FF ニ次小説

 雑誌の対談を終えて、クラウドがやっとクラウディアから開放されると、ミッシェルにもっていてもらった特攻服の入ったバッグを片手におじぎをして別れる。
 まわりを確認しクラウディアのスタッフに囲まれて服を着替えた後、そのまま裏口にまわりワザとあちこちぐるぐる歩いて自分のバイクを止めてあった場所まで戻る。
 安全を確認し、バイクのセキュリティーを専用のキーで解除してエンジンに火を入れ、ヘルメットをかぶりアクセルを吹かすと一気に高速へと飛び出して行った。

 いつものスーパーの裏手に止めると、食材を少し買い込んでからいつものように部屋に帰った。
 部屋で着替えを取ろうとしてクローゼットを開けクラウドは思わず手を止めた。
「いつもの奴はまだ乾いていないから、仕方ないなぁ。」
 そう言いながら日ごろ袖をあまりとおさないフリルの付いたブラウスに、ゆったりしたキュロットパンツをはくと、その上からエプロンをすると何処からどう見たって可愛い女の子である。
 いそいそとキッチンに立つと材料を手際よく料理に使えるようにカットして行くと、フンフンフンって鼻歌なんか歌っちゃったりしています。
 手慣れた物でさっさと料理が出来上がって行きます。

 日が落ちてしばらくすると玄関のチャイムが鳴り鍵が開く音がしたので、あわててクラウドが玄関に出迎えに行くと、セフィロスが扉を開けてはいってきた。
 いつものように背伸びをしてセフィロスの唇に触れるだけのキスをしてクラウドが微笑む。
「おかえり、セフィ。」
 少し照れたようなうつむきがちの視線は、同居しはじめて一年になろうとしているのに、初めてのころと全く変わっていなかった。
 そしていつものようにセフィロスがクラウドに深く口づけをするのも、一年前から変わっていなかった。
「あの画像データ−を見たが、あのソードを扱えるのはお前しかいないんだ。あれでは正体をばらしているような物だぞ。」
「あ、やっぱりまずいかなぁ?だけど捕まるなら結局ばれちゃうでしょ?」
「刃先の潰れたレイピアなら気絶させられるだろ?」
「あ、そうか。でも軽すぎて飛んでちゃいそうだった。」
 セフィロスはいつものように黒のロングを脱いで私服に着替えるとキッチンに入る、テーブルには手の込んだ料理が並んでいた。
 シャリアピンステーキにガーリックトースト、クラムチャウダーにシザーサラダ、そしてテーブルの上には一輪ざしのピンク色の薔薇が優しげに揺れていた。

「今日も美味しそうだな。」
「エヘヘ。セフィと一緒に食べれると思うとちょっと頑張れちゃうんだ。一人だと簡単に済ませちゃう。セフィは一人だときちんと食べてる?」
「お前が作ってくれた料理が冷蔵庫に入ってるからそれを食べているが、確かに一人で食べていても美味しくはないな。」
「よかった。一人でもきちんと食べてくれてるんだね。」
「当たり前だろ?お前の作った料理は何処の店の物よりもうまい。」
「ありがとう、じゃあ食べようか。」
 クラウドがにっこりと笑ってそう言うとやっと食事を始めた。
 食事のときもそうだが二人の会話は比較的に少ない。クラウドが食事の後片づけをしてリビングに戻ると、セフィロスはいつものように学術書を読んでいた、邪魔しないようにそっと後ろを通って、バスルームの横に有るランドリーに乾燥までセットしてあった洗濯物を取りに行く。

 シャツにアイロンをかけながらせっせとたたむ姿はかいがいしくもある。
「あっつ!!」
 アイロンをかけていたクラウドが急に悲鳴を上げた、学術書をほおり出してセフィロスがあわてて駆け寄ると、指をくわえてクラウドが目に涙を溜めていた。
「火傷でもしたのか?」
「ごめん、びっくりさせちゃって。」
「もうよい、お前にケガさせるぐらいならシャツはクリーニングに出してくれ。」
「え?で、でも、それじゃ……」
「そんな事しなくてもお前はここに、私のそばに居てくれればそれだけで十分だ。」
「だって、俺が出来ることっていったら料理とお掃除とか洗濯とか…そんなことしかセフィにしてあげられないんだもん。」
「私はお前にそんな事を望んではいない。」
 そう言うとセフィロスはクラウドの手からアイロンを奪うと、スイッチを切り指の様子を見る。左手の人差し指の第二関節に小さな水ぶくれができていた。
 そこに唇を宛てながらかるくケアルの呪文をかけると水ぶくれも火傷に伴う痛みも綺麗に無くなった。

