FF ニ次小説

 クラウドがクラスAソルジャーの部屋へ入ると、先輩ソルジャー達が寄ってくる。なぜか後からパーシヴァルとランスロットが追うように入ってきた。
 bQのパーシーがクラウドに声をかけた。
「では、クラウド。いきなりで悪いが腕だめしだ、覚悟しろよ。」
「自分の攻撃マテリアはまだ未成長だから魔法の使用は無しでお願いしたいですね。」
「それ以外は加減をしないぞ。」
「立会人をサー・パーシヴァルとサー・ランスロットに頼んでおいた、危なくなったらケアルガをかけてくれるそうだ。」
「では、遠慮無く…。」
「バハムートは無しだぞ」
「当たり前です、カンパニーごとぶっ飛ばしたくはありませんからね。」
 クラウドがクリスタルソードを鞘から抜いて下段の構えで構えると、クラスAソルジャー達が一斉に切りかかった。
 しかしクラウドはあっという間に3人の剣を叩き落とし、優雅に舞うように剣をふるっている。
 その立ち会いをどこかで見たような気がしていたパーシヴァルはクラウドの姿がある男と完全に一致した。

「たしかに皆に言われたとおりだ。あれはキングの剣さばきですね。」
「クラスAに置いておくには実に惜しい。」
 あっという間に半分のソルジャーから戦意を奪うとにっこり微笑む、ランディにはその笑みが天使にも悪魔にもみえた。

 一時間後その場に立っていたのはパーシーとブライアン、そしてクラウドのみとなっていた。
 クラウドは少し息が揚がってきているのを深呼吸して整える、そのすきにパーシーが剣をふりおろして来た。
 跳ね返すとすぐにケリを入れながら力で圧し込む。パーシーが崩れるようにしりもちをつくと、クラウドがぴたりと剣をのど元に宛てた。
 パーシーは降参の意志を示す。

 ブライアンと正面向き合うとクラウドは悠然と微笑んでいた、白い制服が豪奢なハニーブロンドを目立たせる、天使が降臨したような姿だった。

 しかし、ブライアンはクラウドの笑みに思わず生つばを飲み込んだ。
 不意にクラウドの雰囲気が変わる、凄味のある気配がブライアンを襲う。
 その雰囲気を感じ取ったランスロットが小声で隣りのパーシヴァルにささやいた。
「おーお、あの気の出し方もキングそのものですな。」
「ブライアンの奴完全に飲まれてますね。」
 ソードのぶつかる音が何度かした。
 しかし結果は明白だった、サー・セフィロスの戦い方を完全に覚えているクラウドに、並のソルジャーが勝てるわけがない。
 ゆるやかな笑みを浮かべてクラスSソルジャーが片手を上げて終了を宣言した。

「勝負あり…だな。」
「貴方の剣はキングの剣ですね。」
 クラスSソルジャーの問いかけにクラウドはうなづきながら答えた。
「はい、ずいぶんサーには鍛えていただきました。」
 クラスAソルジャーにもなるとキングが誰を示すのかみな知っていた、ブライアンがクラウドに呆れたような声で話しかけた。
「君の上司がサー・セフィロスであることを忘れていたよ、強いはずだな。」
 その時、部屋にセフィロスが入って来た、ランスロットがそれを認めて近寄る。

「いかがされましたか?キング。」
「クラウドをもらって行く、任務だ。」
「イェス・サー!」
 名前を呼ばれて即座にセフィロスの後についていく。廊下を歩きながらクラウドはセフィロスから派遣指令書を手渡された。
 セフィロスの後ろに従いながらクラウドは派遣指令書を読む。

「どこですか?このサウキャニオンって。」
「コスモキャニオンの南洋にある小島にある街だ。銃刀法に厳しいので街に入る為には剣や銃を持ち込めない。そのおかげで犯罪率はミッドガルの比では無いほどだ。商業と観光のみで繁栄しているおかげで争いごととは無縁の楽園だ。」
「そこへ、何の為に行くのですか?このミッションの内容では”ただ行け”という感じですが?」
「さすが鋭いな、その通りだ。」
 冷淡な笑みを浮かべながら訳のわからない事をいいはじめた。

