FF ニ次小説


 特務隊の執務室に入った途端、クラウドの様子がへんなのに気がついたセフィロスにリックが感心した。
「さすが隊長殿だ、姫の泣き顔に即座に反応する当たり凄いや。今年は創立記念日にミッション入れても行きませんので、そのつもりでお願いいたします。」
「ほぉ?理由を聞こうか?」
「大手を振って姫にキスしてもらう為です。」
「ええーーー!?あ、そうかリックならラストの俺まで勝ち抜ける。」
 そこにザックスが入ってきた。

「クラウドー、今噂で聞いてきたけど今年のクラスAの出し物のラスボスだって?」
「もう評判になってるの?うん、俺がラスボスだけど。」
「クラスA26人抜きした後でラストがお前か、鍛えれば勝てない事はないな。もし勝てたら言うことを一つ聞くってマジ?」
「うっ、ザックスまで俺に勝つ気でいるのか。仕方がないな、ハイヒールを辞めてピンヒールブーツにしよう、うん。」
 セフィロスが一連の会話を聞いてだいたいの想像が付いたのかうなずいた。
「なるほど、そう言う事か。しかし並の奴らに負けるお前でもなかろう?」
「だからハンディで動きに支障のない程度の女装をさせられるんだよ!そうしたらやたらクラスSの皆さんが乗り気になっちゃって…見てろよ!絶対動きやすいカッコしてやるから。」
「ではそのブーツだけでも早く買ってこい。明日からしばらく私がお前を鍛えてやる。」
「本当?!セフィ!ありがとう!!」
「お前が他の男にキスする機会など与えてやるような事などするものか。」
「うわ〜〜〜、こりゃ大変な事になったな。俺もクラスS相手に鍛えに行こう。」
「リック、俺も行っていいか?」
「Me too?」
 顔を寄せ合って相談している特務隊トップ3にクラウドが堂々と宣言した。
「絶対負けないからね!!セフィ、買い物に行こう!!」
「まったく、いい事なんだか嫌な事なんだかわからんな。」
 クラウドに引っ張られてセフィロスが執務室から消えると、残った隊員達が全員クラスSの執務室へと駆けだしていった。

 クラスS執務室にはすでにたくさんのソルジャー達が来ていた。
 その数にナイツ・オブ・ラウンド達がびっくりしている時に特務隊の連中が入ってきた。
「うひゃ〜〜、考えること皆一緒って?」
「クックック敵は多い方が燃えるんだよ。」
 リックの冷笑にガーレスが苦笑いをしている。
「お〜お、どこかの隊長殿と同じような事を言うな。」
「だてに影の隊長と呼ばれてなんていません。」
「時に当の姫は?」
「旦那と買い物、そのあと当分旦那がへばりついて鍛えるんだとさ。」
「隊長殿もマジモードでちょっとキレてますから。」
「キングが?これから二週間もあれば姫はメチャクチャ強くなるぞ。」
 ガーレスの言葉にザックスが苦笑いをした。
「まあ、あれですわ。旦那の目の前でクラウドをかっさらうのは、並の男じゃ出来ないって事ですよ。」
「仕方がないな、リック覚悟しろよ。」
「ふっふっふ、日ごろ実戦に出ていないナイツ・オブ・ラウンドの皆さんに負けるつもりは全く有りませんよ。」
 リックの一言にザックスが急に顔を明るくした。

「そっか、そう言う事か。じゃ俺も負けねぇ!!」
 ザックスの言葉にカイルとジョニーがつっこみを入れる。
「ほぉ〜〜やる気になってるじゃん。」
「お前が姫に勝ったら彼女がヤキモチ焼くだろ?」
「悪いな〜、俺がクラウドに頼みたい事なんてただ一つ。”エアリスのドレスをマダムセシルブランドでくれ”だって。」
「おまえ、正式なソルジャーだろ?買ってやれよ、そのぐらい。」
「お坊っちゃまに貧乏人の財布の中身がわかるかよ!マダムセシルのドレスなんて俺の月給の半年分だぜ!!」
「そりゃ、必死にならなきゃだめだな。相手は姫と隊長だ。」
「んじゃリック、カイル、ジョニー。ここにいたらダメだ、行くぜ。」
「ふふん、そう言うことね。いいぜ全力出してやるから覚悟しろよ。」
「ふっふっふ、クラスSの皆さん、首を洗って待っていてくださいね。」
 特務隊の連中が帰っていったのを見送るとクラスSソルジャー達が青い顔をした。
「おい、ガーレス。あんなこと言われているぞ。」
「仕方がなかろう?実戦の経験ははるかにあいつらの方が多い。」
「まあ、召喚マテリア出されたらおしまいなのは一緒だがな。」
 クラスSソルジャー達がため息交じりで特務隊の消えた扉を眺めていた。


