FF ニ次小説


 カンパニーの創立記念日に、めずらしく英雄セフィロスが姿を現していた。クラスSの中心で剣を舞うようにふるう姿に、一般市民だけでなく、カンパニーのほとんどの人間が見惚れている。それはクラスAソルジャー達とて例外ではなかった。
「やっぱり、いつ見てもサー・セフィロスはかっこいいな。」
「エディ、取っちゃヤダ。」
「ぶっ!!お前と一緒にするな!!」
「俺たちは姫とは違う意味で惚れているんだ。だいたいクラスAソルジャーにまで成ると、女の子があっちから寄ってくるんだ。」
「ふ〜ん、そうなんだ。」
「おい、そろそろ時間だぞ。姫、支度しろよ。」
「え?あ、ああ。」
 ブライアンに促されてクラウドが着替えにいこうとした時にランディが声をかけた。
「あ、姫。一応クラウディアの替え玉をやっているサーセフィロスの副官と宣伝しているから軽く化粧してこいよ。」
「もう、仕方がないなぁ……」
「安心しろ、お前の前は俺だから。」
「エディが?まあ、無理するなよ。実戦に出ていない奴にリック達が負けると思えないからな。」
 冷淡な瞳で言いはなたれた言葉に、エドワードは何も言い返せないままだった。実際体力さえ自分と互角だったらクラウドは一年でサー・セフィロスと同じ地位まで、駆けあがっていたであろう。
 そう思うとエドワードはいつものような優しげなまなざしでクラウドに話しかけた。
「あと2年もしたら……お前、俺の上官になってるかもな。」
「冗談いわないでよ。俺、特務隊から抜ける気ないもん。」
「クラスSには行かないって言うのか?」
「ああ、行くつもりは無い。さて……行くか。」
 更衣室に入ってタンクトップに赤いミニスカートを履き、軽く化粧をすると、クリスタルバングルとアルテマウェポンを装備してからクラウドが現れた。
 その姿にカンパニーの社員からは”かわいい”だの”かっこいい”だの”綺麗”だのと声がかかる。それを一切無視してクラウドが凛とした態度を取って入り口にいたブライアンに声をかけた。

「ブライアン、いいぞ!!」
「カッコいいぜ姫。じゃあ行くぜ皆!!」
「おう!!」
 26人のソルジャー達が迷路に散らばると、エドワードが白のロングを着たままクラウドのとなりに立った。その場所は少し高くなっているので、入り口でブライアンが説明をするのが見える。エドワードが入り口ばかりに気を取られていたら、クラウドがいきなり振り返って敬礼した。
 そこにはいつのまにかサー・セフィロスが立っていた
「ほぉ……気配を消していたつもりだが、よくわかったな。」
「自分には通じませんよ。」
「え?サ……サー・セフィロス。どうして?」
「こんな面白そうな物を見晴らしのいいところから見てはいけないのか?ブライアン、聞こえるか?抜けられるなら少し来い!」
 セフィロスに指名されて入り口近くにいたブライアンがあわてて駆け寄ってきた。
「何かご用事でしょうか?」
「クラウドだけで人は集まらんぞ。ラスボスに私の名前を連ねておけ。ジャンケンで勝ち抜けば私と握手と言うのでどうだ?そうしたらお前らだって楽になろう?」
「サーと握手ですか?それはそれで羨ましいな。」
「貴様達なら組み手の相手だな。」
「遠慮しておきます、自分はまだ死にたく有りません。」
 にこりと笑って敬礼してからブライアンは元の位置へと戻っていった。
「隊長、こちらにおかけ下さい」
 クラウドがすすめた椅子に悠然と足を組んでセフィロスが座ると、そのとなりにアルテマソードを立てて足を肩幅に開いてクラウドが立った。赤いミニスカートでなければかなり絵になるが、遠くからみるとセフィロスが可愛い女の子に守られているようでもあった。入ってきたクラスS仲間のトールがその姿を見てびっくりする。
「キング、どう見ても金髪碧眼の美人に守られてるみたいですよ」
「ほぉ……トール。私の副官にけんかを売るつもりか?命知らずだな。」
 セフィロスが冷ややかな笑みを浮かべている隣で、クラウドがトールの言葉に怒りをあらわにしていた。
「いいですよ、いつでもここまで来て下さい。そのかわり手は抜きませんからね、骨の2、3本は覚悟願いますよ。なんでしたら、ここからピンポイントでシャドウフレアでも、かけてさしあげましょうか?」
「いや、辞めておきます。クラスA26人なら抜けますが、このあいだリックにいじめられてたエディと姫を連続で抜くのは至難の業ですからね。」
「トール。貴様はそれだから後方支援の輸送隊長でしか無いのだぞ。」
「実戦に出なくなって久しい自分が、第一線で戦っている姫に勝てるのならば、姫のソードや召喚獣達は私の手元にあるはずです。」
「その通りだな。」
 同じクラスS仲間だというのにあくまでも上官と部下のような会話に、エドワードがびっくりした。しかしクラウドもセフィロスも表情を全く変えていない。

(クラウドにクラスSが敬語を使う理由はやはり実力を認めているからか…)

