翌日セフィロスとクラウドはコンガガに戻り、マサムネとアルテマウェポンの剣を受け取りに岬の刀工の小屋へ行った。 刀工は小屋の前で満面の笑みを浮かべて待っていた。 「少年よ、おぬしに合う剣になったか振って見ろ。」 クラウドは刀工が差し出していた剣を受け取ると軽く一振りしてみた。握った途端に感じるパワーは、以前の物よりはるかに強かった。 「前に握った時よりもずいぶんパワーを感じます。」 「ほう、わかるか。」 にやりと刀工が笑った。 セフィロスが刀工から正宗を受け取ると、鞘から抜いて刀身を見ると軽くうなずく。クラウドに振り返って一言言った。 「クラウド、手合わせを頼む。」 「ええ、喜んで。」 クラウドがアルテマウェポンを上段の構えに構えると、セフィロスが正宗を下段に構えた。 すり足でクラウドが近寄ると一気にしかけた。セフィロスが軽くアルテマウェポンを弾き返すと、クラウドは強引に力でソードの跳ね返りを抑えた。 セフィロスとクラウドの立ち会いを見て刀工は正直驚いていた。 セフィロスが正宗を使いこなしているのは使いなれているので当たり前の事だが、クラウドはアルテマウェポンを今日初めて握ったと言うのにかなりの腕を思わせる剣裁きを見せているのであった。 5分ほど剣を交えていたセフィロスが不意に剣を止めると、クラウドもほぼ同時に止めた。 刀工が再びにやりと笑った。 「どうじゃの?二人とも。」 「相変わらずいい腕をしているな。」 「すごく良い剣になりました、ありがとうございます。」 「いや、私もよい物を打たせてもらった。じゃが支払いは別だぞ。」 「いくらだ?」 「おぬしの正宗が1万ギル、そっちの少年が5万ギルだな。」 刀工の答えにセフィロスが携帯を取り出してなにやら操作しはじめ、2、3分したら携帯の画面から目を離し画面を刀工に見せる。 「振り込んでおいたぞ。」 「たしかに、しかしそんな少年がそこまでの剣士だったとはワシの眼もマダマダだな。」 「クラウド、言われているぞ。」 「見た目が"女"ですからね。」 そう言ってふわりと微笑むクラウドに刀工はまた目を見開いた。 「まさか、おぬしが”地獄の天使”と呼ばれている男か?」 「ええ、まあ。」 「そうじゃったか、人が悪いのぉセフィロス。」 「私は何も言ってはおらぬが?」 「死に神と天使か、良き相棒かな。」 「いや、良い妻だ。」 セフィロスがそうつぶやくとクラウドをともない、表に止めてある愛車へと歩いて行く。 刀工が後ろから声をかけた。 「切れが悪くなったらいつでも持ってくるが良い。」 セフィロスは軽く片手をあげると運転席に座った。 クラウドが一礼して助手席に座ると、二人を乗せた車は一気にスピードを上げ、コスタ・デル・ソルの港を目指して走り去って行った。 コスタ・デル・ソルでザックスたちと合流すると、ジュノンへのフェリーに乗りミッドガルへ帰る。 自宅に戻ると留守電にルーファウスから呼び出しの電話が入っていた。 『セフィロスとクラウドに頼みたい仕事がある、帰宅されしだい電話をくれ』 クラウドは留守電メッセージに首をかしげていた。 「俺達に仕事?」 「嫌な予感がするな。」 「でも、一応雇用主になっちゃったから断れないでしょ?」 「くそっ!やっとプレジデントを追い出したと言うのに。」 悪態をつきながらセフィロスがルーファウスの携帯に電話を入れる、2コール目で応答があった。 「やぁ、セフィロス。ゴールドソーサーでのデートは楽しめたかね?」 「嫌みを言うためにわざわざ電話をさせたのか?」 「ふふふ、相変わらずだね。実はわが社がシェフォードグループと組んで新しい事業を始めるにあたって、君とクラウドの力をほんの少し貸してほしいのだ。」 「何を始めるのだ?」 「ホテルの新規事業だ。明日、マダムセシルと12:00にランチを食べながら協議する事になっている。」 「それと私達の協力と何が関係有る?」 「嫌ですね、あなた方は神羅カンパニーの社員なんですから、社の新規事業がうまくいくため協力するのは当たり前の事です。明日の正午にシェフォードホテルの53Fレストランへ来てくれたまえ。ああ、外で会うのだからもちろん君の奥様は妖精として来てくれるのだろうな?」 「貴様、何を目論んでいる?!」 「明日になればわかりますよ、では。」 電話はそこで切れた セフィロスがクラウドにルーファウスからの電話の内容を話すと、クラウドはピンク色の携帯を取り出して電話をかけた。 「あ、マダムセシルですか?クラウドです。はい、お久しぶりです。実は神羅カンパニーの社長ルーファウスの事でお聞きしたい事が…。ええ?明日まで内緒なんですか?はい、シェフォードホテルのロビーで11:50分頃御待ちしています。」 クラウドは溜め息をつきながら携帯をたたんだ。 