FF ニ次小説


 ザックスとサー・トリスタンの組み手を見ていたクラウドが冷静に声をかけた。
「ダメですよサー・トリスタン。中途半端に相手をして見えてはやられますよ。」
そういった瞬間ザックスのボディーブローが綺麗に決まる、とたんにトリスタンの顔が冷淡なものとなると、すかさずクラウドが組み手に乱入した。
「姫と組ませていただけるのは幸せですね。」
「サー、徹底的に行きますからね」
「うわ〜〜〜!!やめれ〜〜!!!」

 ザックスが悲鳴を上げると、そこにパーシーが乱入した。
「クラウドとサー・トリスタンをノックアウトさせると一気にクラスSだよなー」
「君たちにそれが出来るかな?」
 見事に連携を取りながら、クラウドとトリスタンがパーシーに襲いかかる。身体をひねりつつ攻撃を避けると正面にザックスが居たのでパーシーが怒鳴りつけた。
「うわ!!ザックス何でここに居る?!」
「サー・パーシーがなんにも考えてねえからだよ!!」
 思いっきりからだがぶつかると、二人が絡み合って床に倒れた。

「ダメですねぇ、そんな事ではクラスSなんてマダマダですよ。」
「サー・トリスタンとクラウドのコンビなんざそうやぶれる物か!!」
「俺、まだ正式なソルジャーじゃないんだけど・・・」
 ザックスが立ち上がると今度はバスターソードを構える。すかさずクラウドもクリスタルソードを抜くと、下段のかまえを取った。

「ぞくぞくするぜ、お前の剣はセフィロスの剣だもんな。」
「残念ながら真似でしかないけどね。」
 そう言いながら打ち込まれたバスターソードをクラウドは綺麗に打ち返した。

「真似でも十分だぜ、この剣で俺は育ったんだからな!!」

 ザックスが力づくでバスターソードを押し込む、クラウドに勝つためにはそうするしか方法はない。
 しかしクラウドもクラスAソルジャー達と一緒になって訓練しているのである.ザックスの力押しをなんとか受け止めると足蹴りを入れる。
「力押しされたら正式なソルジャーのザックスにはどうしても負けるな。」
「人を蹴倒しておきながら言うセリフかよ!!」

 バスターソードを掲げてクラウドに切りかかると、そこにパーシーがクリスタルソードを掲げて乱入した。
 クラウドがすっとその場を抜けた。
「うわっ!!力押しが効かなくなっちまった!!」

 パーシーがザックス相手に剣をふるう姿をトリスタンと並んでクラウドは肩で息をしながら見ていた。

「やはりキツイですか?姫。」
「当たり前ですよ。俺はまだソルジャーではないのですから。」
「ふふふ、それでも私やランスロットから一本取るではありませんか。」
「そのかわり一回やったら30分休憩しないと続きません。」
「ザックスがクラスアップですか、どうした風の吹き回しですかね?」
「いつまでも俺の部下でいるような男ではありません。」
「それはいい事です、姫だけでなく彼までもキングに独占されたくはありませんからね。」

 クラウドはトリスタンの顔を見上げると何とも言えない顔をした。
「それが、いきなりクラスAまで上げたいんだそうです。」
「困ったな。リックもカイルも引き抜きに応じないばかりか、ザックスも引き抜きに応じないつもりなのか。」
 トリスタンは諦めたような顔をする、クラウドはその表情に苦笑をしつつ答えた。
「外で修行してきたほうがいいと思うんですけどね。」
「それは姫も一緒です。」
「自分はサー・セフィロスの隣以外は立ちたくは無いです。」
「我らナイツ・オブ・ラウンドもそれは承認いたしております。」
「ありがとうございます。」

 トリスタンと会話しつつもザックスの様子を見る、かなりへばってきているのは,いつも訓練をサボってばかりいるためだ。ザックスが片足を付いた時、トリスタンが試合を止めた。

「そこまで!!良くやったなザックス。」
「はぁっ…はぁっ…。へへへ…見てろよクラウド、す〜ぐ追い越してやるからよ。」
「ああ、待ってるよ。副隊長の座をのし紙つけてあげるから。」
「へん!英雄の隣なんてこの一年で立ちあきたぜ。お前のとなりがいい。」
「それならば我らナイツ・オブ・ラウンドに勝ってから立っていただきたい。」
「げ〜〜〜〜!!!サー・トリスタン。どうして!?」
「我々だって姫の隣に立ちたいのですからね。」
「うわ〜〜、クラウド最強!!」
「俺まだ一般兵なんだけど。」
「間違えなく最強ですよ。なにしろ貴方と立つ為には、サー・セフィロスを倒さねばなりませんから。」

