バロン王国のアダマン島に到着すると、すぐにピンクの尻尾をアダマンタイトに変えてもらう。そのアダマンタイトを持って地下世界のドワーフの鍛冶屋にいくと、セフィロスとクラウドのお揃いの指輪を注文した。
あっというまに出来た指輪は、ちいさなエメラルドとサファイヤが輝き、羽根のデザインが施されたおしゃれな指輪だった。
出来上りに満足するとセフィロスはクラウドを伴ってバロン王国を後にした。
タイクーン王国
黒いチョコボに乗った青年が草原を書け抜けていた。
雲一つない空だったはずなのに、いつのまにか影が周りにできていたので青年は空を仰ぎ見た。
「あれは?」
青年から少し離れた所にその影を作っていた物体が舞い降りてきた。
飛空挺の横からラダーが降りてきて二人の人物が草原に降り立った。
一人は日に輝くハニーブロンドで、一人は鮮やかな白銀の長い髪、その二人に心当たりがあった青年は乗っていたチョコボを降り、二人のそばに近よって声をかけた。
「あ、あの。もしかしてクラウドさんとセフィロスさんでしょうか?」
「え、ええ。」
「初めまして、お噂はかねがね。自分はバッツと申します。」
礼儀正しくチョコボから降りて一礼する青年の名前に、セフィロスもクラウドも聞き覚えがあったので問いただした。
「もしかしてタイクーン王国の女王陛下のお知りあいか?」
「はい、レナならば以前一緒に旅をした仲間です。」
爽やかに笑う青年の手綱の先にいたチョコボが、いつのまにかクラウドに擦り寄っていた。
「ちょ……。こら、離れろよ!」
「あ、すみません。」
あわててバッツが手綱を引いた。
しかしチョコボはクラウドの周りをワタワタと踊るように歩いている。その見覚えのある行動に、クラウドは顔を青くしセフィロスの背中に隠れた。
セフィロスもチョコボの行動に気がついて、殺気を思いっきり含んだ視線を投げつける。チョコボのダンスがぴたりと止まったのをみてバッツが驚いた。
「おかしいなぁ、こいつあまり人に懐かないのに。」
「どうせ。」
「そこのチョコボ!仲間にも言っておけ。こいつは私のモノだ!」
人の言葉を理解するのか、チョコボは頭をぶんぶんと縦に振った。
バッツがびっくりした目をして二人を見つめ、気を取り直して話しかけた。
「ところで、レナに何か御用でしょうか?」
「ああ、女王陛下にはミッドガルから親書を持ってまいった。出来うれば姉君にもお会いしたい。」
「ファリスにも?」
「ある理由で上品な靴を探している、姉君には使っていない上品な靴をお持ちとかきいたが?」
「セフィロス、靴なんて探してどうするの?」
「クックック、おまえはドレスアップしたと言うのにスニーカーやブーツでは似合わないであろう?」
「あ、そうか!…って、まさかそれって?」
「当然、花嫁衣裳に使う。」
キッパリといいはなったセフィロスと、がっくりと首をうなだれるクラウドが、あまりにも対照的だったのでバッツが思わず笑みを漏らした。
「とにかく、タイクーン城はこちらです。」
バッツは黒チョコボの手綱を持ったまま、一足先に歩きはじめた。その後を二人の男はゆったりとついて行った。
タイクーン城
城の上部にあるテラスにドラゴンが舞い降りている。
そのドラゴンのすぐそばで可愛らしい女性が立っていた、タイクーン王国王女陛下のレナである。
テラスから見下ろすと、黒いチョコボを引き連れたバッツが見えた、しかしいつもとは違い後ろに男の人を2人連れていた。
「めずらしいわ、お客様かしら?」
ドラゴンをひと撫でするとレナは階段を駆け降りた。
バッツに付き従って、クラウドとセフィロスがタイクーン城の入り口の大きな扉を開けると、目の前に広がる空間はしんと静まっていて人のいる気配が全くなかった。
その時、一人の少女が階段を駆け降りてきた、息を切らして走ってきた少女を見てバッツが苦笑いをする。
「まったく、お城の中を走ってくる女王様なんて君ぐらいじゃないかな?レナ。」
「はぁっはぁ……。バッツ、そういう意地悪言わないでよ。ところで、後ろのお二人はどちらの方?」
「ファリスの友人の知り合いだ。君に会いたかったそうだ。」
バッツが後ろに控えていた二人を振り返ると、ついっと一歩前に出たセフィロスが軽く会釈をして話しはじめた。
「ミッドガル 神羅カンパニー所属のセフィロスだ。神羅カンパニーの社長ルーファウスの名代で親書を持ってまいりました。」
セフィロスが書類をレナに手渡すとレナが微笑む。
「ご苦労様です。」
「そういえばファリスっていつものところか?」
「え?お姉様?ええ、そのはずよ。」
「なら、シルドラを借りるよ。」
そう言うとあっという間に階段を駆け上がって行った。
「シルドラって?」
「あの翼竜であろう。」
「はい、我が国の王家には飛竜を育てる事が受け継がれています。」
「ふ〜ん、飛竜ね。」
「もちろん飛空挺もありますわよ。」
にこりと笑うレナにはまだあどけなさが残っていた。
どこかで翼竜の羽ばたく音が聞こえてきたのでセフィロスがレナに聞いた。
「人を乗せることができるのか。」
「はい、卵のころから育てていますから私とよく遊んでくれているのでバッツと姉のファリス、西にあるバル城のガラフ王と王女クルルには懐いています。」
「なるほど。」
「バッツが戻るまでの時間にお茶でも飲みませんか?」
「セフィロス、どうする?」
「まあ、よかろう」
「では、こちらへ」
レナが二人を伴って応接間へと足を進めた、テーブルに付いて出されたお茶を飲みながらお互いの国の事を話し合っていると、どこからか羽根の羽ばたく音が近づいてきて止まった。
そしてすぐに階段をどたどたと駆けおりる音が聞こえてきた。
その足音にレナが真っ赤になる。
「もう、お姉様ったら。」
レナがため息交じりにつぶやくのと同時に扉が思いっきり開かれた。
「よぉ、レナ。何か用か?」
肩まで掛るロングヘアー以外は何処からどう見ても男の格好である、おまけにあるき方まで男っぽい。
間違えなくこの人物はタイクーン王国第一王女のファリスであろう、以前、ユフィーから聞いた人物像そのままであった。
「お姉様。お姉様にお会いしたいと言う方が見えてますのに、どうしてドレスを着ていただけないのですか?」
「俺に会いたい奴?!どこの海賊だ!?」
あ〜〜、もしもし。いくら自分が海賊だと言えそれはないんじゃないですかぁ〜★!
