FF ニ次小説


 ゆっくりと正宗を一振りさせて鞘に戻したセフィロスが振り返ると、隊員達が自然と整列し前に隊長と副隊長とが並んだ。

「第一種非常事態解除、良くやってくれた。」
 セフィロスの言葉に隊員達が一斉に敬礼した。

 ヘリがゆっくりと舞い降りてくると、セフィロスから順に隊員達が乗り込む。最後にクラウドが乗り込むとヘリは一路、神羅カンパニーに機首を向けた。

 クラウドが揺れる機内で青い顔をしながら、アルテマウェポンから引き抜いた剣を見ていた。マテリアを取り出すと入れ換える前と全く力が変わっていないようだった。
 クラウドの顔が曇ったのをすかさずリックが気が付いた。
「なんだ姫、また気持ち悪くなったのか?」
「いや、違う。あんなに強い敵に切りかかったと言うのに、マテリアが全く成長していないんだ。」
「貸して見ろ。」
 セフィロスがクラウドの持っている剣を手に取る。軽く握るとパワーは感じられるがそれだけの剣だった。
「この剣はマテリアを成長させないのかもしれないな。」
「うわ、そんな剣いらないから、新しいクリスタルソード下さい。」
「クリスタルソードを刃こぼれさせるような奴にあう剣なぞ、カンパニーにはないぞ。」
「じゃあどうすればいいの?」
 セフィロスとクラウドのやりとりにザックスが加わった。
「今回みたいにモンスターが持ってたりする奴を奪うとかは有りなの?」
「それもあるが、名のある刀工に作ってもらえばよい。なんならこの緊急出動の休暇の間に、私の正宗を打ってくれた刀工を紹介しようか?」
「ほんと?!セフィ!ありがとう!!」

 クラウドは思わずセフィロスに抱きついた。その途端ぐらりとへリが揺れてクラウドが青い顔をする。

「うぐっ!!」
「あ、始まった。」
「この程度の揺れで、か。」
「姫はこれさえなければいい上官なんだけどなぁ。」
「き、気様等…うる……うぐっ!!」
「旦那〜乗っかかられて鼻の下伸ばしていないで何とかしてやれよ。」
「ザックス、お前にチャンスをやる。クラウドのこの状態を治す魔法は?」
「そりゃ……、普通はエスナでしょ、しかし効くのか?」
「やってみろ。」
「エスナ!」
 ザックスから緑色の光がクラウドに向けて発せられた、穏やかな感覚がクラウドを優しく包む。

 クラウドが感じていた違和感が急に無くなった。
「あ、治った」
「うっそぉ?」
「へぇ〜〜、エスナって乗物酔いにも効くのか?」
「じゃあ万能薬も効くのか?」
「今度、姫が乗物酔いしたら飲ませて見ようぜ。」
「おまえら〜〜!!俺は実験台か?!」
 雑談を繰り広げる隊員達にクラウドが思わずこぶしを上げるが、それは戦闘が終ったおふざけに過ぎない事を知っていた。
 隊員達の表情には先程までの緊張がうそのように晴れていた。

 カンパニーに到着してヘリから降りると、ランスロット達クラスSが出迎えていた。
 その後ろには士官用訓練所にいたソルジャー達も立っていた。セフィロスが悠然と姿を現すと、ランスロットがすかさず近寄った。

「ご苦労様でした。さすがですね、アルテマウェポンを倒してしまうなど、思いませんでした。」
「前回の戦闘の消耗も残っていたがクラウドのおかげだ。」
「召喚獣ですか?」
「それだけではないようだ。クラウド、おいで。」

 クラウドは呼ばれてセフィロスのそばに駆け寄った。

「何か御用でしょうか?隊長。」
「ああ、例の剣を。」
「アイ・サー!」

 クラウドは敬礼してからアルテマウェポンから引き抜いた両刃剣を目の前のセフィロスに手渡した。
 セフィロスは剣を受け取ると中のマテリアを抜き、クラウドにマテリアを渡してからランスロットに両刃剣を手渡した。

「その剣はかなりのパワーがある、召喚した時の召喚獣の強さも剣の力で左右されるなら、その剣はかなり持ち主のパワーをあげてくれる。」
「なるほど、この剣を姫が使われたのですな。」
「クリスタルソードはいかがされましたか?」
「刃こぼれしていたのか真っ二つに折れてしまいました。支給品を折ってしまいすみません。」
「呆れましたね、たった半年でクリスタルソードを刃こぼれさせたのは、姫が始めてですよ。そんなに使われましたかな?」

 パーシヴァルの言葉に思わずクラウドが困った様におじぎをした。
「ご、ごめんなさい!!」
「謝る事などない、特務隊がそれだけキツいと言う事だ、パーシヴァルなど、もう何年同じクリスタルソードをにぎっているのかな?」
「すみませんね、あまり実戦に出ない物でかれこれ10年ですよ。」
「クリスタルソード以上の剣の支給はできないのですが、姫はどうされますか?」
「はい、隊長がよい刀工を紹介してくださるというのでその方に打っていただきます。」
「それがよいでしょう、それまでクリスタルソードで我慢して下さい。」
 クラスSソルジャーがクラウドに一礼する。
 特務隊の隊員にセフィロスが姿勢を正すとクラウドも並んで姿勢を正し解散の言葉を発した。
「第13独立小隊解散!」
「アイ・サー!」
 全員が敬礼し、敬礼からなおるとそれぞれやるべき事をやるために散らばった。
 クラウドも報告書を書きに執務室に行こうとすると、士官用訓練所で一緒にいた仲間が寄ってきた。

