FF ニ次小説


 張りおえたテントの外に第13独立小隊のメンバーが並ぶ。
 その前にいつもの様にセフィロスとザックスが立っていた。

「ただいまより行方不明の隊員達の捜索に入る。捜査ポイントは3ヶ所、ベースキャンプより北北西1.5kmの地点と、西北西2.0kmの地点、北西1.8kmの地点に平たんな土地。このポイントを重点に不審な物を探し出す。先遣隊の班分けを言う。第一班カイル、ジョニー、ステア。第二班リック、アーサー、ブロウディー第三班ケイン、ユーリ、そしてクラウド。以上だ!」

 名前を呼ばれた隊員達がそれぞれの位置に散って行く、いつもの様に表情を全く変えずに、隊員達を見送ったセフィロスのとなりでザックスがぶすっとした表情をしていた。

「なぁ、セフィロス。あんた何か隠してない?」
「何の事だ?」
「ソルジャーを消息不明に出来るような奴は早々いねえよ、何しろ俺達は普通の人間じゃないもんな。それが出来る奴でそんなに沢山ソルジャーを欲しがる奴は俺が知っている限り一人。」
「ふふふ、流石に気がついていたか。」
「俺だって馬鹿じゃないぜ。でもよ、奴は幹部だろ?」
「ルーファウスの許可はもらった。」
「あ、そ。なら遠慮無く行くぜ。なんせ俺のダチの一人も行方不明の仲間なんだ。」
「そうか。」

 本営のテントで先遣隊からの連絡を待つ間が異様に長く感じられる、イライラしながら待っていると無線のスイッチが光った。

「こちら本部、何か見つかったか?!」
「こちら第3班、本営北西1・6kmの場所に地下に入る穴を見つけました。これから潜入します!」

 ザックスがセフィロスの顔を見ると、セフィロスは軽くうなずいた。
「わりぃな、先に行くぜ!」
「無理させるなよ。」
「おっけ〜!!まかしておけ!!」
 ザックスがかけだしたと同時にセフィロスが第1班、第2班に連絡を入れた。

「第3班が地下に入る入り口を発見、第1班第2班はそちらに回れ、全員行くぞ!!」
 セフィロスの言葉にキャンプに残っていた隊員達が一斉に北西に駆けだした。

 クラウドは地下への通路にもぐりこんでいた、はしごを降りると暗い通路に出る、奥の方からハウリング音が聞こえる。
 ゆっくりと扉を開けるといくつかのカプセルとコンピューターが並んでた。
 部屋の中に入るとディスクトップの前に座りアクセスをする、その間ユーリとケインがカプセルの中をのぞいた。

「姫!この中!!」
 ユーリがカプセルを指差す。
 クラウドがカプセルを覗くと高濃度の魔晄に浸された人間が中にいた。
 カプセルを次々にのぞき込む、その中に行方不明者のリストにあった顔を見付ける。
「どういう事だ?」
 その時クラウドの後ろで男の声がした、
「クワックワックワッ…、崇高なる実験だよ。」
 白い実験服を着た男の後ろにはモンスターが居並ぶ、クラウドは男の瞳に寒気を覚えた。

「ほぉ…、誰かと思えば、お前が噂の新入りのくせにバハムートを召喚した奴か。まだまだ子供の様だが…フム面白い、お前もこのカプセルの中に入れてやる。」

 モンスターが一斉に襲ってくる、ユーリがマシンガンで辺り一面を撃ちまくりカプセルを破壊すると、ケインがソードを抜きモンスターを一刀太刀にほおむり始める。
 クラウドが敵の技からトラインをかけると電子頭脳が音を立てて壊れる。

「私の実験が…、私の実験が〜〜!!許せん!!行け!!」

 新手のモンスターが現れてクラウド達を追い詰める、そこへザックスが現れた。

「真打登場!!クラウド行くぜ!!」
 バスターソードを掲げてザックスがモンスターを倒しはじめるとちらりとクラウドを見ると、右方向でソードを片手に舞い踊るように闘う姿がセフィロスとだぶった。
 ザックスは思わずにやりとした。

「どっちと一緒にやるも同じってか…。」
 体力が無いだけクラウドの方が押され気味ではあるが、あの剣ならば任せてもよかろうとその場を離れて次の部屋へと逃げた宝条を追いかける。
 ふと気がつくとザックスのからだが緑色に包まれていた、クラウドが戦闘中にもかかわらずザックスにバリアを張ったのだ。
 ザックスがクラウドのポテンシャルの高さに改めて舌をまく。

 扉を開けるとそこは実験室であった。
 ザックスはその場で足が固まったように止まってしまった、何かの赤い塊がうごめいている。
 おそらく人間だったモノであろう、既に異型と成り果てて意志もなくゆらゆらと動いていた。
 ザックスの中に激しい怒りが込み上げて来た。

「今、楽にしてやるからな。」

 彼にできることは既に人ではなくなってしまった仲間を解き放つことであった。
「ファイガ!!」

 炎の全体攻撃で一気に焼き尽くしていると、扉を開けてクラウドが飛び込んできた。
 炎の向こうにうごめいているモノを見るとクラウドもたじろぐが、ぐっと唇を噛み締めて後ろにある機械に魔法をかける

