荒れ地に到着したシエラ号から、クラウドが飛び出して来たのをみて、スコールは駆け寄った。

「なぜ追われていた?」
「言いたくないね。」
「ふん、まあいいさ。あいつらに聞けばいい。」

 スコールがガンブレードを掲げてセフィロスとシーモア、エドガー、セッツァーの戦いに加わろうとした時クラウドに止められた。

「セフィに殺されたくなかったら、参加するな。」
「おまえ…。」
「セフィは大丈夫だ。俺はファルコン号に潜入して自動操縦のコースのセットに行く。」
「付き合おうか?」
「お前にはお前の仕事があるだろ?」
「今の仕事はこの騒ぎを納める事だ。」
「そうか、ならば勝手にしろ」

 いい終わらないうちに駆けだしたクラウドの後を、追い掛けるようにスコールが走り出した。
 ファルコン号に乗り込むと、自動操縦の装置を巧く細工すると、クラウドはそのまま甲板に上がると争っている4人の元に走り寄る。

 争っていた男たちがクラウドを見つけて声をかける。
「クラウド?!」
「ハニー?!」
 びっくりする男共をよそに、まっすぐセフィロスへと道を切り開くと、クラウドは抱きつく様にセフィロスをファルコン号から弾き飛ばし飛び降りた。

「な、なぜ?!」

 シーモアの声に反応するように、ファルコン号が離陸しはじめたので、あわててスコールが船から飛び降りると、いきなり加速をしはじめて自動操縦で飛び立ってしまった。
 船の上からエドガーがクラウドに問いただした。
「な、何故だハニー?!」
「あんたにハニーだなどと呼ばれる筋合いはないね!!二度と俺の前に現れて見ろ!騎士さん達に切り刻んでもらうぞ!!」
 遠ざかるファルコン号に悪態をつきまくり、せいせいしたのかクラウドが荒い息を整えてスコールに振り返った。

「悪かったな。」
「いや、いい。それでエスタには何日いるんだ?」
「目的の物が見つかったらさっさと帰る。」
「腕のいい職人がいると言う地域が有るそうだな。」
「ああ、フィッシャーマンズホライズンかシュミ族の村だな。」
「どちらが上だ?」
「シュミ族だ。しかしあそこは外部との接触をしたがらないぞ。」
「貴様が認められているのであれば私も認めてもらうだけだ。」
「あんたらしいよセフィロス。」

 スコールは二人をエスタ大統領府へと案内した。
 巨大な機械都市エスタのほぼ中心に大統領府があった、変わったエレベーターに乗り込むと自動的に官邸に入って行く。
 大きな扉の前に止まるとスコールが先導する。

「スコール・レオンハルト 入ります!」

 スコールが部屋に入っていくと、底抜けに明るい笑顔の男がデスクに座っていた。
 黒髪のどことなくザックスに似ている雰囲気のある男、ラグナ・レウァールが手をひらひらさせながら、スコールの後ろから入ってきた客に挨拶した。
「よぉ、いらっしゃい!遠くからわざわざようこそ。」
「こいつがこう見えてもここの大統領だ。」
「あ、ひどいなースコールちゃんったら。それでも俺の息子かよ?」
「………(誰が認める?!)」

 スコールはラグナの態度に眉間にしわをよせて、右手を額にあててしかめっ面をしている。
 それを見てクラウドがクスリと笑った。
「いいじゃないか?スコール、君は目の前にまだまともな父親がいる。俺には父親の記憶が無いし、セフィは父親に実験台にされている。」
「あんな親父でよければくれてやる。」
 吐き捨てるようにいうスコールに、ラグナが思わず笑みを浮かべ、セフィロス達に話しかけた。
「で?あんた達はエスタに何をしにきたのかなぁ?」
「腕の良い職人がいると聞いた。」
「ん?まあね。何を作ってもらいたいの?」
「ティアラだ。出来うればこの大陸最高の物が欲しい。」
「ふ〜ん、まあいいでしょ。スコール、シュミ族には話を付けてやる。ふたりを連れて行ってやれ。」
「了解」

 スコールがセフィロスとクラウドを連れて大統領府から出てくると、キスティスとセルフィーがやってきた。

「あら、スコール。凄い人達を連れて歩いているわね。」
「え?キスティス知っているの?」
「ええ、DQ大陸とのモノポリー大会の2かい目で会っているわ、セフィロスさんとクラウドさんでしょ?」
「でも、そんなに凄い人とは思えんけどなぁ。」
「それはセルフィーが見ていないだけ。ティファさんに言わせるとFF大陸1のバカップルですって」
「バカ……。あ、そう言う事!」
「てぃ、ティファの奴!!」
「バカップル??」
「班長、バカップルってね、班長の所みたいなラブラブカップルの事を言うんだよ。」
「でも、この二人は並じゃないわよ。ミッドガルでしょ、DQ大陸とのモノポリー大会でしょ、それからあなたが派遣された何処かのお城でも、派手に喧嘩してはあとからいちゃいちゃするんだもの。」
「……(まあ、間違ってはいないか)。」

 スコールがため息をつくと携帯に着信が入ったので、周りの許可をとって着信を取った。
「スコールです。」
「おお、俺、俺!シュミ族の許可を取ったから連れて行ってやれ。」
「俺と言う知り合いはいないはずだが。」
「すこぉるぅ〜〜〜!!あいかわらずだな。」
「切るぞ!」

