会議終了後クラウドは一般兵の制服と治療と回復のマテリアとミスリルセイバー、アイアンバングルを手渡された、滑走路横の駐機場で装備を揃えて待っているとリックがやってきてクラウドに話しかけた。
「クラウド、これ持っていろ。」
 手渡されたのはかなり使い込まれたようなサバイバルナイフだった。
「リックさん。」
 何がなんだかわからない顔をするクラウドにリックが説明した。
「この隊は自分の身は自分が守るという案外冷たい連中がたくさん居るからな、用心の為だ。」
 そう言って去って行ったリックと入れ違いにカイルがやってきて小さな紙袋をクラウドに手渡した。
「これ、胃が不調になった時に俺が良く飲むクスリだ。良く効くんだ。」
「あ、ありがとうございます。」
 クラウドの事を心配してクスリをもってきたらしい、そこへジョニーがやってきた。
「クラウド、おまえ噂じゃかなり乗り物に酔いやすいって話しじゃないか。ただでさえ弱っているんだ、コレ飲んでおけ。」
 と、タブレットタイプの酔い止めを手渡した。
 そこへザックスが現れてがしっとクラウドをホールドする。
「クラウド〜〜。ほれ胃腸の弱くなっている時はバナナに限る!」
「は、はあ。」
 クラウドの手に乗り切らない様な大きさのバナナの房をもって、ザックスが現れると他の隊員達があっけにとられるような顔をした。

「さすが猿だな。」
「ゴンガガ原産の山猿だ。」
「遠足のおやつか?!」
「うるせー!!だいたい遠足のおやつにバナナは別枠なんだぞ!!」
 みんなのやりとりがあまりにもフランクで、そして隊のトップクラスの人達が自分の事を気にかけていてくれた事が嬉しくてクラウドはにこりと笑った。
「ありがとうございます、皆さん。」
「皆さん?」
「皆さんだろう?」
「リック、おまえ抜け駆けはよせよ。クラウドの腰のナイフお前のだろ?」
「人の事言えるか?クラウドの持っている熊の肝はお前のだろう?二日酔いのクスリだぞ。」
「ジョニーだって、何処で聞いてきたんだ?こいつが乗物酔いする事をさ。」
「な、なんでえ。俺ばかり心配していると思っていたぜ、よかったなー!」
 ザックスがクラウドの頭をわしゃわしゃと撫でている所にセフィロスが悠然とやってきた、全員整列し敬礼して迎えるとセフィロスが隊員達を見渡して命令を下した。

「ただいまよりMISSON 4812649 MISSON CLASS A、コンドルフォート南の島の遺跡の調査を行う。全員、輸送機に搭乗せよ!」
 セフィロスの命令で隊員達が輸送機に搭乗する。
 クラウドが最後に乗り込むとハッチを閉める、セフィロスが副操縦席に座ると、輸送機が滑走路にゆっくりと進入しやがて飛び立って行った。


 輸送機が安定航行に入るとちいさな覗き穴から腐ったピザと呼ばれているミッドガルの姿の一部が目に飛び込んできた。
 丸い都市の外側は草も木もはえていない広野が広がっている。
 ミッドガルの周りにある魔晄炉のせいだという人もいる、アバランチと呼ばれる反抗グループであった。
 あながち嘘ではないかもしれないなとクラウドが思った時だった。
        ぐらりと機体が揺れた。

「うう…。」
「あ、やっぱ来たか?」
「何が?」
「クラウドの乗物酔い。」
「なるほどね。致命傷だな。」

 多種の乗り物で移動する隊員達はそのたびに乗り物に酔ってなどいられなかったのである。
 リックがクラウドの顔色を見るとまだ大丈夫そうだったのでその場はそのままにしたが、飛行時間が長引くとともに次第にクラウドの顔が青くなって行った。
「そろそろ限界だな」
「あとどのぐらいだ?」
「今、コンドルフォート上空だ、あと15分ぐらいかな?」
「エスナかけるか?」
「か、身体に耐性がなくなりますから…。」
「おお!!頑張るね〜〜偉いぞォ。」
「サー・ザックス。自分は子供ではありません。」
 相変わらず自分をかまいまくるザックスにクラウドが抗議をした時、他の隊員達のおふざけがぴたりと止まった。
 副操縦席から通路への扉が開きセフィロスが顔を出した。

「煩いな、何を騒いでおる!」
「あ、セフィロス。こいつ引き取ってくれ、乗物酔いするんだってよ。」
 ザックスがクラウドをひょいとセフィロスの方に押しやった、
 セフィロスはかた眉を跳ねてさも不機嫌そうな顔をしていた。

「乗物酔いだと?」

 クラウドの方に視線をめぐらせると確かに青い顔をしていたので、腕を伸ばしてひょいとつかまえるとぐいっと引き寄せた。
「あと10分だ、我慢しろ。」
「ア、アイサー。」
 返事をするクラウドをさらうように操縦室の中に引き入れた。
 操縦席と副操縦席の後ろに機関士の椅子があったのでクラウドをその椅子に座らせ、手早くメーター類の説明をしてセフィロスは副操縦席にもどった。
メーターを読むことに熱中していたからかクラウドの乗物酔いはやがて忘れられていた。
 そして操縦席から声が掛った。

