1stソルジャー5人を一気に抜いた一般兵に、その場にいたソルジャーがざわついた。
クラスCソルジャー5人が呼ばれてクラウドの前に並ぶと、先程と同じように一人ずつ前に進み出た。
しかしクラスSすら倒すことができるクラウドの相手では無い。あっという間に5人抜きをしてクラスBもゴボウ抜きした。
白のロングを着た見覚えのある5人がクラウドの目の前に並ぶ。クラスAのブライアン,パーシー,キース,ゴードンとアランだった。
「一度負けているからなぁ、二度は無いと思え。」
「遠慮無く行くぜ。」
クラウドはそれまでのソルジャー達との対決で体力を削っていた為、肩で息をしはじめていたが無理やり呼吸を整え一礼する。
「胸をお借りします。」
アランが一歩前に進み出ると阿うんの呼吸で戦いが始まった。
クラウドは良く頑張ったが体力不足はそう簡単に補えない、キースまで倒した所で体力が持たずに、パーシーに負けてしまった。
しかし一般兵がクラスAのソルジャーを負かす事など考えられなかったので、その場にいた全員がクラウドの持つポテンシャルの高さにびっくりした顔をしていた。
次にユーリが呼ばれてクラウドと同じことをしたが、ユーリはザックスに、ブロウディーはクラス1stの3番手に、キッドも3番手に、ケインは4番手にエリックは最初のクラス1st相手に負けてしまった。
クラウドが飛び抜けて強いのであるのは目に見えていた。
「クラウド・ストライフ、君は明日から他の能力の査定だ。ユーリ達4人はクラス1stに編入、以上!」
ランスロットの言葉にその場にいた兵達全員が姿勢を正して敬礼した。
翌日、クラウドはクラスS執務室に呼び出された。
最初にサー・トリスタンに射撃訓練所に連れて行かれて、1時間みっちりと射撃の腕を査定された。
次は魔法部隊の隊長リーにまだ未舗装の滑走路に連れて行かれる。
「姫の魔力はおそらくクラスS同等、室内の魔法訓練所では部屋自体を破壊しますよ。」
にこやかにリーに言われるとクラウドはあわてて否定する。
「そ、そんなに凄くはありません。」
「さあ?どうでしょうかね、とにかくその竜王だけは発動しないで下さいね。」
そう言うとリーが手に持っていたマテリアボックスを降ろして中を開ける。
4色のマテリアが色別に並んでいた。
「前方100mにターゲットがあります、まず試しにアルテマを放って見てください。」
「はい。」
クラウドは迷わず一個の緑色のマテリアから一つを選び出すと左手に握り、目を閉じて前方100mのターゲットを思い浮かべイメージトレーニングをした。
軽くうなずくと目を開けて力を解き放つ
「アルテマ!」
轟音と共に明るい晄が産まれそして小さくなった。
爆風がこちらまで及ぼうとした時クラウドが瞬時にウォールを張った。
「大丈夫ですか?」
「ウォールを張るのは私の仕事だったんだが、まあよい。次は…そうだな、フェニックスでも召喚してもらおうか。」
「召喚獣なんて召喚していいのですか?」
「ええ、呼べるのでしたら呼んで見てください。」
「はい。」
クラウドは素直にうなずいてマテリアボックスを視界に入れたが、ついっとリーの左腕を取るとバングルにはめられている赤いマテリアを指差した。
「どうやら、そのバングルにはめられていらっしゃる様ですが。」
「ええ、どうぞ。」
リーがバングルを外してマテリア穴から赤いマテリアを取り出した。
クラウドが笑顔で受け取ると頭の中に声が響いた。
”あら、可愛い男の子。どうしたの?”