「おまえ、良くあの時とっさに駆けだせたね。」
「それが出来なかったら特務隊には居られないけど?」
「その通りだな、4年前とはいえ俺もそうだったんだっけ。」
 そこにリックとカイルが通りかかって声をかけた。

「お、卒業生。生きていたか?」
「おかげさまでね。」
「ずいぶんお前らにいじめられたけど…マダマダみたいだ、思わず固まってしまったよ。」
「また特務隊に来る?一般兵あつかいでならまだ席はあるぜ。」
「うわ〜、クラスAが一般兵扱いかよ?!」
「仕方ないだろ。隊長も副隊長もいる小隊だ、士官はこれ以上不要だ。」
「言い返せないのが辛いねぇ。」
 話し合いながらも駐機場にいた全員が官舎の中に入って行った。
 片手をあげてクラスA仲間と別れた後、クラウドは特務隊の執務室に入り、報告書を書き上げていると、クラスSから呼び出された。
 クラスSの会議室に入ると円卓にクラスSソルジャーが全員集まっていた。
 テーブルの中央にアルテマウェポンから引き抜いた両刃剣がおいてあった。

 相変わらずクラウドは入り口で立ち止まっているが、おかまいなしでクラスSソルジャーが全員立ち上がる。セフィロスがゆっくりと立ち上がるとクラウドに近づいてきた。

「相変わらずだな。一々言われないと席に座れないのか。」
「自分はまだクラスA扱いの一般兵であります。上官であるクラスSの皆さんを差し置いて中央へなど座れません。」
「我々が認めているのに…、ですか?」
「とにかく姫の椅子はキングの隣りなのです、早く座っていただかないと会議が始まりません。」
「あ…は、はい。すみません。」

 おずおずとセフィロスに従いながら中央に進むとクラスSソルジャー達が敬礼をする。それはセフィロスのための敬礼なのであろうとこの時クラウドは思っていた。

 いつものようにセフィロスがクラウドを椅子に座らせてから自分が椅子に座る。
 そのあといつものようにクラスSソルジャー達が一斉に着席した。

 セフィロスが全員を見渡すと口火を切った。
「さて、今回入手したアルテマウェポンの剣の処分だが、どうしたらいいだろうか?」
 セフィロスの問いかけにラルコートが答えた。
「その剣が振れる者が持つべきでしょう。」
「同意いたします。」
 ガウェインが同意したのでランスロットが決を採る。
「ラルコートの意見に同意する者は挙手せよ。」
 ランスロットの言葉にその場にいた全員が挙手をした。
 セフィロスが両刃剣を取り上げると出口に一番近いカールに手渡す。カールが両刃剣を持って会議室の外に出ると、その後ろからクラスS達が全員外に出た。
 士官用訓練室に入るとカールがアルテマウェポンの剣を一振りする。
 とたんにカールの顔が曇った。
「私には重たくて仕方がありません。」

 カールがジョンに剣を手渡すとジョンも一振りする。

 一通りのクラスSソルジャー達が一振りするが、誰一人として軽く振れなかった。

 セフィロスが受け取ると先にクラウドに持たせる。クラウドは軽く振ったが悔しそうな顔をした。
「マテリアが成長するならいい剣なんだけどなぁ。」
 そう言ってセフィロスに手渡した。
 セフィロスは剣を振りもせずクラウドに話しかけた。
「ならばこれを鍛えなおしてもらえばよい。」
「え?自分がもらってもよろしいのですか?」
「欲しくても重くて振れないのだから仕方がないですよ。」
「こんなに軽いのに?」

 パーシヴァルの言葉に首をかしげたクラウドが、片手でアルテマウェポンの剣をくるくると回すと、それを見てクラスSソルジャー達が感嘆する。
 ランスロットがため息交じりにクラウドに問いかけた。
「姫には本当にそんなに軽いのですか?」
「まさか、この剣も持ち主を選ぶのでしょうか?」
「貸して見ろ。」
 クラウドから剣を貰い受けるとセフィロスは片手で二、三度振った。
「確かに軽い剣だな。私には軽すぎる。」
「はぁ、我々の精進が足りないって事ですか?」
「そう言う事だな」
 セフィロスがその場にいるクラスSソルジャー達に冷たい微笑みを浮かべていた。
「一週間休暇をもらう。」
「先のミッションの代休とこの第一種戦闘配備の休暇にしては短いようですが?」
「かまわん、それだけ有れば十分だ。」
 セフィロスはクラウドの肩を抱いてその場を去って行った。

 特務隊の執務室で書き掛けだった報告書を書き上げて、クラウドはパソコンから顔を上げたら、ザックスが頭を抱えていた。

「ザックス、どうしたの?」
「ん〜、休暇申請してどんなもんもらえるかな〜って、さ。」
「隊長は一週間申請していたけど?」
「そんなものか。で?ザックス、どこか行くつもりか?」
「ちょっとね、デヘヘヘヘ。」

 ザックスの顔がニヤニヤとしているのでリックが突っ込みを入れた。
「気色悪いな、何考えているんだ。」
「彼女連れて一度田舎に帰ろうかな〜って。」
 ザックスがしまりのない顔をしていると隊員達に小突かれた。

「この馬鹿ザル!!あまり羨ましい事をするな!」
「田舎に帰るだと?!二度と帰ってくるな!」
「それよりもその前に、ガスト博士と彼女の同意を得たほうがいいぞ〜〜」
「きっとお前一人が突っ走って失敗するだろうな。」
「うっ…、嬉しいような悲しいような。」

 ザックスは崩れまくった顔で隊員達に小突かれていた。