エアリスの話は続いていた
ザックスがソルジャーだって言うことは最初から知っていたわ。
デートの最中に急に電話がかかってきて、仕事に行っちゃうから、大変な仕事をしてるんだなぁって、いつも驚いていたわ。
パパはザックスのことを悪くは言わなかった…けど、私がソルジャーと付き合っていることはあまり良く思っていなかったみたい。
そう話すエアリスに思わずクラウドが聞いていた。
「あれ?でもザックスはガスト博士の携帯番号を知っていたよ。この間セフィの誕生日がわからなくて聞いてくれたんだ。」
「え?そうなの?!だっていつもパパってザックスに送られて帰ると、恐い顔をしているのよ。なんだかザックスの事が大嫌いだって顔をしているの。」
「おかしいなぁ?この間普通に話していたもん、珍しく敬語つかっていたけど。」
「ザックスがパパに敬語?すごぉい!!彼、敬語話せるんだ。」
「エ、エアリ…それチョット言い過ぎ。」
「だぁって〜〜、いっつもお口が悪いからセフィロスに怒られているでしょ?」
「うん…。まあ、ね。そう言う意味では彼も努力しているんだ、エアリスが何か言っているんじゃないの?」
「う〜ん、特に無いけど?この間お家に上がらせてもらった時に挙式の写真見たでしょ?あれからクラウド君が羨ましいな〜、マダムセシルのドレス高いんだろうなぁ…なんて言ったことはあるけど。」
「マダムセシルのウェディングドレスって、クラス1stの給料の1年分ぐらいするかな?だからランクアップする気になったのかもね、最近、彼すごく真面目なんだ。恐いぐらいだよ。」
「真面目な人じゃないとパパが嫌がるとは言ったわ。」
「あ、じゃあそれかな?」
クラウドはにっこりと笑った。
エアリスの話しはまだ続いていた。
そういえばよくクラウド君の事を教えてくれたわ。
クラウド君の事を話すザックスって凄く優しい顔をするのよ、なんだか自分の弟の事を話しているみたいで…上官になった時なんて自分の事の様に喜んでいたわ。
ある日ザックスは『内緒だぞ』って前置きしてクラウド君と恋人の話もしてくれたわ。
最初は普通に思っていたんだけど聞いているうちに、だんだんと矛盾を感じてきたの、どう考えてもクラウド君の恋人は男の人にしか思えなかったわ。
だから…本当はザックスが相手なんじゃないかな?って思ったこともあったの。
クラウド君達のアパートメントの入り口に入るまで疑っていたわ。
でも、あのアパートメントは、1stクラスのソルジャーで払えるような部屋じゃない物、すぐに別人だとわかったけど…まさか相手があの人だとは思わなかったわ。
あとから聞いたんだけど、ほとんど一目惚れに近いんですって?
エアリスの話をずっと聞いていて、急に自分の事を聞かれたのでクラウドは一瞬とまどってしまった。
「え?ああ。う〜ん、一目惚れじゃないと思うんだけど…知り合って2ヶ月、同じ隊に配属されて一ヶ月だったかなぁ?好きだって自覚したのは。」
エアリスがクラウドの顔を見て思わず吹き出した
「たしかに一目惚れじゃないけど、そう思われても仕方がないのかもね。」
「そう思われても仕方ないのかな…?でも、いいや。好きなのは本当なんだもん。」
頬を染めて照れているクラウドの姿は何処からどう見ても飛びっきりの美少女であった。
エアリスが何か言いかけるとクラウドの時計が鳴り響いた。
「タイムリミットだわ。ごめんね、また今度話しましょう。」
そう言うとレシートをもってレジへと歩いて行った
エアリスはクラウドの後ろ姿を見ながら、二人のことを詮索していた自分が馬鹿馬鹿しくなっていた。
「そうよね、クラウドってなんだかんだ言っても結婚してるんだし。旦那様一筋で…まったく他の人なんて見ちゃいないものね。なにクラウドに焼き餅やいていたんだろう、私。」
クラウドの残したデザートまで平らげてエアリスは店を出て行った。
クラウドはマダムセシルの店に入ると店員に一礼しマダムの出迎えを受けた。
「おかえりクラウディア。さあ、お仕事でしょ?」
マダムの助け船のおかげでクラウドは怪しまれずにオフィスへと入ると、服を着替えて化粧を落しまた裏口からこっそりと出て行った。
カンパニーの兵舎の駐車場にVFRを止めると、いつものようにクラスAの執務室へと足を向ける。
扉を開けると仲間たちが挨拶してくれた。
「おう、姫おはよう。今日は遅番かい?」
「ああ、なにか特務入っていない?」
「いまん所すごく平和。」
キースから報告を聞くと、クラウドがパソコンンを立ち上げて今日の任務を確認する。そして本来ならセフィロスがやるべき書類の決済と、ザックスが溜めた報告書の整理をせっせと始めた。
しばらくすると早番との交代時間になった。
引き継ぎ書を貰い受けると、敬礼して執務室に残る。そこにザックスがあわてて飛び込んできた。
