FF ニ次小説


 一週間後、海底魔晄炉の調査を終えて特務隊が帰ってくると、ガスト博士がセフィロスを待っていた。

「セフィロス、ちょっといいかね?」
 ガスト博士博士に誘われてセフィロスが化学部門へと歩いて行った。その後ろ姿を見送ったリックがクラウドに訪ねた。
「姫、何か知ってる?」
「ソルジャーから魔晄の力を抜くとかおっしゃっているんだ。」
 クラウドの言葉を聞いてカイルとリックとジョニーが顔を見合わせて喜んだ。
「やったぞ!俺達の天下だ!!」
「クラスAだろうとSだろうと、魔晄の力がなければ只の人だもんな!」
「その点俺達は魔晄の力を使わなくても連中に勝てる。」
 三人の言う事ももっともだったので、クラウドが思わず吹き出した。しかしザックスはその裏に潜んでいた一つの事実に気が付いていた。
「でもよぉ、それってもうソルジャーは作らないって事だろ?」
「あ、そうだ!!そうなんだ…なんか複雑だな。俺はソルジャーになりたくてここに来たのに、ガスト博士はもうソルジャーを作り出さないなんて。」
「俺、姫が魔晄を浴びるの反対だった。たしかにお前には耐性が有る、しかし有り過ぎると逆に暴走して、記憶を無くしたり狂ったりするって話しだ。」
 リックの言葉にクラウドが急に思い出したように叫んだ。
「あっ!!」
「何か思い当たる事でもあるの?」
 急に大きな声を出したクラウドに、びっくりしたような顔でザックスが振り返ると、まるで独り言を言うかのようにつぶやいていた。
「セフィの本当のお母さん、大量の魔晄をあびて精神破戒を起しているんだ。」
「お前が万が一にもそんな事になったら、あの人はどうなるんだ?」
 リックの問いかけにクラウドは暗くうつむいてしまったので、ザックスが代わりに答える。
「旦那が今のクラウドを失ったらきっと暴走するだろうな。」
「ああ、アルテマウェポンに姫が貫かれた後の隊長は、はっきりいって恐かった。」
 クラウドは以前セフィロスに言われた言葉を思い出していた。

 (私はお前を失ったら悲しみでこの星を破壊しつくしてしまう。)

「俺…、今の記憶が無くなるぐらいなら、ソルジャーになんてなりたくない。あの人を失ってまで…、俺ソルジャーになりたくない。」
 クラウドはうつむいたまま目に涙を溜めていた。


* * *



 化学部門の主任室でセフィロスとガストは向かい合っていた。
 セフィロスはガストが信じられない話をしたことでびっくりしていた。

「そんな事が可能なんですか?!」
「理論上は可能だ。クローンコピーと方法は何ら変わらないが、唯一違うのは遺伝子の構造を崩して再度くっつける事で、本来の自然の摂理にしたがって、二人の遺伝子を受け継ぐことになる。しかし、これはあくまでも理論上だ。実際にやれるかどうかはわからん。」
「あまりにも突飛な話しなので…、少し考えさせて下さい。」
「突飛だよな、私も娘に言われた時は机に突っ伏したよ。でも、私も君に家族の暖かさを感じてほしいのだよ。」
「私には既に愛しい妻がいます、それだけで十分です。」
「妻というよりは君の半身のような感じだが。」
「それは認めます。」

 セフィロスはガスト博士に一礼すると科学部門主任室を後にした。



 その頃。クラウドは報告書を手に、治安部統括であるハイデッカーの元に行くため廊下を歩いていた。
 すれ違うソルジャー達が敬礼して見送るのを軽く会釈しながら通り過ぎる。クラウドの姿を求めてひとりのクラスCソルジャーが声をかけた。
 治安部内でも有名なセフィロス・ファンの一人、ハンス・クリフォードだった。

