FF ニ次小説
 ニブルヘルムへ向かうトラックの中で降りしきる雨にザックスはうんざりとしていた。

「凄い雨だな。」

 そしてザックスは気分の悪そうなクラウドに尋ねた。
「おい、気分はどうだ?」

 クラウドは青い顔をしながら答えた。

「……大丈夫。」
「なあ、クラウド。気分悪いなら、そのマスク取っちゃえば?」
「ああ……」
「俺は乗り物酔いなんてなった事ないからな、良くわからないんだ。」

 そしてもうひとりの兵士にも尋ねる。

「準備はOK?」
「おい、お前。もう少し落ちつけ。」
「新しいマテリア、支給されたんだ。早く使ってみたくて、落ち着かなくてさ。」
「……子供か、お前は。」
「俺はあんたみたいになりたくてソルジャーになったんだ。それなのにクラス1STに昇格したのと同時に戦争が終わってしまった。俺がヒーローになるチャンスが減ってしまった訳さ。だから、そういうチャンスがあるなら俺は 絶対にモノにしてみせる。な、どういう気分だ? 英雄セフィロスさん?」

…と、その時車が大きく揺れた。

 運転手が後ろのカーゴルームに向かって叫んだ。
「へ、変な動物が!! トラックに突っ込んで来ました!」

「モンスターのお出ましか…」
 そうつぶやくとセフィロスはザックスとクラウドを伴ってトラックの外に出た。
 正宗を抜き払うとモンスターに切りかかる、流れるように舞い踊る銀色の長髪とロングコートのすそが美しい。

「やっぱ…セフィロスは強いな。」
「ああ。」

 ザックスとクラウドはただ憧れの眼差しでセフィロスを見ていた。

 そしてトラックはやがてニブルヘルムに着いた。

 セフィロスがクラウドにたずねた。
「どんな気分なんだ? 久しぶりの故郷なんだろ?どんな気分がするものなんだ?私には故郷がないからわからないんだ……」
「ええと…… 両親は?」
「母の名はジェノバ。私を生んですぐに死んだ。父は……」

 そこまで言うと、急にセフィロスは笑いだした。

「私は何を話してるんだ……さあ、行こうか。魔晄の匂いがするな。」

 村はひっそりしていた。

 みんな、モンスターを恐れて家に閉じこもっていたのか、それとも神羅が送り出したソルジャー達を恐れていたのかはわからなかった。

「魔晄炉への出発は明朝。今日は早めに眠っておけ、見張りはひとりでいいからお前達も休んでおけよ。そうだったな、クラウド。家族や知り合いと会ってきても構わないぞ。」

 そう言うとセフィロスは一足早く宿屋に入っていった。
 村人が宿屋の側にやってきた。

「英雄セフィロスが来るってんでカメラの用意して待ってたんですよ。セフィロスとモンスターのツーショットが欲しいんです。」
「危険だから家に入ってろ。」
「はいはい……(偉そうに)」

 クラウドは自分の家へと入って行った

「あの……」
「は〜い? クラウド!? お帰りなさい、クラウド!」
「ただいま、母さん。」
「神羅に入ってソルジャーになるって言ってたけど、もうなれたのかね?どれどれ…… 晴れ姿、母さんにもよ〜く見せておくれ。ふ〜ん。惚れ惚れしちゃうねえ。これ、ソルジャーさんの制服かい?」

 クラウドの母親は神羅の一般兵の制服を知らなかったようである、息子の姿を頭からつま先まで眺めていた。
 クラウドはバツの悪い顔をして言い辛そうに口を開いた。

「…………母さん、俺。まだソルジャーになっていないんだ。でも、セフィロスに付いていれば来年にはソルジャーになれると思う。」
 クラウドの母はクラウドの言葉に優しく微笑んでいる

「そうかい。本当に立派になってぇ。そんなんじゃ、あれだね。女の子も放っとかないだろ?」
「別に。」
「心配なんだよ。都会にはいろいろ誘惑が多いんだろ?ちゃんとした彼女がいれば母さん、少しは安心出来るってもんだ。」
「俺は大丈夫だよ。」
「あんたにはねぇ、ちょっとお姉さんであんたをグイグイ引っ張っていくそんな女の子がピッタリだと思うんだけどね。」
「興味ないな。」

