FF ニ次小説


 輸送班や医療チームに自分とセフィロスの事がすでに知れ渡っていたということに、クラウドの顔が赤くなって行った。エドワードがクスリと笑いながらクラウドの頭をなでる。
「お前、乗物酔いするんだろ?トラックならリックの運転でなんとかなるが、輸送機なんて乗ったら一発でアウトなんだろ?」
「うん、今まで隊長に魔法で眠らされたりしてた。」
「どうせ”姫抱き”で、だろ?」
「……うん」
 クラウドの答えにパーシーがびっくりした。
「良く今までバレていなかったね。」
「あのリックが凄い目でにらみつけて『他言無用で願おうか…』だぞ、話せるかよ。」
「そりゃ、命に係るから話せんな。」
「姫、お前らいいかげんカミングアウトしろよ。」
「そうしたら俺、治安部辞めなきゃいけなくなるけど?」
「あ、そうかキングが移動するか姫が移動するかになるよな。サー・セフィロスがソルジャーでありつづける限り、結婚しているお前は治安部以外の部所に移動しないといけないんだ。」
「それも困るな。」
「ここ辞めてほかに仕事といったら……あれだろ?」
「あれだよな?」
「スーパーモデルのレディ・クラウディアしか残っていないって?」
「情けない話しだけどそれなんだよ。ソルジャーにならなかったら、ティモシー達が泣いて喜ぶのが目にみえるんだ。」
「黙っていればお前はずっとクラスAソルジャーとして、俺達の強い味方になってくれるなら、ここにいる誰も話しはしないぜ。」
「喜んでいいんだか悲しんでいいんだかわからないよ。」
 仲間達の話にクラウドは軽くため息をついてデスクにつくと書類の整理を始めた。

 しばらくデスクワークを続けていると後ろで仲間たちが集まって、何やらわいわいと相談を始めている声が聞こえてきた

 リーダーを取っているのはクラスAのイベント男と化しているランディとキースだった。
「おい、どうするよ?あと2週間しかないぞ。」
「ちぇ!クラスSはいいよなぁ。」
「剣技見せるだけで絵になるんだから、何も考えなくてもいいってのは楽だよなぁ。」
 二人の会話にエドワードとブライアン、パーシーというクラスAでも戦略家の男達が加わった。
「ああ、あれか。今年は特賞取りに行くぞ。」
「どうやって?何かいい案あるのかよ?」
「使える物は何でも使う……だろ?めちゃくちゃ使える男が居るじゃないか。」
「ああ、今年は姫がいるからクラスAが特賞ねらえるぞ。」
「そうだった!!姫がいたんだ!」

 急に呼称を呼ばれてクラウドが振り返った。
「え?俺に何か用?」
「ああ、お前は去年の今ごろミッションだったかな?」
「ああ、一年前の今ごろならグラスランドでミドガルズオルム相手にヒーヒー言ってた頃だよ。」
「そういえばサー・セフィロスは行事ごとが嫌いだから、いつもミッションで不在だったな。」
「おい。姫を連れて行かれたら困るぞ、どうするよ?」
「先に釘を打っておくしかないだろ。」
「誰が引導を渡しに行くんだ?」
「言い出したからな、エディ。お前、行け。」
「うわ!俺に死ねと言うのか?!」
「大丈夫、姫のご指名でのお相手を殺すような事はしないって。せいぜい氷らされて良しだと思う。」
「あの……話が全く見えていないんだけど。」
 クラウドはきょとんとした顔をして小首を傾げているので、クラスA仲間達が顔を見合わせた。