「マダムセシル、新事業、そしてクラウディア…導き出される答えは一つしか見当たらないんだけど。」 「言って見ろ。」 「新事業へ俺がクラウディアとしてセフィと一緒に協力する…、こっちは宣伝モデルしかないでしょ?そしてマダムセシルの専門はブライダルドレスだ、そうなると答えは簡単ルーファウスが乗り出す新規事業は結婚産業って事じゃないの?」 「たぶん正解だな。」 「もう、なにもセフィロスまで引っ張り出す事ないのに。」 「おまえにブライダルドレスを着せるには私が必要だと奴は知っているのだよ。」 「これだから裏事情を知ってる奴の仕事はしたくないんだ。」 「クックック、おまえもなかなか言うようになったな。」 セフィロスがさも愉快そうに笑った。 翌日、クラウディアの格好でセフィロスと共にマダムセシルをシェフォード・ホテルのロビーで待っていると、彼女が約束通りの時間に来てくれた。 「お待たせしたかしら?」 「いいえ。」 「そう、あなた方と食事ができるなんて、ルーファウス社長に感謝しなくちゃね。」 「マダム、商談になるというのに楽しそうですね。」 「あら、商談でもいいわ。あなた方もその話にかかわるのですものね。」 「ええ、たぶん。」 3人は話しながらホテル53Fにあるレストランへと歩いて行った。 レストランの入り口でルーファウスの名前を出すとVIPルームに案内された。 VIPルームにはすでにルーファウスとジャック・グランディエ氏が待っていて、立ち上がって3人を出迎えるとテーブルに案内する。 5人が着席したら見はからったように前菜がサービスされた。 「お久しぶりです、マダムセシル。お元気そうでなによりです。」 「ルーファウス社長には私にクラウディアをあわせていただき感謝いたしておりますわ。で?本日は何の御用かしら?」 「私は仲介役です。詳しくはジャック氏にお願いいたします。」 ルーファウスに言われてジャック・グランディエがマダムセシルに話しはじめた。 「このホテルには宴会の出来る部屋はたくさんありますが、あまり挙式披露パーティーには不向きなのか、なかなか利用が伸びないのです。そこであなたにお願いしたいのは、ブライダルコーディネーターとして、このホテルの結婚式場と披露宴会場を作り直していただきたいのです。」 「まあ、それで私を呼んだのですか?でもなぜクラウディア達を?」 「一流のモデルであって、あなたのドレスが一番似合う女性に、パンフレットモデルをやって頂くために、ルーファウス社長に協力をお願いいたしました。」 「まあ、では私の夢もかなうのですね!クラウディアにどんなドレスを着せようかしら…、うふふ〜〜」 大喜びするマダムセシルとは逆にクラウドは思わず頭を抱えていた。 しかしマダムセシルがあることに気がついた。 「あ、でも一応ティモシー達に話しを通さないといけないのではないのかしら?」 「ああ、一応話は通してある。ブライダルモデルと言ったら『セフィロス引っ張り出さないとドレスを着ないだろう』とスタイリストに言われましたよ。」 「だってクラウディアはサー・セフィロスの隣りでなければ、ウェディングドレスを着ないと言うのです物。ですからサーに新郎役をやってもらわねばなら無いのですわ。」 マダムセシルの言葉にセフィロスは思わずワインを吹き出しかけた。クラウドも魚のテリーヌを飲み込みながら思わず咳をした。 「マ、マダム〜〜!!そこまでして私にブライダルドレスを着せるつもりですか?」 「ええ、だってあなた以前ティモシーに言ったんでしょ?サー・セフィロスの前以外ではブライダルドレスは着ないと、ルーファウス社長なら簡単にサー・セフィロスを使えるのですもの。私、以前から思っていたけどサーもモデルになれると思うのよね。」 「ご冗談はやめていただきたい。」 冷淡に言い放つセフィロスの横で苦笑を隠しきれずにルーファウスがつぶやいた。 「ティモシー達が聞いたら泣いて喜びそうだな。」 ルーファウスのつぶやきにクラウドが不思議そうな視線を投げ掛けた。 「どうしてですの?ルーファウス社長。」 「セフィロスをモデルとして売り出したいと言われた事がある。トップソルジャーだから無理だと断っていたが、カンパニー系列とはいえパンフレットモデルにしたら相当文句言われそうだな。」 ルーファウスの言葉にセフィロスが思わず溜め息をついてクラウドを見た。 「お前の気持ちが今やっとわかった気がするよ。」 クラウドは心配そうな瞳でセフィロスを見ていた時、冷淡な瞳に口元だけ笑みを浮かべてルーファウスが話しかけた。 「ちなみに君たちはわが社の社員であるからこの件に関しては拒否権は無い。」 マダムセシルとルーファウスとジャック・グランディエ氏が握手する横で、セフィロスとクラウドはお互いにげんなりとした顔をしていた。 |