アレクサンドリアの郊外に停めてある愛車のところで少し待っていると、上空に見慣れた飛空挺が飛来してきた。
 少し離れた平地に着陸するのを見届けるとそれぞれの愛車に乗り込み、ぱっくりと口を開いている飛空挺のカーゴルームに愛車を乗り込ませた。通路を通って操縦室にたどりつくと髪の毛を刈り込んだ男が技師相手に檄を飛ばしていた。
「やいやい、てめえら!!もたもたしてんじゃねえ!!おっと、新婚さんのご登場だ。何処へ行きたい?」
「一旦ミッドガルへ行くか、このままバロンに行くか?」
「ルーファウスに連絡取れる?」
「あたぼうよ!!」

 シドが技師の一人を指差した。
 クラウドがその技師のそばに行くと、すでに回線がひらかれていて、画面には仏頂面のルーファウスが映しだされていた。

「なんだ、クラウドか。」
「アレクサンドリアから紹介状をもらいました。このままバロンに向かうべきでしょうか?一度ミッドガルへ戻るべきでしょうか?」
「ああ、そういえばティファから伝言があったな。『ミッドガルに帰って来たら覚悟しておきなさいよ。』だ、そうだ。」
 ルーファウスから聞いたティファのメッセージにクラウドは顔を蒼くして答えた。
「バロンに向かいます。」
「まあ、待て。女を怒らせると後々厄介だぞ、何があったか知らぬがあやまったほうがよいのではないかな?」
「おう、それは言えてる。女に逆らったら後が恐いぜ。機首回頭、目標ミッドガル!!」

 シドがルーファウスから聞いた言葉で判断を下して、飛空挺『シエラ』をミッドガルへと向かわせると振り返ってクラウドに尋ねた。
「おう、ところで何やらかしてティファちゃんを怒らせたんだ?」
「心当たりなんて無い。」
「それならヤッパリ直接聞くしかないな。」
 シドの言葉にクラウドが渋々うなづいた。

 飛空挺は間もなくミッドガルへと到着するとエアポートには黒いスーツを着たスキンヘッドの男と赤い髪の男が立っていた。
「よお、おかえり。おつかれさん。」
「なんの用だ?」
「ティファちゃんに『逃げ出さないように連れてこい』と言われたんだな、っと。」
 そういわれて後ろに退こうとするクラウドをレノががっちりとつかまえる、すると後ろでセフィロスが同じようにルードに捕まっていた。
「なんの真似だ?」
「ああ、英雄さんにも用事があるんだとよ。」
「殺気が無いと言う事は悪い事ではなさそうだな。」
「ん、まあな。」

 レノとルードに連れられてたどりついたのは7番街、バレットのやっている酒場セブンス・ヘヴンだった。
 店の扉を開けるといきなり軽い破裂音がした。

      パア〜〜〜ン!!

 目の前に紙吹雪が乱れ飛んでいた。

「ク、クラッカー?!」
 後ろにいたセフィロスが支えてくれなかったら、クラウドはびっくりして一歩や二歩ぐらい下がっていたであろう。
 店の中が明るくなり隠れていたティファ達が現れた。

「クラウド、結婚したんだって?おめでとう。」
「ク−ラウドーー!!結婚したなら結婚したって一言言ってよね。」
「え?あの、その…。」
 マリンとティファがクラウドにまくしたてるように聞いてくる、その後ろからバレットがのっそりと現れた。
「なんでえ、水臭いな。黙っているなんてよ!」
「誰が誰と結婚したって?」
 クラウドには寝耳に水である。
 しかしティファ達は完全に決めてかかっているのかクラウドに話し続けていた。
「クラウドがセフィロスとに決まってるでしょ。」
「俺達、結婚していないけど。」
「嘘言うなって、社長がお前ら結婚したと言っていたぞ、っと。」
「入籍だけだったのか?」
「うわ〜〜!!可哀想、だめでしょセフィロス。痩せても枯れても英雄でしょ?こんな美人の奥さんにウェディングドレス着せないで何やってるのよ。」
「ふむ、それもそうだな。」
 ティファに言われてうなずくセフィロスを押さえてクラウドが怒鳴りまくった。
「だから待て!!俺達は入籍も結婚もしていない!!セフィロスが勝手に俺の事を”妻”だと言いまくってるだけだ!!」
 途端にその場に居る全員の視線がセフィロスに集中した。

