FF ニ次小説
 スピードスクエアに入ると、エアリスがポイント交換一覧を見て急にはしゃいだ。
「きゃぁ!!あの写真の傘かわいい〜〜!!」
「アンブレラ?うぎゃ!!5000ポイントじゃねぇか。」
「ね〜〜ザックス、取って、取って、取って〜〜〜!!」
 可愛らしくおねだりするエアリスにザックスが鼻の下を伸ばしていた。
「うっしゃ!!絶対取ってやる!!」
「きゃぁ〜〜!!ザックス大好き〜〜!!」
 そんな二人に笑顔を送った後、クラウドが一覧表を目にすると「マサムネ・ブレード」の名前が目についた。

「3,000ポイント以上かぁ…とれるかな?」
「トリスタンが舌をまくほどだ、そのぐらいなら大丈夫だろう。」
 コースター乗車待ちの長い列の最後に並ぶと、まわりの客がちらちらとこちらを見る。セフィロスは慣れたものだがクラウドは思わず頬を染めてうつむきがちになっていた。客が話す声が聞こえてくる。
『うわぁ、妖精クラウディアだ。』
『え?!本物なの?!』
『本物だろ?!だって隣の男は英雄セフィロスだぜ。』
『うわぁ…綺麗〜〜』

 こそこそと交わされる会話を無視しながら順番が来る。

 係員が恭しくおじぎをし姿勢を正すとびっくりした。
「サ、サー・セフィロス。ようこそいらっしゃいませ。」
「プライベイトだ普通にしてくれ。」
「はい、ではコチラへどうぞ。」

 コースターの座席に係員が案内すると、驚いたことにトリガーボタンに近い方にクラウディアが座ったのである。係員があわてた様子でセフィロスに確認した。
「サ、サーがプレイされるのではないのですか?」
「私がやったら面白くなかろう、クラウディアもクレー射撃の経験はある。」
「そうですか、では行ってらっしゃいませ」

 係員が発車の合図をすると、コースターがゆっくりとプラットフォームを離れた。

 コースターの助手席でゆったりと座りながら、セフィロスがクラウドに簡単にこのコースターの得点ポイント説明していた。
「いいかクラウド、洞窟を抜けた水車と巨大飛行船のプロペラは連射だぞ。」
「アイ・サー!」
クラウドは戦闘態勢のような状態に入っていた、頭はやたら冷静で目はターゲットをひたすら探している。クラウドの指がトリガーにかかり、引かれるとターゲットがどんどんと落とされて行った。


 しばらくして二人の乗ったコースターがゆっくりとプラットホームに戻って来た。トリガーボタンを離してクラウドが一息つくと列を作っていた客からどよめきが起こった。
 クラウドが優雅にコースターから降りるとセフィロスを待つ。セフィロスがコースターから降りながら、スコアボードに目をやると驚いたような表情をした。

「クラウディア、ハイスコアーを塗り替えたようだぞ。」
「え?うそ!?」

 クラウドがスコアボードに目を向けるとぶっちぎりのトップに自分の名前があった。
「5800点って…凄いの?」
「それはザックスのスコアを見ればわかるだろ?」
 セフィロスに言われてクラウドが振り返ると、ザックスとエアリスが乗っているコースターが入ってきた。
 ザックスがトリガーボタンを手放すと溜め息をついた。
「だめだぁ〜〜!!3200点しか取れなかった〜〜!!」
「きゃぁ〜〜!!クラウディア、あなた凄〜〜い!!」
 エアリスがスコアボードを見て叫んだ時、ザックスも釣られてボードに目をやった。
「うわぁ!5800点って、マジですか?!」
 ザックスの声に頬を染めながらクラウドがスコアカードを窓口に提出した。窓口係がクラウディアの姿をしたクラウドを見て、アンブレラを渡した。ザックスが同じようにスコアカードを提出すると係員がマサムネ・ブレードを手渡してくれたのをみると、クラウドが近寄っておずおずと訪ねた。
「あの、ザックスお願いがあるんだけど……。」
「ん?ああ、コレが欲しかったのか?」
「うん、コレをあげるから。」
「OKいいぜ、なあエアリス」
「きゃぁ〜〜!!嬉しい!!」
 エアリスがアンブレラをもって喜ぶと、クラウドもマサムネブレードをもってはにかんだ。ザックスがセフィロス相手に何かこそこそと話している。
「旦那が手伝った…、って事はないよなぁ?」
「私が手伝えばもっと行っているはずだ。」
「はぁ…やっぱり。たいした奴だな。」
 ザックスはちらりとクラウドを見て思わず溜め息をついた。

 それから4人はチョコボスクウェアへと出かけ、それぞれお気に入りのチョコボにお金をかける。
 不思議とクラウドがツキまくってひとり勝ちの状態だ。
 負けが込みはじめたザックスが半ばいじけるようにクラウドに言った。

「クラウディア、おまえチョコボとお友達だからそんなにあたるのか?」
「ひ、ひどい…」
 ザックスの言葉にワザと青い瞳に涙を浮かべると、セフィロスがクラウドの持っているマサムネブレードを手に持って刃先を向けた。