後ろから現れたバッツが思わず顔に青線+冷や汗をかいている。レナはテーブルに肘を付いて頭を抱えてしまった、クラウドとセフィロスも思わず吹き出してしまった。
「君がファリス?ユフィから噂はかねがね聞いています。」
「ユフィ?ああ、ウータイのこそ泥か!」
「ま、間違ってはいないな。」
「で?俺に何か用か?」
「なにやら一度使っただけで、今は使っていないよい靴をお持ちとか聞いたが?」
「ああ、ドレスもリボンもあるぞ。こっちの男なら似合うだろうな。」
ファリスがクラウドを指差してあっけらかんと言った。
あまりに突拍子もない事だったのでバッツもレナもあっけにとられているが、言われたクラウドはちょっと拗ねたような顔をしていた。
その顔はどこからみても凶悪なまでに可愛らしかったりする。 (爆!)
ファリスがクラウドの顔を見てカラカラと笑った。
「俺なんかよりもよっぽど女っぽいじゃないか。」
「ファリス姉様、いくらお仕事がお仕事とはいえお姉様は女性なのですからもう少し考えて下さいね。さもなくば強硬手段に出ますわよ。」
「強硬手段?」
「私に実の姉がいると言うことはこの国中に知れ渡っています。妙齢ならば”そろそろ見合い話の一つでもどうですか?”と良く言われますの。なかには良いお話しもありますのよ」
「じょ!冗談じゃねえ!!俺には可愛い子分達がいるってのに、その子分を路頭に迷わす訳にはいかねえ!」
女王の実の姉が海賊というのもなんであるが、ファリスにはファリスなりの考えがあって海賊をやっているようであった。
タイクーン姉妹の口げんかを横目で見ながら、バッツがあきれた顔をしていた時、再び羽根の羽ばたく音が聞こえてきた。しばらくすると扉が開き一人の老人とまだちいさな子供が入ってきた。
「ファリス〜〜いる?!」
「こらこら、クルル。どうやらお客さんの様だぞ。」
「あ、ごめんなさい。」
ぺろりと赤い舌を出してお茶目な笑顔を見せる少女は、先程レナが言っていたバル城の王女クルルであろう。そしてその後ろから柔らかな笑顔で見守っているのが、バル城の城主ガラフ王であろう。
クラウドとセフィロスは椅子から立ち上がって一礼した。
「はじめまして、クラウド・ストライフです。」
「ミッドガル神羅カンパニー所属のソルジャーセフィロスだ。」
ガラフが目の前に立っている男二人を眺めて目を丸くしていた、クルルが返事をしないガラフを横からつついたおかげで、ガラフは我に返って一礼した。
「失礼いたしました。私はバル城の城主ガラフ、これは孫のクルルと申します。」
「お兄ちゃん達、レナとファリスのお友達なの?」
「いや、今日知りあったばかりだよ。」
「そう。ファリスね、こんなカッコしているけど、本当は凄い美人なんだよ。お兄ちゃん達ぐらい強そうでカッコいい人なら、ファリスお姉ちゃんも、もうちょっと女の子らしくなっていいんじゃない?ねえ、おじいちゃん。」
クルルの爆弾発言にファリスが目を丸くし、ガラフはうなづき、バッツとレナは顔に青線+冷や汗をかいている。
しかしセフィロスは平然と受け流した。
「残念だが私もこれもすでに魂の片割れと呼べる人物に出会った後だ。」
「ふ〜〜ん、残念だわ。お兄ちゃん達ならファリスを負かすことができるでしょうに。」
「だ、だから…クルル。ファリスは何も自分を負かす事が出来る男と付き合うとか言ってないはずだが?」
「だって、確かに”俺に勝てない男なんて要らない”って言ってたわよ。」
「ふん、俺に勝て無いような軟な男が海賊を出来る訳ないだろ?」
「まったく、お客様に失礼でしょ?すみません、本当に。」
しかしレナ以外の人はまだぎゃいぎゃい言い合っていた。
レナはため息交じりに言い合っている旅仲間を横目にし、セフィロスとクラウドを連れて応接間を出て行った。
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