レナに連れられて階段を上がると、テラスに出ると目の前の大人しく待っていた翼竜が翼を広げて一声鳴いた。
いきなりだったのでびっくりしたクラウドが思わずセフィロスにすがりついた。その姿を見てレナがクスリと笑っう。笑われたクラウドがおもわず赤くなるが、レナは普通に接してくれた。
「ファリスお姉様の住んでいる所にご所望の物が有ると思います。あの状態ではしばらく終りませんので一緒に参りましょう。」
そう言うとひらりと翼竜に乗った。
クラウドを乗せるとセフィロスも飛び乗り、レナが翼竜の首をひと撫でした。
「お姉様のアジトまでお願いね。」
翼竜が一声鳴くと翼をはためかせて一気に空へと舞い上がった。
あっというまに地上が小さく見える、そして川を渡ると洞窟の手前でゆっくりと下降しはじめた。
翼竜がその翼を完全に止めた途端、レナが翼竜から飛び降りた。その行動力はさすがかの海賊のお頭の妹であった。
「ここがお姉様率いる海賊さん達の根城です。海賊と言っても悪い人達ではありませんから。」
にっこりと笑うレナにおもわず、『海賊と知り合いの女王様が普通いるか?!』と突っ込みたいがさっさとレナは中に入って言ってしまった。
どうやら本当に顔見知りらしい。クラウドがセフィロスの顔を見あげて不思議そうな顔をした。
「凄い女王様だね。海賊と顔見知りなんだ。」
「それなりに寛容な女性なのだろう。」
冷ややかな笑みを浮かべてセフィロスは悠然と洞窟の中に入って行く、クラウドがその後ろから小走りで付いてきた。
レナはすでに海賊の副長らしい人物と話していた。
「お姉様のドレスを一式頂きに来たわ。今度もっと素敵な物をさしあげるのでぜひ着せてお城のパーティーに送り出して下さいね。」
「は…はい。」
レナの文句を言わせない態度に副長も何も言えずにヘコヘコしている。慣れた様子でレナはファリスの部屋に入ると、すぐに目的のドレスアップ用品一式をもって出てきた。
「これですわ、何に使われるかわかりませんがどうぞ。」
「あ、でも…、お姉さんの物なんですよね?」
「姉にはまた新しいドレスを作りますわ。でも、着てくれそうも無いかもしれませんけど。」
そう言うと来た道を戻り翼竜の背中に乗る。
ふと見ると二人とも翼竜に乗ろうとしないので首をかしげて問いかけた。
「どうされましたの?」
「あ、いえ。もう用事は総べて終わりましたのでコレでお暇しようと思いまして。」
「そうですの?では、どちらまでお送りいたしましょうか?」
「いや、この南に1km程行った草原に乗ってきた飛空挺が泊まっているはずだ。」
「ルーファウス社長によろしくお伝え下さい。」
「わかりました、では。」
一礼して南にあるいて行く二人の青年を見送ると、レナは翼竜にまたがって再びタイクーン城に戻って行った。
セフィロスとクラウドがシエラ号までもどり乗り込むと、ブリッジではのんびりとシドが居眠りをしていた。
「シド、戻ったよ。」
「おう、早かったな。今回は誰にもプロポーズされてないか?」
「どういう意味だよ?」
「いや〜〜、おまえさん連れて歩くといつも結構いい男に言い寄られているからよ!まあ、すぐ隣りに旦那が見張っていれば無謀な事をする奴もいねぇだろうけど。」
「どういう意味だよ。」
「いや〜〜、次はフィガロだろ?あの女好きの国王がお前みたいな美人さんをほかって置く訳がないからな。」
「フィガロ城には行かない。国王もあのギャンブラーも顔を見たくない。」
苦々しげにいうクラウドを見ると、過去に色々とあったことはすぐにわかる。シドが腹を抱えて笑い転げるがセフィロスはむすっとした顔をしている。
「あのギャンブラーもお前に色目を使っているのか?」
「言いたくない。」
セフィロスが行方不明になっている時に出合った、そのギャンブラーことセッツァー、容姿こそ全く違うが、その銀髪を見て思わずセフロィスを思い出したクラウドが、浮かべた笑顔にころりとセッツァーが惚れてしまい、事あるごとにクラウド相手に迫りまくっていたのであった。
「どうしてもいかないとダメなら、俺絶対あんたのそばから離れないぞ。」
「クックック、可愛い奴だ。」
「で?行くのかい?フィガロ国。」
「ああ、セリスとかいう女に会わねばならないからな。」
「おうよ!てめえら!フィガロに向けて出発だ!!」
シドの一声で飛空挺シエラ号はフィガロに向けて離陸した。
クラウドはルーファウスに頼んでセリスの事を教えてもらった。セリスと言うのはフィガロ国の女将軍で、国軍を任せられるからにはそれなりの腕と実力を持っているという。
「ええ〜〜?!彼女はフィガロ城に住んでいるのか?!」
「どうやらその様だな。諦めて帰ってくるか?なにやらこちらの後ろで女性軍が、にこにこと笑っているようだが。」
ルーファウスの後ろにティファ達がいる様である、画面の向こうから声がした。
「はぁ〜い、クラウド!セフィロスとよろしくやってる?」
「ローザさんからメールが来ていたわ。指輪は手に入ったみたいね。」
「あ、でも勝手にはめないでよね。きちんと式ではめるんだからね。」
「で?クラウド今度はだれにプロポーズされに行くの?」
「そこの小娘!こいつは私のモノだ!」
「やーね、セフィロスったら。そんな事わかってるよ。ちょっと苛めただけじゃない。」
「…………。」
本当にありとあらゆる意味でこの世界の女性陣は男性陣よりも強い模様であった。
ティファ達がルーファウスを押しのけて画面に迫ってきた。