「機関士席の君、右エンジンと左エンジンのバランス見て、左右の数字が違ったら言え、間もなくタッチダウンだ。」
「は、はい!!」

 操縦室の窓には穏やかな南国の島の波打ち際が見えてきていた。
 だんだんと浜辺が近づいてくると輸送機がぐんと高度を低くして、がくんとショックを受けたかと思うと激しい揺れが機体を揺さぶりやがてそのショックも消えた。

「タッチダウン成功、到着いたしました。」
「ご苦労。クラウド、行くぞ。」
「は、はい!」

 クラウドが輸送機のハッチをゆっくりと開けて安全を確認して外に出る、カーゴルームの扉を開くと中から隊員達が降りてきた。
 それぞれリュックを背負ってる隊員達が降りたら輸送機がゆっくりとジャッキアップされ、後方からトラックがタラップを使って降りてきた。
 隊員達がだまってトラックに乗り込むが運転席にはリックが自ら座った。

「クラウド、地図読めるか?」
「え?お、俺ですか?」
「ああ、うつむくと乗物酔いが酷くなるかもしれないが、何かに集中していると乗物酔いはずいぶん楽になるはずだ。」
「やってみます。」
 そう言ってクラウドが助手席に座るとそのとなりにジョニーが座った。
「リック、いいぜ。」
「じゃあいくぜ!」
 リックがゆっくりとアクセルを踏み込んだ。

 トラックは徐々にうっそうと茂る森の中へと入って行った。
 方向だけをたよりにリックが木の根を避けながらハンドルを忙しなく動かしているが、不思議と揺れを感じないのでクラウドも地図を見ていられた。
 やがて樹海が途切れると目の前に四角錐の石作りの建造物が現れた。
 目の前に人が1人渡るのがやっとのつり橋がかかっている為トラックでは先に行けない、トラックをその場に置いて隊員達が全員装備をもってつり橋を渡った。
 ゲートのような物をくぐると石作りの建造物へのアプローチが見えた、まるで迷路のような石造りの道のあちこちに何かが光っていたり見え隠れしていた。

 隊員達があらかじめ決められていたチームに別れるとセフィロスの前に整列した。

「先住民の仕掛けがどう言う物かわからぬ、全員用心して作業を始めろ。」
「アイ、サー!」

 セフィロスの命令と共に隊員達が敬礼をしてあらかじめ決められた場所へと散らばって行った。
 クラウドはまだ初心者と言う事で隊の要であるリックと配属2年目のエリックとチームを組んでいた。
 カエル型のモンスターや昆虫型のモンスターにであっては切り捨てながら通路を右に左にと探索して行った。
 外周通路の探索は迷路状になっていた為かなりの時間がかかった、壁の模様を写真に撮りながらツタに隠された色々なアイテムを取得して行った。

 外周道路の探索に一週間かかった、撮影した写真はすべてカンパニーに送信しデータベースに入れられる事になっていた。
 石造りの建物の内部の探索はさらに慎重になった。
 通路を歩いていると急に床が抜けたり、石が転がり落ちてきたりと全く気が抜けない状況になっていた。

 クラウド達は何かの泉を見つけ、その泉の水質を調べその先に進もうとしていたのでチームリーダーのリックが声をかけた。
「クラウド、あまり先走るなよ。」
「あ、リックさん。この先へんな穴がありますよ。」
「穴?」

 リックがクラウドのそばまで行くと細い針のような通路のある丸い穴の壁にいくつもの横穴が開いているのが見えた。
「エリック、隊長に報告しろ。さて、何処から行くかだな。」
「調査ですから片っ端から…、ですよね?」

 クラウドの言葉に恐れも何も無いのを感じてリックがにやりと笑い、針のような通路の動かし方を詮索していた所にエリックが戻ってきた。

「間もなく隊長殿がいらっしゃるそうです。」
「隊長が?」
「穴がいくつもあるのならば一斉に入ればよいとの事です。」
「なるほど、あの方らしいや。」

 リック達がその場でしばらく待っていると他の隊員達を引き連れてセフィロスがやってきて、穴の様子を見ると軽くうなずきそのまま隊員達に命令を下した。

「右隣りから順番だ。」
 隊員達がチームを組んでそれぞれ指定された穴へと入って行った。
 中には行き止まりだったり、敵がいたりして戦闘になったチームもいるが皆、無事に元の場所に戻ってきた。
 しかし6と書かれた穴の中に入って行ったクラウド達だけが戻ってこなかった。

 クラウド達の入った穴の先には別の部屋が広がっていた。
 リックが元の穴の方に向かって叫ぶ。
「この先にまだ部屋があります!」
 リックの声を聞いたザックスがリック達を追いかけようと針の通路を動かして渡ろうとするよりも早くセフィロスが軽々と穴を飛び越えた。

「俺も出来るかな?」
 真似してザックスが穴を飛び越えようとしたが届かずに穴の中に落ちてしまった。
 装備を降ろして中からロープとかぎ爪を取り出しながらジョニーとケインが毒づいた
「馬鹿!!」
「組んでいる俺達の身にもなれ!!」

 ジョニーとケインがかぎ爪にしっかりと結わえたロープを垂らして穴の中に降りて行った。
 穴の下に降り立った二人が見たのはドラゴン系モンスター2体を軽々とほおむって、エーテルターボを2本獲得しにっかりと笑っていたザックスだった。