 そう言うとトリスタンは軽く片手を上げて部屋を去っていった、あらためてザックスはクラウドを見直した。

「クラウド。お前も大変な奴らに惚れられてるね。」
「男に惚れられたくない!」

 ザックスがクラウドの反応に思わずにやにやするが、何が言いたいのかわかっていたがあえて無視した。


 ザックスがクラウドにしごかれはじめて早2週間、特務隊のリックがその場を通り過ぎた。
 サー・ガーレスとクラウドが楽しげにランディとザックスのペアと闘っているので、一礼して武道場へはいると、いきなりランディとザックスに参加する。ランディが組み手をやめないではなしかけてきた。

「よぉ!リック久しぶり!!おまえもしごかれたいの?」
「サー・ガーレスとクラウド相手に2人じゃ歩が悪いだろ?助太刀する!」
「やりぃ!!リックが入れば勝ったも同然!!」

 ランディが喜んだのもつかの間の事であった。3対2の組み手は他の人が入る事もできないほど激しくなりつつあった。

「リック!!鍛えてやった恩も忘れおって!!」
「ええ、忘れませんよ!貴方のおかげで隊長の信も得られましたからね!」

 ガーレスにケリを浴びせつつクラウドをつかまえようとして、逆に回し蹴りを浴びせかけられてリックがひるむ。
 その隙にガーレスがランディーにボディーブローを浴びせ、ガーレスの背中を飛び上がったクラウドがザックスに踵落しを決める。
 これにはリックが呆れたような声を出した。
「うわ〜〜!!姫!攻撃方法がいつもと違う!!」
「組んだ相手が違えば攻め方も違うのがセオリーだと教えてくれたのはリックでしょう!?」

 クラウドはガーレスを利用しガーレスもクラウドを利用している、そのあうんの呼吸は一度や二度組んだぐらいでは出来るものではなかったので思わずリックがたずねた。
「クラウド、おまえサー・ガーレスと組み手を何回やったんだ?!」
「7日間2時間づづ!!」
「うわ!!俺より多い!!」
「俺もうだめ〜〜!!」

 ザックスがダウンした、ランディもギブアップすると、リックはガーレスとクラウドに笑顔を見せた。

「サー・ガーレス。うちの副隊長をどこかへ引き抜かないで下さいね。」
「いっその事クラスSに来ないか?とお誘いしておるんだがね。姫は自分の隊を持つほど、経験も無いうえにクラスSの規定があるのでそれも出来ないのだよ。」
「クラウドをクラスSに持っていかないで下さいよ、彼はクラスAのアイドルなんですから。」
 肩で息をしながらランディがガーレスに話しかける、クラウドは困った顔をしてたっていた
「冗談じゃない、3人がかりの組み手を仕掛けておいてアイドルは無いよ、ランディ。」
「ちょっと変わった愛情表現、お前に死んでもらっては俺達の寝覚めが悪い。」
「ありがたく受けておくよ、特務隊の副隊長やらせてもらってるうちはね。」
「お前以外に誰がサー・セフィロスの隣に立つんだ?」
「ザックス。」
「俺?クラスA3人相手に組み手やって死にたかねェよ。」
「俺がクラウドの立場でもやりたくないよ、クラウドは良くやっていると思うぜ。」
「それが姫たるゆえんでしょうな。」
 サー・ガーレスは笑顔でその場を後にした。


* * *



 久しぶりのオフタイムにミッドガルまで出てきたセフィロスと、相変わらずデートのときに女装をせざるをえないクラウドは、家に飾る花が欲しくてエアリスの店へと歩いていた。

「この先なのか?」
「ええ、もうちょっと…あ、ザックスー!!」
 クラウドは前を歩く見覚えのある男に声をかけた。山嵐のような黒髪は見間違える事ない、ソルジャークラス1stザックスだった。

「あ、セフィロス、クラウディア。何やってんの?」
「花が欲しいと言うのでな。」
「この間エアリスの店で匂いのいい花売ってたの、ピンク色の綺麗なユリだったわ。」

 婉然と微笑むクラウディアは、昨日まで自分をしごいていた上官にはみえない、ザックスは思わず溜め息をついた。
「鬼の副隊長の顔は何処へやら…だな。」
「やだ…セフィに言わないでよ。」