「ほ、本当?!」
「ああ。」
「ぶっ!!ダメじゃない、セフィロス!!私の目の前でクラウドさらって二人で逃避行しちゃったくせに、まだ口説いてもいないの?返してもらっちゃうからね。」
「ダメだ。クラウドは渡さん。」
 セフィロスがティファを睨みつけると、すかさずレノがチャチャを入れた。
「よー、よー。お熱い事で。」
 ティファはセフィロスの言葉を聞いてにっこりと笑った。
「よかった!!わたしクラウドのウェディングドレス姿見たかったのよ!セフィロス!!ぜったい結婚式やりなさい!!」

 『痩せても枯れても』発言と言いこの命令と言い、ティファってこんな性格だったっけ?と思いながらも、クラウドは女装だけは避けたいので逃げようとするが、セフィロスにがっちりと腰を抱かれていて逃げる事もできない。

「いいなー、クラウド。お嫁さんになれるなんていいなー。」
 マリンが羨ましそうな顔でクラウドを見あげていると、扉が開いて一組のカップルが入ってきたので振り返る。
「あ、お花のお姉ちゃん!」
「エ、エアリス?!」
 入ってきたのはエアリスと黒髪のつんつん頭の男だった。エアリスがクラウドに明るい笑顔で手をあげた。
「はぁ〜い、クラウド。」
「なんでぇ、旦那。まだ口説いていなかったのかよ。」
 ティファが入ってきた二人に挨拶をした。
「あ、いらっしゃい。エアリス、ザックス。」
「聞いてたわよ。クラウドのドレス姿なら私もみたいわ。」
「ね〜〜〜!!私達を差し置いてコルネオに選ばれるぐらいだもの。それはそれは美人だわよ」
 ティファの言葉はどことなく嫌みを含んでいるように聞こえるが、全くの事実である。
「ね、どこか素敵なドレスショップ無いかしら?」
「あ、8番街にいい店があるわ。」

 女性二人がドレスの話しで盛り上がっている時に、すかさずセフィロスがわがままを言いはじめた。
「待て、私の花嫁にふさわしいドレスだ、この大陸1のデザイナーのものにしたいな。」
「だ、誰が着るもんかーーー!!!」
 クラウドが叫んだ途端二人の女性+少女にぎろりと睨まれた、ティファは指の間接をゴキゴキとならしながらエアリスはロッドを後ろ手に隠しながら、マリンは後ろ手に100tハンマー(え”?!)を持って、にっこりと笑い掛けた。

「クラウド、着てくれるわよね?」
「もちろん挙式は5番街の教会よね?」
「パーティーはこのお店でやってくれるよね?」
 3人とも目が笑っていないどころか、殺気すら感じられる、クラウドは青い顔をしてセフィロスにすがりついていた。
 そんなクラウドにセフィロスは耳元で囁いた。
「ん?なんだ、嬉しいのか?」
「あ、あんたって人はーーー!!!」    それは種Desのシンのセリフ!

 しかし、泣き叫びたいクラウドをよそに話がどんどん進んで行った。
 ティファとエアリスは店の奥に有る電話でルーファウスと会話していた。
「ルーファウス、あんた腐っても神羅カンパニーの社長でしょ?!最上級のウェディングドレスぐらい用意出来ないの?!」
「なぜだ?」
「もちろん。クラウドに着せるのよ。」

 意味深に笑うエアリスほど恐ろしいものは無いと、以前エスタ国のスコールと言う男から聞かされたことのあるルーファウスだったが、その言葉の意味を彼はこの時やっと理解した。
 しかしルーファウスには一つの疑問点が浮かんだのでティファ達に聞き返した。
「クラウドは既に結婚していたのではないのかな?」
「まーだみたいなの、だ・か・ら・ね!!」
「うん、私達だってクラウドの花嫁衣裳姿みたいもん。」
「それもそうだな、わかった探させよう。」
 ルーファウスが了承したので電話をきったようだ、ティファが鼻歌でも出そうな程の笑顔でクラウドの目の前に戻ってくる。