「はいはい、そう言う顔はキングの前だけにしておけ、命が惜しい。2週間後にカンパニーの創立記念日があるんだが、その日に治安部の一般開放があるのは知っているな?」
 エドワードの言葉にクラウドは一年前に撮影したポスターを思い出してうなずいた。ブライアンが言葉を継いだ。
「一般開放というのは軍隊が地域の住民の理解を得ようとして、基地の中を解放し地域住民との交流を図るのが目的なんだ。」
「なるほど、隊長が逃げ出すわけだね。」
 クラスA仲間が集まってきてクラウドに一般開放のことを説明し始めた。
「ともかくその日はクラスC以上のソルジャーは何かやることになってるんだ。」
「クラスSは全員で黒のロング着て剣技をやるんだ。何度見ても見惚れるんだが……キングがずっと不在なんだ。」
「サー・セフィロスがミッションを入れる理由はわからんでもないが、ミッドガル市民はひと目でいいから会いたいだろうな。」
「俺達もキングが正宗をふるってる姿を見て見たい物だよ。」
 クラウドがエドワードを見やるとうなずく。
「そう言う事、サーは自分が出たくないからわざとミッションを入れてる。」
「ふ〜〜ん。じゃあ隊長がモンスターやテロリスト相手に剣をふる姿って、特務隊以外の人はあまりお目にかかれないんだ。」
「ああ、俺も前のミッションで始めて見たけど、やっぱりカッコイイと言うか見惚れるな、あの姿は。」

 エドワードの言葉にブライアンがにらみつけるように言う。
「エディ。おまえやっぱりシメテやる!」
 クラウドが不思議そうな顔で首をかしげていた。
「隊長は真面目な乱取りならいつでも付き合ってくれるけど、人に見せる為の剣の技なら絶対見せてくれないとおもうよ。だからもし残っていても、クラスSに隊長の剣をまともに受けれる人が何人いるかなぁ?」
「恐い事言うな。いくらお前がクラスS並の剣の腕を持っているからって、それはチョット言い過ぎじゃないのか?」
 キースの言葉にブライアンが応えた。
「いや、たぶん事実だろう。隊長達が剣をふるったのを見たこと有るか?まあ、俺のところは魔法部隊だから剣なんぞ振ったためしも無いが……」
 ブライアンの言葉にその場にいたクラスAソルジャー達が黙り込んだ時、バージルがただ一人手をあげた。
「アルテマウェポンの時に始めて見たな。」
「実戦で鍛え続けているから俺がクラスSに勝てるんだよ。ちなみに俺だって隊長の剣をまともに受けた事など無いよ、あの人が本気を出したら俺なんて一太刀でやられているよ。」
「ならば更に見てみたい。うっしゃブライアン素案考えようぜ!」
「姫にしか出来ない仕事って何が有る?」
「そりゃ、決まってるだろ」
「やっぱりあれだよな。」
「あれでしょ。」
「あれって……もしかして??」
 わかっていて訪ねるクラウドにうなずいてキースが答えた。
「レディ・クラウディアになってもらうしかないだろ?」
 キースの答えにクラウドが思いっきり叫んだ。
「イ、イヤダー−−!!副業だけでも嫌なのに!!クラスS絡みのミッションはみんな”あれ”だし、いくらおふざけとはいえ皆の前でクラウディアになったら、間違えなくバレてしまうじゃないか!!」
 両手を振り上げて抗議するクラウドを冷たい目で見るとランディがエドワードに話しかけた。
「エディ、キングの代理として姫を抑えておけ。で、姫を”姫君”にして何をやるんだ?」
「嫌な事、皆俺かよ。ま〜たリック達にいじめられそうだ。」
「特務隊影の隊長からヘッドハンティングかかったんだろ?残念ながら俺達そこまで腕に自信が無いんでね。」
 エドワードが諦めたような顔をしてクラウドの隣に移動すると、青い瞳が相変わらずうらめしそうな顔でクラスA仲間をにらみつけていたので、いつものように髪を梳くように頭をなでながらため息をついた。
「だ〜か〜ら。そう言う可愛い顔を俺達に見せるなっての!まあ、いつもみたいなフリフリヒラヒラの衣装は着せないから安心しろ。お前はすでにサー・セフィロスの右腕として知られているから、動きにくい格好だけはさせないから、な。」
「約束だよ、エディ。」
 すねたような上目遣いの蒼い瞳にちょっととがった唇は凶悪なまでに可愛らしい、一瞬とはいえその顔に目が釘付けになりそうになるが、目の前の少年がどれだけ強いか、そしてその背後にかばうようにして立ちはだかっている男達の強さをエドワードは嫌と言うほど知っていた。
「はいはい。ったく……俺、またリック達にシメられるな。」
 エドワードは再び溜め息をついた。


