FF ニ次小説
 パーティー会場が急に慌ただしくなってきた。
 Dr・ニコルソンがジュラルミンケースを振り回して大声で騒ぎ出しはじめたのである。
 セフィロスがクラウドから離れてDr・ニコルソンに近づこうとした時だった。
「動くな!」
 不意を突かれたクラウドが男に捕まっていた。
 なんとか逃れようと試みるがナイフを首元に当てられていて動けば首が切れてしまう、セフィロスの動きがぴたりと止まった。
「私の事などかまわずに!!」
 クラウドが叫ぶがナイフの柄で頭を殴られる。
「まったく、可愛い恋人だな。自分の命よりも死に神と呼ばれているお前の事を優先するとはな。」
「そいつを離せ。」
「嫌だね、俺がこの場から生き残る最高の切り札だ。手放すなんて出来ない。」
 クラウドを連れたまま男が会場から出て行こうとした時であった、大きな音と共にもうもうと煙が立ち上がり悲鳴と怒号が飛び交った。
 クラウドを連れている男も思わず意識が煙に向く隙に、目の前の美少女がすっと身体を沈めた。そのとたん男の身体がふわりと宙に浮き思いっきり床に叩きつけられる。
 すかさずセフィロスがクラウドを抱き上げてその場を去ると、同時に入れ代わりに何処に隠れていたのかザックスが男を床に押さえつけていた。
Dr・ニコルソンの確保は一隊のソルジャー達が既に行っていたが、会場の落ち着きはまだ戻らなかった。セフィロスは腕の中の少女の姿をした少年をゆっくりと床に降ろし話しかけた。
「クラウド、踊れるか?」
「え?あ…な、なんとか。でも…」
「会場を落ち付かせるためだ、協力しろ。」
「わかりました。」
 クラウドをその場に待たせてセフィロスが何処かに歩いていくと、しばらくしてウィンナーワルツの名曲が流れてきた。
 セフィロスが戻ってくると、すっとクラウドを誘ってワルツを踊りはじめた。

 優雅に舞い踊る銀髪の英雄と可愛らしい恋人の姿に、騒然としていたゲストの人々がいつのまにか静かになって二人のダンスを見つめていた。
 しかし踊っている途中でクラウドの身体がふらついた。どうやら先程頭をナイフの柄で殴られた影響が残っているらしい。
「頭が痛いのか?」
「だ、大丈夫です。」
 まだ踊りを続けようとするクラウドを姫抱きにして、セフィロスが会場を後にしようとするので、パーティーのホストがあわてて近寄ってきた。
「サー・セフィロス。いかがいたされましたか?」
「先程、奴にナイフの柄で頭を殴られているのだ。まだ影響が有るらしい、医者に連れて行くのでこれで失礼する。」
「それは大変です。救急車を呼びますか?」
「いや、私が連れて行った方が早かろう。」
 クラウドを抱き上げてエレベーターに乗り込むとセフィロスは苦笑を漏らした。
「クックック…旨く逃げおおせたな。」
「どこかで着替えられますか?この格好でカンパニーに戻りたくはありません。」
「カンパニーに戻る前に一度頭部の検査をする。」
「カ、カンパニーで、ですか?!拒否します!!」
「安心しろ、普通の病院につれて行ってやる。」
 クラウドはセフィロスの愛車のトランクに入れておいた普段着に着替えて、そのまま検査のため普通の病院へと連れて行かれた。
 頭部をしたたかに殴られたため検査入院を余儀なくされたが、検査の結果は異常が無くてクラウドはホッと胸をなで下ろした。

 翌日、カンパニーに出社したクラウドは検査入院中に吹き荒れていたらしい噂の嵐をザックスから一部始終聞いたのであった。
「昨日は大変だったぜー。なにしろあの英雄セフィロスに『本当なら表に出したくない』と言わせるだけの美少女が現れたから、ゴシップ誌なんて『英雄、ついに陥落!』とか『本命の恋人あらわる!』だろ?総務のお姉ちゃん達なんてどれだけ泣いたんだか目に隈が出来てんだぜ!!まあ、誰一人あの可愛い子ちゃんが男だなんて信じちゃいないってのが一番笑えるんだけどな。」
「まさか…ザックス、バラしていないだろうね?」
「んなもん無理無理。言っても信じてくれないって、俺だって屋根裏からのぞいていてびっくりしたもんな。お前ってわかっていてもマジでセフィロスを羨ましく思ったぜ。」
「そっか、俺の女装じゃないって思われているならいいか。」
「でもよぉ、昨日からパパラッチがセフィロスを追いまわしていたんだが、目的の女のコメントどころか名前すら出てこないから…そりゃもう煩かったんだぜ!!」
 ザックスから聞かされた言葉はクラウドに取って凄く嬉しい事であった。
「よかった。サーがもし名前を出していたら、俺はまた女装しないといけなくなるもん。」
「ところで、お前昨日何処に居たんだ?」
「ナイフの柄で頭を殴られたから3番街の市民病院に検査入院だよ。」
「なるほど、そこなら足もつかねえか。セフィロスの奴考えているな〜〜!!」
 ザックスの言う通りセフィロスはクラウドのような訓練生の立場すら考えて行動してくれたようで、恋人らしきお相手の名前も素性も一切明かしていないらしい。

 クラウドはセフィロスが英雄と呼ばれ憧れられる理由が一つかわった気がした。



 いつか…必ずセフィロスの様に他人を守れる時が…

 俺にも来る時があるのであれば

 俺もセフィロスの様に出来るよう努力しないと行けない。

 もう女装は懲り懲りだと思うけど、
 まだ俺にできる事がそれしかないのだったら、きっとまた利用されるんだろうな。

 でも、サー・セフィロスのそばでサーの戦い方を見るだけでも
 ソルジャーとして勉強になるならば…我慢しないといけないんだろうな。

 クラウドは改めてソルジャーになるのだと言う決意と共に、セフィロスを見直すのであった。



The End