 レノが後ろで苦笑しているのが手に取るようにわかるが今はどうする事もできない、クラウドががっくりとうなだれる後ろでティファ達はやたらに盛り上がっていた。
「うふふふふ、きっと美人の花嫁になるわね。」
「いいなー、お嫁さん。」
「セフィロス、こんどこそ約束よ。きっちりとクラウドを世界一綺麗で可愛い花嫁にしてね!」
 3人の女性に何も言い返さないクラウドとセフィロスを見てザックスがびっくりする。
「ひょえー、女ってのは恐ろしいねぇ。かの英雄さんもその英雄さんを倒した男も何も言い返せないじゃないか。」
「なんですって?!」
「ザックス、もう一度言ってごらんなさい。」
「い”?!」

 二人の女性に詰め寄られてザックスが青い顔をしていた。
 どうやらここの女性たちは男性たちより遥かに強いらしい。もっとも作者のプレイするFF7は常に、ロッドで敵をボコボコにする上に、リミット来たら皆をリミットさせる女帝と、その女帝のおかげで余裕でリミットブレイクLv4を使えるようになったティファは実際に強かったのであるが…。

       おっと、ずれた。話を戻そう。

 ティファとエアリスと言う二人の可愛い子ちゃんに迫られて、思わず鼻の下を伸ばしたいがどっちかというと冷や汗しか出てこないザックスは、あわてて話題をずらそうとセフィロスのところへ逃げ込んだ。

「にーさん、知ってるか?バロン王国には地下の世界があって、その地下の世界のどこかに凄い鍛冶屋があるってきいたぞ。」
「それがどうした?」
「いやさー、まだクラウドに指輪やってないんだろ?それなら細工のいい指輪にすればいいだろ。」
「なるほど、脳内筋肉のお前にしてはよくできた答えだ。」
 どうやらクラウドのアクセサリーの事で話しを始めた様であったので、マリンが横から口を出した。
「お花はお姉ちゃんのお花を使ってね。」
「あら、マリン。だめよ、私の育てている花は小さな花ばかりだもの、バラやユリがいいわよ」

 そこへセフィロスの携帯に電話がかかってきた、セフィロスが携帯を取り出して番号を見ると渋い顔をする。
「貴様か、なんの用だ?」
「嫌ですね。せっかく良い情報が入ったと言うのに…。スピラ国のユウナという女性に会えば良いドレスが手に入るそうだ。それからブーケはフィガロに居るセリスと言う女性が知っているそうだ。指輪はバロンの地下世界の鍛冶屋、ティアラはエスタ国によい細工の店によい物が有るそうだ。コレクション大陸中を探す事になるが、いかがなものかな?」
「クックック、よかろう。可愛いクラウドの為ならそのぐらいの事など苦労とは言わぬ。」

 なんだかどこかで聞いたような話になってきたが、クラウドの花嫁衣裳一式を揃える為にこの大陸中を駆け巡ることになりそうである。
 とにもかくにも旅支度をせねばならない、セフィロスはとなりにいたクラウドに声をかけた。
「お前も来るのだろう?」
「あ…。う、うん」

 頬を赤らめてうなずくクラウドは凶悪なまでに可愛らしい。
 セフィロスは意味深な笑みを口元に浮かべながら、二人で暮らしているマンションへとクラウドの肩を抱きながら戻って行った。

 そんなクラウドの後ろ姿を見てティファが思わずつぶやいていた。
「まったく、気がついてよかったわよ。クラウドったらなぜセフィロスとの事を隠していたんだろう?」
「え?隠してたかしら?だってずっと彼、セフィロスの事しか目に入ってなかったじゃない?」
「それもそうか。」
「それにしても、あいかわらず可愛い…、ぐはあ!!」

 ティファがザックスの雄叫びを聞いて振り向いた時、後ろ手にロッドをもってにっこりと微笑んでいるエアリスの前にお腹を抱えてザックスがうずくまっていた。

「あら?ザックス。お腹痛いの?大変!ティファ、ちょっと帰るわね。」
 そう言ってザックスの襟首をガシッと掴み、自分よりも一回りは大きいザックスを余裕で引きずってエアリスは帰って行った。