「とりあえず行かねば何も情報が得られていない地域なのだ。」
「う〜〜ん、難しそうですね。」
 ミッション依頼書を見ながら、セフィロスから一歩下がるようにして歩いているクラウドを通り過ぎる下級兵達が姿勢を正して敬礼して見送っていた。
 執務室に入るとすでに隊員が全員集まっていた、セフィロスとクラウドが入ってくるとすぐに整列した。
 クラウドがあわててその列の後ろに並ぼうとするとセフィロスに肩を捕まれた。

「おまえは私のとなりだ。」
 クラウドの肩を掴んだまま隊員達の前に立つと一瞥すると隊員達が敬礼から直った。
 セフィロスが隊員達に言い放った。
「既に知っていると思うが、本日付けでクラウドが正式に第13独立小隊の副隊長となった。一番の新入りだが各自ふさわしい扱いをせよ。特にザックス!貴様が一番心配だ、”弟”扱いするのは良いがあくまでも上司だぞ。」
「ああ、わかっている。俺がきちんとしないとクラウドは副隊長として認められねえもんな。」
「ならばそれなりの対応をせよ。ではミッションの説明に入る。クラウド、ミッションの説明や方針を言うのは副隊長の仕事だ。」
「え?そうなんですか?でもサー・ザックスは一度もなかったような…」
「サー・クラウド、隊長の言葉は絶対です。拒否は即除隊ですが、よろしいでしょうか?」

 ほんの二日前までは上官だったリックがクラウドの事を普通に”サー”と呼んだ。
 それはこの隊のbQであり影の隊長と呼ばれる男が、クラウドを上官と認めている証拠だった。
 あまりにも早く階段を駆けあがってしまったクラウドには、とまどいと違和感をもたらす物であった。

 クラウドは思わずセフィロスにたずねた。
「隊長殿、一つ質問してよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「俺…いえ、自分は本当のソルジャーであるサー・ザックスを任務中でも呼び捨てにせねばいけないのでしょうか?」
「当然だ、下級ソルジャーを”サー”と付ける上級ソルジャーは一人も居ない。たとえ相手が年上であったとしてもだ。」
「努力いたします。しかし自分は”サー・クラウド”と呼ばれたくありません。」
「だ、そうだ。」
「努力いたします。」

 リックの言葉に全員がうなずくのを確認すると、セフィロスがクラウドにミッションの指令書を渡した。
 クラウドはセフィロスから受け取った指令書を見ながら説明に入った。

「ミッション8126632、ランクAもしくはC。サウスキャニオンに潜入せよ、以上です。隊長殿によるとサウスキャニオンはコスモキャニオンの南洋に浮かぶ小島の街で、商業と観光を生業としている街だそうです。ミッションの内容は不明、とにかく行くしかないようです。」
 ジョニーが手をあげた。
「副隊長殿、発言よろしいでしょうか?」
「名前を呼び捨てにしてくれれば許可します。」
「ちぇ!役職名もダメですか。ザックスがいい気になりそうですよ。サウスキャニオンに知り合いがいます、現在の状況を聞けますが?」
 セフィロスがジョニーの言葉を聞いてたずねた。
「その人物は利用されても文句を言わないか?」
「開業当初からの信頼出来るコンシェルジュがサウスキャニオンのホテルに居ます。」
「なるほど、状況を聞いておけ。」

 うなずくとジョニーが列から離れて携帯を取り出して、そのコンシェルジュに直接連絡を取っているらしい。その間にクラウドがいつもの様にパソコンを使おうとすると、あわててザックスが止める。