『あ、あの……。呼んでいいですか?』
”ん、君ならいいわよ。”
『あ、ありがとう。』
クラウドが左手に持ったマテリアを胸のところに持ってくると、右手をすうっとあげる。
「召喚!フェニックス!!」
赤いマテリアから晄がほとばしると、上空に炎をまとった鳳凰が空を舞っていた。
クラウドが右手でゆっくりと目標物を指差した。
「目標物、前方100mのターゲットに向け転生の炎!!」
クラウドの指示に従って鳳凰が炎を吐き出す。
轟音を立てて燃え盛る炎に気を良くした鳳凰が、クラウドの前に跳ね踊っているようだった。
「ありがとう、戻って下さい。」
クラウドがマテリアを掲げると、フェニックスが赤いマテリアの中に戻って行った。
即座にマテリアボックスの中から冷気のマテリアをクラウドが取り出して、燃え盛る炎を瞬時に消し去った。
一連の動きを見てリーが苦笑いをする。
「まったく、規定が無ければ即クラスSに引き入れたいぐらいですね。」
部隊長にあたるクラスSには実力以外に入隊3年以上、副隊長の経験を1年以上積む事が義務づけられていて、その規定を満たしていない者はいくら実力があろうと部隊長にはなれなかった。
クラウドがリーの言葉に首を横にぶんぶん振った。
「ま、まだまだです。自分にはサー・セフィロスの様に小さく魔法をかけることはできません。」
「あれが出来るのは私が知っている限りキングだけですよ。」
リーの優しげな笑顔にクラウドがはにかみながら一礼した。
剣技はランスロット一人ではすぐに打ち負かされそうだというのでパーシヴァルと共に、クラウドの剣を受けていた。
周囲にはクラスSの大半のソルジャー達が並び、クラウドの剣裁きを見惚れていた。
「それにしても、どこかで見たような感じがするのですが?」
「わからぬか?あれはキングの剣だ。」
「キングの剣。なるほど、言われて見ればそうですな。」
あっという間にクラウドがパーシヴァルを追い詰めると、とって返してランスロットの剣を弾く、実戦で何度も一度に襲われる特務隊の左翼切り込み役をやっているクラウドに取ってこのぐらいの事は日常茶飯事であった。
横で見ていたガーレスがクラウドに声をかけた。
「姫、もういいですよ。クラスS二人がかりをこうも受け止められては、貴方の実力を認めないわけにはいきませんから。」
「え?もうお終いですか?なんだ、残念です。鍛えてもらえると思っていたんですけど。」
「姫と剣で手合わせする時は3vs1にしろとクラスAには伝えておきますよ。」
最後は戦略シュミレーションだった。
パソコンの画面に表示されているハニカムの図面に2ヶ所のマークがあった。
クラウドがパソコンの前に座ると画面に指示が出ていた。
「ん〜〜、三角を勝たせるのか。」
しばらく画面を見て悩んでいたが劣勢の三角側の手勢を何ヶ所かに移動させ、
エンターキーを押すとパソコンがその先をシュミレートして行った。
しばらくカタカタと画面が動いていたが一瞬真っ黒になった。
そして画面に”You win!”の文字が表示された。
再びハニカム構造の地図が表示されて今度は3ヶ所の中から場所を選択出来た。
山の頂上、中腹、平野の三ヶ所の中からクラウドは平野を選んだ。
そして戦法を入力するとエンターキーを押す。
先程よりも早く画面に"You win!"の文字が表示された。
すると部屋の中にセフィロスが入ってきた。
「非情な奴だな。」
「モンスターだと出来るでしょうが、相手が人間だとこの手はやりたくありません。」
「その方が良い。最後は1vs1で行くぞ。」
セフィロスが向かい側に置いてあるパソコンの前に座って何か入力をしている、どうやらパソコンをリンクさせているようであった。
クラウドの手元のパソコンにハニカム構造の地図が表示されている。
川を挟んで対峙している2つのグループと気温、時間が表示されていた。
時間を見ると22:00、どうやら朝一番の配置を聞かれていると思ったので、クラウドは何個かコマを動かして決定キーを叩いた。
パソコンが一旦黒くなるとセフィロスの入れたコマンドとクラウドの入れたコマンドが画面に表示された。
セフィロスが取った戦法は闇にまぎれて少数精鋭でクラウドの本拠地を突く作戦だった。
ところがクラウドの取った戦法は、本拠地のベースをおとりにして、その周りに兵を伏せ、突入してきた兵を取り囲んだのである。
また手勢を二手に分けて一つは5kmほど上流を渡らせて敵陣を後ろから突いていた。
しかしそこまでやる必要もなかったようであった。
セフィロスが選んだ少数精鋭の兵士の中に総大将がいたためあっという間に戦局が開けた。
クラウドのパソコンの画面に”You win !”の文字が表示された。
にやりと笑ったセフィロスがクラウドに問いかけた。
「単騎で突入してくると、どうしてわかったのだ?」
「気温です。この気温だと夜のうちに川の水温が下がらないから川霧が発生します。そのなかを小数精鋭で本陣を突けば簡単に落せます。しかし逆にその戦法を使われたら?と思ったからです。」
「それで手を二つに分けていたのか。わかった、追って配属を通知する。」
セフィロスが部屋を出るとすぐに横の部屋からランスロットが出てきた。
「あんな手があったのですね。」
「私の手か?あれはウータイの南にある国の昔の武将が取った手法だ。クラウドなら気が付くかもしれんと思ったが。クックック、やるものだな。」
「では手順に従ってクラスS全員を召集いたします…が、姫なら間違いなくクラスAですね。おめでとうございます。」
「クックック、言ったであろう?可愛がっているだけではない、と。」
あまり表情には出さないがどこか嬉しそうである、ランスロットはそんなセフィロスを見て自分が嬉しくなっていた。
クラスS執務室の隣りにはクラスSソルジャー達が全員集まって会議をする部屋があった。
まん中に大きな丸いテーブルが一つ据えつけられている。
部屋の一番奥にあたる場所にセフィロスが入っていくと、後ろから決められた順番にクラスSソルジャー達が入って行った。
部屋に入り所定の位置に付くと黙って立っていたが、セフィロスが全員揃ったのを確認すると椅子に座った。
するとそれを見ていたクラスSソルジャー達が一呼吸遅れて椅子に座る。
文字どおり”ナイツ・オブ・ラウンド(円卓の騎士)”であった。
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