* * *



 クラウドの許可を半ば強引なまでにとりつけて、クラスAの出し物が迷路と決まった。行き止まりだけではなく落とし穴もある迷路の途中途中でクラスAが待機していて一般客にはジャンケンなどで勝負、ソルジャーや一般兵相手には武術で対抗し、最後までたどり付いたら、ラスボスでクラウドが一般人にはジャンケンで勝負して、負けたら一緒に写真を撮影、軍人相手には組み手で負けたら一つだけ言うことを聞くという約束で、彼も了解した。

 クラスSに素案を持っていくとやたら乗り気になっていたが、問題はラスボス、クラウドの強さだった。

 クラスSソルジャー達が額を寄せ合って居る横でブライアンが必死で笑いをこらえていた。
「姫が本気を出したら誰も勝てやしないぞ、勝機のない一方的な戦いになりはせぬか?」
「ですから姫には動き辛い格好をしてもらいます。ピンヒールはたぶん履いてもらうつもりです。そうでもしないと下級兵を呼べませんから。」
「ほ、本当か?!よく姫が承知したな。」
「本人が嫌がらない程度の姿で化粧も無しという約束ですから一発OKが出ましたよ。相当自信があるのではないでしょうか?明日にでも衣装を見付けに行くと言ってます。」
「フレアスカートは無しだぞ。あれで足蹴リされては、どうしても太ももに目が行ってしまう。」
「姫本人に決めてもらいますから、フリフリヒラヒラはないでしょう。後はいかにしてキングにミッションにいかれないようにするかが最大の難問なのですが……」
「それは我らに任せろ。ランスロットにかけあっておく。」
 ランディがパーシヴァルの言葉によこしまな笑みを浮かべた。
「ふっふっふ……サー・パーシヴァル。目的は一緒のようですな?」
「お前に姫を倒せるとは思わんな。姫の唇は頂いた、クックック……」
 リーがあきれたような顔をしている。
「ふたりとも、後で特務隊とキングにシメられるのを覚悟の上ですか?」
「そのぐらい覚悟せねばこんな事許すか?」
「ふっ…まあ、そうですね。悪くはないですね。」
 クラスSとクラスAが目的をほぼ一緒にした頃、特務隊の執務室でクラウドが暗い顔をしていた。リックがそれに気がついて声をかける。

「姫、どうしたの?なんだか悩んでいるみたいじゃないか。」
「リックは知ってる?カンパニーの創立記念の話。クラスAの出し物が迷路なんだけど俺、ラスボスなんだ。」
「は〜ん?あいつらお前に何させる気だ?」
「一般人にはジャンケン対決らしいけど軍人相手には組み手だって。」
「それじゃ並の奴は負けるな、ハンディはないのかよ?」
「……俺、女装だって。」
 真っ赤になってつぶやくクラウドをよそにリックが胸を張って宣言した。
「うっしゃ!!俺、絶対行く!!」
「俺もミッション入っても無視する!!」
「姫がピンヒールを履くなら、やってもいいかな。」
「クラスSからのお達しで10cmのヒールを履けって、目茶苦茶だよ。明日からちょっと試し履きして慣らさなきゃ、くじいちゃう。」
 ブロウディがクラウドにつっこみを入れた。
「姫、また女性に間違えられるぞ。」
「……ううう…… くっそ〜〜〜!!俺、絶対ミッションで逃げてやる!さもなくばグラスランド行きだ!!」
「ダーメ!俺達は絶対行かないからな。」
「ううう…リックなんて嫌いだぁ〜〜(泣)」

 クラウドが青い瞳に涙を溜めていた時、執務室にセフィロスが入ってきた。即座に姿勢を正して敬礼する隊員達に交じって敬礼するクラウドの涙にぬれた瞳をすぐに見つけ出し表情を変えた。
「クラウド、何があった?!」
 隊員達は皆びっくりした顔をしてセフィロスを見た。