 スコールはぶちっと携帯のスイッチを押すと、あいかわらずしかめっ面をする。
 セルフィーとキスティスは慣れた物だがクラウドはびっくりする。
「へぇ、あんたがそんな顔をするとは思わなかったな」
「レディアント・ガーデンには頭痛の種が無かったからな。」
 スコールが珍しく笑顔を浮かべたのを見逃すようなキスティスでは無かった。
 ちらりとクラウドを見やると金髪碧眼で男としては可愛らしい顔つきであった、キスティスは思わず眼鏡を押さえて頭を振った。

 スコールが二人を先導するようにラグナロクへと導く間に、アーヴァインとゼルとすれ違った。

「スコール、お客さんか?」
「ああ」
 そっけなく答えるスコールの後ろには超絶美形二人組が並んでいる。
 一人はゆうに身長190cmを越える長身で、もう一人も170cmはあるとは思うが隣りの男が大柄なので華奢で小柄に見えてしまう。
 ゼルとアーヴァインは思わずその美貌に見とれてしまった。それを見逃すスコールでは無い。

「この二人は男。しかも凄腕の剣士だぞ。」
「知っているのか?」
「ああ、背の高い方は俺が負けを認められる男で、金髪の方は一緒に戦ったこともある男だ。」
 ゼルとアーヴァインはスコールの言葉に目を見張った。
 スコールは『伝説のSee-D』、『See-Dの中のSee-D』と呼ばれるほどの男で、彼の腕は自分達が一番知っているつもりだった。
 その彼が『負けを認められる』とあっさり言ったのである。
 目の前の銀髪の男を思わずじろじろと観察してしまった。その時、金髪の男がふわりと微笑んでスコールに話しかけた。

「へぇ、スコールどうかしたのか?お前が負けを認めるとはな。」
「レディアント・ガーデンの闇の狭間で一度出合っている。声をかけたらいきなり切り付けられて逃げ出すしか出来なかった。」

 アーヴァインが二人の会話を横から眺めていて、先日スコールが言っていた言葉を思い出した。

『お前があいつにであったらきっとわかるさ。無愛想だけど笑うと可愛くて惚れたと思った途端に、恋人が現れてかっさらって行ったよ。』

(まさか?!スコール、こいつに?!)
 アーヴァインの脳裏に雷のような閃光が走った     <って、ニュータイプか?!
 目の前のスコールは自分が知っているいつもの彼とは違い、柔らかな表情で金髪の男と話している。
 おそらく自分の思った事は間違ってはいないであろう。
 しかしアーヴァインは同時に背の高い銀髪の男がかもし出すオーラにもびびっていた。表情にこそ出してはいないがスコールに対する敵対心が現れている。

(なるほど、この金銀コンビがスコールのいう、金髪碧眼の逞しいお姫様とその恋人と言う事か。)

 たしかに目の前の金髪の男は”男にして置くには惜しい”ほどの可愛らしさをもっているようであった。しかし隣りの男からかっさらうほどの度胸も腕も、自分には持ち合わせてはいない。
 アーヴァインが思わずスコールを見て肩をすくめた。そんなアーヴァインを見てゼルがきょとんとした顔をした。
「何だよアーヴァイン。なに諦めたような顔をしてるんだ?」
「いや、この世に俺より綺麗で強くて、カッコいい男が何人もいてたまるかって、思っていたんだけど、実際こうして目の前に居ると認めなくちゃいけないんだな。」
「意味不明だな。」
「俺より強くてかっこよくていい男なんて、お前だけで十分だと思ってたが、お前の後ろの男を見て上には上が居ると思っただけだ。」
「(いい男というのだけは)違うような気がするがな。」
「傷男。いつシュミ族という連中のところに連れて行ってくれるのだ?」
「セフィ!彼はスコールっていう名前があるんだから、名前で呼んであげないとだめでしょ?!」
「なんだ。貴様、レオンと名乗っていたではないか。」
「知ってるじゃないか!!」
「お前が背中を預けた男だ、知らぬ訳は無い。」
 相変わらずのセフィロスにスコールが近づくと、グローブを脱ぎ右手を差し出しながら改めて自分から名乗った。

「スコール・レオンハルト。エスタ国バラム・ガーデン所属、戦闘集団See-Dのリーダーだ。」
「なるほど、エスタのガーデンと言う組織の事は耳にした事がある。神羅カンパニーの治安維持軍とそう変わりはなかろう。」
「そう言う事だ。」

 二人の男が握手を交わした。
 クラウドが大きな瞳を更にクリッとさせてびっくりしている。
「うわ!セフィロス。あんたが他人と握手するなんて、この大陸にメテオレインでも降らせるつもりかよ。」
「クックック、男が男に握手を求める時と言うのは、どう言う時かわかるか?クラウド。その男を認めた時だぞ。」
 自分の行動をセフィロスに見透かされて、スコールは肩をすくめて二人を促しながら、ラグナロクへと向かう、そんなスコールを見送ったゼルとアーヴァインが顔を見合わせた。

「神羅カンパニー治安維持軍のセフィロス?」
「あの英雄の中の英雄と呼ばれる男か?!」
 ゼルは改めてその視線を去り行く銀髪の男に注いだ。
 隙だらけの様に見せて全く隙を見せていない、何時でも戦闘態勢に持って行けそうな姿勢でいる。

「スコールが負け認めるだけの男にはふさわしいが、間違っても対決したくないな。」
「何を言っているんだか、対決する前にびびってへたれるお前が、あんな人と対決出来るのかよ?!」
「貴様、人の事いえるのかよ?!」

 残った男二人組は、思わず小競り合いを始めていた。