FF ニ次小説
 金髪碧眼のベビーフェイス二人組に下心まる見えで、そこらへんのチンピラが寄ってきた。

「ねぇ、君たちいったい何しているの?」
「俺達とどこか行かない?」
「いいところへ連れて行ってやるからさぁ。」
「へへへ…可愛いなぁ まるで女みたいだぜ。」
「本当に付いているのかよ?」
「ひんむいて確認してやろうか?」
「ヒーヒー言って泣いたりして」

 涎を垂らしそうな勢いで言い寄ってくる男共をクラウドが冷静に睨みつけ、ルーファウスを背中に庇うと一歩前に出た。

「泣くのはどいつからだ?」

 目の前の少年の言葉にカチンときた男共が一斉にクラウドに飛び掛かった。
 しかしクラウドはそこらへんの華奢な少年ではなかった、回し蹴りで右から来た男を蹴り倒すとその勢いでその隣りにいた男の腹を蹴る。
 体制を入れ換えて左の男にボディーブローを入れると、崩れた男の背中を蹴り上げて、その後ろにいた男の頭の上から踵落しを決める。
 チンピラ共が一瞬で4人の仲間を倒した少年に真っ青になった所に、クラウドが腕のバングルを掲げて叫んでいた。

「トライン!!」

 マテリアから三角のバリアが出現し雷が放たれた。
 一瞬にして残っていた男共が感電して倒れるとクラウドが吐き捨てるようにつぶやいた。

「フン!今度から男に声をかける時は気をつけるんだな。」

 ルーファウスはそんなクラウドをあっけにとられながら眺めていたが、自分の人選が間違っていないのを知ると安堵した。

 街を捜し回っていたタークスのメンバーが、雷の魔法を発する少年の話しを聞いたのはその10分後であった。
 話を聞いて一人は間違えなくルーファウス社長だと直感したタークスが配備された全員にその情報を流す、勿論上司のツォンにもその情報を入れた。
 ツォンはその報告を頭ごなしに疑ってかかったが、ふと、ある訓練生の顔が過った。

「クラウド・ストライフ訓練生か?!」

 あわててツォンが訓練所にクラウドの所在を確認する為に電話を入れたが、タークスのメンバーのレノが連れ出していた。
 レノがクラウドを連れ出す理由がわからないツォンはレノに直接連絡を取った。

「レノか?私だ。ストライフ訓練生を連れ出したそうだが理由を教えてくれ。」
「ルーファウス社長の命令だったんだぞ、っと。」
「ルーファウス社長の?では社長はクラウドと一緒に居るのか?」
「ああ、そうなんだぞ、っと。」
「マズイ!ストライフ訓練生は下手なソルジャーよりも強い、ザックスをのしてしまうほどだ!お前らでは相手にならん!引け!!」
「わかったぞ、っと。」

 ツォンがあわてて他のメンバーに連絡を入れようとしたが、既に大半のメンバーが音信不通になっていた。
 今度はクラウドに直接連絡を付けようとしたが、訓練所のレイナード教官に聞いても彼の携帯番号はわからなかった。
 仕方がないのでザックスに連絡を取ろうとして、治安部にセフィロス隊の所在を確かめると現在ミッドガルに向けて帰還中という情報が入ってきた。
 あわてて旧知の仲であるセフィロスに連絡を取る。

「ツォンです。セフィロス閣下でいらっしゃいますか?ストライフ訓練生の事でお聞きしたい事があります。彼の携帯番号を後存じないでしょうか?」
「あいつの携帯番号など聞いてどうする気だ?」
「実はルーファウス社長が職務を抜けてミッドガルへお忍びで行かれたのです。どうやらストライフ訓練生が付き従っているようですが確保したくてもタークスのメンバーがすでに80%やられてしまいまして…」
「フン、いいザマだな。タークスの採用基準を厳しくしろ。それから、クラウドとルーファウスの確保は我々が行う、残念ながらあいつは携帯を持っていなのだよ。」
「ありがとうございます。」

 ツォンからの電話を切ってセフィロスが運転手に命令を下した。

「ルーファウスの馬鹿が脱走した、確保に行く!」

 セフィロスの命令を聞いたザックスがトラックの中を移動して問いかけた。

「セフィロス、そんな事タークスにやらせておけばいいじゃん。」
「タークスでは相手にならんような奴をボディガードにしているらしい。」
「何処のソルジャーよ?携帯持ってないんかよ。」
「持っていないさ。クラウドだ。」
「は〜〜ん、クラウドねぇ、…って!!あのクラウドかよ?!」
「ああ、なぜルーファウスにクラウドが付き従っているのかはしらぬが、あの若社長もあながち間抜けではないということだな。」
「そりゃ…あいつを見かけで判断してたら痛い目にあうだろうけど、タークスで手に負えないって嘘だろ〜〜?!」
「忘れたのか?クラウドはお前を気絶させられる男で、下手な2ndよりも魔力が高いのだぞ。マテリア持たせたらタークスでは相手にならんぞ。」
「そ、それはそうだろうけど。」
「ま、とにかくミッドガルまで後20分。クラウドとルーファウスの行きそうな所を考えておけ。」

