後にした。

 それから10分ほどして社長室にツォンがノックして入ってきた、扉を開けて居るはずのルーファウスがいないのでびっくりする。
 インターフォンに駆け寄ると受付を呼び出した。

「社長室です。ルーファウス様がお見えにならないのですが、出掛けられたようすは有りますか?」
「社長が出掛けられたご様子はありませんけど。」
「ありがとうございます。」

 受付嬢はスーツ姿のルーファウスを見慣れている為、ざっくりしたセーターにGパン姿の二人の金髪碧眼の少年が横切っていてもそれが社長と訓練生だとは全く思っていなかったのであった。
 ツォンはルーファウスが何処へ行ったのかわからなくなった為、探す手段にタークスの動員を決めた。

「私だ、ルードか?タークス全員に出動命令だ。ルーファウス若社長が行方不明になった探してくれ。」
「了解。」

 ルードが振り返ってツォンの命令を復唱するとタークスのメンバーが、一斉にカンパニーから飛び出して行った。

 一方、そんな事は知らないクラウド君、カンパニーの若社長を守らないといけないと必死になって周りの様子をうかがいながらルーファウスに付き従っていた。
 ルーファウスはそんなクラウドの様子を知ってか知らずか自由時間を満喫していた。

「クラウド、あれは一体なんだ?」
「ああ、あれはこのファーストフード店の創始者の人形ですよ。あの系列の店はみんなこの人形を店の前に出しています。」
「そ、そうなのか?いつもあんな格好をしているのか?」
「クリスマスシーズンはサンタクロースの格好をしていますけど、だいたいはあのストライプのエプロン姿ですね。」

 ミッドガルに詳しくないはずのクラウドがルーファウスに説明をしていた。
 クラウドはザックスと寮で同室になった時から、なにかとザックスにつれ回されてミッドガル中を案内されていたのであった。
 だからカンパニーの後継者として勉強付けの毎日を過ごしていたルーファウスよりも少しは詳しかったのであった。

 ミッドガルの街をきょろきょろする二人連れは、金髪碧眼で二人とも綺麗な顔だちをしていた為はっきりいって目立っていた。
 そんな二人組にナンパをかけようと街のチンピラ共が声をかけてきた。