* * *



 その頃、ミッドガルのとある商店街で一般開放の衣装を探していたクラウドとセフィロスは、なるべく動きやすい女装を探して歩いていた。
「うう〜〜〜、まるで女子プロレスの衣装じゃないですか〜〜!!」
「動きやすかろう?」
「10cmのヒールってこんなになっちゃうんですね。」
 編み上げブーツを足にはき立ち上がろうとするクラウドだが、なれないヒールに足がふらつく。
「うひゃ、でも気持ちいいなぁ……こんなに背が高くなります。」
 そう言ってセフィロスの顔を見ると、なぜだか複雑な顔をしていた。
「180cmぐらいになってしまうな。」
「ホットパンツはスカートよりもいいのですが、これで大丈夫でしょうか?」
 上着は胸の半分ぐらいしか隠さない銀色の上着でノースリーブだ。同色のヒップハングのホットパンツは丈が足のつけ根までしかない。両腕とお腹、そして足がほぼまる見え状態で、すんなりと伸びた両足にはひざ下までの編み上げブーツを履いていた。
 鏡に映った姿を見てクラウドが首をひねるのでセフィロスが答える。
「女にみえれば立派な女装だろ?店主どうだ?」
「は?え?その腹筋では女性にはみえませんけど。」
「ちょっと鍛え過ぎたかな?」
 早くソルジャーになりたくて一生懸命筋力トレーニングを積んでいるクラウドの腹筋は、綺麗に発達していてくっきりと分かれている。
「仕方がないな、タンクトップにそっちの赤いミニスカートはどうだ?」
「いくら一般開放の馬鹿騒ぎとはいえ、スカートは嫌ですよ。」
「ホットパンツだとどうしても少年にしか見えませんよ。それにやはり女装といえばスカートです。」
「だ、そうだぞ?」
「うっ……認めたくないけど……仕方がないか。スカートが短くないでしょうか?」
「試しに履いてケリを出して見ろ。」
 渋々うなずいてクラウドがミニスカートを片手に試着室へと入り着替えて出てくる。セフィロスが腕を差し出すとクラウドがそこをめがけて足蹴リを繰り出した。すらりと延びた足が綺麗にセフィロスの腕を捕らえた所で止まる、その姿を見て店主が唖然とするがセフィロスは平然としていた。
「ふむ……そのスカートの方がきっといい事があるぞ。出来れば下着を見せる為の物にしておけ。」
「なるほど、そう言う手もありますね。じゃあコレにします。」
 クラウドの選んだ衣装は裾のちょっと短い黒のタンクトップに、重ね着用の白のタンクトップと赤いヒップハングの尻下3cmのミニスカートだった。白の編み上げブーツはクラスS御指定の10cmのピンヒール、思わず自分の格好をあちこち眺め回してしまう。
「情けないなぁ、こんな姿を反抗勢力の連中が見たら何て思うやら。」
「仕方がなかろう?一般開放の一日だけだ。しかし、お前をラストに持ってくる理由がわからんな。」
「ああ、それなら”クラウディアの偽物と写真が取れる”って理由ですよ。」
「そういえば、お客さんどことなくクラウディアさんと似てますね。」
「どことなく、ね。」
「着替えろ、カンパニーに戻るぞ。」
「アイ・サー!!」
 びしっと敬礼したクラウドに白のロングコートを渡しながら、そのコートの意味を知っている店主は、英雄の副官を憧れの眼差しで見ていた。
 着替えが終わったクラウドはスボンの裾をブーツの上に出している為、身長が高いままだった。カードで支払いを終えるとセフィロスの車を追いかけるように、愛車のバイクでカンパニーに戻る。クラスA執務室に戻ったクラウドは部屋に誰もいないので士官専用闘技場をのぞいて、その人数にびっくりした。
 クラスAのほとんどと、クラスS,そして多数のソルジャー達が訓練をしていた。

(うっわ〜〜、皆マジですか?!)

 あわてて特務隊の執務室に駆け込むとリックとカイルとジョニー相手に、ザックスが組み手をやっていたので思わず声をかける。
「ザックス、どうしたの?」
「ん〜?!エアリスにマダムセシルのドレスをプレゼントしてやりたいんだ。」
「マダムのドレスだったら、いつでも言ってくれればいいのに。」
「ついでにお前に一度でもいいから勝ったと言う事実も欲しいしな。」
「ねえ皆、お願い!4対1でやらせてくれる?」
 クラウドにしては無謀とも思えるおねだりにカイルがびっくりする。
「姫、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも…俺、セフィの前で他の人にキスしたくない!!」
「俺達4人とそのブーツでやり会うつもり?」
「ああ、マジでやる!!」
「うわ〜〜、恐い奴。」
「でも遠慮無く行くぞ。」
「ああ、来い!!」

 4対1のクラウドにとっては絶対不利の組み手が開始された。しかしクラウドとて最前線のど真ん中で闘い抜いてきた男だ、10cmのヒールをものともせずに、いつもと変わらない運動能力を見せつけるので、リック達は舌をまきつつクラウドに組みついていた。
 やがて30分が経過し執務室の扉が開いてセフィロスが入ってき。た
 クラウドvsリック、カイル、ザックスと言う組み手を見てにやりと笑みを浮かべる。
「クラウド、止まれ!お前がこの3人を鍛えることになるぞ。」
「あ、そうか。セフィ、頼める?」
「ああ、クラスS全員抜き出切るぐらいにしてやる。」
「ほんと?!嬉しい!!」
 クラウドがセフィロスに抱きつくと、いつもなら胸にうずくまる程度の身長差が首のところまで届いているので、リックが笑った。
「姫、10cmのヒールを履いてやっとその身長差なの?」
「う、うるさい!!後、5年もしたらこのぐらいになってやる!」
「牛乳飲めよ。」
「うううう……絶対叩きのめす!!」
 クラウドがカイルをにらみつけるとセフィロスと何処かへ行ってしまった、リックが思いっきりカイルをぶん殴る。
「馬鹿野郎!姫を本気にさせるな!!楽に勝てなくなったじゃないか!」
「うわ、俺のせいかよ。」

 それからしばらくの間特務隊にも自分達のクラスにも、セフィロスとクラウドは顔を出さなかった。

そして神羅カンパニー創立記念日がやってきた。