「ベータ!!」
 機械が炎属性の魔法で焼かれていくと、炎のむこうで白い実験服の男がゆらりと立っていた
「わしの実験…わしのルクレツィア。なぜだ、なぜ?!」

 炎に焼けてコンクリートブロックが落ちてくる。
 クラウドが炎の中に突っ込もうとするが、ザックスがあわてて止める。そこへセフィロス率いる一隊が入ってきた。
 冷静に状況を確認するとすらりと愛刀の正宗を下段にかまえ、炎の中の宝条めがけて切りかかって行った。

 宝条の後ろにあったカプセルから出てきたモンスター相手に、セフィロスが正宗を繰り出すと、切られたかけらが意志を持つかの如くバラバラにうこぎはじめる。
 それでもセフィロスは的確に正宗を繰り出して宝条に詰め寄った。

「人を人と思わぬ貴様に生きる価値は無い!」

 セフィロスが宝条に正宗で切りかかると、血を流しながらも宝条が何かのキーを触った。
 次々にカプセルの中のソルジャーだったモンスター達が現れ、一斉にセフィロスに襲いかかる。さすがのセフィロスでもコレだけの数の敵に一気に襲われたら防ぎ切れなかった。
 複数の切り傷を一気に負う。
 中には大動脈を切った物もあったようで、かなり出血が激しいのか片ひざを付いた。

「セフィロスーーー!!!」

 片ひざをついたセフィロスを見て、ザックスが突っ込むよりはやくクラウドが躍り込んだ。
 ザックスはクラウドの戦い方を見て息を呑んだ、目の焦点があっていないにもかかわらず的確に敵を切り刻んでいく
 すぐにザックスが追いついてセフィロスを抱えあげる。

「クラウド、出るぞ!!」
「待って!ケアルガ!!」

 出血の激しいセフィロスに最高位の癒し魔法をかけていると、リックが飛び込んできた。
 他の部屋をあらかた捜索し終わって来たのか、悲壮な顔をしている。修羅場を何度も潜り抜けてきたこの男ですら、この場所は残したい場所では無かった。

「リック、肩を貸せ!」
「了解!姫、外に出たら一気に燃やせ!」

 クラウドがリックの言葉の意味を悟るが一瞬迷いを見せた、その時セフィロスが声をあげた。

「リックの言う通り燃やせ・・この場には既に人はいない。」
 ザックスとリックがセフィロスを抱えて外へと続く通路を走りはじめた。
後ろからクラウドが追いかけるように続く、出口で一足先に出た隊員達が手を貸して、ザックスとリックの抱えていたセフィロスを引き上げる。
 クラウドが外に出た時隊員達に叫んだ。

「バハムートで一気に燃やす、安全圏まで離れて!!」
 クラウドの声を聞いて、隊員達があわてて500mほど離れると、周りを確認して右手のバングルをちらりと見つめた。
「こい!!バハムート!!」

 バハムートがクラウドの召喚に応じて、赤いマテリアから姿を現した。ゆったりと空をまうとクラウドの指示を待つように空中で止まる。

「地下の建物ごと無に帰えせ!!メガフレア!!」
 クラウドの命令でバハムートがメガフレアを照射すると、無属性の光が人間だったモンスターと、それらを産み出した施設を無かった物にしていった。

「す、すげぇ…たしかに一気に燃えるな。」
「変な感心をするな。カイル、姫がぶっ倒れたら確保!」
「アイ、サー!」
 バハムートがマテリアに戻ると、クラウドはゆっくりと歩きはじめた。
 あわててカイルが走り寄るがクラウドが手をあげてカイルを制した。
「大丈夫です、なんとか一人で歩けます。それよりも隊長は?」
「輸送艇まで運んで輸液だな。お前のケアルガでキズは回復している。」
 ジョニーがトラックを運転してリックとザックスの前に横づけする。
 リックが運転席のジョニーと入れ代わると、ザックスとクラウドがセフィロスをトラックに乗せる。
 クラウドはそのままセフィロスに付き添ってケアルガをかけ続けていた。

 本営に戻ると既に連絡が入っていたのか、衛生班があわてて輸液の準備をはじめる。タンカに乗らずにクラウドに支えられて自分の足で歩いてくるセフィロスを見て、輸送隊の副隊長ユージンが安堵の吐息を漏らした。

 しかしマテリアの癒し魔法では傷は治るが出血は補えない、青い顔色で疲れたようにぐったりしているセフィロスに、衛生兵が点滴処置を施すと、その場でクラウドが再び癒し魔法をかけようとして、ユージンに止められる。

「君、これ以上キングに対して癒し魔法を使っても何も変りはしない。キングはもう大丈夫だ、それよりも君の方が倒れそうだぞ。」
「大丈夫です。」
 意地になっている所にザックスが現れて、クラウドの肩をポンとたたくと、ユージンの方に顔をむけてにかっと笑っていつもの口調で話しはじめた。

「サー・ユージン、ごくろうさまっす。意地っ張りの”弟”でしょ?ちょっと魔力を使い過ぎて精神がぎすぎすしてるんですよ。」
「ラウル、甘くて温かい飲み物もってこい!」
「すみませんねぇ、軽く見積もってもそこらへんのクラスB以上使ってますんで。」

 ザックスの言葉にレモネードをもってやって来たクラスBがびっくりする。その表情をみてザックスがにやっと笑う。
「お?!その顔は信じてねえな。しゃあねえなぁ何処からどう見てもまだ入ったばかりの一般兵だもんなけどよ、バリアにトライン、ベータにケアルガ、とどめが召喚獣の召喚だ。下手なクラスBより魔力を使ってるぞ。」

 ザックスの言葉にユージンとその部下が一様に顔色を変えた。