「ク、クラウド!!頼みが有るんだ?!」
「何?」
「組み手の相手になってほしい。」
ザックスの言葉にクラスAソルジャー達が振り向いた。
「お〜お、彼女出来てからマジになって。」
「そういえば、この一年お前にその手の話が無かったな。」
「女と見れば手当たり次第口説きまくるので有名なザックスが、だーれに真剣になってるかと思っていたら八番街の花売り娘。」
バージルの言葉にザックスが青い顔をした。
「あぎゃあ!!!何で知ってるんだよ!!」
「任務の中に定期警らがあるのを覚えているか?誰かさんが可愛い花売り娘相手に手もつなげないような頃から、俺達はその現場を何度も見てたけどなぁ。」
「俺、八番街はハズレてばかりだったから、全然知らなかった。」
クラスAの連中がザックスを餌食に盛り上がろうとした時、緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響いた。
「第二種緊急事態発生、場所は9番街09.27地点。」
ザックスがクラウドの目をまっすぐ見ている。
何がいいたいのかクラウドにもよくわかっているので、黙ってうなずくと、ザックスは駐車場へと駆けだして行った。
クラウドは振り返ると特務隊の執務室へ連絡を入れる。
「特務隊緊急出動!!行き先は九番街、目的は反抗勢力の鎮圧!!」
無線を切りおえるとクラウドもヘリの駐機場へと駆けだした。
駐機場で隊員達と合流しヘリに乗り込むと一気に上空へと舞い上がる。
リックがまわりを見回してクラウドに尋ねた。
「姫、隊長とザックスは?」
「隊長はクラスSの執務で現在真逆の五番街、ザックスは単独で先に行った。」
リックに答えたクラウドの言葉にジョニーがすぐに反応した。
「ああ、八番街の花売り娘が心配なんだな。」
「え?なになに?八番街の花売り娘ってあの可愛い子?」
「へぇ、そんなに可愛いの?」
ブロウディーとキッドが確かめるように聞くと、ジョニーが答えた。
「でも男の趣味は悪いぞ、なんてったってザックスを好きになるぐらいだ。」
「そりゃ、趣味悪い。もっといい男がここにいると言うのに。」
「はいカイル、おまえここで失格。」
「あ、すまん姫!!」
リックに指摘されていきなりカイルが謝るので、クラウドは何がなんだかわからなくて小首を傾げた。
「ん?何が?」
「俺はお前が一番だって事。」
「やめてくれ、頭痛がする。」
クラウドが苦虫を噛みつぶしたような顔をしたので隊員達に笑いが起きた。
今から最前線に行くと言うのに、笑顔が出るのが特務隊ならではであった
クラウドがぼそりとリックに話しかけた。
「リック、頼りにしてるよ。」
「姫に頼られるなんて、光栄の極みだね。」
「姫〜〜!!俺は?!」
「ああ、ザックスも隊長もいないからみんな頼りにしているよ。」
クラウドの言葉にジョニーが突っ込みを入れた。
「なんだよ、姫。頼りない副隊長になりたいのか?」
「ジョニー、何言っているんだ。姫は守られているような男じゃないぜ。」
「それは言えてる!」
ワイワイやっているうちに争いの起こっている近くのビルの屋上に、へりが舞い降りた。
次々に隊員達が非常階段を駆けおりて争いの真っ只中へと身を投じて行った。
定期パトロールのクラスB達が押され気味に闘っていた所へ、戦いなれた男たちが乱入した。
「リック、左を頼む!!カイルは右だ!!」
「アイ・サー!!」
「ラジャー!!」
リックとカイルに指示を飛ばして、真っ正面から切り込んで行ったクラウドの動きがぴたりと止まった。
にやりと笑ったボスが悠然と出てきたので、クラウドは自ら進んでそのボスに対峙した。
「お初にお目にかかりますな、地獄の天使。」
「俺ってそんなに有名になっちゃったのか。」
「ああ、有名も有名。しっかしこーんなガキだったとはね。」
「ガキ、だろうね。」
反抗勢力がクラウドの冷たい微笑みに戦慄を覚えた時、クラウドは反抗勢力の真っ只中で剣をふるっていた。
その頃左側を旋回するように回り込んでいたリック達は、物陰に隠れている少女とであった。
その少女に見覚えのあるリックが確保に走った。
「大丈夫ですか?!」
少女の肩を抱き起こし、まわりの安全を確認し立ち止まってケガの確認をする。茶色の巻き毛に緑色の瞳、やはり間違えなさそうだ。
「ザックスの…たしかエアリスさんでしたね。」
「え…ええ。」
小刻みに震えながらうなずくエアリスに、リックはブロウディーに振り返って、小隊の長として命令を下した。
「ブロウディー、彼女をクラスBのバリケードまで守ってさがれ!」
「アイ・サー!!」
ブロウディーが敬礼すると、エアリスを守るように左右の安全を確認しながら、来た道を戻って行った
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