FF ニ次小説
 ランスロットが自分の一隊とパーシヴァルの一隊に対して命令を下した。
「今から我が第8師団と第15師団はサー・セフィロスの指揮下に入る。サーの足を引っ張るような真似だけはするな!!そんなことしたら確実に死ぬからな!!」
 隊員達に一瞬恐怖の表情が現れた。
 それを見てセフィロスがクラウドに振り向く。
「ストライフ准尉、指揮をして見ろ。」
「お…。私が2個師団の指揮を…、でありますか?」
「ああ、これからも大隊を指揮する事がある、慣れておけ。」
「実戦でやる事ではありませんが命令とあらば取らせていただきます。」
 クラウドが一歩前に出ると、整列している2個師団に対し凛とした姿勢を示した。
 一瞬とはいえ恐怖心をあらわにした状態を見る限り、戦闘に参加出来るとは思えない兵達である。クラウドなりに出した答えは”邪魔にならない位置に配置する事”だった。

「第8師団副隊長サー・スティーブ。貴官は自分の一隊を率いてミッドガルの市民の避難に当たれ。同じくサー・ゴードン、貴官はサー・スティーブの中隊と行動を!第15師団副隊長サー・アラン、貴官はミッドガルからここへの交通封鎖を。同じくサー・バージル、貴官は自分の一隊を率いて後方支援にあたれ!第一種非常事態発生!!各自冷静に対処せよ!!」

 隊員達が敬礼すると同時に、クラウドの指示に従い命令された通りに行動した。
 自分とほぼ同じ答えを導き出したクラウドに目を細めながら、セフィロスはアルテマウェポンへときびすを返した。
「クラウド、召喚獣達は連れてきているか?」
「イェス・サー、ソードに埋めこんであります。」
「それはいい、行くぞ!!」
「アイ・サー!!」

 セフィロスが正宗をおもむろに抜いてアルテマウェポンに駆けだした。
 とっさにクラウドがバリアを張ると、クリスタルソードを抜いてセフィロスを追いかける。
「って、待てよ!俺を置いていくな!!」
 バスターソードを掲げてひるむ事なくザックスもアルテマウェポンに駆けだした。
 呆れたような顔をしてランスロットがパーシヴァルに振り返ると、彼も呆れたような顔をしていた。
「あの3人には恐いものと言うのは無いのですかね?」
「あったら教えて頂きたいですね。」

 そう言いながら自らの剣を抜きランスロットもアルテマウェポンへと駆けだした。パーシヴァルもランスロットに続いた。
 上を見ると一機のヘリコプターが上空を舞っていた。ロープをつたって数人の兵士が降りてくる。

 先頭を切っているのはリック・レイノルド、続いて見覚えのある男たちがへりから舞い降りた。

「まいったね。俺達の隊員達はびびって遠巻きにしているというのに。」
「特務隊の隊員を普通の隊員と一緒にしないで下さい!!」
 そう言うとリックはアルテマウェポンめがけて駆け出していった。

 ザックスとセフィロス、クラウドがアルテマウェポン相手に剣をふるっていた。
 補助魔法をかけているのがランスロットで、パーシヴァルも魔法をかけつつ剣をふるう、そこへリックが乱入した。

 アルテマウェポンの動きが止まると同時にセフィロスがある技の事を思い出し叫んだ。
「引け!!シャドウフレアが来るぞ!!」

 ザックスとリックがあわててさがるが、クラウドはセフィロスが来るのを待ちつつ、クリスタルソードを掲げていた。
 自分のマテリアに「敵のワザ」が入っているのを思い出していたのであった。

「何やってる!!引け!!」
「上官に対して命令するな!!」
「ハン?!気だけは強いお姫様だこと!!いいさ、見守ってやる!!」
 セフィロスが伏せると同時にアルテマウェポンが一瞬震えた。
 真っ黒な光がクラウド達を襲う。クラウドは必死でソードを盾にしていた。

「”敵のワザ”か。」
「そうみたいだな。」

 光がソードに採り込まれて行くと、クラウドが片ひざを付いた。
「効いた…。」

 ふらふらと立ち上がるとクラウドがソードを掲げた
「シャドウフレア!!」
 クリスタルソードから黒い光が放たれる。
 セフィロスがすかさず立ち上がると、アルテマウェポンにかかっていった。ザックスとリックが後を追い掛ける。
 クラウドもソードを掲げてアルテマウェポンへと切りかかっていった。

 ランスロットが呆れたように立っていた。
「まったく、倒れないのが不思議なぐらいですね。」
「リック!!姫に気をつけろ!立っているのがやっとのはずだ!!」
「アイ・サー!!」

 後ろからの声を聞きながらリックが返事をした。

 魔力の使い過ぎは癒し魔法ではなおらない、かといって一般兵であるクラウドにエーテルを与えるわけにもいかず、二人のクラスSソルジャーはひやひやしながら戦闘に参加していた。

 アルテマウェポン相手に一歩も引かないセフィロスは当然だが、クラウドもザックスもリックもひるんでなど居ない。
 それどころか特務隊の隊員全員がセフィロスとクラウドを守るがごとく、自然と団結した動きをしている。