 20分後、ミッドガル到着と共にセフィロス隊の一員がクラウドとルーファウス確保のミッションに突入した。
 ところがクラウドがカウンターのマテリアを装備していた為、下級ソルジャーでは相手にならなかった。
 あっという間に手勢を削られてザックスとルークが顔を見合わせた。

「カウンターのマテリアか、手ごわいな。」
「しかもあいつ、敵の技まで持っているようだぜ。」
「ケガさせるわけにもいかないし…困ったもんだ。」
「クックック…。楽しませてくれる奴だな。」

 セフィロスが冷たく笑うとふらりと路地を曲がったと思うと、思いっきりジャンプしてビルの屋上まで飛び上がり屋根を飛び渡りながら何処かへ消えてしまった。

「かぁ〜〜!!あいつマジで人間かよ?!」
「ザックス、俺たちも一緒だぞ。」
「さて、俺も本気出していくか。」

 ザックスはそう言うとセフィロスの後を追い掛けるように壁を斜めに飛び渡りながら、クラウドのいそうな所を捜し回った。
 しばらくして見覚えのある金髪碧眼二人組が視界に入ってきた。
 ザックスがクラウドの背後に飛びおりる。
 いきなり現れた男にクラウドがとっさに反応したが、ザックスの方が早かった、繰り出された回し蹴りを右腕一本で止める。

「よぉ、クラウド。大した歓迎じゃないか。」
「あ、ザックス。ミッション終ったの?」
「ああ、終ったぜ。また書類手伝ってくれるか?」
「サーが了解すればね。で、何の用?」
「ルーファウスが内緒でカンパニーを抜け出したとツォンが青い顔をしてたってさ。」

 クラウドがルーファウスを振り向くと、逃げ出そうとするルーファウスの腕をがっちりと握りキツい瞳で睨みつけた。

「ルーファウス社長、どう言う事ですか?」
「ハ…アハハハハ…ハ…」

 クラウドの視線に背中に冷や汗をかきながらもルーファスはまだ抜け出そうともがいていた。
 そこにセフィロスが現れた。

「ルーファウス、諦めるのだな。お前の目のつけ所は悪くない。しかしクラウドはまだ訓練生だ、これほどマテリアを使用していては精神的にそろそろ限界が来ている。」
「サ、サー・セフィロス、お帰りなさいませ。」

 そう言ってセフィロスに敬礼すると安堵したのか思わず足がふらついた。
 セフィロスがそれを見てにやりと笑う。
 ザックスがクラウドからルーファウスを受け取るとレノを呼び出した。
 5分も掛らずに黒塗りの車がルーファウスを迎えに来た、ザックスが扉を開けると後部座席にツォンが腕を組んで座っているのをルーファウスが見つけた。

「若、無断外出は一ヶ月の休暇無しでしたな。」

 そう言って睨みつけるツォンにルーファウスは何も言えずに肩を落し、後部座席に乗り込んだ。
 車を見送った後ルークとザックス、セフィロスがクラウドに向かい合う。

「一体何人倒したのだ?」
「さあ?夢中でしたので…でもこの10分ほどはかなり強かったです。」
「それはそうだ。何しろ俺の部下達だ。」
「え?!第一師団の第一小隊でしたか!?知りませんでした、ゴメンナサイ!」
「ルーク、一体何人の連絡が取れないんだ?」
「一般兵が10人、2ndが3人、1stが一人。」
「うわ!!それはすげー!!」
「クックック…お前は実によくできる下士官だな。しかし、もう歩く事もままならないであろう?」

 そう言うとクラウドの腰を軽々と抱き上げて抱えあげた、まるで子供が抱き上げられているような感じである。

「サ・サー!!恥ずかしいです!!」
「歩けないのであれば仕方がないであろう?それともなんだ?姫抱きのほうがよかったのか?!」
「姫抱きも御免です!!」
「煩い奴だな。あまりしゃべると舌を噛むぞ。」

 クラウドが多少暴れようとセフィロスの腕から逃れるすべはなかった。
 トラックまで戻るとクラウドにボコボコにされたソルジャーや兵士達が、肩身が狭そうに立っていた。
 しっかりとセフィロスが雷を落としてからトラックに乗り込むと、一行はカンパニーへと戻って行ったのであった。


 その後、何度もルーファウスはクラウドを巻き込んでは、ミッドガル市内をお忍びで遊び歩いた。
 そのためツォンがセフィロスの許可をもらいクラウドに携帯を買い与えた。
と、いうのはまた別のお話。

The End