「第13独立部隊の副隊長、ストライフ准尉でありますか?自分は第17師団第4小隊副隊長のハンス・クリフォードであります。」
「ああ、あなたが有名な隊長フリークのソルジャー・ハンス?」
「あ、はい。実はお願いがありまして…組み手の練習に付き合っては頂けないでしょうか?」
「いいけれど?これを置いたらすぐ行くから、士官用訓練所でまっててくれる?」
「ありがとうございます!!サー!!」
「俺はまだソルジャーでは無いけど。」
「いいえ、貴官は上官にあたります!当然の事だと思います。」
 姿勢を正して敬礼する姿は一武官のものであった。クラウドは報告書を提出し、約束通り士官用訓練所に姿を現した。
 ハンスが恐縮し切った様子で待っていた。まわりをクラスA仲間が2〜3人待っていた。

 その一人、スティーブがクラウドに声をかけた。
「おっせーぞ!」
「あん?スティーブ、また俺にやられたいの?」
「冗談はよせ、立会人を頼まれたんだ。殺すなよ。」
「それこそ冗談、組み手で人が殺せるか?!骨の折れる場所が悪ければ下半身不随とか、まあ首の骨が逝っちゃえばあるか。」
「うわ〜〜、恐い男。」
 肩をすくめてクラスA仲間が後ろにさがると、正面に立っているハンスがなぜか震えているようにみえた。
 クラウドはおもわずふっと笑顔を漏らした、天使のような笑顔だった。

    ”地獄の天使” ”白い悪魔”

 ハンスはクラウドが世間でどう呼ばれているのか今更のように思い出した。

「始め!!」
 スティーブの号令と共にハンスの右ストレートを繰り出したが、クラウドはかるく左手の甲ではたくと体制が崩れた。その隙にひざ蹴りを繰り出すとあっという間にハンスが気絶した。

 その素早さに立会人をやっていたクラスAソルジャーが呆れたような声を出した。
「うわ〜〜!!秒殺!!」
「あらら……、ダメじゃん。もっと鍛えてこないと相手にもならないぜ。」
 一発で伸びてしまったクラスCソルジャーを見てクラウドが思わずつぶやいた。
「俺ってまだ一般兵だよな?」
「ああ?!何処の誰が一般兵だって?」
「クラスAトップ10どころか、魔力と剣術ならクラスS並の男が言うセリフか?」
 けらけらと笑い飛ばすスティーブとキースを横目に、クラウドはうずくまっているハンスに声をかけた。
「お〜い、大丈夫か?」
 ハンスが頭をふって立ち上がろうとするとクラウドが手を貸した。その手を取って立ち上がると、ハンスはクラウドに一礼した。
「ありがとうございました。」
「強くなりたかったらいつでもおいで、俺でよかったら相手になるから。」
「その前にクラスB相手に修行します。」
 二人の会話にキースが口をはさんだ。
「その方が正解だ。お前のたっての頼みでなかったら認めなかったぜ。なにしろウチのお姫様は、クラスS相手に一本取っちまうんだから。」
「教えてくれないか?なぜ姫と組み手をやりたかったんだ?」
「サー・クラウドに勝てばサー・セフィロスの隣に立てるかもしれないと、思ったからです。」
 ハンスの答えにスティーブが呆れたような声で答えた。
「その程度の腕では特務隊に入る事すら出来ないよ。」
「スティーブの言う通りだ。ザックスだって姫と組み手やって5分は持つんだ。秒殺じゃあ隊員達にも負ける、そんな奴をあの隊は上官とは認めないよ。」
「実力が上がれば俺でも入隊出来ますか?」
「基準がわかんないから答えられないな。キース、知ってる?」
「ナイツ・オブ・ラウンドなら知ってるんじゃないかな?」
「サー・セフィロスの目にかなった隊員とソルジャーでなければ入れないかもな。」