 思わずクラウドがふくれたような顔をした。
「もう。普段、回復魔法を使っていたらダメだって言っていたくせに。」
「体力が付かないからケアルの多用は良くはないと言っただけだ。こういうケガは関係ない。」
「俺様主義。」
「今さらそれを言うか。」
 セフィロスが腰を抱き寄せリビングへと誘うが、クラウドは洗濯物を軽く片づけてから、キッチンへコーヒーを入れに行く。ミルで丁寧に豆をひいてドリップしたコーヒーをカップに入れてリビングへともって歩いてきた。
「ミディール産だけど、どう?」
 セフィロスにブラックのまま、自分にはミルクをたっぷり入れてテーブルに置くと、学術書にまた没頭していたセフィロスがコーヒーの香に目をあげる。自分のために色々とやってくれようとしているクラウドに目を細めながらつぶやいた。
「まったく、お前は可愛いな」
 そういうとカップを持ち上げてゆったりと座りなおした。
 隣にクラウドがちょこんと座ると猫舌のせいでしばらくカップを持たなかったため、暇を持て余していた手がTVのリモコンに触ると情報収集のためニュースチャンネルを選ぶ。
 いきなり画面に自分が写っていたので思わず声をあげてしまった。

「え?!お、俺?!」
 その声に反応したセフィロスがクラウドの視線をたどりTV画面を見つめると、いつもの白いロングコートを着て自分のとなりで剣をふるっているクラウドがTVに写っていた。
「どうしてこんな映像が?」
「まずいな、あれでは今日の連中にクラウディアがお前だとばれてしまう。」
 あわててセフィロスが携帯を取り出して、ツォンに連絡を入れて情報操作を依頼しているうちに、クラウドの携帯が鳴り響いた。
 ピンク色の携帯はクラウディアスタッフからもらった専用の電話機である。首をかしげながら携帯に出るとマネージャーのティモシーからの連絡だった。
「クラウド君、さっきのニュース見た?」
「ええ、今日のスタッフから問い合わせが来たら、俺が身代わりになっていたと誤魔化しておいてください。後は何とかします。」
「そう伝えたら今度は君にあいたいって。」
「それは治安部しだいです。今、隣でセフィがツォンさんと連絡とってますが、許可が出るとは思いませんね。」
「でしょうね、そう伝えます。」
 クラウドが溜め息をついて携帯をたたむと思わず涙目になった。

(いつも…、いつまでもセフィに迷惑ばかりかけて。俺ってダメだなぁ。)

などと落ち込んでいた。
 当のセフィロスと言えば愛しい妻の面倒を見るのは当然とばかりに嬉々としていた。
 ツォンと連絡取りながらクラウディアの身代わりの件と、今日のニュースの件、そしてクラウドの件を相談していた。
「イエローゾーンでの撮影だったから身代わりに行かせた事にしたらしいが、取材などもってのほかだ!!私は慣れておるがクラウドはまだ慣れてはおらぬ。そのぐらいお前でも解ろうが。」
「ええ、わかっています。これ以上クラウドの顔がアバランチや反抗勢力に知られて、つけ狙われては私どもも嫌ですからね。」
 ツォンは今だに神羅カンパニー1の可愛い子ちゃんの隠れファンであった。
 セフィロスもそれを知っていてツォンに無理難題を言いつけていた、もちろんその無理難題をきちんとこなせるであろう男であると思っているからで、昔馴染のタークスの主任をどこかで信頼していた証拠なのであった。

 電話を終えてクラウドを見ると、うつむいたまま涙をこぼしはじめていたので、あわてて抱き寄せると、頭をフルフルと振るってその腕の中から逃れようとするが、それを許すようなセフィロスでは無かった。
「なぜ泣く?お前に泣かれるとどうにかなりそうだ。」
「お、俺。いつまでたっても足手まといで。えっく…セフィに迷惑かけてばかりで…ひっく。こんな俺なんて、あなたのそばに居る資格なんて…ない。」
 クラウドが自分を否定するが、セフィロスが耳元でささやく。
「おまえは、実力で私の隣に立っているくせに、まだそう言うことを言うのか?」
「だって、俺。セフィに何もして上げていない。セフィは俺に満足しているの?俺みたいな奴と結婚してよかったの?」
「お前と一緒になれて、私としては至極満足している。」

だって……夜の生活だって、いつも俺ばっかり逝かされて…。セフィは息も乱さないし。ま、満足してるって思えないよ。
 クラウドにしては壮大な決心の元、神羅カンパニー本社ビルのてっぺんから飛び降りるようなつもりで、真っ赤になって上目づかいで囁くように紡がれた言葉に、セフィロスは思わず苦笑をしてしまった。
「クックック、急に何を言うかと思えば。お前は自分と私の体力の差を考えたことがないのか?ソルジャーである私が息が切れるほど激しくお前を抱いたら、間違いなくお前は死んでいる。」
 クラウドは思わず首まで真っ赤になって、恥ずかしそうに体を縮めている。
 そんなクラウドに軽く唇をあわせながらセフィロスはほくそ笑んだ。
「それともなんだ?今のセリフは強烈なまでのお誘いの言葉か?ふふふ、そうならそうと言えばよい物を。」
「ち…違っ!! さそっ…ぁん!!」


据え膳食わぬはなんとやら(笑)
丁寧に飾りつけられてさし出された感じのするメインディッシュ(違!)をセフィロスはその夜、存分に堪能するのであった。