 エドワードは隣に立っている自分のペアの実力を改めて思い知った。

 一般客やセフィロスとの握手を選んだ兵士達の中には、運良くジャンケンに勝ち抜いてクラウドやセフィロスとあい見えることができた人がちらほらと出てきた。
 低いクラスからのチャレンジであったが特務隊の連中と、クラスSソルジャー達の姿がいまだに見えてきていないのにクラウドが首をかしげる。
「おかしいなぁ……リック達がここまで来れないなんて変じゃない?」
「特務隊はクラスSと一緒で後回しだ。特別枠で26人がかりだ。」
「クラスA達も後から来て見るのはどうだ?特務隊が歓迎しよう。」
「うわ!!クラスA26人抜きよりも特務隊25人抜きの方がはるかにキツいですよ。」
 エドワードがセフィロスの言葉にびっくりしている所へ、後ろからランスロットが入ってきた。クラウドとエドワードがほぼ同時に敬礼するが、セフィロスは椅子に座ったままにやりとほくそ笑んでいただけだった。

「やはり来たか?ランスロット。」
「こんなに面白い物を見ないで何を見ろと言うんですか?そういえば、エドワード。先程トールがクラスS執務室で、クラスAと特務隊相手に邪魔役に回る連中をつのっていたぞ。」
「そういえば、リックもクラスSやクラスAなら邪魔してやるとか言っていたな。」
「リックだけじゃないよ。みんな”クラスSやクラスAの好きにはさせない”って、ほくそ笑んでいたから、たぶん全員来るよ。」
「クックック、それは面白いことになりそうだな。」
「ソルジャー辞めて良かったような……(^^;;」
 ランスロットが複雑な顔をしていた。

 案内されるゲストが、ソルジャーの上位ランクになって来ていた。クラスAが一人、二人と抜かれたりするが、さすがにラストまで来ない。しかし初めてソルジャーがクラウド達の前に現れた。
 クラウドが見覚えのあるクラスCソルジャーに尋ねた。
「ハンスじゃないか、何が望みだ?」
「サー・セフィロスとの2ショット写真。」
「さすが隊長フリークのハンスだ。隊長殿、どうされますか?」
「私とジャンケンだな、勝ったらOKしてやる。」
 セフィロスとジャンケンするハンスの顔が紅くそまっていたのに気がつくと、クラウドがほんのちょっと焼き餅を焼く。しかし残念ながらハンスはセフィロスにジャンケンで負けてしまった。

「最後に一つだけお聞かせ下さい。特務隊の入隊条件はありますか?」
「ソルジャーならば最低一回づつは隊員達全員に勝つ事だな。一般兵ならクラス1st以上の能力の持ち主、新規採用ならクラス2nd以上の基礎データーがある事だ。」
「ストライフ准尉はそれほど基礎データーがあったのですか?」
 ハンスの質問にクラウドの基礎データーを知っていたランスロットが答えた。
「姫の入隊時の基礎データーは魔力だけならクラスB、他はクラス2ndか下手すればクラス1st並のデーターだったぞ。」
「俺って、そんなにあったんですか?」
「ほんの半年の実戦でクラスAまで駆けあがってきたのがその証拠だ。」
「ありがとうございました。」
 ハンスが一礼するとその場を去って行った。しばらくするとザックスが抜けてきた。エドワードがその事実にびっくりする。
「へぇ、ザックスやるじゃねえか。クラスA26人抜きかよ。」
「ダテやざらでこんな危険な旦那に2年もへばりついていねえよ。」
「マダムセシルのドレスでいいの?ウェディング用でいい?」

 クラウドの言葉にザックスが真っ赤になるのを横目で見ながら、セフィロスがエドワードに命令した。
「エドワード、お前が相手してやれ。」
「アイ・サー!!」
 エドワードの雰囲気がいきなり変わった。

 ザックスの組み手の腕はクラスAの実力を持っている。しかしエドワードもリックにスカウトされたほどの腕の持ち主だ、激しい組み手は30分ほどかかったがなんとかエドワードの勝利で終わった。
「ちぇ!!少しは手を抜いてくれりゃいいのに。」
「は……冗談じゃない、キングのご指名を受けて負けられるかよ。」
「いいじゃないザックス。マダムセシルのドレスは俺からエアリスに誕生日にプレゼントしておくよ。」
「ダ〜〜メ!!セフィロス、レベルSミッション入れてくれ。」
「真面目に稼ぐか、それもよかろう。」
 セフィロスがうなずくと、ザックスがその場に座り込んだ。見学を決め込むつもりだろう。クラウドがザックスに笑顔で話しかけた。
「剣も実力もクラスAあるんだから、しっかり魔力と戦術の勉強しようね。」
「魔力は使えば強くなるのはわかるけどよォ、戦術はどうも苦手だ。」
「お前は馬鹿正直に真っ正面から突っ込む。力が有るから生き残れるが、間違えなくお前の部下は死ぬ事になるな。」
 セフィロスの話にまじめにザックスが答えた。
「それなんだよな。特務隊だから損失が無かっただけで、他の隊に回されたらとっくの昔に部下を失ってるだろうな。」
「たしかに特務隊の実力なら正面突破だって可能だが、そんな疲れる戦いばかりしてたら隊員達が持たない。」
「それも、わかってる。くっそ〜〜〜、やっぱ頭脳戦もやらなきゃダメか。」
「お前の1番にがてな事だな。」
「サー・エドワードに言われたくないっす!!」

 ザックスが拗ねるようにブツブツ言っている時に、見覚えのある黒髪の少女がやってきた。クラウドのカッコにけらけらと声を立てて笑っている少女は、にっこりと微笑んで3人のソルジャーにおじぎをした。