 士官用訓練所でワイワイやっていたら急に放送が入った。

 『ミッドガル郊外の海岸線にアルテマウェポン出現!第一級戦闘配備!!』

 キースもスティーブも思わず固まっている、ハンスにいたってはふるえていた。
 しかしクラウドは訓練所を即座に飛び出して行った。

 ヘリコプターの駐機場にかけつけると、そこにはすでに特務隊の隊員が集まり出していた。

 そこへザックスとセフィロスが駆けつけた。クラウドの姿を認めたセフィロスが問いかける。
「クラウド、あいつらは持ってるか?」
 瞬時に召喚マテリアの事だと判断したクラウドが直立不動で敬礼した。
「イェス・サー!」
「旦那、あいつは前のダメージから回復してるのか?」
「あれからかなり時間が経っているからな、回復していると思え!」
 へりに乗り込むと急上昇して機首をミッドガル郊外の海岸線に向けた。


 ミッドガル郊外の海岸線にアルテマウェポンは以前のときと変わらず、傷一つ付いていない状態でそびえたっていた。
 ヘリがウェポンから1kmほど離れた所に特務隊の隊員を降ろす。

 隊員を前にセフィロスが一言声をかけた。
「無理だけはするな、とにかく死ぬな、生きる事だけを考えろ。」
「アイ・サー!!」

 セフィロスが正宗を、クラウドがクリスタルソードを、ザックスがバスターソードを手に、アルテマウェポンめがけて駆けだした。

 クラウドがアルテマウェポンに組みついてよじ登って行く。
 後ろからリックが同じようによじ登ってくる。
 肩のところまでよじ登った所でクラウドがクリスタルソードを振り上げると、ボディの硬度が堅かったのかソードが真っ二つに折れた。

「なに?!」
 ふらつく身体をウェポンの突起をつかむ事によって抑えようとするが、その突起さえウェポンからはずれようとする。
 クラウドが折れたソードを一旦鞘に納めてその突起を思いっきり引き抜いた。

 突起は両刃剣の柄だった。

 クラウドがアルテマウェポンから飛び降りると、すかさずザックスがバスターソードを掲げた。

「ファイガ!!」

 炎系の最高位魔法が襲いかかる寸前に、リックがあわててウェポンから飛び降り悪態をついた。
「馬鹿野郎!!俺を焼き殺す気か?!」
「うっせー!!クラウドにバリアかけてもらってんだろ?!」

 戦っている最中のやりとりとは思えないが、それでも戦闘は続いていた。
 クラウドが鞘から刃先が折れたクリスタルソードを引き抜くと、マテリアを取り外しウェポンから引き抜いた両刃剣にマテリアを組み込んだ。
 そしてそのソードを握ると不思議と今までより力が沸いてきた。
「下がって!!召喚する!!」
 クラウドの声に反応したセフィロスがアルテマウェポンの向こう側でよじ登っているカイルに声をかけた。
「カイル!召喚獣にやられたくなければ早く降りろ!」
「アイ・サー!」
 クラウドがアルテマウェポンから引き抜いたソードを縦に掲げた。

「召喚!!ナイツ・オブ・ラウンド!!」

 13人の騎士の姿をした召喚獣が雲の向こうから現れて、アルテマウェポンに代わる代わる持っている刃を浴びせて行くと、銀色のボディが小さく震えた。
 その反応が記憶のどこかにあったシャドウフレアの動きに似ていたのでザックスが叫んだ。
「シャドウフレアが来るぞ!!」
 ザックスの声に全員が伏せるがクラウドはその場に立ったままだったので思わずリックが叫んだ。
「姫!何やってンだよ!!」
「え?だってあいつもうHP残ってないと思うけど。」
 伏せていたセフィロスがクラウドの言葉に反応してすぐに立ち上がりアルテマウェポンに切りかかった。
 一太刀切りかかっただけで、あっさりとアルテマウェポンが崩れはじめた。
 砂ぼこりをあげ激しい音をたててアルテマウェポンから部品が崩れ落ちて行った。