 思わずセフィロスの口ぶりを真似していた。
 クラウドの母親は2年ぶりに戻って来た息子にあれこれと料理を作りながら、神羅での生活をクラウドから聞き出していた。

「ちゃんとご飯は食べてるのかい?」
「大丈夫。会社が面倒見てくれてる。」
「そうなのかい。あんた、料理なんて出来ないだろ?一体どうしてるのかと思ってたんだよ。」

クラウドは母親の愚痴をベットに横になりながら聞いていた。
ふと思い出したように起き上がると家をでて隣の家に入って行った、幼なじみのティファの家だったが、当のティファは家にはいなかったのでつい、いろいろと探しまわってしまった。
 一通り探索を終えると宿屋へと戻った。

 宿屋に行くと、顔馴染みの主人が出迎えてくれた。

「なんだい? クラウドちゃん。」
「村の様子を聞かせてくれ。」
「村の事ねえ…… モンスターが増えたのはここ1年くらいかねぇ。それ以外はあんまり変わんないよ。こんなちっこい村なんて変わりようないさぁ。あの魔晄炉造ってる頃が一番華やかだったよ。造ってる頃はねぇ。完成してからはダメさぁ。何年もしないうちにお山の木、枯れちゃったもんねぇ。魔晄炉なんてねぇ、良かったのかねぇ悪かったのかねぇ……悪かったちゅうは簡単さぁ。でも、今更ねぇ……取りあえず、モンスターがいなくなればねぇ。そうすりゃ、ちょこっとは良くなるさぁ。」

 その話を側にいた老人が聞いていた。

「……ふむふむ。モンスター退治にやって来た神羅の人間だな?」
「あんたは?」
「私はザンガン。世界中の子供達に武術を教える旅をしている。弟子は世界中に128人!この村ではティファという女の子が私の弟子になった。」

 ザンカンの言葉にクラウドがびっくりする。

「ティファだって?」
「ティファはセンスがいいな。彼女は強くなるぞ。」

 ザンカンの言葉に驚きながらクラウドは宿屋の二階へと上がった、2階にはセフィロスが窓の外を眺めていた。

「何を見ているのですか?」
「この風景、私は知ってるような気がする…明日は早いぞ。そろそろ眠った方がいいな。」
「ああ、そうしよう。」
「魔晄炉へのガイドは手配しておいた。若い娘らしいが頼りにしていいものかな?」

 翌朝、クラウドが目を覚ますと既にセフィロス達の姿はなかった、。慌てたクラウドが外に出ると、外でセフィロスが待っていた。

「ガイドが来たら出発だ。」

 その時、そこに居合わせたガイドの父親らしい人が心配そうに話しかけた。

「セフィロス、聞いてくれ。もしもの事があったら…」
「安心してくれ。」

 ちょうどその時、ガイドが走ってきた。
 そのガイドとは…… ティファだった!

(やばい!絶対喋らないでおこう!!)

 クラウドはティファを見るとマスクを深くかぶりなおした。

「大丈夫だから、パパ! 強〜いソルジャーがふたりもいるのよ。ティファです。よろしくお願いします!」
「 あんたがガイド!?」
「そういう事。この村で一番のガイドといえば私の事でしょうね。」
「でも、危険すぎる!そんな事にあんたを巻き込む訳にはいかない!」
「お前が守ってやれば問題は無かろう。では、行こうか。」

 セフィロスが魔晄炉へ向かって歩き出そうとする、その時、セフィロスの写真を撮りたがっていた村人が近づいた。

「あの…… セフィロスさん! 記念に写真を1枚。ティファちゃんからも頼んでくれないかな……」

 ティファとザックスに促され、渋々セフィロスは承知した。

「行きますよ〜! はい、どうも!写真が出来たらみなさんにあげますからね!」

 こうしてティファをガイドに据え、魔晄炉に向かった。

 魔晄炉はニブル山の中に造られていた。
 ニブル山の寒々とした空気は、クラウドが出て行ってからも変わっていなかった。

 ティファに連れられ、山道を歩いていく、途中、大きな吊り橋が見えてきた時ティファが振り返って言った。

「さ、ここからが大変よ! ついて来て!」
 と、橋を渡り始めるとその途中で突然吊り橋が切れ、ティファ達は下に落ちてしまった。

 気が付くとだいぶ下に落とされていた。