 クラウドがセフィロスを見上げるとアルテマウェポンの身体から、何本もの触手が一気に伸びるのが目に入った。

「危ない!!」

 とっさにセフィロスに体当たりをすると、アルテマウェポンの触手が一気にクラウドを襲った。

 スローモーションのように触手に身体を貫かれてクラウドが崩れ落ちて行く。

 セフィロスが飛び降りて触手を抜きケアルガをかけると、クリスタルソードをクラウドの手から抜き取る。
 リックがその場に駆け寄ってクラウドを受け取ると、何も命令されていなくともサー・ランスロットの元へと駆け寄った。

「サー・ランスロット、姫をお願いします!!」
 ランスロットはクラウドにフルケアをかけつづけた。
 弱々しいがクラウドの鼓動が聞こえている。

「姫!!あなたは逝ってはいけない!!」
「ランスロットさがるぞ!!キングが召喚する!!」
 パーシヴァルとリックがランスロットを引きずってザックスと共にさがる。
 セフィロスはクラウドの剣に一心に祈っていた。

    守りたいものがある。力を…貸してくれないか。

      致し方ない、力をかそう。

         我らには異存はない、いつでもお呼び下され。

「召喚!!バハムート!!」
 竜王バハムートがセフィロスの召喚に答えて姿を現わすと、悠然と空を舞いながらセフィロスの命令を待っていた。
「アルテマウェポンにメガフレア照射!!召喚!!ナイツ・オブ・ラウンド!!」
 バハムートがメガフレアの照射を終えないうちに、もう一つの召喚マテリアを起動させる。
「召喚魔法、アルティメット・エンド!!」
 13人の騎士の姿をした召喚獣が次々にアルテマウェポンに切りかかっていった。

 クラウドはメガフレアの光を薄れる意識の下で眺めていた。
「やっぱり…セフィ。か…っこ……いい……な……。」
 そう言うとクラウドは意識を手放した。

 ナイツ・オブ・ラウンドとバハムートを召喚したおかげで、なんとかアルテマウェポンは海の底へと沈んでいった。
 セフィロスはランスロットからクラウドを受け取った。
「命は繋ぎ止めておりますが出血多量で瀕死の状態です。」
 セフィロスが黙ってうなずいた。
 パーシバルが自分の副隊長を振り返ると指示を出す。
「バージル!!クラスAの非常回線つかっていい、大至急AB型の血液の隊員を集めろ!!姫が出血多量で瀕死だ!」

 バージルがあわててクラスAの非常回線を開くと、回線のむこうで息を呑む様子が手に取るように解った。
 ヘリが舞い降りてくるとセフィロスがクラウドを抱き上げて乗り込んだ。
 ランスロットとパーシヴァルが敬礼して見送ったあと隊員達に集合をかけた。

 ザックスは自然とリック達第13独立小隊をまとめていた。
 ランスロットが全員の前に立つ。

「第一種非常事態解除!!ただいまより帰投する!!」
 全員が一斉に敬礼した。

「リック、セフィロスの車を頼む。俺はデイトナで先に行く。」
「アイ・サー!」
「第13独立小隊全員帰投!カイル、後は頼む。」
「アイ・サー!!」
 ザックスとリックはそれぞれのマシンのところへと駆け込むとあわててアクセルをふかした。

 ザックスとリックが神羅カンパニー所属の病院へ到着した時、ロビーには5人ほどのソルジャーがたむろしていた。
 皆クラスAからCのソルジャー達だった、リックとザックスを見ると近寄ってくる。
「リック、今来たのか?」
「ああ、そういえばお前はAB型だったな、ありがとう。」
「いいって事よ。クラウド・ストライフは死なせるには惜しい男だ。」
「クラスAから非常回線回ってきた時はびっくりしたぜ。」
「姫はキングをかばってやられたって聞いたが?」
 リックとザックスはうなずいた。
「ああ、セフィロスに襲いかかったウェポンの触手を自ら受けたんだ。」
「無理して……。」
「いや、俺が姫の立場なら同じことをしている。わかるか?」
「ああ、そうだな。」
 そう言って彼らは採血のために血液検査室へと入っていった。

 リックはザックスを振り返ると彼は下唇を噛み締めてうつむいていた。
「俺には、出来なかった。」
「それも仕方がない。ザックスの守りたいものが姫とは違うだけだ。」
「お前は出来るのか?」
「ああ、俺は姫を守りたい、姫を守るには隊長も守らねばならないからな。」
 そう言い切ったリックのまっすぐな視線がザックスには羨ましかった。

 ザックスとリックは血液型が違うためクラウドを探す、きっとそこにセフィロスもいることであろう。
 ICUを探すとその一角に見慣れた黒のロングコートと銀色の髪が見える。
 ザックスとリックは椅子に座っているセフィロスに声をかけた。
「良くないのですか?」
「ランスロットのフルケアのおかげでなんとか命は繋ぎ止めている。しかし予断はできないそうだ」
「守れませんでした、すみません。」
「お前が責任を感じる事はない。すまないが少し頼む。」
「いってらっしゃいませ。」
 リックがセフィロスに敬礼をする。ザックスは出て行こうとする男を止めようとしてリックに止められた。
「どうして?!」
「隊長殿は下に居るソルジャー達に礼を言う義務がある。その義務を果たしに行かれるのだ」
 ザックスはハッとした、リックはセフィロスのするべき行動をすべて把握している。
 それなのに自分は感情だけで行動しようとしていた。
「リック、お前って本当に特務隊の影の隊長だな。」
「光栄だよ。」
 リックはなぜかすこし悲しげな顔をしていた。