 真っ赤な顔で照れるクラウドにセフィロスが問いただした。
「最近ザックスを見かけないと思ったらお前がしごいていたのか?」
「ええ、クラスAの仲間がザックスが仲間になるなら喜んでと、皆さん協力して下さって…ナイツ・オブ・ラウンドの皆様も良く顔を出してくださってます。」
「おかげで俺、毎日ヒーヒー言ってる、恐い上司だぜ。」
「お前にはそのぐらいでちょうどよい。」
 そう言いながら店の方向へ3人で歩いて行くと、エアリスは店の花に水をやっていた。

「あ、ザックス、セフィロス、クラウディアいらっしゃい。」
「ピンク・カサブランカ頂けるかしら?」
「ええ、喜んで。」

 エアリスがピンク色の大柄なユリを何本か選んで花束にしてクラウドに手渡した。
「うふっ、いい香。」
「蕾がほころんだらすぐにおしべを取ってね。おしべが成長して花粉を付けるでしょ?その花粉がおうちの壁やお洋服に着いちゃったりするとなかなか取れないの。」
「うん、わかった。」
「しかしなぁ…わかっている俺でも、クラウドがそうやっている姿は可愛い子ちゃんにしか見えないな。」
「酷い、明日はサー・ランスロットが来て下さる予定だから覚悟していてよ。」
「うわ、サー・ランスロットとお前がタッグを組んだら、旦那に来てもらわなきゃ対抗出来るわけないじゃん!」
「ランスロットとお前がタッグを組むのか?」
「ええ。サー・セフィロス、貴方ともくんでみたいのですけど。」
「よかろう、明日私も行く。ザックスはランスロットと組め。」
「うひゃあ!!最強夫婦コンビ相手に喧嘩やれっていうん?!」
 ザックスのとなりでエアリスがくすくすと笑っていると、クラウドがピンクカサブランカの花束を抱えながら嫣然と微笑む。
「嬉しい、サーと組めるのでしたらクラスS3人相手にしてもよろしくてよ。」
 その姿と言葉とのギャップがあまりにもあり過ぎてザックスが頭を抱えた。
「可愛い顔して言うセリフじゃないな。」
「うふっ、でもセフィロスに取っては違う意味だったみたいね。」
 エアリスに言われて改めてセフィロスを見ると、珍しく面食らったような顔をしていた。
「うわ…かっわいい〜〜!!!」
 ザックスの一言にセフィロスが頭を殴っていた。

 笑顔でエアリスの店を後にするとミッドガルの街をセフィロスと二人であるいていたら、いきなり大きな機影のような物が空を横切った。

「アルテマウェポン?!」
 セフィロスが車へと駆けだすとクラウドもほぼ同時に後を追うが、トップソルジャーが本気で走ると彼に追いつくはずもない。
 セフィロスが車に飛び乗るとクラウドの方に向かって走らせる。スピードを落しクラウドのそばで止まるとすかさず乗り込んだ。
 車の中でクラウディアの衣装から特攻服へと着替え、ウェットティッシュで化粧を落す。装備を確認すると、そこにはすでにスーパーモデル「クラウディア」ではなく、特務隊の副隊長のクラウド・ストライフがいた。

 車はまっすぐミッドガルの郊外を目指していた。
 後ろからデイトナが車の隙をぬって追いついてきた、ザックスだった。
「セフィロス!あいつは何だ?!」
「アルテマウェポンと言ってこの星の厄災だ。」
 そういうとセフィロスは車のアクセルを思いっきり踏み込んだ。
 やがてわらわらと空に輸送機が見えはじめた。

 ミッドガルからほど遠くない海岸線にアルテマウェポンがじっとミッドガルの方を見ていた。
 セフィロスが黒のロングをまとい正宗を片手に車から飛び出して行く、そのあとをクラウドとザックスが追いかけた。
 アルテマウェポンと対峙するようにランスロットとパーシヴァルの隊がいた。
「キング、姫!」
「ミッドガルにいた。あいつは手ごわいぞ。」
「アイ・サー!!」
 ランスロットとパーシヴァルが、セフィロスとクラウドとザックスを自分の隊員に紹介すると、隊員達は憧れの英雄とそのとなりに立つ事を許されている男二人に羨望と憧れの眼差しを向けた。