「い〜い?!クラウド、君はセフィロスにしっかり守ってもらって、無事ブライダルアイテムを揃えてくるまで帰って来ちゃダメだよ。」
「もし、帰って来たらその時は……。」
「擦り潰すわよ。」
「捻り切っちゃうわよ。」
「切り落とすって。」
どこかで聞いたようなセリフを言いながらも、満面の笑みを浮かべる女性陣に、思わずセフィロスにすがりつくクラウドと、そんな愛妻(?)を抱き寄せるセフィロス、その後ろで思わず冷や汗をたっぷりとかいているシドとシエラ号の乗組員の顔を見て、女性軍はにっこりと笑った。
「そう言う事だから飛空挺のクルーの皆さんも二人の事をよろしくね。」
エアリスがにっこりとほほえんではいたが。手にはしっかりと彼女の最強武器であるアンブレラが装備されていた。クルー一同が全員引きつった笑顔で思いっきり首を立てに振った。
ティファ達が部屋から去った後ルーファウスが思わずため息をついていた。
「女性不信になりそうだな。」
ぼそりとそうつぶやくとルーファウスは通信回線を切った。
シエラ号の中はしんと静まり返っていた。艇長であるシドが活気づけようと声をあげる。
「なんでぇ、なんでぇ!こうなったら行くしかないだろうが?!わかったらさっさと配置につけ!」
「へ、へい!!がってんでぃ!」
な、何だか激しく違う気がするが、このシドへのぴったりの返事であろう、シエラ号はもうすでにフィガロ城の制空権に入ってきていた。
一面に広がる沙漠のまん中にフィガロ城はそびえ立っていた。
城の手前にふわりとシエラ号が舞い降りると、城の中からチョコボに乗った騎兵隊が出てきた。
先頭にいるチョコボにまたがっているのはどうやら女性のようである。シエラ号のタラップがさがると中からセフィロスとクラウドが降り立った。
「フィガロ国将軍セリス・シェール殿におあいしたく参った。自分は神羅カンパニー所属、ソルジャーセフィロス。」
「セリス・シェールは私です。」
先頭にいた女性がその兜を取った。
長い金髪が日に輝き青いつぶらな瞳に整った顔だちをしている、しかし隣りに立っているクラウドには負けるな…と、セフィロスはひとりごちった。
クラウドはセリスの風貌があまりにも軍人らしくないので思わず聞き返してしまった。
「あなたが、セリス・シェール。フィガロ国軍の総司令官?」
「ええ、国王のエドガー様にその仕事を押しつけられましたの。それとも女の私が将軍では何かご不満でも?」
「いえ、一国の国王が国軍をあなたに任せるからにはそれ相応の実力が有るはずです。」
「それで、私に御用とは?」
「風の噂によいブーケをお持ちと聞いた。訳あってそれを所望したい。」
「ブーケ?花束か。ああ、もしかしてあれの事かしら?10分待ってて下さるかしら?ここから南東に行った所にオペラ座があります。そこの館長が花束を売って下さる所を知っていると思うので館長への紹介状を書きます。」
思わぬ場所の名前が出てきたのでクラウドが不思議に思った。
「オペラ座?」
「なるほど、劇場の館長ならばよい花屋を知っているであろうな。」
「その間、ここで待ってます」
「あら、お城で待っててくださればいいのに。」
「いえ、ここの城主とはちょっと意見が合わないので。」
「あら、そうね。あなた美人さんですものね。あのエドガーが口説かないわけないわね。」
けらけらと笑いながら女将軍はチョコボの轡を引く。
「いいわ、好きな所で待ってて下さい。すぐに戻ります。」
そう言うと城の中へと駆込んで行ったのであった。
しばらくその場で待っていると、再びチョコボに乗ってセリスが駆け戻ってきて、クラウド達ににこりと笑うと持っていた手紙を渡した。
クラウドは手紙をもらってホッとした。
"甘いぞクラウド!!
この私(作者)がそう簡単に話しを進めると思っているのか?!"
作者の視線を感じたのであろうか(!?)クラウドが背中になにか冷たい物を感じた。
「なんだか作為的な物を感じないか??」
「クックック、作者とてお前の清楚なドレス姿はたまらなく好きなんだろう?」
「俺、男なんだけど…」
拗ねたように怒りながらクラウドは、手紙をもらってシエラ号に戻り、シドに話して東南に有るオペラ座を目指してもらう事にした。
そこで何があったのか知らないままあっという間に到着すると、何も迷う事なくオペラ座の正面から入って行った。
入り口で受け付けの女性が切符の事を聞くとクラウドが来訪の目的を告げる。
女性が電話を一本入れると団長があわてて飛んできた。
「せ、セリス将軍のご紹介とは貴方方ですか?」
「はい」
「ブーケをご所望とお聞きしましたが。」
「ああ、そうだ」
「さし上げてもかまいませんが、その代わりお願いが有ります。うちのプリマが昨日から風邪を引いて舞台に立てないんです。代わりに舞台に立っていただけませんでしょうか?」
「舞台?誰が?」
「君ですよ、君。君ならばぴったりだ!!」
団長がクラウドを指差してうなずきながらそういった。
「クックック、女装はお前の特技であろう?」
「特技じゃない!!」
「とにかくやってもらわないと舞台に穴を開ける訳に行かないのです。ブーケは舞台の道具ですから終ったらさし上げますからお願いしますよ。」
クラウドをぐいぐいと引っ張りながら楽屋に引き込もうとする団長に、セフィロスはちょっと苛ついた視線を送り、団長の腕を取り払うと、嫌がるクラウドを抱き込むように楽屋へと連れて行こうとした。
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