「あ〜〜、もう何考えてるかバレバレ!それは副隊長の仕事じゃない!クラウド、おまえはそこでで〜〜んと座ってるの!デレク、クラウドから資料をもらって周辺の地図やモンスターを調べてくれ。」
「アイ・サー!」
 デレクがクラウドから書類をもらって、ザックスに言われた事をパソコンで調べはじめた。
 しばらくすると電話が終ったのかジョニーが首をかしげながら戻ってきた。

「コンシェルジュのロバートが言うには、以前は頻繁に行われていた社交界のパーティーが最近はめっきり少なくなったので、何かありそうだと言うのはわかるのですが、それがなんであるか彼にはわからないそうです。」
「社交界か、ふふふ…。クラウド、おまえドレス何枚持っていたか?」
「えっと誕生会の奴とこの間の…あ!!まさかクラウディアになれっていうんですか?それなら行きませんから!!」
「ほぉ?任務を拒否する気か?おまえと私以外社交界に顔を出せるソルジャーはいないぞ。」

 にやにやと冷たく笑うセフィロスをクラウドが睨みつけていた。
「ほ、訪問の目的は?!理由もなしに隊長殿が行くような場所には思えません。」
「ほぉ?モデルのクラウディアは私のフィアンセだったのではないのか?フィアンセを連れて婚前旅行ならば、絶好の場所であろう?」
「ううう……、絶対ミッションの内容を知っていたな!!」
「さあな、しかしずいぶん楽しめそうなミッションだ。」

 クラウドは既に言い返す言葉が見つからなかった、整列している隊員達が肩を揺らしながら笑うのをこらえている。

 (か、確信犯だ!!ぜったいに確信犯だ!!)

 叫びたい言葉をぐっと我慢してクラウドは隊員を正面に見据えた。
 爆発させたい怒りをぐっと我慢しているため顔が真っ赤であるが、隊員達はこれ以上クラウドを怒らせるのも恐いので黙って笑うのを我慢していた。
 目を血走らせながらもクラウドが深呼吸をして副隊長らしい命令を下した。
「このミッションを遂行する為に隊長と自分が先に潜入します。ザックスさ…あ!ザックス、リックと残りの隊員をまとめてサウスキャニオンに近い場所で待機していてください。ジョニー、サウスキャニオンのホテルの電話番号を教えて。」
「ハネムーンスウィートを2週間ほど押さえておきますか?そのかわりVIP待遇は保証する。なんなら俺も付いて行きますけど?」
「ジョニーが随行する必要もないであろうが、剣や銃が持ち込めない街だから何かあった時にすぐに行動出来ないと困るな。」

 セフィロスの言葉を聞いてちょっと考えてから、クラウドは”連れて行くべきだ”と判断した。

「では、隠れてガードしているということで、ジョニーなら裏方の部屋も入れるし、あとは比較的魔力の高いユーリとブロウディーでいかがでしょうか?」
「そうだな、バングルを細工の良いものにしておけばマテリアは宝石にみえる。クラウドにはせいぜいティアラにネックレスとピアスを用意しておこう。」
 冷淡に笑うセフィロスにジョニーが一つの提案をした。
「隊長殿、剣の2、3本ならばミニマムで縮めてホテルの備品として、食器にまぎれ込ませて持ち込むことは出来るかもしれません。」
「ほぉ…おまえもまた父親に似て、利用出来る物は徹底的に利用する奴だな。」

 セフィロスがそれ以上何も言わなかったのは、了承した事と同じである。今までのミッションでの会議でそれを肌で感じていたクラウドは最終判断を下した。

「では、先行潜入が隊長殿と自分、サポートがジョニー、ユーリ、ブロウディー残りの隊員は近くの無人島からボートで夜間に上陸。サウスキャニオンの付近で見つからないように事件が起こるまで潜んでいる事。」
「アイ・サー!!」

 隊員達が返事と共に敬礼をした。
 それはクラウドの命令を聞く事を了承した証拠であった。