「貴様、よほど死にたいらしいな」
「わ!!だからってこんな所でマサムネはおよしになって〜〜!!」
 いつものような二人にエアリスがきょとんとして見ている。
 クラウドは自分の稼いだポイントをお金に替えるとエアリスに微笑んだ。
「ねぇ、エアリス。あのふたりは仲がよろしくて遊んでいるの。そのままにしておいて私達はそろそろ食事に行きましょうよ。」
「え…あ、うん!!」
 クラウドがエアリスの腕をとって何処かへ行こうとするのをザックスとセフィロスが声をかけて止めた。
「ちぇ!!そりゃないぜエアリス。」
「クラウディア、私を置いて何処に行くつもりだ?」
「ですから食事。楽しそうなサーを邪魔するつもりはありませんわ。」
「ほぉ…以前、自分を置いていくなと泣いていたお前が一人で行くのか?」
「意地悪。」
 ちょっと拗ねた顔でセフィロスの腕に自分の腕を絡めると、クラウドはゴーストホテルのレストランへと歩いて行った。
 後ろからザックスとエアリスがニコニコ顔で付いてきていた。


 ゴーストホテルのレストランは名前の通り普通のレストランでは無かった。
 料理の素材こそ、ごく普通の食材を使っていて味つけも悪くは無い、しかし見た目が普通じゃない。かなりグロテスクに盛りつけられていた。
 銀色のグラスはドクロの模様が細工してある。中には赤ワインが入っているが、どう見ても怪しい飲み物にみえるうえにセフィロスが持つとさらに怪しく見えるのでザックスがすかさず突っ込みを入れた。
「旦那〜、似合い過ぎ〜〜!」
「きゃぁ〜、恐すぎ〜〜」
 エアリスがワザと恐がるとクラウドは思わず笑い出していた。
「ひどいわ、エアリス。かっこいいじゃない。」
「コレだよ〜〜、恋する乙女の目はそういう風にしか見えないのかね?」
「ザックスが持って見れば?」

 エアリスに言われてザックスが同じグラスを持つとクラウドが逆に言い返した。
「うわ〜〜ザックスさん、似合い過ぎですわ。」
「きゃぁ!カッコイイ!!…って、言えばよかった?」
 エアリスの余計な一言にザックスがこけるとテーブルは笑いに包まれた。


 あっという間に楽しい時間は過ぎて行く。

 ゴーストホテルに4人で宿泊しもう一日遊んだのだが、あっという間にゴンガガへ帰る時間になっていた。
 ケーブルカーに乗りコレル村の駐車場に預けてあった車に乗り込むと、2台の車はゴンガガ目指して走って行く
 その日の夕食はザックスにせがまれてザックスの家で食べた。食卓を囲みながらザックスが明日からの予定をエアリスに相談した。
「あと2日潰さないといけないんだろ?何処行きたい?」
「あのね、コスモキャニオン。星見の塔っていう場所があるんだって。」
「ああ、人間の未来を見ることができるとか言う話しだな。」
「未来がわかっちゃうなんて…ちょっと恐い。」
 とまどうような顔をするクラウドにエアリスが問いかけた。
「なぜ?」
「だって、もし望む未来で無かったら?」
 クラウドのとまどいがわからないでもないがセフィロスは優しく髪をすきながら耳元で囁いた。
「馬鹿だな、未来なんていくらでも変えることができるではないか。」
「う〜ん、わかるような気がするな。もし私の運命の人がザックスじゃないって言われたら、ちょっとショックだもんね。」
「う…ん。でも、知りたい気持ちもあるの。」
「ちょっと恐いけど勇気だして行って見ようよ、ね!」
「ええ、そうね。」
 エアリスに明るくウィンクされてやっとクラウドはコスモキャニオンに行く決心をした。

 ゴンガガの宿屋に泊まると翌日コスモキャニオンに向かって車で走る。
 村に到着すると背の高くない老人が村の入り口にたっていた。
 老人はこの村の長老でプーゲンハーゲンと名乗った。
「ホーッホホウ、おぬし達が来ることは星見によってわかっておったわ。」
 変な爺さんだと思っているザックスがワザと意地悪な事を聞いた。
「じゃあ俺達の事何か知ってるの?」
「ホーッホホウ、お前さんはかなりドジだが、そのおかげでかわいがられておる。そこの背の高い男は世界を手中に治める力を持っておるが、その力を良い方に使うことができるようになったようじゃの。そこの女は生き長らえたようじゃの、すべてはそこにいる少年のおかげじゃな。」

 4人は目の前の老人の言葉にお互いの顔を見合わせた。
 クラウドが小首を傾げてプーゲンハーゲンに聞く。
「どうして私が少年だとわかったのですか?」
「星が教えてくれたのじゃ、今日二人の青年と一人の少女。そして少女にしかみえない少年が来るとな。」
「あの…星見の塔に入れてもらえますか?」
「よかろう、それがこの星の望みでもある。」
 ゆっくりとうなずくとプーゲンハーゲンは移動しはじめた。

 岩肌を縫うように階段が作られていてその階段を5人は上っていった。
 はしごを上ると星見の塔に到着する。

 小屋に入るとプーゲンハーゲンが何かのスイッチを入れた。
「ホーッホホウ。背の高い男と少年は運命の恋人じゃのぉ。絶対その手を離すなよ。おぬし達が離れ離れになった時、この星の命をかけた戦いが起る。黒髪の男よ、お前はその少女を守り抜きなされ。その少女は星の命をかけた戦いが起こった時に、星の命を救ってくれる女性じゃ。」
 プーゲンハーゲンの言葉にエアリスがびっくりする。
「私が星の命を救うの?そんな力私には無いわ。」
「うむ、まだ目覚めていないだけじゃ。しかしこのままならば目覚めなくとも良いようじゃぞ。とにかく背の高い青年よ、今の気持ちを絶対忘れるなよ。」
「忘れるつもりなど無い。以前の自分になど戻りたくも無い。」
「ホーッホホウ、それは良い事じゃ。」
 セフィロスの言葉にプーゲンハーゲンはゆったりと笑っていた。